傲慢の魔女『フラン』   作:オド・ラグナの対義語

20 / 36
しばらくはスバル視点でお送りします










『ユリウスは二度負ける』

「──なるほど。それが二つ目の『試験』からすごすご逃げ帰った理由なわけね」

 

「……辛辣っすね、姉様」

 

「やめなさい、その喋り方。そこで寝てる娘のお師匠様説が真実味を帯びるわよ」

 

「それはヤバいな。気を付ける」

 

 二層の『試験』から戻った俺たちは、四層の緑部屋の隣室にあたる空間で、先ほどまで『緑部屋』にいたラムと合流していた。

 

 集まったのは俺とラム、エミリア、ベアトリス、メィリィ、そして未だに床でのびているシャウラを含んだ六人だ。

 

 フランにも声はかけたが、「私は関係ないから」とタイゲタの書庫にこもったままだ。ユリウスと、アナスタシアの体を借りた襟ドナは、緑部屋のベッドで休んでいる。

 

 ちなみに、床でのびているシャウラを数に含めていいのか迷ったが、呼吸はしているし、時折もぞもぞと動いて寝言めいた声を漏らしているので、会議参加資格ぐらいはあることにした。

 

 魔法有識者の見立てでは、ユリウスは昏倒、アナスタシアの肉体は魔法の使いすぎによる疲弊。どちらも命に別状はない、という診断だった。

 

 だからこそ、こうして次の対策を練るために部屋を移したのだが、突破口は見えていなかった。

 

「聞くだに馬鹿げた試験官がいたみたいだけど……エミリア様だけは、そのお眼鏡に適ったのでしょう? 一人だけでも、二層の先を見てくることはできなかったの?」

 

「それは……」

 

「あ、そっか。私だけなら一層に上がれたのかも……できるかどうか、『棒振り』さんに聞いてみる……?」

 

「……いや、やめとこう。不機嫌なときに藪をつつきたくないし、仮にエミリアたん一人だけ上にいけるって言われても、あれだ。危ない」

 

「すごーく気を付けるわよ?」

 

「危ない」

「危ないわね」

「危ないかしら」

 

 エミリアの健気な決意に、俺とラムとベアトリスが同時に水を差した。

 

「ええ……そんなに?」

 

 現状、あのレイドという男を迂闊に刺激したくないのは本音だった。不機嫌なときに挑むのは、相手の実力を測る以前の問題だ。

 

「二層の『試験』がああだった以上、その先も安全とは限らない。エミリアたん一人だけいかせて、戻ってこられる保証がないんじゃな……」

 

「じゃあ、やっぱりみんなで『棒振り』さんを越えられるまで頑張る?」

 

「そうしたい、とこではあるんだが……」

 

 言葉に詰まった。最高戦力のエミリアだからこそ、どうにか認められた『試験』。それも条件を下げに下げた状態でだ。

 

 それ以外に打倒できる姿が浮かぶとすれば──やはり、ユリウスしかいない。

 

 もちろん、完膚なきまでに敗北し、打ち倒されたユリウスの姿は今も俺の記憶に焼き付いている。あの優雅で、気障で、いけ好かなくて、でも誰よりも騎士であろうとする男が、手も足も出ずに転がされていた。

 

「あいつ、凹みすぎなきゃいいけどな……」

 

「ユリウスのこと、心配?」

 

「心配はしてる。ただ、それだけで済む話でもないかな」

 

 児戯のように弄ばれ、挙句に騎士剣さえも折られて。

 

「代わりの剣は竜車に用意があったけど、そういう問題じゃねぇだろうしさ」

 

「剣は打ち直せばいい。ベティーには、その拘りはわからないかしら」

 

「ベア子だって、俺が作ってやったハンカチとか大事にしてくれてんだろ? それが破られたみたいな、それの上級版みたいな話だよ」

 

「……分からず屋なこと言って、悪かったのよ」

 

 ベアトリスの頭を撫でてやりながら、俺は息をついた。

 

 緑部屋で目覚めたあとにユリウスがどんな顔をするのか、なんと声をかければいいのか。その答えはまだ出ない。

 

 それに、気掛かりはユリウスだけじゃない。

 

 ユリウスとレイドの一騎打ちに割り込み、アナスタシアの肉体を間借りする形で限界を超えた魔法を使った襟ドナの行動も、整理しきれていなかった。

 

 襟ドナの話によれば、アナスタシアのゲートはスバルと似て非なる欠陥が存在するという。俺はシャマクさんの使いすぎでゲートをぶっ壊したが、アナスタシアは生まれつき外部からマナを取り込むことができない体質だったらしい。魔法を使うには、自前のオドを使うほかない。

 

 ──命を削る行為そのものだ。

 

「なんであいつはそうまでして、ユリウスを助けようとしたんだ?」

 

 計算高いあの人工精霊が、宿主の命を縮めてまでユリウスの身を案じた。義理か、責任か、それとももっと別の何かなのか。

 

 その理由は分からないまま、議論の矛先は再び二層の番人へと戻っていく。

 

「──アナスタシア様と、騎士ユリウスのことも心配だけど、今考えるべき問題は別にあるわね」

 

「あの試験官、『棒振り』のことだな」

 

「ええ。薄情なようだけど、ラムにとっては『試験』がどうなるのかの方が大事だもの。──それが越えられなければ、レムを取り戻す手段に届かない」

 

 ラムの言葉の裏側にある微かな焦りを、俺は感じていた。

 

 ラムは冷静だ。冷酷に見えるように、いつも状況を切り分ける。けれど、その冷静さの奥で、妹の存在だけがずっと火種みたいに燻っていることを、俺は知っている。

 

 着流しに隻眼、赤い髪に青い瞳。ラインハルト級かもしれない男。

 

 特徴を洗い出していくが、どうしても史実の人物像と目の前の男の印象が噛み合わない。

 

「あ、お兄さんたちちょっといい?」

 

「ん?」

 

「裸のお姉さん、そろそろ起きるみたいよお?」

 

 部屋の隅っこで、シャウラに膝を貸していたメィリィが手を上げた。

 

 シャウラはくねくねと身をよじりながらゆっくりと瞼を開け、俺を見るなりいつもの調子で抱きついてきた。

 

「お師様ぁ……独りにしないで……もう、寂しいのは、嫌ッス……」

 

「出鼻に切なくなるようなこと言うのやめろ! 本当は起きてんだろ、お前!」

 

「お師様の胸板の匂いで目覚める朝……あーし、幸せッス……」

 

「もう朝じゃねえし、匂いを吸うな!」

 

 いつもの賑やかなやり取りの中、ラムが静かな声で、シャウラが気絶する直前に目撃したはずの男の特徴を語りかけていく。

 

「そのとき、部屋の奥に現れる人影。それは、赤い長髪に青い瞳をし、異国の衣装を纏った風体の男……」

 

「ひやあああああ!!」

 

 肝心の場面に達した瞬間、シャウラが悲鳴を上げて俺に飛びついてきた。そのあまりの怯えように、俺は痛みを堪えながら問いかける。

 

「痛い痛い痛い! 思い出したのか!?」

 

「な、な、な、なんであいつがここにいるッスか! お師様たちが死んだって言ってくれてたのに! 生きてたッス! やっぱり殺しても死なない奴だったッス!」

 

「はあ!? お前、何を……」

 

 シャウラの絶叫の示す意味。

 

 四百年前を知る彼女が、その名を明確に口にした。

 

「『棒振り』! 『棒振り』レイドッス! あの鬼畜! 悪魔! またあーしの胸をズバズバ揉むために生きて帰ってきたんスよ──ー!」

 

 ──レイド・アストレア。

 

『賢者』が作り上げたこのプレアデス監視塔の、二層の番人。

 

 その正体が伝説の初代『剣聖』であるという確定の収穫を得て、俺はタイゲタの書庫へ向かった。

 

 四百年前を生きたフランなら、レイドに対する情報を持っているかもしれない。戦わせるという選択肢が取れるのか、取れないのか。それも含めて、確認しておきたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「よーう、フランさんや。ちょいとお時間よろしいでしょうかね」

 

 静まり返った大書庫の中。

 

 装丁の擦れる音を響かせながら、ひたすら義兄の本を探索しているフランの背中に、俺はできるだけ軽い声をかけた。

 

 相談の中身は軽くない。

 だからこそ、いきなり深刻な顔で近づくのは避けたかった。フランはフランで、四百年分の未練を抱えてこの書架と向き合っている。その横から、こちらの事情を押し付ける形にはしたくなかった。

 

「んー? なあに、フーちゃん。迷子の子猫みたいな顔しちゃってさ」

 

 振り返ったフランの紅い瞳が、サラサラとした金髪の隙間から、じっと俺の顔を見つめる。

 

 その唇にはいつものように悪戯っぽい笑みが浮かんでいた。けれど、その双眸だけは、こちらの真意を見透かすように細められている。

 

 言葉を交わしただけで、俺が雑談をしに来たわけではないと見抜かれていた。

 

「迷子の子猫って誰のことだよ。俺の見た目、どっちかっていうと荒野に取り残されて途方に暮れてる柴犬顔じゃない?」

 

「柴犬はもっと素直で可愛いよ。フーちゃんみたいな三白眼だと、荒野で獲物を見つけたあのー、なんだっけ、ソースの……あ、そうだ。ブルドックみたいな顔じゃない?」

 

「俺への評価が冬の朝並みに辛辣すぎる。その容赦のなさ、うちのラムといい勝負だぞ」

 

「それは光栄かな」

 

 にんまりと笑う彼女を見ながら、俺は困ったように頭を掻いた。ラムと同列の辛辣枠を、名誉職か何かみたいに受け取られても、こちらとしてはリアクションに困る。

 

 フランは指先で本の背表紙を一つなぞり、それから小首を傾げた。

 

「それで? 頼れるお姉さんに何か用? 疲れてるのなら、よしよしってなでなでくらいはしてあげようか?」

 

「魅力的なお申し出だけど、今ここで魔女の甘やかしを受け入れたら、人として色んな一線を踏み越えそうだから遠慮しとくわ」

 

「じゃあ、ぎゅーって抱きしめてあげるのは?」

 

「提案の方向性が完全に俺をダメにする方向で固定されてんの、何かの罠じゃないだろうな?」

 

「うん、罠だよ。フーちゃんがそのまま骨抜きになってくれたら可愛いなーって。引っかかってくれてもいいんだよ?」

 

「悪いな。今は罠にかかる側じゃなくて、罠を考える側でいたいお年頃なんだよ。これでも一応、色々背負ってるもんでね」

 

 軽口を挟みながら、俺はフランの前まで歩いていく。

 

 本棚に囲まれた空間は静かだった。遠くでページの擦れる音がしている。無数の死者の名前に囲まれていると思うと、どうしても肩に力が入る。そんな場所で、フランは一日中ずっと一人、義兄の名を探し続けているのだ。だからこそ、話は簡潔にするべきだった。

 

「で、ちょっと真面目な相談なんだけどさ」

 

「うん、聞いてあげる」

 

「二層にいるあのスケベ剣豪について、知ってることを聞きたい」

 

「スケベ剣豪」

 

「正式名称は初代『剣聖』レイド・アストレア。通称は『棒振り』。性格は最悪で、実力はもっと最悪。おまけに壊滅的な女好きで、箸一本で大の大人が吹っ飛ぶ化け物だ。なぁ、お伽噺に載ってる『英雄』の定義って、いつからあんなクソ野郎でもオッケーになったんだ?」

 

「だいたい合ってるね。アイツ、昔からあんな感じだよ」

 

「合ってんのかよ……」

 

 フランのあまりにもあっさりとした肯定に、逆にこっちの言葉が詰まる。

 

 だが、聞きたいことはまだある。

 

「で、もう一つ。念のため確認なんだが」

 

「うん」

 

「お前が二層に行って、レイドを叩き伏せるっていう選択肢は、取れるのか?」

 

 言いながら、自分でも答えは薄々分かっていた。

 

 それでも確認する必要はある。

 使える手札と使えない手札を、きちんと分けるために。

 

「エミリアたんは通れた。けど、全員が上に行くには、全員が個別に勝たなきゃいけない悪質なルールっぽい。ユリウスは負けた。俺なんか、挑む以前に箸の風圧だけで退場しそうだ。だから、お前に任せられるかどうか、聞くだけ聞いておきたかった」

 

「フーちゃん」

 

 静かに名前を呼ばれて、俺は口を閉じた。

 

 フランは、笑っていなかった。

 かといって怒っているわけでもない。ただ困ったように、その綺麗な眉を下げている。

 

 その表情を見た瞬間、答えはだいたい分かった。

 

「……やっぱり、駄目か」

 

「うん。ごめんね、フーちゃん。それは駄目」

 

「いや、謝るな。聞いたのは俺だ」

 

「私があそこに行ってあいつとやり合ったら、多分、本気一歩手前くらいの戦いになっちゃうんだよ。そうなったら、レイドを倒せるかどうか以前に、この塔が保たないと思うの」

 

 静かな声だった。

 

 冗談でも、大袈裟な脅しでもない。事実だけを置く声。

 

「あの馬鹿と私が本気で斬り合ったら、戦いの余波だけでプレアデス監視塔がきっともたない。そしたら、エミリアたちも、何より世界で一番死にやすいフーちゃん自身が危ない。だから、絶対に駄目だよ」

 

「……了解。選択肢から外す」

 

 期待感があっただけに、思わず嘆息してしまっている自分がいた。

 

 塔が壊れるなど荒唐無稽な話だ。普通なら聞き流せるかもしれない。けれど、目の前にいる少女は普通ではない。四百年を生きた魔女であり、あのラインハルトが警戒を隠さなかった存在なのだ。

 

 そのフランが、塔が保たないと言うならきっと本当に保たない。

 

 強力な味方に頼って突破する。

 そんな単純な手は、最初から取れなかったというだけの話だ。

 

「無茶を聞いた。悪かったな」

 

「ううん。私に聞きに来てくれたのは、ちょっとだけ嬉しいよ」

 

 フランは小さく笑った。いつものような甘ったるい笑みではない。少し切なげで、けれど俺を突き放さない笑みだった。

 

「でもね、フーちゃん。私が全部壊して道を作るのは、きっと違うんだよ。これは先生の作った試験で、あいつが試験官なんでしょ? だったら、壊すんじゃなくて、越えなきゃいけない」

 

「……なあ、ちょっと待て」

 

「ん?」

 

「前からさらっと言ってるけどさ。その先生って、誰のことだよ」

 

 俺の問いに、フランは本当に何でもないことのように首を傾げた。そのあまりの自然さに、逆に嫌な予感がした。

 

「エキドナだよ」

 

「…………」

 

「ベティを作った方のエキドナ。今アナスタシアさんの体を借りてる人工精霊の方じゃなくて、四百年前にいた本物の『強欲の魔女』」

 

「待て待て待て待て」

 

 俺は思わず両手を前に出した。

 

「お前の先生って、あのエキドナ!? 聖域で俺をお茶会に呼んで、やたらめったら知識欲をぶつけてきて、性格の悪さと好奇心を煮詰めたような、あの白髪の性悪魔女!」

 

「その説明だと、たぶん本人だね」

 

「たぶんじゃねぇよ! 本人確定だよ! なんでそんな、今日の晩飯はふかし芋でした、みたいな軽さで爆弾落とすんだよ!」

 

「だって聞かれたし」

 

「聞いたけど! 聞いた俺が悪かった気もしてきたけど!」

 

 俺は頭を抱えた。

 

 エキドナ。強欲の魔女。

 

 聖域で出会った、あの得体の知れない女。

 知識欲のためなら何でも覗き込み、何でも知ろうとしておぞましく笑う、白い魔女。

 

 そして、ベアトリスの創造主。

 よりにもよって、フランの言う「先生」が、あのエキドナだった。

 

「……いや、待て。そうなると、この塔の試験も、そのエキドナ絡みってことか?」

 

「うん。少なくとも、先生の趣味はだいぶ入ってると思うよ。あの人、性格悪いから」

 

「弟子がそれ言うのかよ」

 

「弟子だから言うんだよ。性格悪いけど、頭はすごく良い。頭はね」

 

「そこだけ二回言いたくなる気持ちは分かるけど、納得したくねぇ……!」

 

 思い返せば、納得できる部分は多い。悪趣味な試験。死者の記憶を収めた書庫。知りたくないものまで知識として突きつけてくるような残酷さ。どこを切っても、あの強欲の魔女の匂いがする。

 

 襟ドナしかり、ベア子しかり、なんだかエキドナの関係者が多い塔である。

 

「マジかよ……。道理で『試験』に既視感があったわけだ。この塔、フリューゲルだけじゃなくて、エキドナまで噛んでるのか。関係者の癖が強すぎるだろ」

 

「フーちゃんの周りも大概だけどね」

 

「否定はしないけど」

 

 俺は大きく息を吐いた。

 

 その事実は、レイド攻略の相談から少しだけ話を逸らした。けれど同時に、この塔の性質を考える上で、無視できない事実でもあった。

 

「つまり、お前はエキドナの弟子として、この試験の性格もある程度読めるってことか」

 

「読めるってほどじゃないよ。先生は私よりずっと頭が回るし、嫌がらせの精度も高いから」

 

「嫌がらせの精度って何だよ、嫌すぎる才能だな」

 

「でもだいたいの傾向は分かる。先生は意味のない仕掛けを作らない。どれだけ悪趣味でも、必ず何かを見ようとしてる。相手の力とか、心とか、選び方とか」

 

「……選び方」

 

「うん。だから、フーちゃん。先生の試験なら、ただ壊すだけじゃ答えにならない。壊したら壊せるかもしれないけど、それはきっと『越えた』ことにはならない」

 

 フランは、静かにそう言った。

 

「これは先生の作った試験で、レイドが試験官。だったら、あの馬鹿を倒すだけじゃなくて、あの馬鹿に何かを認めさせる必要があるんだと思う。レイドのバカのことだから、そんなことは考えてないだろうけど」

 

 その言葉は、妙に腑に落ちた。

 

「越えるって、あれをかよ……」

 

「あれを」

 

「要求されるレベルが鬼高すぎる。いや、相手は鬼じゃなくて初代『剣聖』だけどさ。どっちにしろ鬼だろ、あんなの」

 

「レイドに鬼なんて言ったら、アイツ、きっと大笑いするよ。鬼神とは飲み友達だったしね」

 

「笑いながら楽しそうに斬ってきそうなんだよなぁ、あいつ……」

 

 俺の苦い呻きに、フランは少しだけ肩を揺らした。

 

「あいつの弱点はね、ほぼ無いよ。まあ、強いて言えば女に弱いっちゃ弱いかもだけど……あれを弱点って呼んでいいかは微妙かなぁ」

 

「弱点っていうか、ただの性癖だな、あれは」

 

「うん。だから、基本的には頑張ってあいつに実力を認められるしかないんじゃないかな」

 

「認められる……?」

 

「あいつ、強い相手とか見どころがある相手にはちゃんと嬉しそうにするから。だから小細工より、真っ向から認めさせる方がまだ勝ち筋あるよ。先生が関わってる試験だし、楽な抜け道はないと思う。エキドナが意地悪なのはわかってるんだよね?」

 

 楽な抜け道はない。その言葉が胸に残る。

 

 俺の戦い方は、いつだって抜け道を探すことだった。正面から勝てない相手に、どうにかして泥を塗って爪を立てる。勝ち目のない盤面をこねくり回して、一手を探す。周囲を頼って、みんなで攻略する。

 

 そのやり方を否定されたわけではない。

 

 フランの顔に、俺を責める色はない。

 ただ、レイドという男と、エキドナという魔女を知る者として、使えない手と使える手を分けてくれているだけだ。

 

「ホントだったら、色々してあげたいんだけどね。フーちゃんがそんな顔してるの、見てて気分いいものじゃないし」

 

 そう言って、フランは自身の左手をローブの袖の陰へと隠した。

 

 俺の位置からは、その手の中に何があるのかは見えない。

 ただ、次の瞬間だった。

 

 パキリ。

 

 大書庫の静寂を破るように、硬い音が響いた。乾いた木枝が折れるのとは違う。もっと小さく、もっと密度のある何かが、一瞬で砕けたような音だった。

 

「フラン……? 今、何を──」

 

 言いかけて、俺の脳裏を、かつてプリステラでラインハルトから聞いた言葉が掠めた。

 

 目に見えない何かを握り締め、壊すという権能。規格外の『剣聖』でさえ警戒を隠さなかった、傲慢の魔女の力。まるで、本当にフランドール・スカーレットの『ありとあらゆるものを破壊する程度の能力』を持っているような。

 

 今の音は、それなのか。

 一体、彼女は何をその手の中で壊したのか。

 

 そう問いかけようとした俺の視線を、フランは何事もなかったかのような顔で受け止めた。

 

「ん? 何か聞こえた?」

 

「いや、聞こえたっていうか、明らかに何かが壊れるような……」

 

「気のせいだよ。フーちゃん、疲れてる顔してるし」

 

「雑に俺の過労のせいにすんなよな」

 

「じゃあ、疲れてるフーちゃんをぎゅーって抱きしめて回復させてあげようか?」

 

「だから、今それを受け入れたら人として色々負けそうだから遠慮しとくって!」

 

「負けちゃえばいいのに。フーちゃん、負け方はすごおく上手でしょ?」

 

「勝ち方が下手なだけだよ、ちくしょう!」

 

 フランはくすくすと小さく笑った。その笑みはいつものようにこちらをからかうものだったけれど、その奥にある心配の色までは隠しきれていなかった。

 

「フーちゃん」

 

 不意に、フランの声が少しだけ柔らかくなる。

 

「私は今、私の探し物で手一杯。だから、あの馬鹿の相手まではしてあげられない。……でもね、何もできないわけじゃないよ」

 

「何か、あるのか?」

 

「もしかしたら、この大書庫のどこかにレイドの『死者の書』でもあれば、本人が自分でも忘れてるような、くだらない癖ぐらいは見つかるかもね。もし見つけたら取っておくよ」

 

 それは、作戦と呼ぶには不確かだった。

 

 だが、情報としては意味がある。

 レイドが死者であるなら、ここに本がある可能性はある。そこから何かを拾えるかもしれない。

 

 フランはそこで、いつもの悪戯っぽい顔を取り戻してにやりと笑った。

 

「だから、フーちゃん。そんな顔しないの。まだ全部終わったわけじゃないでしょ?」

 

「……簡単に言ってくれるぜ、本当に」

 

「簡単じゃないことを、いつもやってるのがフーちゃんじゃん。なんとかなるよ。食料もあと一ヶ月分はあるんでしょ? 時間をかけられればフーちゃんならなんとかなる、フランが保証しちゃう」

 

 言い返せずに黙る俺の額を、フランの細い指が、ぴしりと軽く弾いた。

 

 痛くはなかった。

 ただ、情けなく俯きかけていた俺の顔を上げさせるには十分だった。

 

「ほら、行っておいで。騎士くん、たぶん今ごろ面倒くさい顔して起きてるよ」

 

「面倒くさい顔か。なんか想像つくな」

 

「男の子が自分の負け方を気にして、むさい顔してるとき。私は四百年の中で何回も見てきたから」

 

「四百年分の経験者面、説得力が重すぎるな……」

 

「年上のお姉さんの言うことは、素直に聞いておくものだよ?」

 

「見た目が完全に年下なのが本当にややこしいんだよな」

 

「失礼なフーちゃんには、あとでお仕置きが必要かもね」

 

「なんで励まされに来て処刑宣告されてんだ、俺は」

 

 フランは楽しそうに笑い、再び無数の書架へと向き直った。

 

 もう俺を見てはいない。

 彼女の細い指先が、また一冊、また一冊と、背表紙に刻まれた死者の名をなぞり始めていく。

 

 追及したいことはあった。

 今の袖口の異音のこと。

 ラインハルトが以前語ったフランの権能のこと。

 フランがここで何を隠しているのかということ。

 そして、彼女があまりにも自然に口にした「先生」──強欲の魔女エキドナとの関係。

 

 けれど、それは今の最優先ではない。

 

 胸の奥に残ったのは、袖の中で鳴った破砕音ではなく、彼女が何気なく落としていった言葉の方だった。

 

 ──レイドの『死者の書』。

 

 不確かな候補のひとつ。

 だが、候補は候補だ。

 

 何もないよりは、ずっといい。

 

 結局、フランから得られた収穫は、あいつが昔からああいう男だったということ。力任せに突破するのは難しいという確認。そして、この塔の試験には、やはり強欲の魔女エキドナの悪趣味な影があるらしいという、笑えない補足だった。

 

 あとは、レイドの『死者の書』があれば何か拾えるかもしれないという可能性。

 

 確実な作戦ではない。

 それでも、相手が初代『剣聖』であるという確証と、試験を正面から越える必要があるという視点は得られた。

 

 その確証を手に、俺はユリウスの眠る『緑部屋』へと向かった。ユリウスにだって、相手が『剣聖』の始祖なら、あの敗戦の受け止め方が少しは変わるかもしれない。

 

 そんな浅い期待を胸に抱いて、草のベッドが並ぶ緑部屋の扉を開けた、その瞬間──、

 

「──あの、馬鹿野郎」

 

 俺は押し殺した声を漏らした。

 ベッドのうち、レムと、アナスタシアの姿はある。

 

 だが、ユリウスが寝ていたはずの岩のベッドの上だけが空になっていた。そこにはただ、無惨に折れた彼の騎士剣だけが、ぽつんと残されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 長い階段を駆け上がって、辿り着いたときには、もう遅かった。

 

「────」

 

 呼吸を荒げ、焼けつくように痛む肺を酷使しながら、俺は声を絞り出そうとしていた。

 

 けれど、言葉は間に合わない。眼前には片袖を脱いだ赤毛の男。

 

 そして──躯のように転がる、紫髪の剣士の姿だった。

 

「よお、雑魚じゃねえか、オメエ」

 

 その光景に絶句する俺へ、気安く声をかけたのはレイド・アストレアだ。彼は息一つ乱さずに鮫のように笑い、打ち倒されているユリウスを指差した。

 

「遅かったな、オメエ。もう片付いちまったし、邪魔臭えからとっとと持って帰れ」

 

「……レイド・アストレア」

 

「ンだよ、オメエ。人の名前に探りなンぞ入れてンじゃねえぞ、オメエ。名乗らねえ方がカッコいいってオレのカッコつけの邪魔してくれてンじゃねえよ、オメエ」

 

 相変わらず的外れな言い草で不機嫌になる『棒振り』。俺はレイドから視線を外さないままユリウスのもとへ歩み寄り、その呼吸を確かめた。意識は喪失しているが、かすかに息はある。命は奪われていなかった。

 

「次は容赦しねぇって言ってたわりに、温情があるんだな」

 

「そうでもねえよ。オメエ、箸に殺されるより、箸に負けて逃げ帰る方がダサいと思わねえか? オレは思うぜ。そンな情けねえ姿晒すぐらいなら死ンだ方がマシだ。だから、箸で負かして、逃げ帰らせてやンよ」

 

「温情があるってのは撤回するぜ、クソ野郎」

 

「かっ! 雑魚に何言われても響きゃしねえよ。黙って担いで、負け惜しみでも言ってけよ」

 

 レイドが青い瞳を冷酷に細めて言い放つ。

 俺は倒れるユリウスを何とか担ぎ上げた。

 

 意識のない彼の身体は重く、俺より身長の高い彼を背負うのはかなり難儀だったが、ここに彼を一人残していく選択肢はなかった。

 

「──次はいい女の誰か連れてこいよ、オメエ。あの激マブでもいいぜ」

 

 最後までひらひらと手を振るレイドの悪ふざけに、俺は何も返せず、ユリウスを背負って二層をあとにした。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

「……はぁ、はぁ」

 

 一歩ずつ、一段ずつ、確かめるように踏みしめながら階段を下りていく。

 

 人を一人背負って、四百四十四段の大階段を下るのはきつい。馬鹿なことでも考えていないと、本当に足が止まりそうだった。

 

「──揺れる、ものだな」

 

「──ッ! 気付いたのか!」

 

 背中から届いた声に、俺は階下へ伸ばした足を止めた。

 

 ユリウスが身じろぎする。ここが階段の途中だと伝えると、彼は微かに息を抜くように、背中越しに笑った気配がした。

 

「道理で、乗り心地の悪いはずだ……」

 

「お前、振り落とされたいの?」

 

 やり取りが自暴自棄なものでなかったことに、俺は心底ホッとしていた。

 

 ユリウスは、自分が易々と敵に打ち倒され、迷惑をかけたことを情けなく思っているようだった。

 

 俺は階段下りを再開しながら、「あれ相手にボロ負けしたことを責めるほど悪魔じゃねぇよ」と呟いた。

 

「……アナスタシア様は、ご無事だろうか」

 

「命に別状はないよ。お前の方が出し抜けに死にかけたぐらいだ。あの眼帯野郎が誰だか知ったら驚くぞ」

 

「──レイド・アストレア」

 

 確信に満ちた声音に、俺は驚きに足を止めた。

 

 ユリウスは、炎の赤毛や青い瞳、図抜けた実力から、すでに相手の正体に気づいていたのだ。

 

 お伽噺の偉人が目の前にいる奇跡を喜ぶべきなのだろうが、実物のあまりのギャップに、彼は「心中、察する、か」と自嘲的に呟いた。

 

「金貨に彫られてる姿とも大違いだったな。あっちの方はもっとオッサンみたいで……」

 

「史実として、レイドが功績を挙げたのはもっと上の年齢だ。金貨の姿は正しい。上にいる彼は、史実より若いんだ」

 

「そういえば、レイドはシャウラに見覚えがなかったみたいだったな……しんどいのは間違いねぇな。けど、対策を練れば何かは見つかる。現に……」

 

「現に、なんだろうか、スバル」

 

 ユリウスに促され、俺は観念して告げた。

 

「……お前と、アナスタシアが倒れたあとに、エミリアが『試験』を突破した」

 

「────」

 

「とにかく、色々複雑な要素が絡み合った結果、エミリアは『試験』をクリアした。ただ、クリアした本人だけが通るのを許すって話で、俺たち全員が上にいくには全員が勝たなきゃいけないのは一緒……むしろ、悪質だ」

 

「────」

 

「なんで、作戦を練る必要がある。戦える面子はともかく、俺なんかはベアトリスとのコンビ戦を認めさせなきゃお話にもならねぇ。ルグニカ国王だった義兄の本を探す『傲慢の魔女』は不参加、メィリィはそもそも、『試験』に挑む理由がない。そのあたり、話し合いで納得……気が重いけどな」

 

「────」

 

「だから、その、お前も再戦すれば目がないわけじゃない。つっても、今回みたいなやり方じゃなくて、だ。もっときっちり、相手を見極めた上で傾向と対策を練っていく。今回ばかりは俺のスタイルに従って……」

 

 言いかけて、昼間にフランから聞いた言葉が脳裏をよぎる。

 

『小細工より、真っ向から認めさせる方がまだ勝ち筋あるよ』

 

 それでも、俺には俺のやり方しか思いつかない。

 

 正面から越える必要があるとしても、何も考えずに突っ込むのとは違う。見る。知る。試す。相手を少しでも理解する。

 

 それも、俺なりの戦い方のはずだ。

 

「──―」

 

「……おい、聞いてるか? ユーリウス、おい?」

 

 俺が話す間、ユリウスは長い沈黙の後、「そうか、エミリア様が」と微かに息を詰めた。

 

 そして、全て君の言う通りだ、越えられない障害ではないと分かったのは大きな収穫だ、と静かに言った。

 

 自分が躓いた障害を、誰かが先にクリアしたと知らされる。

 

 その事実に心を軋ませる心配など、彼には無用だったのだと、俺は彼の騎士としての格を自分の物差しで測ろうとしたことを少し恥じた。

 

「さて。そろそろ、下ろしてもらえるだろうか。君に『風除けの加護』はないようだからね」

 

「揺れと風は我慢して、ありがたく背負われておけよ。ケガ人に自分で歩かせるほど薄情者にはなれねぇ」

 

 俺はユリウスを背負い直した。

 

 彼の身体のダメージを思えば、無理をさせるわけにはいかない。だから残りの階段も下り切る覚悟を決めていたのだが、ユリウスは強硬だった。

 

「下ろしてくれ。二人に……特に、アナスタシア様にはこんな姿を見せるわけにはいかない」

 

「とってつけたようなこと言うな。そもそも……」

 

「──下ろしてくれと言っているだろう!」

 

 激発は、突然のことだった。

 

 強引に身をよじったユリウスのせいで、俺は階段の壁に肩からぶつかった。とっさに壁へ体を向けたせいで、ユリウスは俺の背中から落ち、いくらか階段を滑り落ちてしまった。

 

「言わんこっちゃねぇ! おい、そこにいろ、馬鹿。今いく……」

 

「こなくていい!」

 

 床に肘をつき、伸ばした手で俺を制止したユリウスは、壁に背を擦り付けるようにして、ゆっくり、ゆっくりと立ち上がった。

 

「一人で立つことぐらい、わけのないことだ。君の手を煩わせる必要はない。先に階下へ向かって、私が見つかったことだけ伝えてきてくれないだろうか」

 

 こちらに顔を向けず、壁に身体を預けながら、のろのろと独りで階段を下り始めるユリウス。

 

 遅々とした足取りでも、俺との距離は開いていく。

 

 彼がなぜ、勝てないと分かっていて独りで挑み、そして今また独りで歩こうとするのか。その腹の底にある激情の理由は、俺には痛いほど分かった。

 

 いつかの王城の練兵場で、ユリウスに勝てないと分かっていて挑みかかり、何もかもが終わったあの場所で、決別の末に独りになって泣きたかった、あの時の俺と同じだったからだ。

 

 ──だから、ユリウスをこの階段に、独りきりにしてやるものか。

 

「──ッ! ああ、クソ! 馬鹿野郎! 俺もお前も、大馬鹿野郎だ!」

 

 苛立たしげに吐き捨てて階段を蹴り、俺はユリウスの左腕を掴むと、乱暴に肩を組んで彼の身体を支えた。

 

「な……スバル、何のつもり……」

 

「うるせぇ! へっぴり腰なのが丸見えなんだよ! そんな奴を置いてさっさといけなんて飲めるわけねぇだろ! 本気で俺の力なんか借りたくねぇなら、俺が我慢できなくなるような情けねぇ格好でふらふら歩いてんじゃねぇ!」

 

 怒鳴りつける俺に、ユリウスは押し黙り、やがて抵抗する力を失った。

 

 俺は無理やり肩を貸したまま、再び歩き出す。

 

「今、お前が一人でこの長ったらしい階段を、独りっきりで歩いて下りる必要なんかねぇんだ。肩ぐらい貸してやるし、貸しだとも思わない」

 

 貸し借りの話なんて馬鹿げている。

 

 俺がどれだけ彼に借りがあると思っているんだ。

 

 腹の底が、あの時と同じように熱かった。

 

「……すまない」

 

「うるせぇ」

 

 八つ当たり気味に答えながら、俺たちは二人でゆっくりと階段を下り、四層へと戻っていった。

 

 エミリアが俺たちを見つけて安堵の表情を浮かべたのは、それから十数分後のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ユリウスを見送り、俺は小さく息を吐き出す。

 結局、仕切り直して再開したレイド攻略会議でも、決定打は出なかった。

 

『緑部屋』で休息をとるユリウスの傷が癒えるまでに『試験』の突破方法を見つけ出そうとも思ったが、シャウラから新たな情報が出てくることもなく。強いて有用な意見だと言えそうなのは、『棒振り』を本気にさせないために楽しませつつ、その上で負かすという方向性。

 

 具体的な案はまだない。

 

 シャウラの頬いっぱいに食べ物を詰め込む姿や、エミリアとメィリィのやり取りなど、少し気が緩む場面があった。空腹という最高のスパイスも相まって、エミリアたんが作ってくれた料理はとーっても美味しかった。

 

 けれど、それが俺たちの状況を変えてくれるわけではない。飲み込む食事は、いつもより喉に残った。

 

 夜、俺は四層の『緑部屋』へと足を運び、静かに眠り続けるレムの傍らに座っていた。大きな岩のベッドの上、微動だにしないレムの横顔を見つめながら、考える。

 

 脳裏をよぎるのは、先刻ラムが見せた、あの押し殺した焦りの表情。

 そして、それに応えるように、昼間にタイゲタの書庫でフランが残した助言が、何度も思い出される。

 

『もしかしたら、この大書庫のどこかにレイドの『死者の書』でもあれば、本人が自分でも忘れてるような、くだらない癖ぐらいは見つかるかもね』

 

 ──死者の書。

 

 過去を手繰り、故人の記憶を追体験する書。

 

 今の状況を動かすための材料が、あの書架の海のどこかに眠っているのだとしたら、俺は──。

 

 折れてしまったユリウスの剣。

 残り一か月も持たなそうな食料。

 レムの細く静かな寝息。

 そして、レイドの名が刻まれた本が存在するかもしれないという可能性。

 

 それらが頭の中で混ざり合い、答えの出ない考えをめぐらせていくうちに、俺は引きずり込まれるように、いつしか深い眠りに落ちていた。

 

 ──その安息の先に、さらなる奈落の夜が待ち受けているとも知らずに。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。