【完結済み、最終話まで更新予定】SFゲームの世界に転移したけど物資も燃料もありません!艦隊司令の異世界宇宙開拓紀 作:黴男
ホドは俺を、イルエジータの海の見える場所に下ろした。
その場所は、その時丁度軌道上にあるNoa-Tunの下に位置するような形でそこにあった。
俺は遅れて到着した工作ドローンに手伝ってもらい、流歌の墓を作った。
墓石は流石に用意できなかったが....
「俺の自己満足か」
ホドが去ったのを確認した俺は、墓に呼び掛ける。
流歌の遺体は、即席の加工を経て棺に入り、死んだときのまま何一つ変わらない状態で置いてある。
「.........そろそろ、か」
俺は地面に倒れる。
時刻は既に黄昏刻であった。
俺はうつ伏せの姿勢から、仰向けの姿勢になんとか身体の姿勢を変え、空を見た。
薄暗がりの中で、星空が、俺たちを包むように輝いていた。
「愚かな兄で済まない......」
いや、違う。
流歌はこういう言葉を望まない。
「知ろうとしなくて、悪かった.....俺は、偉大な兄だ」
心にもない事だ。
だが、例え俺が社会的に、倫理的に、人間的にどんなロクデナシであっても....
流歌にとって俺は、たった一人の、偉大で、代えの利かない.....兄だったんだ。
気づいた時にはもう遅いが。
「後を追うようで、悪いな.....流歌」
あと数時間以内に、俺は身体の限界を超えた強化措置の影響で死ぬ。
本来身体にある程度以上なくてはならないような物質を使いまくった結果だ。
いや、二時間も持たないかもしれないな、ここまで血を流したら。
「いや.....これで、いいのかな? はは、分からないな」
俺は流歌を含めた俺を信じてくれた人間全員を裏切り、彼女に自分の気持ちだけを押し付けた。
だから、これは妥当な末路と言える。
俺を信じてくれた妻...ルルとネムの気持ちも裏切って、一人で勝手に死ぬ。
流歌と同じ冥府に行けると思えない、地獄で苦しむに違いない。
だが、それでいいんだ。
俺はそれだけのことをやったのだから。
「俺は....芯まで愚か....いや、偉大だ」
妹が自殺したというのに、俺はそれを目にして動揺したのに。
今は心が、凪のように穏やかだ。
もうすぐ死ぬからだろうか?
だとすれば無責任もいいところだ。
「シン様!」
「シンさま!」
その時、視界の外から二人分の足音が聞こえてきた。
ああ、流石に...誤魔化し切れるものではないか...
アドアステラは沈んだようだ、戦線は平和になり、彼女らも俺に駆け寄る余裕が出来たという事か。
「どうしてこんなところで寝てるんですか?」
「風邪引いちゃうよ!」
「ああ.....俺はもうすぐ...遠いところに行くだけだ」
俺の言葉の意味が死を示しているのだと知ったらしいのは、ルルだけだった。
ネムは意味がわからなかったようで、静かに頭の上に疑問符を浮かべた。
「な、何故ですか....」
「ルルもやってるだろう、強化手術だ。あれを、致死量を超えて受けただけの話だ」
「り、理由になりません! どうして!」
「あれくらいしないと、流歌には勝てないんでな....」
今回、流歌と俺がほぼ互角に見えたのは、俺が後先を考えない強化手術を受けていたからだ。
アインスで実験したときにも挿さなかった、不可逆の変化を引き起こすインプラントも差さっている。
文字通りの命を懸けた博打だった。
救命する手段は無いわけではないが、俺はそれを望まない。
望むべきではないのだ。
「シン様....分かりました、それがあなたの意思なら....」
「ルル、ネム.....二人で力を合わせて、この先のNoa-Tunを導いてくれ。俺の夢を――――いや、継がなくていい。滅ぼすなり、繁栄させるなり、好きにすればいい。......勝手な夫ですまない、だが、これが俺という人間の本性...」
そんな事を言っていると、なんだか眠くなってきた。
気絶防止プロセスの効果が弱くなってきたらしい。
ああ、まだ二人に――――
シンが目を閉じた直後、ルルはシンを持ち上げた。
覚醒の後遺症でふらつくものの、ネムもそれを手伝う。
「お断りです...シン様! その勝手な考えを、私たちは継ぎます! ネム、シャトルまで運ぶわよ!」
「う、うん!」
「ぜったい....絶対、救って見せますから!」
二人はシンをシャトルに乗せ、急発進する。
はるか空の遠く、Noa-Tunに向けて。
おしまい?
これにて艦隊司令は完結となります。
アフターストーリーは未執筆ですので、更新をお待ちください。