仮面ライダージオウ×ディケイド in 僕のヒーローアカデミア 作:生成AIに書かせています
雄英高校体育祭の第1種目『障害物競走』は、誰もが予想だにしない、そしてあまりにも規格外な結末によって幕を閉じた。
突如として最終関門である地雷原の中央に現れた、漆黒の炎を纏う巨大な「鬼」の怪人――アナザー響鬼。プロヒーローたちの個性を一時的に掻き消すほどの怪音波を放った怪人は、光の当たり方で色を変えるマジョーラカラーの謎の戦士、仮面ライダーディケイドの手によって、猛烈な和太鼓の打撃戦の末に完全に浄化され、真っ白な塵となって虚空へ消え去った。
混乱と驚愕に陥ったスタジアムを置き去りにするようにして、最初にゴールゲートを潜り抜けたのは、相変わらず黒いライダースジャケットのポケットに両手を突っ込んだままの男――常盤門矢だった。
「な、何とかヴィランらしき不審者は、あの『常盤門矢』の手によって秘密裏に処理されたようです! しかし競技は競技! 狂乱の第1種目を制したのは、1年A組、常盤門矢ァァァッ!!!」
実況席のプレゼント・マイクの、どこか困惑の混じった絶叫がスタジアムに響き渡る。その声は普段の軽快さを欠き、何が起きたのかを必死に言葉で取り繕うとするプロの焦燥が滲んでいた。
続いてゴールインしたのは、右半身の氷を激しくきしませながら、信じられないものを見たような目で門矢の背中を睨みつける轟焦凍。そして、服を泥だらけにしながら、執念の匍匐前進で3位に滑り込んだ緑谷出久だった。出久の呼吸は完全に乱れ、地雷原での大爆発と、その直後に目撃した「世界のバグ」とも言える戦いの残像が、その脳裏を激しく支配していた。
「……ハッ、現像液どころか、フィルムのシャッター幕までイカれそうな騒ぎだったな。
この世界の光は、どうにも俺のカメラとは相性が悪い」
門矢は、スタジアムの中央に設置された巨大な液晶モニターを見上げ、ふんと鼻で笑った。画面には、1位の文字の横に彼の仏頂面が大きく映し出されている。
周囲の観客やプロヒーローたちは、彼が先ほど見せた「変身」と「戦闘能力」について、お互いに顔を見合わせながらひそひそと囁き合っていた。「あの少年は一体何者だ」「バックドラフトやシンリンカムイでもあんなヴィランの消し方はできないぞ」という戸惑いが、さざ波のように客席を浸食していく。
だが、真の狂乱はここからだった。
ステージ上に立った主審のミッドナイトが、鞭をピシャリと鳴らして第2種目の内容を発表したその瞬間、スタジアムの空気が一変する。
「第2種目――『騎馬戦』! そして、先ほどの障害物競走の順位に従って、各自にポイントが与えられます! すなわち……第1位のポイントは、1000万ポイントォォォッ!!!」
その宣言と同時に、数百人の生徒たちの視線が一斉に、文字通り「肉食獣のそれ」となって常盤門矢へと突き刺さった。
1000万。それを奪いさえすれば、他のどんな順位にいようとも、一撃でトップに躍り出ることができる。誰もが門矢を獲物として定め、その脳内で彼をハントするためのシミュレーションを開始していた。その殺気は、先ほどのヴィランの出現すら忘れさせるほどの熱量を持っていた。クラスメイトたちの目が、ギラギラとした野心の光を帯びて門矢を包囲する。
「おいおい……随分と大安売りされたな、俺の歴史も。たかが運動会のポイント一つで、これほど歪んだ目が集るとは」
門矢は、周囲から注がれる無数の殺気と羨望の入り混じった視線を浴びながらも、眉一つ動かさない。むしろ、面白そうに首の骨をパキリと鳴らした。世界中を敵に回すことなど、彼にとっては旅の日常茶飯事に過ぎないのだ。
彼の視線の先では、緑谷出久が周囲の人間から完全に距離を置かれ、絶望的な表情でガタガタと震えている。出久は門矢の持つ1000万の価値と、それに群がるであろうクラスメイトたちの脅威を正確に理解していた。「みんなが常盤くんを狙う……! でも、僕だってここで立ち止まるわけにはいかないんだ……!」と、出久は小さく拳を握り締め、己の内に宿るワン・フォー・オールの熱を確かめるように息を吐いた。
すぐ近くで爆豪勝己が「おい、コラ、常盤……! その1000万、俺がブチ殺して奪い取ってやるわ!」と手のひらから激しい火花を散らす向こう側で、轟焦凍は、自らの左手を見つめたまま、微動だにせず立ち尽くしていた。
『お前が憎んでいるのは、父親の個性か? それとも、その個性に振り回されて、自分の本当の音を見失っている、お前自身か?』
脳裏にこびりついて離れない、あの紫の戦士――門矢の声。
轟の心の中にある、分厚く冷徹な氷の壁には、確かに目に見えるほどの亀裂が入っていた。彼は自らのアイデンティティそのものを揺るがされ、激しい自己嫌悪と困惑の狭間で、息を詰まらせていた。
これまで信じて疑わなかった「親父の完全な否定」という目的が、門矢の言葉によって、ただの子供の我が儘のように切り捨てられたからだ。右半身から薄く立ち上る冷気が、彼の心の乱れを証明するように不規則に揺れていた。
「おい、半分男」
不意に、すぐ近くから声がした。振り返ると、いつの間にか門矢がすぐ横に立っていた。
ファインダーも覗かずに、二眼レフカメラのレンズを器用に布で拭いている。その仕草には、これから始まる壮絶な争奪戦を前にしているとは思えないほどの、不遜な余裕が満ちていた。
「そんなに自分の半分が気に入らないなら、いっそ残りの半分も凍らせちまったらどうだ?
ピントの合わないレンズをいつまでも抱えているのは、写真家に対する冒涜だぞ。お前が見ている景色は、最初から二重にブレている」
「……お前に、俺の何がわかる。俺はあの男の力を借りずに、俺自身の力だけでトップに立つ。
あの男を完全に否定するために、俺は右の力だけで勝つ」
轟の口調は冷徹だったが、その瞳の奥には、自分自身に言い聞かせるような焦燥の火が揺れていた。門矢の言葉の一つ一つが、彼の急所に鋭く突き刺さる。
「ハン。自分の力、ねえ。お前が使っているその氷の力だって、半分はあの男の血から流れてきたものだろう。
それを自分の力と言い張るあたり、随分と都合のいい現現像処理をしてるじゃないか。
お前が本当にあの男を否定したいなら、その血をすべて抜き替えてから言うんだな」
門矢はカメラを首に戻すと、フッと冷たい笑みを浮かべて轟を通り過ぎた。
「せいぜい、その歪んだカメラのままで俺を狙ってみせろ。1000万ポイントの価値が、お前たちのその安っぽい覚悟とやらに釣り合うかどうか、試してやる」
その言葉を残し、門矢は歩みを進める。轟はその背中をただ黙って見つめるしかなかった。奥歯を噛み締め、拳を血が滲むほどに握りしめる。「あの男の血……。俺は、俺は……!」心の中で渦巻く黒い感情が、彼の理性を内側から削り取っていくようだった。
チーム編成の時間、15分が瞬く間に過ぎていく。グラウンドのいたるところで、それぞれの「個性」の相性を考えた即席の騎馬が形成されていった。
爆豪勝己は圧倒的な攻撃力と機動力を求めて、芦戸三奈や切島鋭児郎、瀬呂範太を集めようとしたが、ここで門矢の動向がクラスの計算を狂わせる。
常盤門矢は誰ともチームを組もうとしなかった。
いや、彼にとってはチームを組むという概念そのものが不要だった。
門矢は、どこから調達してきたのか、1年A組のクラスメイトである峰田実と瀬呂範太を、自らのオーロラの力で強引に引き連れ、自身が騎手として天辺に君臨する歪な騎馬を形成していた。
峰田は「なんで俺が1000万の盾に! 死ぬ! ヴィランに殺される前にみんなに圧殺される!」と涙目で怯え、瀬呂は「おいおい、俺は爆豪に誘われてたんだけどな……。まあ、こいつと組めば確実に残れるかもだけど、心臓が持たねえよ」と苦笑いしながら足元を支えている。
さらに門矢は、近くを通りかかった佐藤砂藤をも強引に巻き込み、最低限の馬力を確保していた。
「おい、お前ら。しっかり支えろよ。俺のカメラに振動を伝えるな」
門矢はそう言って、ハチマキを額ではなく、右腕にラフに巻き付けた状態で、不敵に笑う。
「エリア内に散らばれ! 騎馬戦、スタートォォォッ!!」
プレゼント・マイクの合図と共に、グラウンドのいたるところで激しい砂煙が巻き起こった。
「さあ、来いよ。1000万が欲しいんだろ? 遠慮はいらない、まとめてかかってこい」
門矢の布陣を見た他の生徒たちは、一瞬の躊躇の後に一斉に牙を剥いた。
「常盤を殺せ!」と言わんばかりの勢いで、B組の塩崎茨の蔓が、徹刃切の刃が、そしてA組のクラスメイトたちの個性が門矢へと殺到する。
「常盤ァァァッ! その1000万、俺がもらうわァァァッッ!!!」
その包囲網を力任せにぶち破り、爆豪勝己の騎馬が、手のひらから凄まじい爆風を噴射しながら、一直線に門矢へと突進してきた。
「死ねやァ!」と叫びながら放たれるそのスピードと破壊力は、まさに走る重戦車そのもの。
爆豪の瞳には、門矢に対する激しい対抗心と、障害物競走で煮え湯を飲まされたことへの怒りが炎となって燃え盛っていた。
「うるさいな。少しは構図を考えろ。突っ込んでくるだけの写真なんて、素人でも撮れる」
門矢が右手を軽く前に突き出す。その瞬間、彼の前方に、目に見えない透明なオーロラのような障壁が展開された。
爆豪の放った最大級の爆発が障壁に直撃した瞬間、その凄まじい衝撃と熱量はすべて別の次元へと受け流され、スタジアムの上空へと虚しく逃げていった。門矢の騎馬には、そよ風ほどの衝撃すら届かない。
「チッ……! 弾かれたかよ……! クソが、何の個性だ!」
爆豪が着地と同時に激しく舌打ちをする。しかしその瞳は曇っていない。すぐさま「あの見えない壁は正面だけか? それとも全方位か?」と冷徹に門矢の障壁の特性を分析し始めていた。
爆豪の戦闘センスは伊達ではない。すぐさま切島に指示を出し、次の一手へ移行しようとする。
だが、その隙を突いて、別の方向から轟焦凍の騎馬が、静かに、しかし確実な殺気を伴って門矢の死角へと滑り込んできた。轟の騎馬は、飯田天哉の『エンジン』による爆発的な加速力を得て、一瞬で門矢の真横を捉えていた。
「常盤、お前のその余裕を、今度こそ凍らせる」
轟の右手が地面に触れた瞬間、グラウンドの土を完全に覆い尽くすほどの巨大な氷の波が、門矢の足元を狙って波打った。周囲の騎馬を巻き込みながら、絶対的な凍結の檻が門矢へと迫る。その氷は、障害物競走の時よりもさらに鋭く、容赦のない質量を持っていた。
だが、その時だった。
――チク、タク、チク、タク。
スタジアム全体の喧騒を切り裂くように、あまりにも重苦しく、不気味な「秒針の音」が、世界の底から響き渡った。
チク、タク……。
その音が響くたびに、スタジアムの光が歪み、色彩がセピア色へと退色していく。爆豪の放った爆風の火花が空中で静止し、轟の放った氷の先端が、尖った形のまま空気中で固まる。飛び散った砂煙、生徒たちの叫び声、観客の歓声、プレゼント・マイクの実況――そのすべてが、冷酷な漆黒の静寂へと沈んでいく。動いているのは、この理不尽な現象を知る者たちだけだった。
「フン……。やはり、この程度では我が王の渇きは癒えん。世界の歴史を真に塗り替えるには、歪みはさらに深く、激しく叩き割らねばならんな」
観客席の上部、空間が紫色の歪みと共に割れ、そこからタイムジャッカーの首領、スウォルツが再び姿を現した。彼の目には、先ほどのアナザー響鬼の敗北に対する怒りではなく、むしろ実験が成功しつつあることへの、冷酷な愉悦が宿っていた。
「父親を憎み、己の半身を拒絶する少年。あるいは、その圧倒的な力を前にしながら、ただ己の歴史を証明しようとする通りすがり。
この二つの歪みが最も激しく交差するこの場所こそ、新たな歴史を生み出す苗床にふさわしい。
天の道を往き、総てを司るはずの王の歴史を、ここに引き込もう」
スウォルツの手元で、またしても不気味な歯車を模したウォッチが起動する。それは、鋭く研ぎ澄まされた機械的な音声。
KABUTO!
アナザーウォッチが空間へと突き刺さる。
それは、かつて『仮面ライダーカブト』の世界において、天の道を往き、世界を支配しようとした選ばれし者――カブトの歴史を歪めて生み出された、異形の王の呪縛だった。
ゴオォォォォォォッ!!!
静止したグラウンドの泥から、漆黒の炎と共に現れたのは、全身が錆びついたような黒と深紅の外殻に覆われ、頭部には不気味に歪んだ巨大なカブトムシの角を掲げ、全身の装甲の隙間から不気味なエネルギーを発光させた怪人。
――アナザーカブト。
その姿は、かつて世界を脅かしたワームの王のようでもあり、その体からは、周囲の「時間の流れ」そのものを狂わせるような、圧倒的な歪みの波動が放たれていた。
「さあ、その神速の力で、この歪んだ世界のヒーローどもをすべて置き去りにしろ」
スウォルツが手を翻すと同時に、世界の時間が再び激しく動き出す。停止していた「チクタク」の音が、一気に現実の轟音へと引き戻された。
「――ぶ、ぶはっ!? ――え、またかよォォォッ!? 不審者出現だァァァッ!?」
時間が動き出した瞬間、プレゼント・マイクの実況が悲鳴へと変わった。グラウンドの中央、轟の氷の波のすぐ真横に、突如として出現した異形の怪人。
アナザーカブトは、出現と同時にその右手を腰の歪んだベルトへと伸ばした。
CLOCK UP!
その不気味な機械音声が響いた瞬間、アナザーカブトの姿が、スタジアムから完全に「消失」した。
「な……消え……!?」
轟が目を見開いた、その一瞬の出来事だった。
何の前触れもなく、轟の騎馬を支えていた飯田天哉や八百万百たちが、まるで見えない巨大な大槌で殴られたかのように、一瞬で四方へと吹き飛んだ。
「がはっ!?」「何、が……!」という短い悲鳴と共に、強固を誇った轟の騎馬が文字通り霧散する。轟自身も、何が起きたのか理解できないまま、地面を激しく転がり、土を噛んだ。
それだけではない。離れた場所にいた爆豪の騎馬も、緑谷の騎馬も、何一つ抵抗を許されないまま、一瞬にしてバラバラに破壊され、生徒たちが次々と地面に叩きつけられていく。
「何だこれはッ!? 姿が見えねえ! どこから攻撃されてんだ!?」
爆豪が地面に手をつき、周囲の空気を爆破しながら絶叫する。しかし、その爆風すらも、何者かによって一瞬で切り裂かれ、爆豪の胸に鋭い打撃が叩き込まれた。
「ぶふっ!」と空気を吐き出し、爆豪の身体がグラウンドを数メートルも滑る。彼の圧倒的な反射神経をもってしても、その「速度」には爪の先ほども追いつけない。
スタジアム全体が、目に見えない「死神」の蹂躙によって、一瞬で壊滅状態に陥っていく。
プロヒーローたちも何が起きているのか視認できず、ただグラウンドに次々と刻まれる見えない足跡と、吹き飛ぶ生徒たちの姿に愕然とするしかなかった。プロの誰もが、動くことすらできずにその光景に圧倒されていた。
「なるほど……クロックアップか。この世界の奴らの目じゃ、逆立ちしたって追いきれないわけだ」
その破壊の嵐の中心で、唯一、常盤門矢だけが冷静にその「不可視の軌跡」を目で追っていた。彼の腰には、既にマゼンタ色のネオディケイドライバーが装着されている。
門矢は、自身の右指の間に挟んだ一枚のカードを、一切の躊躇なくドライバーへと装填した。
ガシャコン!
KAMEN RIDE―― DECADE!
カシャリというシャッター音と共に、門矢の周囲に何枚もの次元のカードが重なり合い、彼は仮面ライダーディケイドへと変身を遂げた。さらに、彼はすぐさま別のカードを右手に滑り込ませる。
「だが、世界を司る男の力がそんなに軽いと思うなよ。おい、半分男。よく見ておけ。これが、世界を置き去りにする力だ」
門矢はカードをドライバーへと鋭く装填し、その両端を力強く押し込んだ。
KAMEN RIDE―― KABUTO!
ガシャン! という重厚な機械音と共に、ディケイドの全身に赤いカブトの装甲が重なり合う。だが、それはまだ分厚い「マスクドフォーム」の状態だった。門矢は腰のスイッチを模したトレイを引き、一気に押し戻す。
CAST OFF!
CHANGE BEETLE!
凄まじい空気圧と共に、全身の分厚い装甲が四方へと弾け飛んだ。それは周囲でうずくまっていた生徒たちを守る盾となり、アナザーカブトの不可視の突撃を僅かに阻害する。
装甲の下から現れたのは、スマートで、研ぎ澄まされた赤い一本角の戦士――仮面ライダーカブトの姿となったディケイドだった。
「クロックアップ」
門矢は腰のトレイの横にある、クロックアップ用のパッドを軽く叩いた。
CLOCK UP!
その瞬間、スタジアムのすべてが、再び「完全な静寂」へと沈んだ。
いや、静止したのではない。門矢の移動速度が、アナザーカブトと同じ「超高速の世界」へと突入したのだ。
空気中をゆっくりと流れる、爆豪の爆発の煙。飛び散った土砂が、まるで宇宙空間のように宙で静止している。その極限のスピードの世界の中で、ディケイドカブト(門矢)の目の前に、深紅のエネルギーの残光を引きずりながら迫り来るアナザーカブトの姿が、はっきりと映し出された。
ガキィィィィンッ!!!
ディケイドカブト(門矢)の放った鋭い回し蹴りと、アナザーカブトの拳が真っ向から激突する。超高速の世界の中で、二人の戦士による、常人には決して視認できない壮絶な打撃戦が始まった。
一秒にも満たない現実の時間の中で、数十、数百という拳と蹴りが交わされる。アナザーカブトの鋭い爪がディケイドの装甲を切り裂き、ディケイドの放つ重い打撃がアナザーカブトの外殻を砕いていく。
「グルルル……オォォォッ!!」
アナザーカブトは、その歴史の歪みによって得た凶暴な闘争本能を剥き出しにし、ディケイドをねじ伏せようと猛攻を仕掛ける。天の道を往く高潔さはなく、ただ周囲を蹂躙するためだけのスピードの暴力。
その超高速戦闘の衝撃波が、現実の時間軸にいる轟たちの足元を、目に見えない嵐となって何度も襲う。ドゴォ、ドゴォ、と、何もない空間から突然発生する衝撃破がグラウンドの土を削り取り、突風が巻き起こる。
「くっ……何が、何が起きている……!」
轟は地面に膝をついたまま、目に見えない衝撃で削られていくグラウンドの土を見つめていた。
あの門矢という男が、何か別の姿に変身した瞬間、世界の動きそのものが消えた。自分たちがどれほど強大な個性を誇ろうとも、あの男たちの領域には、指一本触れることすらできない。圧倒的な敗北感と、自分の無力さが、轟の心を冷たく締め付ける。
このままでは、あの怪人を止めることはおろか、自分の存在意義すらあの超高速の世界に置き去りにされてしまう。
「お前が拒絶しているその左側の炎は、本当にお前自身のものじゃないのか?」
脳裏に響く、門矢のあの冷徹な声。
親父の力。エンデヴァーの血。それが嫌で、それを否定したくて、これまで右側の氷だけを頑なに磨き上げてきた。だが、その結果がこれだ。あの超高速の化け物を前にして、自分の氷は何の役にも立たない。ただ静止した標本のように、世界に置き去りにされるだけだ。
「常盤くんの言う通りだよ、轟くん!」
不意に、少し離れた場所から、同じく満身創痍の緑谷出久の叫び声が響いた。出久は自身の足が震えるのを必死に抑えながら、見えない戦場に向かって、そして轟を睨みつけて叫んでいた。
その顔は泥と血で汚れ、お世辞にもヒーローらしいスマートさはなかったが、その瞳に宿る光だけは、この絶望的な状況でも一切曇っていなかった。
「君の力じゃないか……! 君の、君自信の力だろう!!! 誰の呪縛でもない、君がそこに立って、未来を掴むための力だ!!」
その出久の泥臭い、しかし真っ直ぐな叫びが、轟の脳内で、幼い頃に母親から言われた優しい言葉と完全に重なり合った。
『いいのよ、焦凍。お前は、お前になりたい自分になっていいのよ。あの人の敷いたレールを歩む必要なんてない。お前はお前だ……』
そうだ。俺は、あの男を喜ばせるためにここにいるんじゃない。俺が、俺自身の足で立ち、トップを掴むために、ここにいるんだ。この力は、あの男の道具じゃない。俺の、俺自身の身体に流れる、俺の炎だ!
その瞬間、轟焦凍の心の中にあった、頑なで分厚い「拒絶」の氷壁が、音を立てて完全に崩壊した。
ゴオォォォォォォッ!!!
スタジアムの空気を一瞬で灼熱へと変えるほどの、圧倒的な、臨場感に満ちた「炎」が、轟の左半身から爆発的に噴き出した。
それはエンデヴァーの放つ威圧的な暴力の炎ではない。轟焦凍という一人の人間が、自らの未来を掴み取るために解き放った、魂の叫びそのものの火炎だった。まばゆいばかりの赤とオレンジの烈火が、轟の身体を包み込み、周囲の地面を一瞬でガラス質に変えていく。
その凄まじい熱量は、空気の密度を急激に変え、スタジアム全体の空間を激しく歪ませた。激しい上昇気流が生まれ、熱気が陽炎となって世界を揺らす。
――その空間の歪み、急激な空気密度の変化は、超高速の世界(クロックアップ)を疾走していたアナザーカブトの足元に、決定的な「ブレ」を生じさせた。スピードの絶対領域といえど、物理的な空間そのものが熱によって激しく歪めば、その足場を狂わされるのは必然だった。
「……ハ、やっといい顔になったじゃないか。ブレていない、最高の構図だ」
超高速の世界の中で、アナザーカブトの足元が、轟の放った炎の熱気によって僅かに揺らぐのを、ディケイドカブト(門矢)は見逃さなかった。一瞬のよろめき。それは神速の世界においては、致命的な隙に他ならない。
門矢は腰のドライバーからカブトのカードを引き抜き、ディケイドの必殺技カードを滑り込ませた。
FINAL ATTACK RIDE―― KA・KA・KA・KABUTO!
ディケイドカブト(門矢)の右脚に、マゼンタ色と深紅のエネルギーが極限まで収束していく。
彼はアナザーカブトに向けて、静かに背を向けた。それは、かつて天の道を往った男が放った、最も美しく、最も冷徹な必殺の構え――カウンターの回し蹴りの予備動作。
「半分男、そのお前のくすぶっていた炎……悪くない」
アナザーカブトが、空間の歪みから体勢を立て直してディケイドへと飛びかかった、その瞬間。
「ライダーキック」
ディケイドカブト(門矢)の体が独楽のように鋭く回転し、その右脚から放たれたカウンターの必殺キック――ライダーキックが、アナザーカブトの胸のウォッチの紋章へと真っ向から突き刺さった。足の裏から放たれるタキオン粒子の波動が、アナザーカブトの肉体を内側から崩壊させていく。
ドゴオォォォォォォンッ!!!!!
CLOCK OVER――
その機械音声と共に、世界の時間が、爆発的な衝撃波を伴って現実の時間へと引き戻された。
「――が、ふはっ!? ――な、何が起きたんだァァァッ!?」
プレゼント・マイクの絶叫がスタジアムに響き渡る。
次の瞬間、グラウンドの中央で、巨大な深紅の爆炎が激しく巻き起こった。アナザーカブトの巨体が、ディケイドの必殺の一撃と、轟の放った純粋な炎の熱量の融合によって内側から完全に包まれ、その歪んだ歴史の残滓が、激しく破砕されていく。
「オォォォ……ア、ガ、ガハァァァァァッッ!!!!」
断末魔の叫びと共に、アナザーカブトの肉体は大炸裂し、その中心から、真っ二つに割れたアナザーウォッチが地面を転がって、空中できれいに塵へと変わった。
あとに残されたのは、邪悪な気配が完全に浄化され、ただ心地よい熱気だけが漂う、広大なグラウンドの跡地だけだった。
ザーーーという音と共に光の装甲が消滅し、元の黒いライダースジャケット姿の門矢へと戻る。
「これで、八つ、か。……いい写真が撮れたな」
門矢は、自身の左手を見つめながら、今までにない清々しい表情で立ち尽くしている轟焦凍の姿を、カシャリと一枚の「記録」に収めた。
轟の心の中にあった氷の壁は完全に消え去り、そこには自らの両足でしっかりと立ち、未来を見つめる一人の男の歴史が、確かに刻まれていた。
観客席のエンデヴァーは、自らの炎を受け入れた息子の姿に、複雑な表情を浮かべながらも、その視線を逸らすことができなかった。その瞳には、かつてないほどの激しい感情が渦巻いていた。
「おい、コラァ……! わけのわかんねえ化け物倒して満足してんじゃねえぞ、常盤ぁ!!」
遠くから、衣服をボロボロにした爆豪が、手のひらから小規模な爆発を何度も繰り返しながら、執念の目で門矢を睨みつけていた。
ハチマキは失われ、騎馬戦のポイントとしては壊滅的な状況であるにもかかわらず、その闘争心だけは、1ミリも衰えていなかった。むしろ、門矢という「壁」の高さに、彼の自尊心は狂おしいほどの歓喜を上げていた。
「ハッ、相変わらず元気な奴だ。だが、今日の撮影はここまでだ」
門矢はそう言って、グラウンドの端へと歩き出す。体育祭の第2種目『騎馬戦』は、この未曾有の混乱により、競技としての続行が不可能と判断され、波乱の幕引きとなった。
しかし、生徒たちの、特にA組の面々の心に刻まれたものは、単なる順位以上の何かだった。
雄英体育祭は、一人の「通りすがり」の呼び込んだ神速の光によって、原作の歪みをさらに広げながら、次なる激動のステージ――ガチンコの個人トーナメント戦へと向かって、その歴史を加速させていくのである。
すみませんが、Geminiがバグってしまい話の整合性がつかなくなってしまったので、ここで打ち切りエンドにします。