転生したら月読アイだった件 ―なお世界はデビルサバイバー2で、相棒は拳で戦う女神アルテミスです― 作:宇迦之たま猫
目が覚めた瞬間、まず思ったのは。
「……天井が知らねぇ」
だった。
白い天井。
無機質な照明。
少し硬いベッド。
枕元のガラケー。
それから、じわじわと思い出す。
転生した。
月読アイになっていた。
デビルサバイバー2の世界だった。
相棒は女神アルテミス。
コハルを助けた。
乙女に保護された。
森部綺羅子というやたら元気なジプス局員が俺のお付きになった。
東京では久世響希たちがドゥベを倒した。
「……夢じゃねぇのかよ」
声に出すと、やっぱり高くて幼い声だった。
俺はしばらく天井を見つめる。
身体は重い。
だが、昨日ほど最悪ではない。
胸の奥に残っていた魔力切れみたいな重さも、少しだけ薄れている。
ただし、全力疾走できるかと言われたら無理だ。
「二日目か……」
終末の二日目。
デビルサバイバー2の物語は、ここからさらに厄介になる。
ドゥベは倒された。
けれど、それは始まりにすぎない。
セプテントリオンはまだ来る。
東京だけじゃない。
大阪、名古屋、各地で人も悪魔も動き出す。
そして俺はもう、完全な傍観者ではなくなっている。
「……クソゲー二日目、開始ってか」
枕元のガラケーが淡く光った。
『目覚めたか、小さき月よ』
「おはよう、拳の女神」
『武人女神と言え』
「朝から元気だな」
『そなたよりはな』
「言い返せねぇ」
ガラケーの画面を開く。
悪魔召喚アプリは起動している。
アルテミスの表示は昨日より少しだけ安定していた。
スキル欄には、
パララレイ
耐氷結
この二つ。
状態異常付与と、氷結耐性。
「……地味」
『生き残るにはよい札だ』
「まあな。火力はあんたに任せる」
『頼るのはよい。だが依存はするな』
「朝から厳しい」
『そなたは放っておくと無茶をする』
「昨日で信用失いすぎだろ、俺」
『積み上げた結果だ』
正論で殴られた。
物理じゃなくても痛い。
その時、部屋の外から控えめなノックが聞こえた。
「アイさん、起きていますか?」
森部綺羅子の声だった。
「起きてる」
「入ってもよろしいですか?」
「どうぞ」
扉が開く。
森部は昨日と同じジプスの制服姿だった。
黒髪ストレートの姫カット。ぱっちりした大きな瞳。朝から笑顔。
昨日あんな終末みたいな一日を過ごしたはずなのに、すでに仕事モードに入っている。
いや、元気すぎるだけかもしれない。
「おはようございます、アイさん!」
「声」
「あっ、おはようございます……」
急に小声になった。
「極端だなぁ……」
森部はトレーを持っていた。
朝食らしい。
白米、味噌汁、焼き魚、卵焼き、あと小鉢。
昨日の夜よりしっかりしている。
「朝食です。柳谷先生から、ちゃんと食べさせるようにと厳命されています」
「餌付けされてる気分だ」
「栄養管理です!」
「言い方が違うだけでだいぶ印象変わるな」
森部はトレーを机に置くと、端末を確認した。
「体調確認の前に、昨夜から今朝にかけての報告を簡単に共有します」
「お、仕事できる人っぽい」
「仕事できます!」
「その自己主張が不安なんだよ」
森部は少しだけ咳払いして、真面目な顔になった。
「東京のドゥベ戦については、正式に対象消滅が確認されました。久世響希さん、新田維緒さん、秋江譲さん、志島大地さんはいずれも生存。志島大地さんは負傷ありですが、命に別状はないとのことです」
「……そっか」
改めて聞くと、少し胸が軽くなる。
大地は生きている。
響希たちも生きている。
一日目は、越えた。
「よかったですね」
森部が言った。
「顔に出てましたよ」
「うるせぇ」
「出てました」
「……まあ、よかったよ」
素直に認めると、森部は嬉しそうに笑った。
「それから、東京の四名は現在ジプスの管理下にあります。ただし、昨日の独房云々の件もあって、対応は慎重に進められているそうです」
「真琴さんが頑張ってる感じか」
「迫真琴局員ですね。東京側の詳細は私も限られた範囲しか見られませんが、そのようです」
「ヤマトは?」
「峰津院局長は、四名の有用性を認めつつも、危険性も高いと判断しているそうです」
「まあ、そうだろうな」
ヤマトならそう見る。
ドゥベを倒した力は有用。
だが、その力を持つのが民間人なのは危険。
だから、保護する。
管理する。
使えるなら使う。
合理の化け物みたいな判断だ。
「あと」
森部の表情が少しだけ固くなる。
「アイさんについても、東京本局側へ情報が上がっています」
「だろうな」
「峰津院局長から、大阪本局に対して追加資料提出の要請がありました」
「うわぁ」
朝から最悪の名前が出た。
「俺のこと、完全に目つけてるじゃねぇか」
「かなり関心を持っているようです」
「言い換えても怖ぇよ」
「ただ、現時点でアイさんを東京へ移送する指示は出ていません」
「現時点で」
「はい。現時点で」
「森部さん、そういうところ正直すぎる」
「嘘をついてもよくないと思いまして!」
「それはそう」
俺は朝食に手をつけながら、頭を回す。
東京移送はまだない。
なら、しばらくは大阪本局にいる。
つまり二日目の大阪側の動きに巻き込まれる可能性が高い。
「……大阪、今日やばいよな」
ぽつりと呟いた瞬間、森部の手が止まった。
「アイさん」
「何だよ」
「それも、夢ですか?」
「……まあな」
嘘と本当を混ぜる。
この言い訳がどこまで通じるか分からない。
でも今はまだ、これで押すしかない。
「今日、大阪で何か起きる可能性がある」
森部は真面目な顔で端末に入力した。
「規模は?」
「分からない」
本当は、ある程度分かる。
でも全部言うには早い。
「ただ、東京のドゥベみたいな“普通の悪魔じゃないもの”がまた来るかもしれない」
森部の顔から明るさが少し消えた。
「セプテントリオン、ですか」
俺は箸を止めた。
「……その名前、もう共有されてるのか」
「東京側の戦闘解析で、ドゥベが通常悪魔とは違う存在であることは確認されています。名称については、峰津院局長が把握しているようです」
「ヤマトがもう言ったか」
「アイさんも知っているんですね」
やばい。
また滑った。
でも、今さら完全に隠すのは無理だ。
俺は味噌汁を一口飲んで、少しだけ時間を稼いだ。
「夢で見た」
「便利な夢ですね」
「みんなそれ言う」
「でも、完全に否定できないから厄介です」
「俺も厄介だと思ってる」
森部は少し考え込む。
昨日の騒がしさとは違い、ジプス局員として情報を扱う顔だった。
「柳谷先生に報告します。朝食後、体調確認。その後、先生と大阪本局の上席を交えた打ち合わせになると思います」
「朝から会議かよ」
「終末二日目ですから」
「嫌な言葉だなぁ……」
ガラケーの中からアルテミスの声がする。
『小さき月よ。腹を満たせ。戦も会議も、空腹では鈍る』
「女神様が現実的」
『狩人は食を疎かにせぬ』
「何でも狩りに繋げるな」
森部が目を輝かせる。
「アルテミス様、朝から神々しいですね……!」
「神々しいか今の?」
「はい!」
「チョロいな、森部さん」
「チョロくありません!」
言いながら、森部は少し嬉しそうだった。
食事を終えた頃、乙女が来た。
昨日より疲れている。
けれど、目は冴えていた。
「おはよう、アイ」
「おはようございます」
「体調は?」
「昨日よりマシです」
「具体的には?」
「胸の重さは少し減りました。頭痛は軽い。立つと少しふらつくかも。アルテミスの完全顕現はまだきつそうです」
乙女は少しだけ驚いた顔をした。
「自分でそこまで把握できているなら上出来ね」
「昨日、無茶したらみんなに怒られたので」
「いい学習ね」
「褒め方が医者」
乙女は俺の額に触れ、脈を確認した。
「発熱はなし。疲労は残っているけれど、昨日よりは回復しているわ」
「じゃあ動けます?」
「条件付きで」
「出た、条件付き」
「まず単独行動禁止。森部を同行させること。戦闘行為は原則禁止。やむを得ない場合でも、パララレイの使用は一回まで。アルテミスの顕現は短時間のみ」
「めちゃくちゃ縛るじゃないですか」
「縛らないとあなたは動くでしょう」
「否定はしません」
「だから縛るの」
乙女は当然のように言った。
「それと、コハルがあなたに会いたがっているわ」
「起きてるんですか」
「ええ。昨夜より顔色はいいわ。ただ、あなたの様子を気にしている」
「……あとで行きます」
「今行ってもいいわ。森部、案内を」
「はい!」
コハルの部屋は、同じフロアの少し先だった。
森部に案内されて扉を開けると、コハルはベッドの上で起きていた。
乙女に髪を整えてもらったのか、昨日より少し落ち着いた顔をしている。
俺を見た瞬間、ぱっと笑った。
「アイちゃん」
「おはよう」
「ちゃんと寝た?」
「寝た」
「ほんと?」
「……そこそこ」
コハルは少しだけ目を細めた。
この子、昨日より鋭くなってないか?
「アイちゃん、下手な嘘つく時、ちょっと目そらす」
「マジかよ」
森部が感心したように言う。
「すごい観察力ですね、コハルちゃん」
「昨日いっぱい見てたから」
「俺の嘘を見抜く技術が身内に共有されていく……」
乙女が静かに笑った。
コハルはベッドの横に置いていた小さな袋を俺に差し出した。
「これ」
「何だ?」
「飴。お母さんがくれたの。アイちゃんにもあげる」
袋の中には、小さな飴がいくつか入っていた。
普通の飴だ。
こんな状況でも、甘いものは甘い。
「……ありがとな」
「うん」
俺は一つ受け取った。
口に入れると、ほんのり桃の味がした。
「甘い」
「おいしい?」
「うまい」
コハルは嬉しそうに笑った。
それだけで、少しだけ朝らしくなった気がした。
だが、現実はすぐ戻ってくる。
乙女が端末を確認し、表情を引き締めた。
「アイ。朝の打ち合わせに参加してもらうわ」
「俺が?」
「あなたの“夢”について聞きたいそうよ」
「ですよねぇ……」
「森部も同行。コハルはここで待機」
コハルの顔が曇る。
「私も行っちゃだめ?」
乙女は少し迷ったが、首を横に振った。
「今回はだめ。大人の話になるから」
「アイちゃんも子供だよ」
「見た目はね」
乙女がさらっと言った。
俺は顔をしかめる。
「そこ、母親が子供の前で言うんですか」
「今さら隠せないでしょう」
コハルは俺を見た。
「アイちゃん、やっぱり中身は大人なの?」
「……複雑な事情がある」
「大人?」
「そこは保留で」
「保留……」
コハルは不満そうだったが、無理には聞かなかった。
「じゃあ、戻ってきてね」
「戻る」
「約束?」
「約束」
本当に約束が増える。
でも、今は悪くないと思った。
会議室へ向かう廊下で、森部が隣を歩く。
「アイさん、緊張していますか?」
「してる」
「正直ですね」
「嘘ついてもバレる流れだからな」
「大丈夫です。私が同行します」
「それは安心材料なのか不安材料なのか」
「安心材料です!」
「自分で言い切るメンタルはすごい」
森部は胸を張った。
「お付きですから!」
「監視役だろ」
「同行支援担当です!」
「昨日、自分で監視って言ってた」
「忘れてください!」
「無理」
そんな会話をしながら、会議室に着く。
中には乙女のほか、数名のジプス職員がいた。
大阪本局の上席らしき男。情報担当。医療担当。警備担当。
視線が一斉に俺へ向く。
小さな身体。
ライトブラウンの髪。
薄紫の瞳。
ガラケーを握った幼い少女。
そして、その中身は元男の転生者。
「……見世物じゃねぇぞ」
小さく呟くと、森部がすかさず小声で言った。
「アイさん、口」
「すみません」
乙女が椅子を示す。
「座って、アイ」
座る。
また足が床につかない。
見なかったことにする。
上席の男が口を開いた。
「月読アイ。昨日、大阪臨時拠点にて悪魔召喚アプリ使用を確認。契約悪魔は女神アルテミス。取得スキルはパララレイ、耐氷結。間違いないか」
「はい」
「君は、東京でのドゥベ出現を事前に警告した」
「はい」
「その情報源を改めて確認したい」
来た。
全員の視線が集まる。
俺は息を吸った。
嘘と本当を混ぜる。
昨日と同じだ。
「夢です」
空気が少し動いた。
上席の男の眉が動く。
「夢?」
「正確には、夢みたいな記憶です。断片的に、これから起きるかもしれないことを知っている」
「予知か」
「そう言い切れるほど便利じゃありません」
これは本当。
俺の知識はゲームの知識だ。
だが、もう展開は少しずつズレている。
完璧な予知ではない。
「外れる可能性もある。俺が動いたせいで変わることもある。昨日の大阪で起きたことも、俺の知っている流れとは違いました」
「知っている流れ、とは?」
「夢の中で見た流れです」
上席は俺をじっと見た。
疑っている。
でも、乙女が口を挟んだ。
「少なくとも、昨日の警告は一定の効果を出しました。SL広場周辺の避難が早まり、東京側の被害抑制に繋がった可能性があります」
情報担当がうなずく。
「実際、上空警戒強化により初動対応は早まっています。月読アイの情報は、完全には無視できません」
俺は少しだけ肩の力を抜いた。
乙女が味方に回ってくれると、だいぶ違う。
上席が続ける。
「では聞こう。今日、大阪で何が起きる?」
部屋の空気が重くなった。
俺はすぐには答えなかった。
知っている。
二日目には、大阪にセプテントリオンが来る。
メラク。
だが、全部言うか?
言えば対策できる。
でも、俺の情報源の異常さがさらに強まる。
いや、もう今さらか。
それでも、嘘と本当を混ぜる。
「大阪が狙われる可能性があります」
「具体的には?」
「ドゥベと同じ系列の存在。普通の悪魔ではない大型存在。昨日の東京と同じか、それ以上の混乱が起きるかもしれません」
「場所は?」
俺は少しだけ目を伏せた。
全部正確に言えるほど、自信がない。
「断片的です。けど、大阪市街。人の多い場所。あと、冷気か、白い光みたいなイメージがあります」
これは少しぼかす。
今の俺のスキルが耐氷結を得たことも、氷に関わる予感として混ぜられる。
情報担当がすぐにメモを取る。
「時刻は?」
「分かりません。昨日のドゥベみたいに夜とは限らない」
上席が目を細める。
「曖昧だな」
「だから言ったでしょう。便利な予知じゃないって」
「口が悪い」
「すみません」
森部が隣で小さく「アイさん、がんばってます」と呟いた。
今それ言うな。
ちょっと力抜けるだろ。
乙女が言う。
「曖昧でも、警戒範囲を広げる価値はあります。昨日のウェンディゴ戦でアイが得た耐氷結も、偶然とは言い切れない」
「耐氷結?」
上席が俺を見る。
俺はガラケーを開き、スキル欄を見せる。
「邪鬼ウェンディゴ撃破後にスキルクラックで取得しました。氷結耐性です」
「それと今日の予兆が関連すると?」
「分かりません。でも、俺は偶然を信用しすぎない方がいいと思う」
これは本心だった。
この世界は悪趣味だ。
必要なものを、必要になる直前に与えてくることがある。
パララレイ。
耐氷結。
どちらも、俺が生き残るための札として機能した。
なら、耐氷結が二日目に意味を持つ可能性はある。
上席はしばらく黙った。
そして、短く言った。
「大阪市街の警戒レベルを上げる。上空、地下、気温変化、霊的反応の監視を強化。避難計画も再確認しろ」
職員たちが一斉に動き出す。
俺は息を吐いた。
「……通った」
森部が小声で言う。
「よかったですね」
「まだ何もよくねぇよ」
「でも、備えられます」
「そうだな」
備えられる。
それだけでも違う。
上席が最後に俺を見る。
「月読アイ。君の処遇については、当面大阪本局での保護継続とする。単独行動は禁止。担当局員は森部綺羅子。柳谷乙女医師の監督下で、必要に応じて情報提供を行うこと」
「拒否権は?」
「あると思うか」
「ないですよね」
「ない」
「正直で助かります」
森部が姿勢を正した。
「責任を持って担当します!」
「声」
「はい……」
会議は終わった。
部屋を出た瞬間、俺は壁にもたれたくなった。
森部が慌てて手を伸ばす。
「アイさん、大丈夫ですか?」
「大丈夫。会議で削られただけ」
「戦闘より?」
「ある意味、戦闘より」
「では休憩しましょう!」
「その前にコハルのところ」
「本当に約束を守るんですね」
「守らないと寝覚めが悪いからな」
森部はにこっと笑った。
「アイさんらしいです」
「昨日今日の付き合いで俺らしさを語るな」
「でも、少し分かってきました」
「何が」
「口は悪いけど、約束は守る人です」
「……そういうの、本人に言うな」
「照れました?」
「パララレイ撃つぞ」
「すみません!」
本当にこの人、騒がしい。
でも、悪くはない。
コハルの部屋へ戻ると、彼女は待っていた。
「アイちゃん」
「戻ったぞ」
「約束守った」
「守った」
コハルは嬉しそうに笑った。
それだけで、会議の疲れが少し薄れた。
乙女も後から入ってくる。
「今日、大阪が危ないかもしれない」
コハルは不安そうに目を揺らした。
俺は隣に座る。
「でも、昨日よりマシだ」
「どうして?」
「昨日は何も知らずに始まった。今日は少しだけ分かってる。備えられる」
コハルはじっと俺を見た。
「アイちゃんも戦うの?」
「できれば戦わない」
乙女がすぐに言う。
「戦わせないわ」
森部も続く。
「私も止めます!」
ガラケーの中からアルテミスの声。
『無茶はさせぬ』
「囲まれてる……」
俺はため息をついた。
「でも、必要なら動く」
三人と一柱の視線が刺さる。
「……なるべく後ろで」
コハルが小さく言った。
「死なないでね」
「死なねぇよ」
「約束」
「約束」
二日目の朝。
約束はまた増えた。
大阪に、次の災厄が近づいている。
俺はまだ弱い。
スキルは二つ。
相棒のアルテミスも長くは呼べない。
ジプスには警戒され、ヤマトには目をつけられ、未来知識はもう完全ではない。
それでも、一日目よりは少しだけマシだった。
コハルがいる。
乙女がいる。
森部がいる。
アルテミスがいる。
そして大阪本局は、俺の警告を聞いて動き始めた。
「……二日目開始って感じだな」
俺が呟くと、アルテミスが静かに応じた。
『ならば、よく見定めよ。小さき月よ』
「分かってる」
俺はガラケーを握る。
「今日も、寝覚め悪くならねぇように足掻くさ」