お前まさかそれだけじゃねえよな?
繰り返します。
エンディングの重篤なネタバレが含まれます。
崩落するホドと共にゆっくりと足場が降りていく。
瓦礫が落ちてこないのは
実際、どこからか落下してきたアッシュだけはその膜をくぐり抜けることが出来た。
俺と同じ、完全同位体だからなのだろう。
(アッシュ……)
すでに事切れているアッシュを抱きかかえ、物思いにふけっていると、眼の前で光が集まっていくのが見えた。
それはやがて、朧気な人形のような状態になり、なんだかこちらを見据えているようにも思えた。
「私の見た未来がわずかでも覆されるとは……」
脳内に声が響く。
この声の主はまさか……、ローレライ?
だとすると……、ローレライの解放には成功したんだろう。
おもわずほっとする。
だが、その次の言葉には俺はちょっと思うところがあった。
「驚嘆に値する……」
それだけ言って去ろうとするローレライ。
いや。
ちょっと待てよ。
「おいちょっと待てよ」
「……?」
「お前ローレライだろ?」
「然り……」
やっぱりローレライだった
だとすると話が違ってくるぞ。
「驚嘆に値する、って、要するに“びっくりした~”って事だろ?」
「………………まぁ」
「それだけかよ」
「え?」
「だから、それだけかよって」
「…………えぇ?」
ちょっと最近はこういう文句は控えめにしていた俺だったけど、今回ばかりは言わずにはいられなかった。
少し待てよお前と。
「お前
「な、なんかとは?」
「アッシュを生き返らせるとかさ……」
「そ、そんなこと出来ない……」
「つかえねー!」
「えっ……」
今、俺の精神は軟禁されていた長髪時代のものに戻っていた。
もうすぐ消えるから捨て鉢になっているとも言う。
「わざわざ出てきて何を言うかと思ったらびっくりした~って報告だけとかマジでうぜーんだけどお前!」
「い、いや……そう言われても……」
「別に礼を言われたくてやったわけじゃないんだけどさぁ? もっと何かあんだろ! ヴァン師匠から解放してくれてありがとね! とかよ! ありがとうごめんなさいは大事だぞお前!?」
「は……はい……す、すいません……」
俺はノリと勢いだけでローレライを気圧していた。
人間、その気になれば何でも出来るものである。
あ、俺、人間じゃなくてレプリカだった。
「まあアッシュを生き返らせられないのはいいよ? どうせこの後俺がアッシュと同化してビッグバン現象が起こってアッシュは蘇生されるんだろうから」
「く……詳しいな」
「は? お前サブイベントちゃんとやり込まない派? 全部やれよ、俺がエンディングで帰ってくるのがどれだけ絶望的かこれでもかってほど描写されてるんだから」
「とうとうレプリカジョークだけでなくメタネタまで使い始めたか……」
「うるせえ!」
もう破れかぶれである。
文句が言えれば何だってよかった。
メタネタだって言うさ。
「だからさ、アッシュは今はいいよ、うん。脇に置いとこう。重いし」
「よく死体をずっと抱えていられるものだとは思っていたが……」
「それ俺も思った」
実際重いしな。
こいつ68kgもあるんだぜ。
それをずっとお姫様だっこなんでだりーことやってられっかよ。
お前は生き返れるんだからいいだろ、と雑に足元に置くことにした。
「でだよ」
「まだ話は続くのか……」
「俺が消えるまでやるぞ。大体お前、俺等の完全同位体なんだろ? 散々そう言って呼びかけてきたもんな」
「そ……そうだな」
「だったらよ、少しくらい
「いや……? その……そんな……、出来るのかな……、ちょっとやったことないから……わかんない……」
「つっかえねーなー! もうちょっとやる気出してみせろよ! わかんないじゃなくてやってみる姿勢が大事だろ!?」
「えっ……あっ……は、はい……」
俺だってそうだったんだよ。
自分の頭で考えて、自分ができることをやってみる。
それが大事だって教わったんだよ。
何事もチャレンジだって。
そうじゃなきゃ変われないぞローレライ。
「そうだろ?」
「いや……私は変わろうとは特に……」
「変わらなきゃ! 駄目だろ! 今が変わるときだろ!」
「そ、そうなのかな……」
「だから俺に
「う、うーん……そうか……、えぇ、でも……ううん……」
「何迷ってんだよ! ほらなんかもう消えかけてきたぞ俺! 早くしろよ! このままじゃアッシュに吸収されて一巻の終わりだよ!」
あっ、今アッシュの指がピクッって動いた気がした!
やべーって!
このままだとビッグバン現象起きるって!
「なにグズグズしてんだよ屑が! それでもお前本当にローレライか!? もっと高尚なもんだと思ってたぜ!」
「混ざってる混ざってる、アッシュと混ざってる人格が」
「え!? 今完全に無意識だった……! やべーよもう危ねーよ! とっととしろ! 間に合わなくなっても知らんぞーっ!!」
このままじゃ俺がアッシュでアッシュが俺で……。
一つ分のひだまりに二人とも入っちまうって!
「そ、そうは言われても私もどうすればいいか……」
「なんかこう、波を送れ! 波を!」
「波!?」
「お前ローレライの鍵と宝珠を送ってきただろ!? それと似たような要領で分け与えることが出来るはずだ! 頑張れ頑張れやれば出来るって!」
「えっ、えーっ……。じゃ、じゃあ……波、波ーーっ!!」
「おおおお!? 言ってみるもんだな!? なんか漲ってきた! 生命力が!」
「私はなにか減衰するのを感じるのだが!?」
「気にすんな!」
実際消えかけていた手足に実体が戻ってくるのを感じる。
こう……不透明度のステータスバーをじっくり100%に戻しているような。
そんな感じで戻ってきている。
「お、おい……このままじゃ私が……」
「イケるイケる!」
「それは別のキャラの口癖だろう!?」
「ローレライのちょっといいとこ見てみたい! あそれ見ってみったい! 見ってみったい!!」
「う、うおおお! もうヤケだ! 波ぁーーっ!!」
「っしゃ来た来たぁ!!」
ローレライを完全に乗せることに成功した俺は、ローレライの波に包まれて視界がホワイトアウトした。
…………
……
…
「って事があったんだよ」
「お前マジか」
崩落したホドの瓦礫の山の上で俺とアッシュは雑談に興じていた。
アッシュは無事にビッグバン現象を起こし蘇生。
その時に消耗した
人間やろうと思えば何でも出来るもんだな。
あ、だから俺は人間じゃなくレプリカだった。
「お前……それヴァンと同じようなことしてないか?」
「失礼な事言うなよ、俺は師匠みたいに世界を壊そうとしたりなんかしねーっつーの」
「そもそもローレライを解放するのはプラネットストームの活性化を止めるためだったんだろう? お前が吸収したらヴァンと同じじゃねえか」
「いや、大丈夫だろ、多分」
「多分って……」
「レプリカ一体に使う
「まぁ……、障気も発生していないようだしな……」
「ほら」
「なにが“ほら”なんだ」
俺もアッシュも生き残って、ローレライも解放されて、障気の問題もなんとかなって。
万々歳じゃないか。
何がいけないんだ?
そう問いたいね、俺は。
「生きてるって素晴らしいなぁアッシュ!」
「あ、あぁ……。そもそもなんで俺が生き返ったんだ……?」
「そこんとこはサブイベントを網羅するかジェイドに聞いてくれ」
「丸投げか?」
どうでもいいじゃねーか細かいことなんて。
さあ凱旋だ!
大手を振ってみんなのもとに帰ろーぜ!!
◆
「というシナリオを考えたのですが、どうですかサフィール」
「ジェイド、貴方疲れているんですよ」
こうだったらいいなぁ。
そう思うでしょう?
サフィール。