(まあ、婚姻を結ぶ式にもこれほどの種類が……同じ契約といっても、人々は様々な形態を望むのですね)
六角形の氷結晶が宙を舞い、ランプの光を乱反射する。騎空艇の自室で、エウロペはゆっくりと次のページをめくった。
鐘が鳴り紙吹雪が舞い、騎空団の皆が、ガブリエル様が微笑みの中見守っている。着飾った新郎新婦が愛を誓う。グランがゆっくりとエウロペの白いベールを持ち上げ、エウロペはグランに促されるまま唇を――。
(なんて素敵なのでしょう……ああ……グラン様、エウロペは想像するだけで、体が火照って……)
本をテーブルに置き、紅い頬を自身の両手で包みながら体を左右に震わせた。氷結晶が舞い部屋に降り積もるが、決して溶けることは無い。
数秒悩まし気な吐息をしたのち、はっとして本を持ち直す。
(いけません。私とグラン様の将来にかかわる大切なこと。読み進めなければなりません。白無垢というものもあるのですね。厳かな雰囲気での三三九度の儀式、きっと忘れられない思い出になるでしょう。ああ、どれにいたしましょう。いえ、いっそ全てをグラン様と共に……)
昨今婚姻の儀式の知識を熱心に積み上げているのは、団員多しと言えどエウロペぐらいのものかもしれない。
(……さて、知識を蓄えたならば、実践をせねばなりません。グラン様、エウロペは常に準備万端でご奉仕させていただきます)
立ち上がったかと思うとさらに氷が舞い、エウロペの目の前には自ら作り出した等身大グラン氷像が現れる。
エウロペは目をつむり、
『新婦エウロペ、新郎グランを妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?』
「はい、誓います」
『それでは、誓いのキスを』
グランの胸板にそっと手を添えて唇を近づけていく。二度目のキスは、二人にとって永遠の――。
「いけません。こんな、はしたない」
ギリギリで等身大グラン氷像から離れ、またも自身の両頬を両の手のひらで包んで体を左右に振った。振動でグラン氷像が倒れそうになったため慌てて指先一本で氷像を支え、丁寧に氷漬けの花束の横に置きなおす。
「はふぅ……申し訳ありませんグラン様。決してあなたとの口づけがいやなわけではないのです。しかし練習とはいえ……この感情はなんなのでしょう……」
羞恥か、罪悪か、あるいはもったいないからか。
(この二度目の口づけは、練習で消費してはならないような気がして……。人の世の慣習というものも、ままならないものなのですね……)
グランの氷像の頬を撫でながら心を落ち着け、読書に戻る。
(金銭、生活を共有し、将来設計を話し合う事。ふふ、きっと素敵な未来が待っている事でしょう。私とグラン様ならば…………ああ、またいけません。読み進めないと……これは……)
エウロペのページをめくる手が止まる。
(……家族……計画……子供をつくることについて、二人で話し合い……)
おとたーん、アルドラたーん、と、グランサイファー甲板中央で繰り広げられる朗らかな晴天の親子の鬼ごっこを、甲板後部デッキから見守る。
(人が持つ愛の形。家庭。グラン様もまた、父と母の元に生まれた子……。私も厳密には違うけれども、ゼウス様の元で……)
親が子を抱え、笑顔を向け合っている光景。
(もしグラン様が、そんな未来を描いているとしたら……)
星晶獣と人は、子をなすことができない。
(グラン様は私に様々な幸福を教えてくださいました。互いを知り合い、触れ合う事で得られる幸福。けれど……グラン様は……)
騎空団に迎えられ過ごしてきた中で、人の世を理解しはじめている。たとえ想いが通じ合い好き合った相手だとしても、望む未来の形が違うことはありえるということも。
(もし、もしグラン様がそれを望むのでしたら、エウロペは、その想いに、応える事が……あっ)
「グラン様っ」
見つめる先、ドラフの傭兵アギエルバとその娘アルドラにグランが歩み寄っていく。アルドラがグランに駆け寄り、グランがアルドラをたかいたかいして喜ばせる。
耳を澄ませて聞いてみる。
「よーグラン。お前も早く身を固めたらどーだ? 俺と出会ってからも結構経ったし、いいかげん、やきもきしてる女たちや大人たちを安心させてやらなあなぁ」
「ええっ? いやいや、僕にはまだ」
「だんちょーさんも、いつかはおとたんみたいに、おかたんみたいな人と、いっしょになるでしゅか?」
「ええっ!? まあ……そうだね。いつかは、そうしたいかな」
「おーおー。なんなら、騎空艇で身を固めて、子育てしたっていいんだぜ。アルドラたんも毎日楽しく過ごしてまちゅもんねー」
「ねー」
「あはは……」
グランがあいまいな返事をする中でも、彼がアルドラの頭を撫でながら抱える姿は、瞳に濃く焼き付いた。
(グラン様……)
イスタルシアにおけるグラン親子の再会の顛末は聞いた。
グランは何を思っているのだろう。グラン達から視界を外し、遥か彼方の空平線を見た。思考に言葉が浮かばない。ただ、両親の事を気恥ずかしそうに話してくれた、かつてのグランの映像が繰り返されていた。それをどれくらいしていたかはわからない。日が角度をつけていた。
「エウロペ?」
「!? グラン様……!?」
心配そうな顔をして、彼はすぐ傍にいた。
「やあ。その、思い詰めた顔してるように見えて……なにかあった?」
(ああ……グラン様はエウロペが思い悩めば、このように気にかけて……。私、喜びで溶けてしまいそう……けれど……)
「いえ……その……」
この悩みを共有していいのだろうか。いや、グランのことだからどんな悩みであろうと真摯に聞き、解決策を模索してくれるだろう。そう確信できる。しかし、
(もし、グラン様が……子供が欲しいのなら、私は……)
思考の中でこの悩みがどんな道を経ようと、行きつく先は二つに一つ。ある意味で結論が出ていた。
「だめ……言えません……ごめんなさい、グラン様。聞けないのです。申し訳ございません……」
「エウロペ……?」
グランの不安と戸惑いと、心配が伝わってくる。グランの優しさが伝わってくるのが、今は辛かった。
グランの前だというのに身を縮こませ怯えてしまう。もし自身が抱いている望みとグランの望みが符合しなかったら? グランが手を伸ばしているように見える。しかしグランが触れる前に、雪の結晶を多数舞わせながら、姿を消した。
エウロペ城は吹雪いていた。とある島の雪山の頂きに設けられた、エウロペが建造しグランへプレゼントしたエウロペ城。その屋上にエウロペはいる。
悩みは消えなかった。むしろ騎空艇でグランが女性たちと過ごすうち、とくにヒューマンの女性とグランが二人きりでいる光景をみるうちに、心の奥底でいたたまれない気持ちがどんどん沈殿していき、自室に戻っても自らが作ったグラン氷像を見ては目を反らし、また見つめ、目を反らすことを繰り返していた。
そしてふと騎空艇を抜け出して、もう何日にもなる。
(つがいを見つけ、子をなす。人だけではなく、生物として当然の欲求。星晶獣の私には無用の営みで、その機能すらありません。ですが、どうして……)
手をついた城の手すりに、氷の雫が落ちる。
(どうして、私は、夢想してしまうのでしょう。グラン様と結ばれ、暖かい家庭を作る。そのような未来、いくら私が望んだところで、私には、決して……!)
「エウロペ!」
「!? グラン様っ」
少し息を切らせたグランが目の前にいた。彼が騎空艇を飛ばし島に来てエウロペ城の屋上へ直行してきた、騎空艇から姿を消したエウロペを心配して探しに来たのだと、瞬時に理解した。ルリアとビィもおらずグラン一人ということは、それほど急いで駆け上がってきたのだろう。戸惑いが消え申し訳なさと喜びが去来する。
「心配したよ。やっぱりここにいたんだね」
「はい……ご心配おかけして、申し訳ございません……」
「!……いいんだよ」
落ち込んだ表情を見たからか、グランはすぐに優しく撫でるような声色で隣にきた。騎空団から突如姿を消す団員はたまにいる。客観的に見て、空をある程度自由に移動できるエウロペの場合なら、本来ここまで心配して探しにくることもなさそうに思えた。
だが実際はこの島まで騎空艇を飛ばしエウロペ城に入り屋上まで駆け上がり、無事を確認すると微笑みかけてくれている。
(理由を、離さなければなりません。様々な依頼でご多忙のグラン様が、私を心配してここまで来てくださったのは明白……そのご厚意に甘えて何も事情を話さずに何食わぬ顔をして戻る訳には参りません。ですが……)
エウロペは意を決してグランを見、言葉を紡ぐつもりだった。しかし、唇を少し開いただけで声が出ない。
(そん、な……だめ……私……怖くなってしまっている……? このような失態を演じたばかりなのに、今私の望みなどをグラン様にさらけ出したら、いえそもそも、私の望みは……)
伴侶となり、子を為す。しかし子を為すことはできない。そもそもグランが伴侶との子を望むのならば、エウロペの望みは決して――。
ぎゅっと、暖かい感触がした。左手がグランに握られている。
握られた手を見、ついでグランの優しい微笑みを見た。
「あの、こちらの手は……」
グランは少し恥ずかしそうに頭をかきながら、
「その、一緒にいたいからさ。お願い、しばらくこうしてもいい?」
「!……はい……!」
一緒にいたい。戸惑いと恐怖が消え嬉しさがこみ上げる。グランからすれば、エウロペが前回逃げたことがあるための行動でもあるだろう。しかし、
(申し訳ありませんグラン様……。エウロペは……単純でございます……)
ゆっくりしっかりと握り返し、火照った吐息をごまかすように首を引いて微笑む。
エウロペ城は雪山の頂にできた氷の城ではあるが、魔法の氷は固くも柔らかくもでき、暖かくもできて溶けることがない。屋上で二人手を握りあって体温を感じている時間も、グランの体調面の心配はいっさいない。
心地いい。
「大丈夫、そばにいるよ」
「……はい……」
(……私が話す準備が整うまで、辛抱強く待っていてくださるのですね……)
屋上から山下の町を見下ろした。吹雪が無い夕暮れで、群青色の空の星々が頭上から広がり、地上にも家々から点々とした灯りが現れ始めている。
どんなことから伝えればいいのか。道筋もゴールも見えないが、いつまでもこのままではいけないと思いスタートを切る。
「あの一つ一つの灯りの中で、人々は生活の営みをしているのですね」
「そうだね」
「グラン様も、旅に出られる前は、あのようになされていたのですか?」
「うん、ビィと一緒に。村の人たちと過ごしてたよ。毎日村の仕事を手伝ったり、いつか旅に出ようとルピを溜めたり、鍛錬したりしてた」
「……いつかはグラン様も、あのように一つの家で、暮らされるのでしょうか?」
グランは少し考えた後、
「どうだろう? そんな未来もあるかもしれないね。でもあるとしても、すごく先の話になると思う」
「そうですか……」
「……エウロペは、ちがう?」
「いいえ。私も今は、グラン様の旅の、夢のお手伝いをさせていただければと思います」
「ありがとう。僕もエウロペの夢を、全力で手伝うよ」
「私の……」
かつてエウロペ自身がグランに語った夢がある。グランはエウロペを見つめる。
「エウロペの、愛を伝えるっていう夢。すごく素敵だよね。星晶獣も人も種族も関係なく、お互いを思い認めあうことができれば、皆が手を取り合って幸せに暮らせる世界になる。すごく大きくて優しい夢だと思った。僕の騎空団みたいな生活が、世界に広がったら……きっと、エウロペなら叶えられる」
「グラン様……覚えていてくださったのですね……」
「忘れるわけないよ」
グランは麓の町へ視線を戻した。すっかり夜になり、家の灯が窓から漏れている。
「エウロペからこのお城をもらった時、最初は麓の人たちが不安がっていたし、僕もいきなりお城をもらうなんて、戸惑いがあった。けれど、エウロペが僕にどんな気持ちでこの城をプレゼントしてくれたのか知った時、絶対に受け取って、大事にしようって決めた。知らないから不安になることがあるし、誤解が生まれることもある。でも伝え合ったら、優しく温かい気持ちになれて、いい解決ができることもあると思う。エウロペ、もし伝えたいことがあったら、僕はいつでも準備ができてるよ。エウロペが……とても大切で、好きだから」
「…………」
エウロペが視線を少し上に向けると、湿り気を帯びた瞳の中で、星と月が瞬いていた。
「グラン様……私……申し訳ありません……」
迷惑をかけておきながら底なしの好意と慈愛を向けられ、嬉しさと申し訳なさと自身の未熟さを恥じる感情が、嵐のように心に吹き荒れる。
「……大丈夫」
グランが優しく頭を撫で、しばらく沈黙が流れた。
どうして忘れていたのだろう。グランはいつもこうなのだ。エウロペが困っている時、悩んでいる時は常に傍にいて、エウロペと共に前に進んでくれる。傍で支えてくれる。それを疑うことなどありえない。
「……グラン様の、お望みをお聞きしたかったのです」
「僕の望み?」
「はい。私は、人々は婚姻を結び、子を為すことが幸せの一つであると、愛の形であると学びました。グラン様もいずれ、そのような幸せを望まれているのでしょうか?」
グランは目をつぶり、真剣な表情で沈黙した。目を開き口も開く。
「……あまり真剣に考えたことがなかった。正直に答えるよ。まだ、わからない」
心の中にあった嵐が、少しだけ落ち着く。
「お答えいただき、ありがとうございます。私の疑問は、それだけでございました」
「エウロペは、そのことでずっと悩んでたんだね」
「はい。生きとし生ける物は子を為し、次代へとつなげるもの……グラン様のお望みもまたそうなのかと、一度疑問に思い、悩んでおりました」
グランは一度驚いたあと、真剣に思い悩む表情に変わり、頬が染まっていく。
「エウロペ……それって……」
「私は、星晶獣ですから……グラン様との子は……」
「……!」
グランはやっと本題の本質にたどり着いたようだった。
(伝えてしまった……グラン様も、お気づきに……)
それならもう、話してしまおうか。堰が切れたように、想いの言葉が流れていく。
「星晶獣と人は、子を為すことができません。グラン様を愛しております。グラン様の伴侶になりたい。けれど、生物が望む当たり前の望みに、エウロペは応える事ができません。その事実に直面した時に、もしグラン様が子供のいる家庭を望まれていたらと……そう想いが巡ったのです……」
「……そっか……」
言葉が走る。
「もちろん全てはグラン様のお望みが一番です。もし、もしグラン様が子供を望まれるのでしたら、エウロペは身を引いて」
「待って、エウロペ」
「!」
グランは両手でエウロペの片手を握り、少しだけ語気を強めた。
「ごめん、言葉を遮っちゃって。エウロペは、僕が将来子供を欲しいというなら、僕はエウロペの伴侶にならないと、そう、思ったんだね」
「……はい。子を為すことが、生き物のあるべき姿だと……」
「僕は、それが全部だとは思わない」
「……え」
グランの表情が、優しい微笑みに変わる。
「旅で出会った人たちの中にも、色んな愛の形があった。種族が違う人同士の恋って、そんなに珍しい事じゃないんだよ。もちろん同じ種族同士で子供を作るのは素敵なこと。でも、愛の形ってもっと自由だし、幸せの形だって自由だと思うんだ。養子をとるカップルも多いみたいだしね」
「……そうなの、ですか……? 私、てっきり婚姻のあと、子供をなすことが愛と幸せだとばかり……」
「そういう人も、確かに多いね。でも、なにより一番大切なのは、僕とエウロペの気持ちだと思う。僕はいつも自分の気持ちを大事にしてる。だから、エウロペも自分の気持ちに正直になって、大事にしてあげて」
「私自身の気持ちを、大事に……」
「種族の垣根を越えて、手を取り合って幸せになる世界。これからもエウロペの夢を、一緒に叶えていきたい」
「あ……!!」
グランは、ゆっくりと体を寄せた。
「エウロペの気持ちは、知ってる。ずっと伝えてもらってたから。だから、今度は僕の番だ。ありがとうエウロペ。僕の事を真剣に想って、悩んでくれて。僕は幸せだ」
距離を失くした二人に小雪が降りかかる。
グランは息を整え、表情を真剣に打ち直した。
「……愛してるエウロペ。僕の、伴侶になってほしい」
「っ……! もちろん、もちろんですグラン様。ですが、本当に、よろしいのでしょうか……?」
「いい。エウロペの望みを聞かせて」
「私の望みは……」
グランとエウロペの周囲から弾けるように雪が舞った。
「どうか私と、永遠の愛を誓っていただけないでしょうか。他の誰よりもグラン様の愛を、独り占めにしたいのです……」
「もちろんだよ、ありがとう」
「……!! グラン、様…………!!」
「そうだ、見てて。エウロペみたいに、うまくできるといいけど……!」
するとグランは指先に水の属性力を溜め始め、ウォーロックでつちかった魔力操作の技術を込め、グランは二つの小さな氷の指輪を慎重に生成していく。
グランの手のひらの中に作られた二つの氷の指輪。グランが作ったためひんやりと冷たそうだった。手を貸さないわけにはいかない。
「お任せください。二人での共同作業ですね……!」
グランの手の中の指輪に手を添え、魔力を込める。あくまで冷たさの改善と強度を保つだけの補強を施し、装飾はグランが作った指輪のまま。
「ありがとう……よ、よし」
グランも今になって顔を真っ赤にし、緊張している様子だった。指輪を持つ手が少し震えている。エウロペの左手の薬指へ、慎重にはめていく。
(ああ……本当に、こんな日が来るなんて……私、こんなに幸せで、よろしいのでしょうか……?)
婚約の証が薬指に光る。その左手でグランの手をとって、残る指輪をグランの薬指にはめる。婚約の儀式は為された。
グランの腕が婚約者の腰を抱き、二人の体の距離が再びなくなる。二人の口元だけが、言葉を交わすために、紙一枚の距離があった。
「私は、グラン様との子をなすことができません」
「かまわない。エウロペがそれでも不安なら、一緒に幸せの形を見つけよう。きっとそれも、幸せで楽しいよ」
「共に、命を終えることもできません」
「約束する。楽しくて、一緒になれてよかったって、永遠に想えるような二人の時間を作ってみせる」
「……私のすべてを包み込むように、愛してくださるのですね……。グラン様、私は今、この世界で一番の幸せ者です。エウロペは、あなたにすべてを捧げます。永遠の愛とご奉仕を約束いたします。愛しております、グラン様……ん……」
引き合うように唇が重なる。天空は星々が爛々と輝き、中空は小雪が暗闇を白く彩り、氷の城は蒼く輝く。氷の魔力が二人をつつみ、衣装がウエディングドレスとタキシードに変わる。
唇が離れた時、薄く目を開いて見つめ合う中、声は二人だけに聞こえていた。
「今夜、ずっと一緒にいてくれる?」
「はい。グラン様となら、今夜と言わず、いつまでも……」