白銀樹を捨てた女   作:Aa_おにぎり

20 / 21
#20 地下に潜る日Ⅷ

支店長を集めて話をするキアステンは、そこで彼女達に己の提案を持ちかける。

 

「次に秘密警察。これに関しては現政権に反感を持っている連中を見つけ次第告発しろ。若しくは買収だ。ボロなんて金と謀略でのし上がった連中の肩を叩けば瓦礫が落ちてくる」

「そう簡単にできますか?」

「そこは各自に任せる。警察でもいい、同じ内務省管轄であれば秘密のベールに除き穴を開けられる」

 

まあ、お遊戯を嗜みたい中央の連中は多いのでは?と言うとドッと支店長達は笑う。

 

「それに政府から発注があれば、我々は利益を得られる。その利益で武器と船を買えばいい」

 

キアステンはそう言うと支店長達は理解した。

 

「なるほど…」

「それは良い」

 

しかしその提案に対し、支店長達は笑う。

 

「ふふっ、しかし会長もお人が悪い」

「ええ、政府からもらった給金で利敵行為をしようと言うのです。しかしこれほど痛快なこともありません」

 

その悪辣極まる提案に、それはそれは愉快に彼女達は笑う。

大まかな提案を受けた彼女達は、そこですぐに今後自分たちがどうするべきかを考える。

 

「そして政府も邪魔をしてくる。おそらく北部や中央の商会を南部に投入をしてくるだろう」

「分かりました。ほかの南部系の商会と会議を行います」

「私は商会の独占を嫌う氏族と相談をしましょう」

 

キアステンの懸念に支店長達は次々と対策を打ち始めると、そこで彼女は言う。

 

「私はキャメロットに行って向こうの商人に話をつけてくる。恐らく、まとめて買うだろうから輸送の準備を」

「了解しました」

「それから発注の際に技術者を要望してくるだろう」

「分かりました。腕の良い技師を集めましょう。幸い、技師は確保しています」

 

全員で今後の方針を固めると、次にキアステンは言う。

 

「それから我々はこれより密かに行動を行う。その為に必要な拠点や資材の調達を今後も任せたい」

「お任せを」

 

そしてこれから本格的に行われる利敵行為に際し、その為に必要な準備を遥か昔から行っていたステン商会。既に仕入れた狩猟用弾薬は国内の多数の拠点や商会の支店に納入されている。ここはいずれ抵抗拠点として使われる。

 

「情報を掴んだら我々も動く。カワウ傭兵団は通常通りの業務を行う予定だ」

「分かりました」

 

次々とキアステンは確認をしていくと、最後に彼女は言う。

 

「それから最後に、必ず生き延びなさい。死んでも秘密を守るのは最後の手段よ。オルクセンに逃げるなりして絶対生きて」

 

そう言うと、支店長達は驚きはしたものの、そのようなヘマはしないと心得ており、コツコツと準備を進めてきていた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

それから、支店長や商会長はそれぞれがするべき行動を起こした。

まずは商会。南部に本拠地を構える商会長達をアルトリアのホテルに招致し、北部や中部の大きな資本を持った商会が我々を排斥に来るだろうと説いた。

 

初めこそ怪訝に思われたが、黒エルフの放逐を噂で聞いていた彼女達は、フレンが想定した巨大資本を持った中部や北部の商会が、同じ商品の値段を異様に下げて販売を行う、ダンピングを行って我々の商会を潰しにかかるだろうとけし掛けると中小商社は顔を青くさせた。

少なくともティリオンやディアネンなどに拠点を構えている資本力のある商会はそれをやることができた。特に黒エルフの林業で木材を取り扱っていた商人はこの動きに強く反応を示した。自分たちの収入源が減っている間に激安価格で市場破壊をしに来るだろうと言う予測は容易に想像できたからだ。

 

「しかし対応はどうするべきか」

「簡単です。独占禁止法を用いて我々が連帯をして対抗をすれば良いこと。幸いにも労働力は北部や中部から来ます。我々は彼女らに林業を教えます。皆様は介入を防ぐためにご協力を願いたく」

 

フレンは商人達にひとしきり説明を終えると、帰り際に幾つかの木材取扱業者や運送業者を呼び止めた。そして彼女達に提案を持ちかける。

 

「貴女様の会社の買収させてもらえませんか?」

「…」

「無論、貴女の会社役員や従業員はそのまま。我々の子会社に入ってもらう形なのですが、いかがでしょうか?」

 

提案を持ちかけられた社長達は少し渋った様子を見せており、そこでフレンはすかさず切り札をちらつかせた。

 

「しかし…」

「実は内密でお願い致しますが、我々は政府より南部入植の際の資材発注を受注しておりまして…」

「…少し考えさせてください」

 

ほぼ答えの決まったような返答をもらうと、フレンは次々と製材所や防腐剤製造工場などをその傘下に収めていき、伐採から木材加工までを一般して行う製材レーンを構築。一気に拡大をして傘下に収めた。元々黒エルフ放逐で今後の原木出荷量が大きく減ってしまうことを危惧していた彼らは、政府からの大規模発注を前にフレンの仲間になることを決めたのだ。大工も多く囲い込み、釘や窓を仕入れる業者にも声をかけた。

 

買収される側も社長や役員、従業員はそのまま変わることはなく、上から指定された機材を更新時に使えと言う指令であったが、元々その機材を買っていたのが同じキャメロット製であったことからも大きな混乱もなく操業を続けられた。むしろ業績が悪いから買ってくれと懇願しにきた業者もいたほどであった。

 

 

 

ある者は商工省の支局に出向き、そこで商工省の役人に独占禁止法を持ち出して懸念を伝える。

 

「ふむ、お話は分かりました。しかし難しいですな。すでに入植を始めた地域にはティリオンに本社を置く商社もいますし…」

「…分かりました」

 

そこで支店長はその後役人に握手をして別れる時、役人は手に違和感を覚えて手のひらを見ると、キャメロットのクィド紙幣が握られていた。

 

「どうでしょうか?近くにおすすめの料亭があるのですが?」

「…いいですね、教えてもらえますか?」

 

役人はそこで場所を移して話の続きを聞いた。

 

 

 

ある者はとある南部の有力氏族の元を訪れた。

 

「分かった。我々の方も馴染みの店が消えてしまうのは困る。そうだな…街道整備の条例として地方税を増やそう」

「ありがとうございます」

「何、君たちにはいつも世話になっている。これからもよろしく頼むよ」

 

氏族長の中には無論、渋る者もいたが、そう言った方々達には良い酒と料理をもてなして懐柔した。或いは借用書を差し出した。

この国では、有力氏族は多くがその地域の統治者も兼ねており、中には商会に借金をしている街もあった。その為、彼女達は地方税を調整し、北側から来る物に対して増税。事実上の関税を設けた。

 

 

 

ある者は今時まだ珍しい電信を用いた連絡を受けて返答をした。

 

「分かりました。これから木材需要が高まりますので、我々から製材に関する技術者を派遣いたします」

 

商工省からの依頼を受け、技術者育成期間から教師役や生徒達が南部の入植地に派遣され、白エルフ達に指導を行う。

始めは聖地でもあるシルヴァン川の森に手を出すのかと怪訝に、特に中央出身の白エルフ達から見られたが、黒エルフ放逐の際に彼女達は備蓄していた筏のほぼ全てを川に流してしまっていて収入源が無くなったために渋々であったが、林業関係者の指導で鋸を持って木を切り始める。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

ティリオンや北部からの大規模資産を持つ企業に対し、南部の商会や商社は肩を組んで目に見えないスクラムを形成して北側からの攻撃を防ぐ。

入植者の多くはかつて農奴であった者や職にあぶれた者で、彼女達は政府より支給された元黒エルフの村々に次々と入植を始めるのだが…。

 

「なんだよ、壊れているじゃねえか!!」

 

馬車から降ろされた彼女達は文句を叫んだ。真新しい家が待っていると聞かされていた彼女達は、そこで随所で破壊された家や、完全に燃えてしまっていた家もあった。

 

「どうしろって言うのよ!?」

「家から直せって言うのか!」

 

ふざけるなと彼女達は叫んだところでツンツンと肩を叩いた者達。

 

「おーい、私らが家を直してやろうか?」

 

そう言って聞いてきたのは白エルフの大工達だ。入植をした白エルフ達に対し、彼女達は提案してきたのだ。

 

「え?でもお金なんて…」

「政府が無料で直してくれるってよ」

「え?じゃあお願いします!」

 

こんなやり取りがあり、集められた大工達は届き始めた資材も使って破壊された家の修復を始める。大量の大工を国中から招集し、高い給金を使って彼女達が次々と家を建てていく。

 

「ありがとう。家がなかった時はどうなるかと…」

「いやいや、家がないと大変だもんな」

 

白エルフ達は自分たちの家を治してくれた大工達に心からの感謝をしていた。

 

「でもどうして家に穴を掘っているのかしら?」

 

そこでシャベルを使って家の下に穴を掘っていた大工達に首を傾げる。するとその隣で大工は穴を掘っている訳を話す。

 

「家を修理するための材料を入れるためだよ。一々街に発注してたんじゃあ面倒だし」

 

そして地下に掘られた穴はかなり深く、床や天井はレンガで敷かれていき、壁はレンガや最新の建材である鉄筋コンクリートで塗り固められる。

丸々立て直した家は地面に穴を掘られて地下室を作ると、上はコンクリートで塗り固められ頑丈に作られ、その外側をレンガで積み上げられていく。

 

「まあ、なんて頑丈な家なのかしら?」

「大砲に撃たれたって壊れない頑丈な家だぜ?大人数も中に入れられる」

 

大工は自信満々に答えると、家を渡された氏族長となった白エルフは意気揚々と新しい家に家具を納入していく。

あらかじめ大工達は気前よく家具も作ってくれていたため、入植してきた者達はこの家を大切に使い始める。

 

「家主さん、地下にドアもつけて見たぜ?」

「まあなんで重たそう。開けられるのかしら?」

「ああ、泥棒対策で重くしているが、鍵があったら簡単だぜ?」

 

大工達はそう言うと、同じような家を黒エルフ達の家に次々と建てていく。政府からの支援で家は建てられているため、金が掛かろうと文句を言う者はいない。

 

「これは何をしているの?」

「畑道具を入れる古屋さ。ここら辺は山脈から雪崩があるから頑丈にしねえといけねえんでさ」

 

そう言い畑の中に共用の納屋を作り、それらもまたコンクリートやレンガで作られる。

山脈で光が遮られるはずの北側にまで窓があることを除けば、十分な広さを持った倉庫は多数の搬入された木材やセメントなどの資材置き場として早速利用されていく。

 

「こっちに木材を並べて、こっちには厩を作りましょう」

 

新たに入植をしてきた者達のために彼女達は懸命に作業にあたった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。