トレセン学園を無事卒業したドリームジャーニー。
そして彼女を三年間支え続けたトレーナー。
今日は黄金一族の担当トレーナーが集まって、ジャニトレ慰労会を行っていた。
酒が進むと本音もこぼれる。
話題は担当のどこが好きか、というものになっていた。
「メノの好きなところ?Siri、いや、見た目以上に乙女なところかな。」
素直に尻と言えボス。それはさておき、彼にとって、まめちんはとてもとても可愛い女の子であるようだ。
「ゴルシの好きなところ?ズバリ胸元だろ、胸元!」
さすがに胸と言うのは憚られたゴルトレ。だが男であの弾むばぼんばぼんに目がいかない奴おる?
「ナカヤマの好きなところ?菫色の瞳かな。勝負している時最高に輝いていて、本当に綺麗だ。」
ヒリつく勝負に興じている時が最も綺麗だと断じるナカトレ。さすが地獄の底まで一緒に行く、と言ったのは伊達ではない。
「オルフェの好きなところ?太すぎず細すぎずちょうどいい太腿かな。」
勝負服で唯一素肌が露出しているところをあげた杖。むっちりが好きなむっつり確定。
「ステゴの好きなところ?いつでもサラサラな髪の毛かな。」
唯一の既婚者、対ステゴGPS保持者の方位磁針。キャラストで髪を洗いっこしていた猛者だけに、黒から黄金がかった髪が好きなのか。
そして今日の主役のジャニトレは。
「ジャーニーの、好きなところ?ぶっちゃけ全部好きだけど、俺が一番好きなのはうなじかな。細い首に触りたい。普段は髪を下ろしてるから、白勝負服でしかお目にかかれないけど。白勝負服、あれ即挙式できるじゃん。ヴェールとブーケと白手袋を持ってくるし、俺もタキシード着るから結婚して?ジャーニーのうなじ、全然後れ毛がなくてすごく綺麗なんだけど、もちろんあってもそれはそれで。水色の瞳がクールで、いつも俺を見ていてくれる。手も腕も体も小さいのに、あのでっかいタイヤ引くのにはいつもびっくりさせられる。でも小さくても太ももはしっかりたっぷりむっちりしてるし、腰回りは大人そのものだしで色気が本当にすごいんだよね。黒衣装、体幹はかっちりしてるのに深すぎるスリットから見える太ももにクラクラする。しかも卑怯だろ網タイツ、普通に露出するよりすごくすごい。見せたいんだい、見せたくないんだい、どっちなんだい?俺は見たい。それ以上に(以下自粛)。今まで我慢するのが本当に大変で大変で。ジャーニー小さくて可愛いし賢くて綺麗。オルフェーヴルが羨ましいよ、俺もジャーニーにお世話されたいし溺愛されたい。そして俺もお世話したいし溺愛したい。あっ、でもきょうだいじゃ結婚できないから今のはノーカン。よわよわとかゴンズイとかウミウシとかいろいろ言われてるけど、ジャーニーかわいいよ?最初の挙動でバグってたのは認めるけど、後々ちゃんとデバッグできてるよ。でもそれらはまだ笑えるからいい、なにあのNTR。俺さ、昔サークルの先輩に彼女取られたから、NTRだけはどうしてもダメだ。メイクデビュー頃から他の女と付き合ってたとか、下衆じゃん?浮気じゃん?裏切りじゃん?すげえドクズじゃん?一生懸命告白したのを振って、ジャーニーを結婚式に呼んでスピーチさせるとか、『人の心とかないんか?』案件だろ。そんなの知って、もしジャーニーが俺を振ったらもう生きていけない。俺はジャーニーしかいないのに…。グスッ、ジャーニー、ジャーニー…。」
長文詠唱した後泣き出したジャニトレ。
他のトレズは顔を見合わせて呆然としている。
「誰だ、義兄さんに酒飲ませたの」と杖。しれっと呼び名が義兄になっている。
「すいません、俺です。」とボス。酒の弱さにドン引きしている。
「あーあー、ガチで泣いてる。」とナカトレ。涙ダダ漏れ、欲もダダ漏れ。
「何か変な電波受信してね?」とゴルトレ。ゴルゴル星ならぬあにまん星からの電波かな?
「今連絡したから大丈夫だ、まもなく迎えがくるよ。」と方位磁針。一族の長の配偶者だけはある。
ジャニトレがひとしきり泣いて寝落ちした頃、慰労会場の扉がガラリと開かれた。
「お待たせいたしましたトレーナーさん。皆様にもご迷惑をおかけいたしました。」
満を持して登場したのはドリームジャーニー。潰れて寝ているジャニトレを介抱している。
「トレーナーさん、立てますか?」
「うーん…。」
大した量こそ飲んでないものの、下戸のジャニトレにはアルコールがまだ効いているようだ。
「…仕方ありませんね。ほら、しっかりとつかまって?」
体育座りでうずくまっているジャニトレの前に座り、自分の背におんぶするよう促すドリームジャーニー。
大の男を背負う小柄な美人という非常にシュールな絵面だが、笑う者は誰もいなかった。
「それで失礼いたします。皆様もどうぞよい夜を。」
ジャニトレを担いで微笑むドリームジャーニーを、一族のトレズは見送った。
「あーあ、これから飲み直しするかなあ。」
そう呟いた方位磁針。
だが時すでに遅し。
「おっと、もう会計は済ませたぞ。つれないな、せっかく愛する妻が迎えに来たっていうのに。さあ、いくらでもあんたの好きな髪を洗わせてやるさ。」
方位磁針はステイゴールドに捕獲されていった。
「オメー、ゴルシちゃんの胸が好きなんだって?胸襟を開いて話をしてやるよ!」
ゴルトレは麻袋に詰め込まれて回収されていった。
「私の目が好きだと、いくらでもヒリつくところを見せてやるよ。」
ナカトレはホルモン煮込みにつられて帰っていった。
「特別に余の太ももを堪能させてやる。ついてくるがよい。」
王の褒美を求めて杖は去っていった。
「ボス、よかったらこのピンクのワンピースを着たところを見てほしいであります。」
ボスは乙女まめちんと一緒に帰っていった。
そして誰もいなくなった。
⏰
話は少し前に遡る。黄金一族のウマ娘たちも、ドリオル姉妹の実家でパーティをしている。
「この盗聴器、スゲーよく聞こえるな!さすがゴッドママー!」
「ふふ、苦労して仕込んだ甲斐がありましたよ。」
「こ、こんなこと許されないであります!で、でも気になるであります…。」
「メノも乙女だなあ。じゃ、私たちも何が出てくるか楽しむか。」
「余も杖が何というか気になる。疾く聞かせるがよい。」
「さて、私の方位磁針は何というか。そろそろ佳境に入ったみたいだぞ。」
メノの乙女なところが好きというボス。
「ボス、本官のことを乙女とおっしゃってくださいましたか!嬉しいであります。」
「まめちん、だったら今度ピンクのワンピースでも着てやれよ。」
「ゴルシさんに言われなくてもそうするであります!」
尻発言はノイズで聞こえなかった、乙女パワー全開のフェノーメノ。大柄イケメンウマ娘が、フリフリ乙女衣装を着て恥じらう時しか得られない栄養素がある。
「あー、あいつ胸元って言ってるけどさ、本当はゴルシちゃんの胸が好き好き大好きなんだぜ!」
「ゴルシ、どれだけ理解してるんだよ。」
「だってよー、あいつ巨乳フェチだし。秘蔵フォルダに学園中のウマ娘の巨乳画像を溜め込んでるんだぜ?」
アウト中アウトなゴルシとゴルトレ。秘蔵フォルダの件は知らないふりしてやれ。
「ヒリつく時の目の輝き、か。案外詩人だな。」
「その瞳、アメジストみたいでとても素晴しいであります!」
「あいつにとっては宝石そのものなのかもな?」
案外満更でもなさそうなナカヤマフェスタ。人は恋すると詩人になるのさ。
「余の太もも、だと?痴れ者が!」
「おやおや。オルはそう言われて不愉快なのかい?」
「そういうことは余以外の誰にも聞かせてはならぬ!…誰もいないところならやぶさかではない。」
王は二人きりなら太ももについて語ってよいとの仰せ。桃のような太腿をむちむちしたい。
「ふうん、髪とは無難な答えに落ち着いたな。」
「意外そうですね、アネゴ。」
「まあ、あんなことやこんなことはいくら酒の席でも言えないからなあ。」
方位磁針の答えが今ひとつ納得できないステゴ。ガイドラインに抵触しそうなことは、二人きりでやってください。
そしてジャニトレの長文詠唱を聞いて、ジャーニーも、また。
「貴方は私のうなじがそんなにもお好きだったのですか?わかりました、これからアップスタイルの研究をして参りましょう。ですが、貴方もご存知の通り私の髪は豊かですから、結い上げるのに少々時間を要してしまいます。これからは貴方にお手伝いをお願いするとしましょうか。もちろん、嫌とはおっしゃいませんよね。…ふむ、後れ毛。ステージに立つ者として首回りはきちんと処理するのが嗜みでしたが、もう引退しますしそのままにしてみるのも一興かもしれません。そう、貴方が私を見る目は、いついかなる時も乾いていました。私が潤わせて差し上げますから少々お待ちください。NTR…?私が貴方を逃す訳ないじゃないですか。そんな芽が出た時点で速攻排除いたしますよ。何のために手紙からSNSまでチェックしていると思っているのですか?そもそも貴方と関わりのある女性の香りは全て把握しています。オルが昔、貴方から私の香りがすると嗅ぎ当てたでしょう?私でもそれくらいできますよ。時々知らない女性の香りがすることもありますが、おそらくそれは満員電車でつけられたもの。故意でなければそこまで追求致しません。何なら貴方が処理したことまでわかりますよ。特に、ウィナーズサークルで出迎えてくれた時の翌日は顕著ですよね。別に知りたくはないのですが、わかってしまうのですよ。それも男性であれば仕方のないこと。ですがもう我慢しなくても構いませんよ?クリスマスに両親への挨拶も済ませていますし、ようやく二人で同じ夢を見ることができますね。別に結婚は白衣装がなくてもできますよ?婚姻届は24時間受理してくれますから、何なら今すぐにでも役所に行きましょうか。おやおや、そんなにも泣いてしまって。本当にお可愛らしい人だ、早く迎えに行かなければ。」
ジャニトレに負けず劣らずの長文詠唱。スゴイ=オニアイ。
「ジ、ジャーニーさんがおかしいであります…。」
フェノーメノ、一族のウマ娘はみんな重いんや。
「ゴッドママー、ハッピーウエディング!ご祝儀に金箔焼きそば作ってやるからよ!」
ゴルシ、ソースの匂いがつくから式場での焼きそばはやめて差し上げろ。
「結婚式の日は降らねエ方に賭ける…!」
ナカヤマ、晴天に越したことはないけど、雨降って地固まるともいうし。
「解せぬ、姉上が魚類でも軟体動物でもない。本当に余の姉上か?」
某掲示板に毒されすぎな王。姉上はやればできる子だ余。
「ジャーニー、場所はここだぞ。気をつけて行ってこい。」
ステゴに場所を教えられて、すぐ立ち去ったドリームジャーニー。
「このまま盗み聞きするのもつまらないな、私たちも行くか。」
ステゴの言葉に全員同意するのであった。
⏰
ジャニトレを背負って走るドリームジャーニー。あっという間に彼の家に着いた。
「ほら、つきましたよ。鍵を出してください。」
だがジャニトレは動かない。ジャーニーの背中に抱きついたまま、うなじの魅力を満喫している。
「ジャーニーのうなじ、いい匂いがする…。」
いつもの香水とは違う甘い匂いがする、ジャーニー自身の香りなのか。
「うなじだけでいいのですか?他はいらない…と?」
「いや、いる!わかったよ…。」
まだおぼつかない足取りでジャーニーの背中から降り、鍵を開けて部屋に入った。
「お水飲みますか?」
「お願い。」
キッチンで汲んできたコップに入った水を手渡すドリームジャーニー。
それを一気に飲み干して言った。
「ジャーニー、結婚して。」
「…酔いが覚めてからおっしゃってください。」
ムードもへったくれもない酒の勢いでプロポーズとか、乙女の夢ブレイカーには違いない。
「もちろん言うよ、だけどすぐ言わないとジャーニーがどこかへいきそうで…。」
まるで子供のように縋り付くジャニトレ。
「…本当に情け無い、どうしようもない方ですね。そんな貴方なのですから、私がついていませんと。」
口調こそ辛辣ながら、とても嬉しそうなドリームジャーニー。
フサフサウマ耳は忙しなく動き、ウマ尻尾をしっかりとジャニトレの足に絡めている。
「どこへも行かない?」
「今日から貴方のそばにいますよ。これからも、ずっと…。」
それから二人は、甘い一夜の夢を見たのであった。