絶望を覗く男   作:こくとうまんじゅう

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まさかの出会い

 

 

草薙 凛side

 

 

 地獄。

 そう、あれからの3年を一言で表すなら、間違いなく『地獄』の一語に尽きる。

 

 あの鬼軍曹・月詠白鳳の言葉に嘘はなかった。

 毎朝20キロのランニング。最初は3キロ持たずにゲロを吐いてぶっ倒れ、白鳳に文字通り「引きずられて」グラウンドを回る羽目になった。だが、生きるための生存本能とは恐ろしいもので、1ヶ月も経つ頃には腹式呼吸をマスターし、2ヶ月目には文句を垂れつつも走り切れるようになっていた。7歳児の肉体の成長期、マジでバグってんじゃねぇの。

 

 そして午後からは机の上の第二の地獄。

 『高等化学』だの『量子物理学』だの、前世でもなんちゃって理系だった俺に理解できるわけがない……と言いたかったが、ここでまさかの前世の記憶がブースターになった。

 基礎的な化学式や物理の法則が頭に残っていたおかげで、白鳳が用意したクソ難解な参考書の内容が、パズルのピースがハマるように脳内に染み込んできたのだ。

 

 そして何より、その知識が頭に蓄積されるたびに、眠っていた俺の能力──『神叡支配』が産声を上げ始めた。

 

 最初はホテルのスプーンの金属組成をイメージして、形を少し歪ませるのが限界だった。

 それが今では──

 

「……よし、構成元素の再配置。炭素、鉄、クロム。結合構造の最適化──『神叡支配』」

 

 ホテルの机の上に置いた一本の鉄釘に指を触れる。

 一瞬、淡い光が走ったかと思うと、釘はぐにゃりと融解するように形を変え、数秒後には鋭利な「投げナイフ」へとその姿を変えていた。

 ただ形を変えただけじゃない。分子の結合を極限まで高め、ダイヤモンド並みの硬度を持たせた特製のナイフだ。

 

「ふぅ……。前はこれ一回で脳が焼けそうになってたけど、今はノータイムでいけるな」

 

 3年間の成果。俺の身体は引き締まり、まだ10歳児のちんちくりんではあるものの、目つきだけは修羅のそれになりつつあった。毎日『終焉の観測者』で自分の死体を見まくってたせいもある。精神年齢はもう30歳くらいにいってんじゃないか?

 

 そして『神叡支配』第二の能力、自身の作成したものを自在に操作する力を使ってナイフを自分の周りをくるくると回す。うん、いいね。最初は動かす方法すらわからなっかたのでかなり成長したなと思う

 

 そんな風に自分の成長に浸っていると、ガチャリとホテルの扉が開いた。

 よかった、今日は蹴破られなかった。一応防衛軍の予算で弁償はされたらしいけど、毎回心臓に悪いからな。

 

 入ってきたのは、いつも通り黒いロングコートを羽織った世界最強の男・月詠白鳳。

 彼は部屋に入るなり、俺が机の上に置いたナイフに目を留め、フッと口元を吊り上げた。

 

「おいガキ。ようやく3年経ったな」

 

「ああ。見ての通り、元素周期表は全部暗記したし、物質変換の基礎もバッチリだ。文句はねぇだろ、クソ師匠」

 

「口の減らねぇところだけは成長してねぇな」

 

 白鳳はズカズカと近づくと、俺の作ったナイフをひょいとつまみ上げた。指先で軽く力を込めると、パキィン!と小気味いい音がして、俺がガチガチに硬度を高めたはずのナイフが真っ二つに折れる。

 

「……あ」

 「硬度は悪くねぇが、分子の結合が均一じゃねぇ。根元に負荷がかかれば一発で折れるぞ。まぁ、3ヶ月のガキにしては上出来だ」

 

 折れたナイフをゴミのように机に放り投げ、白鳳はソファにどっかりと腰掛けた。

 

「約束通り、一応は弟子として認めてやる」

 「お、マジ?じゃあついに、あの『オーラ操作』とかいうカッコいいやつ教えてくれるのか!?」

 

 待ってました!これで俺も、剣を光らせたりビーム撃ったりできるわけだろ!?

 

「基礎の基礎はできたようだからな。ガキ。今日から『オーラ』の扱いを教えてやる」

「オーラ……! 待ってました!」

 

 ついに異能バトルものらしい展開が来たと、俺は目を輝かせる。

 白鳳は面倒くさそうにコーヒーを飲みながら、人差し指の先に銀色の光を灯した。

 

「いいか。オーラってのは、簡単に言えば『生命エネルギー』そのものだ。人間なら誰しもが持っているが、まともに出力できる奴は一握りしかいねぇ」

 

 白鳳の説明を要約すると、こうだ。

 オーラは肉体の強度、精神の強さ、そして異能の出力に直結する。オーラを高めればただのパンチが戦車を粉砕する一撃になり、敵の放つ異能に対する絶対的な防御壁にもなる。オーラは攻撃、守備力を向上させる以外に能力の質を高めたり、外部に放つことで光線を打つことが出来るようになるそうだ。他にも体全体に纏うことで気温等の環境状況を緩和したりするバリアを張ったり、目に蓄えることで相手の戦闘力オーラ量が見えたりする。

 そしてこの世界における強さの指標として、その総量や出力は数値(オーラ量)で表されることが多いらしい。

 

「お前みたいな特殊な異能持ちが、肉体が未熟なうちにオーラを練ると、異能の出力に肉体が耐えきれずに爆発四散する。だから俺は三年間、お前の肉体を徹底的に作り変えさせたんだよ」

「なるほど、あの地獄のマラソンは俺が自爆しないための体作りだったわけか……。珍しく師匠っぽい配慮じゃん」

「理屈が分かったならさっさと練れ。できなきゃ蹴るぞ」

「あんたまだ小学生の子供をけろうとしてる事に気づいてる?」

 

 白鳳の指導(という名の脅迫)のもと、俺は体内の奥底に眠る生命の光――オーラを、肉体の隅々へと循環させる感覚を掴んでいった。もともと地獄の基礎訓練で器(肉体)は完成していたため、俺のオーラは驚くほどスムーズに、そして爆発的に膨れ上がっていった。

 

「いい感じだな。まずそれを体に纏ってみろ。」

 

 血のように体にオーラを循環せせて体に纏ってみると俺の周りをなにか温かいものが包んでいる。これがオーラか

 

「戦闘力オーラ8000か。小学生が持つオーラとしては一級品だ。」

「それは訓練したかいがあったな。ちなみにあんたはどれくらいだ?」

「お前の1000億倍以上だな。まだまだ弱えな(笑)」

「うっさいぞ世界最強。あんたと比べたらそりゃ低いに決まってんだろ」

 

 こいつに男としての矜持は無いのか。小学生と強さ比べで勝ったとして、あんたの自尊心は満たされるのか?

そしてこれからの目標として戦闘力オーラ10000、【第一段階波動解放】と呼ばれるものに到達を目標に鍛錬をし直す

 

 

 

 

 

――さらに、三年が経過した。

 

 俺は十三歳になり、中学生……ではなく、まだ小学校の六年制の枠組みの中にいた。精神年齢はとっくに成人を超えているのに、ランドセルを背負わなきゃいけない苦行は続いている。

 

 だが、中身はもう「ガキ」なんてレベルじゃない。

 三年間で爆発的に成長した俺のオーラ総量は、今や8000万に達していた。

 

 世界最強である白鳳や、防衛軍の化け物たちに比べればまだまだヒヨッコかもしれないが、一般の能力者や並の候補生がひっくり返って絶叫するレベルの数値だ。13歳でオーラ8000万。未来視と物質支配を兼ね備えた俺は、すでにそこらの闇勢力なら一人で壊滅できるだけの「怪物の卵」と化していた。

 

 そんなある日の小学校、木の陰で日陰となったベンチの下でいつものように化学の参考書を読んでいると、突然カサリ、と頭上から木の葉の擦れる音が聞こえた。

 

 ランドセルをベンチの横に放り出し、白鳳から渡された分厚い『応用電磁気学』のページをめくっていた俺は、本から目を離さずにその「気配」を察知していた。

 

 ──誰か来る。

 

 13歳、小学6年生。精神年齢は三十路に突入しかけている男の、これが休み時間のリアルな過ごし方だ。

 周囲の子どもたち……いや、クラスメイトたちの「ねぇねぇ、昨日あのテレビ見たー?」なんて会話に話を合わせるのにも限界がある。子供の鋭い察知能力に気を遣うくらいなら、こうして校舎裏の特等席で一人、次なる『神叡支配』の応用プランを練っている方が何倍も有意義だった。

 

 だが、近づいてくるその気配は、明らかに他の小学生たちのそれとは違っていた。

 歩幅が一定で、重心のブレが一切ない。何より、俺の目に蓄えたオーラが、その少女の体内から漏れ出ている尋常ではない『光気』を捉えていた。

 

「見つけた! 君、いつもここに一人でいるよね?」

 

 頭上から降ってきたのは、鈴を転がすような、明るくて弾んだ声だった。

 

 本を閉じ、ゆっくりと顔を上げる。

 そこにいたのは、綺麗に整えられた茶髪を揺らし、特徴的なピンクの髪留めをパチリと光らせた一人の少女だった

 その容姿、そして何より彼女が宿している独特の気配に、俺の脳内にある知識と、これまで『終焉の観測者』で見てきた断片的な情報がガチリと噛み合った。

 

(……四季芦花……! まさか、こんな場所で彼女と出会うなんてな)

 

 彼女の名前は四季芦花、日本にある「八神柱」の一家である四季家の子供である。

 四季家は玄武、青龍、朱雀、白虎などの四神を信仰し、それらから力を分けてもらって戦うのが特徴である。あったことはないが地球防衛軍第二部隊隊長が四季家の当主だった気がする。

 

俺にとって四季家は未来を変えるために必要不可欠であり無理をしてでもコンタクトをとるべきだと思っている。

そのエビデンスは勿論『終焉の観測者』による未来視なのだが特に四季家の動向を注意深く見るようにしている。俺の予想だと恐らくここにこの世界の主人公が存在すると思われるからだ

 

 突然ではあるが、俺がこの世界をどのように考えているかを話したいと思う。

 俺は未来視で様々な未来を見てきたが、その中で必ず登場してくるグループがいくつか存在することが分かった。主に正義側で【地球防衛軍】、【幻想郷】、そして神々。悪側として【神王連】、【毒蟲】、【悪信教】などとなっている。こいつら全部世界壊せるんだけど、この中で最も世界の終焉をもたらすのは観測した限り一番に悪信教で二番目に神々である。まあ上記の悪側のリーダーやスポンサーが同じなためあまり変わらないが

 

 そしてこの神々ではあるが俺を転生させた唯一神という感じではなく、多くの種族うちの神なのだがこの世界の異変には基本あの集団が関係している。そんでこの地球にも勿論様々な神々が存在するのだが、その中で可愛い女性をたくさん引き連れたハーレム野郎いるな〜〜と思って見ていたらなんか銀髪高身長爽やかイケメンがいた。

 

 ちぇ、チーハー主人公かよ。おもんな。

と見つけたとき思ったけど観察を続けるとこの男結構男前だということが分かった。ボコボコになりながらも信念を貫き通すところとかかなりかっこいいのである。女だったら惚れてた自身がある。女にもなれるが

 

 

 この男を見た瞬間、俺はビビ〜〜ンと来た。

 

この世界は何かの創作物の世界なのかもしれない

 

 これが本当だとするとあの世界はアイツが中心として回っていると言っても過言ではない。なので俺の今後はできるだけこの少年少女の成長をサポートしていくことが今後の目標だ。

 

 ここで四季芦花が関係してくる。何とこの主人公たちの拠点というか実家が四季家なのだ。わーお。こんな偶然あってもいいのか?

 

 驚きを悟らせないよう、俺はできるだけ普通を装って小首を傾げた。

 

「……誰? 俺に何か用?」

 

「私は四季芦花! ずっと君のことが気になってたんだよね!」

 

 芦花は遠慮という言葉を知らないのか、トントンと軽い足取りで近づいてくると、俺が座っているベンチのすぐ隣に、当然のような顔をして腰掛けた。距離が近い。まだ幼いとは言え美少女にここまで肉薄されると前世の童貞メンタルがほんの少しだけ悲鳴を上げる。

 

「気になってたって、何がだよ。俺はただの目立たない読書好きの生徒だけど」

 

「うそおっしゃい!」

 

 芦花は悪戯っぽくニシシと笑うと、俺の持っている難難解な専門書を人差し指でツンツンと突いた。

 

「まず、小学生が読む本じゃないでしょ、それ! それにね、私の目は誤魔化せないよ? 君、すっごく上手に隠してるけど……とんでもない量のオーラを隠し持ってるでしょ!」

 

 その言葉に、俺の背中に一筋の冷や汗が流れた。

 

 オーラを抑えて自分のオーラを一般人並みにカモフラージュしていたはずだった。白鳳からすれば「まだまだ弱えな(笑)」と鼻で笑われるレベルとわいえ一般人なら腰を抜かして失神してしまう領域に達している。

 それを、天才である彼女は見抜いたというのか。やはり八神柱の血筋と才能はすごい

 

「……何のことだかさっぱり分からないな。俺はただ、静かに本を読みたいだけなんだけど」

 

「もー、つれないなぁ! いいじゃん、減るもんじゃないし! ねぇねぇ、君の名前は? なんていうの?」

 

 芦花は全く怯む様子もなく、むしろ「面白いおもちゃを見つけた」と言わんばかりに茶髪を揺らし身を乗り出してくる。その屈託のない笑顔と圧倒的なポジティブさに、俺は早くも気圧されかけていた。

 

 ここで完全に無視して逃げることもできる。だが、彼女ほどの存在とここで無下に縁を切るのも悪手な気がした。何より、俺が変えようとしている月詠琴歌の破滅の未来、そして魔王リオ・カムニバルとの戦いにおいて、彼女との接触は避けて通れない。

 

 ふぅ、と小さく溜息をつき、俺は本をランドセルに仕舞い込んだ。

 

「……草薙凛だ」

 

「リンくん! うん、かっこいい名前! よろしくね、リンくん!」

 

 芦花は弾むように笑うと、差し出してきた小さな手を俺の目の前で振った。

 

 

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