デュエル・マスターズ〜カジュアル勢の俺が引きだけでカードゲーム主義の世界を破壊しても良いんすか!?〜 作:社畜ヲタク
「いやはや、本当に危なかったね……。シールドを完全にゼロにされた時は、流石に心臓が止まるかと思ったよ。――だが、王者の戦いはここから逆転してこそだ!」
聖龍矢は興奮に身を任せながら、デッキのトップから魂を込めてカードを引き抜いた。
その手元からは、先ほどまでの完璧に統率された冷徹な覇気ではなく、純粋にデュエルを、勝負を楽しむ一人の少年としての熱い魔力が放射されていた。
「僕のターン、ドロー! ――マナチャージ! さあ、高咲クン、ここから一気に僕の相棒たちと共に逆転させてもらうよ!」
対面に立つ高咲コウは、自身の盤面のタップされたクリーチャーたちを見つめながら、全身の神経を研ぎ澄ませて身構えた。シールドをすべて叩き割ったとはいえ、相手はあの絶対王者。ただでターンを返してくれるはずがないことは、百も承知だった。
〜5ターン目:後攻(龍矢)〜
「5コストを支払い《王道の革命 ドギラゴン》を召喚!」
紅蓮の炎が吹き荒れ、バトルゾーンに真紅の装甲を纏った伝説のドラゴンを超えたドラゴン。ドギラゴンが姿を現した。
「ドギラゴンの登場時効果発動。山札の上から2枚をマナゾーンへと送り、その後、マナゾーンからカードを1枚手札へと回収する。――そして、このまま《王道の革命 ドギラゴン》で、高咲クンのシールドへ向けて攻撃を開始する!」
ドギラゴンが重厚な大剣を引き抜き、凄まじい熱風を巻き起こしながら突撃する。だが、その刃が届くよりも早く、龍矢は手札から次なるカードを天へと掲げた。
「攻撃の時『革命チェンジ』を発動! 《王道の革命 ドギラゴン》を限界突破させ――《蒼き団長 ドギラゴン剣(バスター)》へとチェンジ!! ――さらに!! 手札から『D・D・D』の宣言! 進化クリーチャー《剣轟の団長 ドギラゴン王道》の召喚を宣言する!!」
「ドギラゴンからドギラゴン剣へ、さらにその上へのチェンジからの進化だと……!?」
コウの瞳が驚愕に揺れる。
アリーナ全体が目も眩むような黄金と紅蓮の光に包まれた。バトルゾーンに現れた《蒼き団長 ドギラゴン剣》が、チェンジした刹那に全身を激しい業火で覆い尽くし、その身をさらなる伝説の姿――《剣轟の団長 ドギラゴン王道》の宣言を行ったのだ
「《蒼き団長 ドギラゴン剣》の『ファイナル革命』が発動! 手札またはマナゾーンからコスト6以下になるように多色クリーチャーを無料でバトルゾーンに出すことができる! 僕は手札から、先ほど手札に戻した《王道の革命 ドギラゴン》を再びバトルゾーンへノーコストで降臨させる! ――そして、コスト1を支払い、先ほどのドギラゴン剣の上に《剣轟の団長 ドギラゴン王道》の進化させる!!」
ゴオォォォッ!! と、アリーナの床が爆風でひび割れる。
王者の戦場に並び立つ、二体の巨大なドギラゴン。だが、聖龍矢の統率力はそこでは留まらない。
「さらに! 進化した《剣轟の団長 ドギラゴン王道》の効果発動! 自分のマナゾーンから《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》をバトルゾーンへと呼び戻す! ――そしてゾージアの登場時効果、『エクストライフ』により山札の上から1枚をシールド化!!」
龍矢のシールドゾーンに、再び強固な1枚の光の壁が蘇った。
聖龍矢のシールド(0枚→1枚)
「続けて、ゾージアのもう一つの登場時効果により、君のバトルゾーンにいるパワーがこのクリーチャー以下のクリーチャー――《シェケダン・ドメチアーレ》を確実に破壊させてもらうよ!」
ゾージアの掲げた聖槍から容赦のない断罪の光が放たれ、タップ状態だったコウの黄金の車型クリーチャーを直撃し、爆発四散させた。コウの最大打点とシビルカウントの核が、一瞬にして消し飛ばされる。
「守りを崩させてもらったよ。――さあ、このまま攻撃を続行だ! ドラゴンの中のドラゴンの力を宿した《剣轟の団長 ドギラゴン王道》で、高咲クンのシールドをT・ブレイク!!」
王道の巨剣が空間を断裂させながら、コウのシールドへと容赦なく振り下ろされた。バリン! バリン! バリン! と、激しい破壊音と共にコウの強固だった防壁が次々と砕け散る。
高咲コウのシールド(5枚→2枚)
コウは額から滝のような冷や汗を流しながらも、ブレイクされたシールドカードを手札に加えた。しかし、その手札に加わったカードのラインナップを確認した瞬間、コウの唇の端が、いつもの不敵な笑みの形へと小さく釣り上がった。
それを見た龍矢は、王者の本能でコウの不穏な空気を察知しながらも、攻撃の手を緩めることはしなかった。
「まだ攻撃の手は緩めないよ! 続いて、バトルゾーンに出た《王道の革命 ドギラゴン》で、残りのシールドへ攻撃だ! ――そして攻撃時に、もう一つの『革命チェンジ』を発動! ――《蒼き夢双 ドギラゴン天》へとチェンジする!!」
青く澄み渡る大気のエネルギーを纏った、新たなるドギラゴンが天空から舞い降りる。
だが、そのチェンジの光が弾けたまさにその瞬間、コウは手札のカードを激しくデュエル台へと叩きつけた。
「そのアタックの瞬間を、ずーーーっと待っていた!! 『ニンジャ・チェンジ5』発動!!」
「ニンジャ・チェンジだと……!?」龍矢の目が驚きに見開かれる。
「相手のクリーチャーが攻撃する時、自分のバトルゾーンにあるコスト5以上のメカ、またはシノビ・クリーチャー1体を自分の手札に戻すことで、手札にあるこのクリーチャーをコストを支払わずに文字通り入れ替える! ――俺は、タップされている《ドラン・ゴル・ゲルス》を手札に戻し、闇夜からこのシノビを呼び出す! 現れろ、《聖カオスマントラ》!!」
ドロンッ!! と紫煙が爆発し、龍矢の《蒼き夢双 ドギラゴン天》が革命チェンジを完了して着地したのと完全に同時のタイミングで、コウタの場には不気味なシノビの装束と、無数の魔鎖を身に纏った究極のシノビ《聖カオスマントラ》が、不気味な駆動音を響かせて影から躍り出た。
それを見た龍矢は、思わず声を上げて絶賛した。
「……見事だ! 僕の攻撃に合わせて、種族の特性を極限まで活かしたニンジャ・チェンジを仕掛けてくるとは! 本当に、君は僕の想像をどこまでも超えていく!」
「褒めてくれるのは嬉しいですが、この忍びの術は、ただ場に出るだけじゃ終わりませんよ!」
コウの背後に立つ《聖カオスマントラ》がその両腕を広げると、全身から放たれた無数の光の鎖が、龍矢のバトルゾーンに並ぶ強力なクリーチャーたちの巨躯を、一瞬にして雁搦めに縛り上げた。
「カオスマントラの登場時効果発動! 相手のバトルゾーンにある、すべてのクリーチャーを強制的にタップする!!」
ガキィン! ガキィン! と、龍矢の《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》も、進化したばかりの《剣轟の団長 ドギラゴン王道》も、完全に動きを封じられて横へと向けられた。
「さらに! 手札に戻された《ドラン・ゴル・ゲルス》が持っていた効果――『メガ・ラスト・バースト』が誘発する! 俺は手札に戻ったドラン・ゴル・ゲルスの呪文側――《豪龍の記憶》を発動する!!」
黄金の光が走り、彼のシールドゾーンへとカードが滑り込んだ。
「効果により、俺の山札の上から1枚を、シールドゾーンへと裏向きに追加する!」
高咲コウのシールド(2枚→3枚)
「――そして、この効果で追加されたシールドカードには、このターンの間、強力な【シールド・トリガー】の能力が強制的に付与される!!」
「なるほど、素晴らしいコンボ防御だ……! だが、僕の《蒼き夢双 ドギラゴン天》の攻撃は、すでに中止することはできない! たとえ全員がタップされようとも、通らせてもらうよ! ドギラゴン天のパワーと打点により、高咲クン、君の残り3枚のシールドを――すべて同時にブレイクだ!!」
ドギラゴン天の放った蒼き大気の一撃が、追加されたばかりの盾を含むコウの3枚のシールドを、容赦なく粉砕した。
高咲コウのシールド(3枚→0枚)
シールドは、これで完全に「0枚」となった。
アリーナ全体が、完全に静まり返る。すべての観客が、これで勝負が決まったのか、それとも何かがあるのかと、瞬きさえ忘れてバトルフィールドを凝視していた。
コウは静かに一つ、深く深呼吸をした。
そして、砕け散った3枚のカードを手札へと引き抜く。その指先が、今まさに《豪龍の記憶》によって【シールド・トリガー】を強制付与され、眩い白銀の後光を放ちながら発光している「ある一枚のカード」に触れた。
そのカードを手にした瞬間、コウの脳裏に、先ほど見た「この世界の高咲コウ」の、天音と共に笑い合っていた幼き日の記憶が、かつてないほどの激しい濁流となって五感すべてに融和していった。
(――ああ、わかっているさ。お前がずっと、この世界の底辺で燻りながらも、いつかまたあの日のように輝かせたいと願い続けていた、最高の相棒。……今こそ、世界に見せてやろうぜ)
その瞬間、観客席の最前列でデュエルを凝視していた天音の瞳が、驚愕に大きく見開かれた。彼女の視線の先、バトルフィールドに立つコウの背後に、まるで幻影のように、かつて公園で一緒に泥だらけになりながらデュエマをしていた、幼い頃のコウタの姿が重なって見えたからだ。
「あっ……あれは……確か……あいつが、ずっと大切にしていた……切り札……!」
天音の唇から、震えるような声が漏れ出す。
コウは不敵に、いや、かつての少年のような純粋な満面の笑みを浮かべ、その輝くカードをアリーナの天へと、高く、高く掲げた。
「さあ、行くぜ、相棒!」
(さあ、行こうか、相棒!)
二人のコウの声が、時空を超えて一つに重なり、アリーナ全体に響き渡る。
(現れろ、僕の相棒、《超絶の名 シャーロック》!!いや今は名を変え、こう呼ばれていたね!)
「今の世代における真の名前はこれだ!すべてを終わらせる俺の最高の相棒!! ――現れろ《神化計画完遂(アカシア・シャットダウン)》をシールドトリガーで召喚!!!」
ドドドド!!!! と、アリーナの全システムが一時的にショートするほどの、凄まじい地鳴りと共に、バトルフィールドの中央に10コスト、パワー23000という、神の如き風格と不気味さを纏った超絶ド級の巨大クリーチャーが降臨した。
そのあまりにも規格外な存在感と圧倒的なステータスに、アリーナの観客も、実況も、そして生徒会長・聖龍矢さえもが、声を失って驚愕した。
「パワー、23000だと……!? なんという弩級のクリーチャーだ……!」
そして、その巨大な神が、天を仰いでアリーナ全体を震わせるほどの凄まじい咆哮をあげた瞬間――聖龍矢が誇る、並び立つ伝説のドラゴンたちの身体に無数の亀裂が走り、一瞬にして爆散した。
「な……何が起こったんだ……っ!?」
龍矢は爆風に腕で顔を覆いながら、信じられないものを見るかのように自身の盤面を凝視した。
あれほど強固に並んでいた彼のドギラゴンの軍勢が消滅し、フィールドにかろうじて生き残ったのは、自身の身代わり効果により盾を身代わりにすることでギリギリ踏みとどまった《頂上連結 ロッド・ゾージア5th》と、自身の進化元であるカードを墓地へ送ることで辛うじて場に留まった《剣轟の団長 ドギラゴン王道》の、満身創痍の2体だけだった。
聖龍矢のシールド(1→0)
コウは《神化計画完遂(アカシア・シャットダウン)》の巨大な装甲の上に手を置き、驚愕する龍矢へと、静かにその圧倒的な効果を説明した。
「《神化計画完遂(アカシア・シャットダウン)》の登場時能力発動。 ――このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、この場に存在する〝メカ〟を持たないクリーチャーを……【すべて破壊】する」
「……すべての、クリーチャーを……破壊……」
龍矢はその絶大すぎる、王者の統率をも力技でねじ伏せる「神」の力に、ただただ圧倒されるしかなかった。
カオスマントラの鎖によってすでに全員がタップされ、さらにアカシア・シャットダウンの効果によって主力の大半を消し飛ばされた聖龍矢の盤面には、もはやコウのダイレクトアタックを阻止できるだけの、動けるクリーチャーはただの一体も残されていなかった。
龍矢は自身のバトルゾーンを見つめ、そして、どこまでも真っ直ぐに自分を打ち破ってきたコウの瞳を見て、ふっと、憑き物が落ちたかのような、最高に清々しい笑顔を浮かべた。
「……負けたよ。本当に、素晴らしいエンターテインメントだった。――僕はこれで、ターンエンド……だね」
〜6ターン目:先攻(コウ)〜
「聖先輩。あなたのような最高のデュエリストと、この舞台で戦えて……本当に楽しかったです」
コウはゆっくりとターンを始める。
「俺のターン、ドロー。 ――これで、本当に最後です」
コウは手札を置くことなく、バトルゾーンの中心で圧倒的な威容を放つ最大の相棒へと、力強く右手を突き出した。
「行くぞ、相棒!! 《神化計画完遂(アカシア・シャットダウン)》で――ダイレクト・アタックだ!!!」
巨大なメカがその神の鉄槌を振り下ろし、聖龍矢へと直撃した。
ピィィィーーーーーーーーーーッ!!!!!
アリーナ全体に、試合の完全な終了を告げる、重々しくも祝福に満ちたアラームの音が鳴り響く。
スクリーンの中心に、輝かしい文字が刻まれた。
『WINNER:高咲コウ』
静寂。
そして、一瞬のタイムラグののち――スタジアム全体の天井が吹き飛ぶのではないかと思われるほどの、凄まじい大歓声と拍手、絶賛の嵐が爆発した。
「勝った……! あの最底辺の高咲コウが、本当に生徒会長を破って優勝したぞ!!」「なんて熱いデュエルだ!」「最高の試合をありがとう!!」
騒がしいくらいに響き渡る、自分を祝福する何万もの声。
コウはそれらを全身に浴びながら、ただ純粋に大好きなデュエマで勝利を掴み取った、一人の少年のようなどこまでも無邪気な満面の笑顔を浮かべていた。
「パチ、パチ、パチ……」
その歓声の渦の中、正面から静かに拍手を送りながら、聖龍矢がコウの元へと歩み寄ってきた。
その美しい顔には、敗北の悔しさや王座を追われた陰りなど一微塵もなかった。ただ、ずっと縛られていた「完璧」という枷から解放され、心から大好きなゲームを楽しんだ少年そのものの、どこまでも晴れやかで眩しい笑顔があった。
「本当に、良いデュエルだったよ、高咲クン。……いや、コウ。君のおかげで、僕は僕の大切な原点を思い出すことができた。――ねえ、またいつか、僕と新しく、勝負をしてくれるかい?」
差し出された、王者の白い手。
コウはその手を力強く握り返し、あの日公園で笑い合っていた二人の子供たちのように、元気よく、大声で答えた。
「――はい! 先輩、こちらこそ、最高の対戦、ありがとうございました!!」
降り注ぐ光の粒子の中、二人のデュエリストの熱い握手が、この学園の新たな歴史の始まりを告げるかのように、どこまでも固く、結ばれていた。
ひとまず第1章終了になります!
今後第2章を書いていくつもりですので良ければ楽しんでいってください。
まだ執筆できていないので何時になるかは不明ですが
よろしくお願いいたします!