猫のにゃん吉が死んだ、老衰だ、俺はあいつのことを幸せにしてやれたのか…
今でもわからない、子猫の時代から俺が子供の時を一緒に歩んだ家族であり、親友でもあり、相棒、だけどあいつには別の生き方があったんじゃないのか。他のべっぴんさんな猫とくっついたり、縄張りを巡っての他の猫との闘争だったり。
それが俺の一つの気がかりなことだった。
「っ……」
目から涙が溢れてきた、火葬もしてやった、別れも済ませた、なのにまた溢れ出す、この家にはあいつとの思い出がたくさんある、爪でガリガリとして無惨にも剥げてしまったキャットタワー、何度も読み直したことで少ししわくちゃになった成長日記、食うことが大好きで破壊した餌やり機
それらを思い出すだけでとめどなく溢れてくる、この涙の数だけ心が苦しくなる、苦しい、苦しい、苦しい。
チリーン
「あ……」
あぁ、そうだよ、済ませたさ、別れは
でもそれだけじゃ
それだけじゃ、足りないんだよ、この気持ちを表すなら孤独、喪失とも言える、あいつが死んで穴が空いたように心がスースーと風が抜けるように感じる。
チリーン、チリーン
初めてあいつには会ったのはいつだったか、確か俺は何時ものように公園で遊んでたな、懐かしい、まだ人前で話すのが苦手で、遊びにも誘えないから一人で人気のない公園を独り占めしてたっけな、そんな時あいつはひょっこり現れて無警戒に近づいてきたな、俺の顔を見上げて鳴くさまはもう可愛いの何のって、そして気づけば俺はあいつを家に連れ帰ってたな、その後母さんにびっくりされて、父さんはあいつの可愛さに一瞬にして陥落して、母さんは呆れてたな、母さんもその後すぐに陥落してたけど、それで飼うことになってあいつとお揃いの鈴を貰ったけな、あいつ鈴の音が気に入ったのかずっと動き回って鈴の音が鳴るとぴょんぴょんとんで辺りをキョロキョロ、忙しいやつだったよ。
チリーン、チリーン
鈴の音、母さんがくれたあいつとのお揃いの鈴、あぁそうだなにゃん吉、お前はそこにいる、お前が消えたからって思い出まで消えるわけじゃない、お前がいなくなっても前を向いて進んでみようと思う、お前によく相談した彼女も作って、良い家を買って、世界をみて見ようと思う、いつかあの世で会ったらその時は、お前の好きなカリカリをたくさんやるよ、そして俺の土産話でも聞いてくれよな。覚悟しておけよ?にゃん吉!それまで美味い飯でも食って、待ってろ!
『にゃ~ん』
『はは!やっと会えたな……相棒』
短編小説初投稿です