白尾エリの召喚事故   作:スルメスメル

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オカルト研究会

 

「す、すみません!お見苦しいものを見せちゃって……」

 

エリはウィザードハットを深く被り、赤面した顔で俯く。なかなかどうして、可愛らしいものだ。

 

「気にするな」

 

そう言ってやると、多少は恥ずかしさが消えていったのか、次第に落ち着きを取り戻していく。

 

すると、今度は上目遣いで問うてきた。

 

「あの、アノスさん。さっきのって、もしかしなくても……?」

 

「魔法だな」

 

俺がそう答えてやると、エリは身を乗り出す。

 

「……!やっぱり。それって、いったい何の魔法だったんですか?」

 

興味津々といった様子でエリが聞いてくる。

 

ふむ。しかし──

 

「特段、どういった魔法というほどのものでもないがな。ただ、お前の潜在能力を引き出せるようにしただけの即席の魔法だ」

 

そう。あれに関しては、その場で組み上げただけの魔法に過ぎぬ。その時のエリの状態に応じて最適の魔法を組んだ結果──出来上がったのが、あの魔法ということだ。名をつけるほどでもない。

 

「……そう、なんですか……?」

 

そう言うと、彼女はポカンとした表情で言った。

 

そんな時だった。

 

「ただいまー、先輩。言われてたもの、買ってきたわよ…………って」

 

室内に一人の少女が入ってきた。

 

そして、それに続くようにして二人の少女も同時に入室してきた。おそらくは先程、エリが言っていたルームメイト──いや、記憶がある。

 

根源の記憶を辿ると、それは同じオカルト研究会に所属するメンバーであり、それぞれの少女の名は板垣(いたがき)カノエ、(しい)()ツムギ、(きぬ)()レナという。

 

いずれも個性溢れるメンバーとのことだ。

 

そして、そんな少女達の顔が硬直する。

 

「……お客さん?」

 

真っ先に反応したのはレナだ。

 

俺の顔を見るや否や、彼女はそう呟く。だが──

 

「……でも、おかしいですね。この時間に来客予定はなかったはずですが……」

 

それを否定するように言ったのはツムギだ。

 

彼女は目を細め、俺を見つめる。そしてカノエもまた、ツムギと同様の反応を見せていた。

 

「あっ、カノエ先輩方。帰ってきたんですね、お帰りなさい!」

 

「……イヒッ。ただいま、エリちゃん。だけど、その人は……?」

 

警戒心を露わに、カノエは問うてきた。

 

当然の反応だろう。

 

買い出しに行き、帰ってくれば見知らぬ男が学院の寮にいたのだからな。無理もあるまい。

 

「……ふふんっ、よくぞ聞いてくれました!この人はですね……」

 

すると胸を張り、エリは答える。

 

「つい先程、魔導書で召喚した超常の存在──アノス・ヴォルディゴードさんです!」

 

「「「……は?」」」

 

間の抜けた声が場を支配する。

 

それから、どれほどの時が経ったであろうか。レナが再び、言いづらそうに言葉を紡いだ。

 

「……え、いや。先輩、ホントに大丈夫?何か変なのに騙されたりとかしてない……?」

 

「今回ばかりは本当ですよ、レナちゃん!では、その証明として本物の魔法を披露してもらいます。アノスさん、お願いしますね!」

 

「ふむ」

 

魔法を披露しろ、か。難しいことを言う。

 

そもそも魔法と一口にいっても、その種類は非常に多岐に渡る。そして俺の場合、使用できる魔法があまりにも膨大すぎて種類を絞りきれない。

 

であれば──

 

「逆に聞くが、どんな魔法を披露すればいい?」

 

「え?そ、そうですね……えーっと」

 

俺が問うと、エリはたじたじになる。

 

おそらくは何も考えていなかったのだろう。だが、そこでレナが鼻を鳴らして言った。

 

「先輩……というか、そもそも魔法なんてあるわけないじゃない!それこそ、この場をいきなりお花畑に変えられでもしない限りは……」

 

「では、それでいくか」

 

「「……えっ?」」

 

彼女達の素っ頓狂な声を尻目に、俺は多重魔法陣を描く。すると、そこから魔法の粉が大量に溢れ出し、部屋という部屋を粉塵で埋め尽くした。

 

「<界化粧虚構現実(ハイリヤム・ペーレーム)>」

 

発動したのは<界化粧虚構現実(ハイリヤム・ペーレーム)>。世界を思い通りに化粧する、粉塵世界の深層大魔法である。

 

「ゴホ、ゴホッ……ちょっとアンタ!いきなり部屋中、粉まみれにして何してくれてんの……よ……?」

 

そこでレナ達は気づく。

 

自分が立っている場所が先程までの部室ではなく、広大な花畑が広がる草原の中であることに。

 

一同が目を見開き、目を擦る。

 

まるで現実ではないものを目にしたかのような反応だ。これまで魔法に触れたことのない者の反応としては当然のものだろう。

 

「……なに、これ……」

 

「これは……」

 

自分の目を疑うかのような反応で、彼女達はしゃがみ込み、地面を撫でる。その地の感触は本物であり、そして頬を撫でる風もまた本物だった。

 

腰を抜かしたのか、レナは座り込んだ。

 

警戒心を露わにしていたカノエやツムギでさえ、その驚きを隠せず、思わず口を開いた。

 

「イ、イヒッ……?」

 

「……まさか、本当に……」

 

今の今まで平静を保っていた彼女達でさえ、こういった超常の現象には慣れていないのか、たじたじとした様子で、ただ呆然と立ち尽くしている。

 

「ひとまずはこんなところか」

 

そう言うと、全員の視線が集まる。

 

「──どうだ?俺が魔法を使えると、少しは信じる気になったか」

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