少し短いです。
チャプターの題名には巨鯨と書いてありますがほとんどオリジナル展開です。
「……」
瞳を開くと、そこは見知らぬ天井……ということもなく普通にエデンだった。視線をずらすと、横ではセシルが何か作業をしており、どうやら私含めて帰還できたらしい。
ひとまずその事については喜ぶべきなのだろうが、余韻に浸っているほどの余裕は既に残されていない。
手や足を少し動かし、問題なく稼働を確認すると私は起き上がり、その音をセシルが聞きつけた。
「起きましたか」
「はい。毎度のことながらすみませんねぇ……」
「そう自覚しているなら、もっとボディを大事にした計画を練ってほしいものですね。あなたの場合、後先考えずに行動するその癖を直すところからですね」
「いや、まぁ……ほら、そこが私の持ち味というか何というか……」
セシルにギロっと睨みつけられたので、大人しく顔を下に向けた。そして怒られた。ドロシーとはまた違う罪悪感が埋め付けられる。
「そうだ。あなたに一つ聞いておかなければならないことがありましたね」
そう言うとセシルは周りを見渡し、私の方へと近づいてきた。
「聞きたいことは、あなたがニヒリスターに行ったことです。本来アンチェインドを打ち込まなければ、彼女の自己再生機能は阻害出来ないはず。なのに、ヨハン達が到着した時、既に自己再生機能は止まっていた。これは一体どういう事だと思いますか?」
「さぁ? 腹部に深く刺し込んだので、流石のニヒリスターも致命傷だったんじゃないですか?」
「あなたが眠っている間に、カウンターズの指揮官の血液型がRh X型と判明しました。どうやって採取したのかまでは聞きません。ただ、あなたが未来を見ることが出来るというのなら、彼の血液型も既に見抜き、わざわざアンチェインドを撃たせない状況を作り上げた。違いますか?」
やはり、セシルには嘘は通用しないらしい。
「……はぁ、負けましたよ。ええ、わざわざアンチェインドを使わない方法があれば、それに越した事はないと思ったので」
私は大人しくセシルに白状する事にした。
「やはりそうでしたか。ですがあなたは何故アンチェインドを扱えたのですか? 私の研究では金属との相性はすこぶる悪く、あなたの刀に纏わせているなら、効力は既に失われているはずでは?」
「あの刀には一時的に強化プラスチックを纏わせていました。しかしその分斬ったりする能力が損なわれるため、ラピに腹部を撃ってもらって、傷口が深くなった所に、アンチェインドが纏わりついたプラスチックをヘレティックの体内に入れたというわけです。弾丸にするとプラスチックはすぐに壊れてしまいますけど、接近戦、それもほんの数秒程度なら効力を失わずに済むと考え、実際に成功したわけです」
アンチェインドが金属と非常に相性が悪いということも知っていた。だからほんの一瞬でも効力を発揮できる状態にするため、このような作戦を思いついたが、当然今までこんな事はやったことがなかったため、成功するかどうかは正直言って賭けだった。
「……相変わらずの無茶振りをしますねあなたは、効果がなかったらどうする気だったんですか?」
「そこはヨハンにアンチェインドを撃ってもらうしかなくなる。あくまで撃たない保険を私は作っただけですので」
そう、結局失敗してもヨハンがアンチェインドをニヒリスターに撃つのだから、失敗しても特に損害はないと踏んだのだ。
「あなたに限ってそんな事はしないと思いますが、彼の血液型の事を知っているのは私と指揮官、そしてあなたの三人ですので、くれぐれもこの事は言わないでください」
「ええ、そこは守りますよ。あっ、私の装備は?」
「向こうの部屋にあります。けれど一部破損している物もあります。あとはあなたが使った刀は完全に消失していました」
中々に愛用していた物だったが、効力がなくなったとしてもアンチェインドを纏わせていたという実績がある。火山で燃え尽きてくれた方がむしろ好都合だ。
「また作ればいいんです。今度はもっと実用性を追加して」
「万全ならもう行ってください。これからまたヨハン達が出撃しますので。カウンターズも一緒です」
「また何か?」
「ええ、マザーホエールの捕獲を行います。とある事に利用するため……まぁ、既にあなたは知っているかもしれませんが」
「そうですね。なら、私は入る隙はないでしょう。幸運を祈ります」
私は装備を回収して研究室を抜け、自室に戻った。
カウンターズの面々も捕鯨に出ているなら、特に問題なくチャプターは進んでいるというわけだ。
「多少不安は残るけど、指揮官二人の仲も本来より良好そうだし、心配はいらないかな」
壊れた装備を眺めていく中で、私は背中に着けたスラスターと共に新調したパックパックの背面の取っ付きを手早く誤解押し続ける。
するとバックパックの内部が開き、中から一つのタンクを取り出す。
「サンプルとしては、十分な量か」
さらにそのタンクを解錠すると、中からは冷えた血液パックが出てきた。
良かった。正直刀よりこっちの破損を心配していたから。
すぐに取り出し、ひとまず安定して保存できる場所へと移し、ようやく一息ついた。
「アンチェインドの研究もおいおい進めておくとして、今のうちにアーク方面にも準備していてもらおうかな」
何せ、次に起こることは、失敗すれば人間がアークへと避難して以降、最悪となる可能性があるからだ。
「多少はマシにするために、種は撒いてきたつもりだけど、果たしてうまく作用してくれるか……」
匿名回線を繋ぎ、アーク方面へと繋げる。
「あーあー。こちら、ルミナスムーン。声が聞こえたら返答をお願いします」
しばらく待つと、やがて聞き馴染みのある声が聞こえてくる。
『はい。繋がりました。お久しぶりですねお母様』
「ええ、久しぶりねパトラ。こうやって会話するのは、ミシリスの書類偽装依頼以来ですかね」
一番機、長女とも言える娘の落ち着いた声が聞こえる。前に通信したのは、私が初めてアークに向かった時のことだ。
「毎月、情報は貰っていますよ。アーク内の民衆の関心とか、興味深いこともね」
『ありがとうございます。それで、今日は何用で?』
「ああ、早速本題に入りますけど、まもなくアークでテロ事件が起こります」
『……もう、そんなに時間が経ったんですね』
「ええ、思えばあっという間ですね」
アーク内に潜伏している彼女にも、市民の避難や救出のために動いてもらう予定だった。そのため、この後も細かな作戦を伝えていく。
「物資については、こちらでもある程度持って行きます。ラプチャー以外、もしかしたら対ニケ用の武装も用意した方が良いかもしれませんね」
『了解です。まぁ、長年アークに住みつけば私の武装も勝手に対人用に変化していっちゃいましたよ』
「……ああ、そう言えばそうでしたね。昔の貴女と言えば──」
『うっ……まぁ、色々と後先考えずに行動したのは事実ですけど……』
今になってこうして落ち着いた振る舞いをしているが、中々に悩むことが多かったのも事実。
「貴女には随分辛い選択をさせてしまいましたね」
『いえ。謝らないでください。もう終わってしまった事なんですから。記憶を貰った以上、クヨクヨ言ってもいられませんしね!』
「……そうですか」
血は繋がっていないが、本当に良くできた娘だ。
「それじゃあ、また現地で集まりましょう。二人ほどゴッデスも共に行きます」
『はい! 必ず成功させましょう!』
別れを告げ、私は通信を切った。
「さ、また忙しくなるな」
椅子から腰を上げ、私は準備に取り掛かる。
新装備の開発、物資運搬、やるべき事が多すぎて一つ一つタスク化しても、莫大な時間がかかることは確定しているが、苦にもならないし、おかしなアドレナリンが出ているのか知らないが、私はこの状況に歓喜していた。
「多くの人を救う。ただそれだけだ」
本当は全ての人を救いたいと傲慢に願っているが、犠牲者を完全にゼロにする事はどう頑張っても不可能に近い事は、過去の侵攻で身に染みてる。
それに、犠牲になる事で新たな可能性を生み出してしまう事例もある。
だが、そこは許せなかった。だから限りなく死亡した事例と同じ事象が起こる様に、これまで科学者という立場として研究を続けてきた。
私の持てる全てを使って人民を救う。私の力で救うことができる。それが何よりも喜びだった。
───
開発と準備作業を進めている間に、カウンターズとインヘルトが帰還した。無事に終わった様で何よりだ。
そして、指揮官達がアークへと帰還する以前より、私はドロシーとピナと共にアーク方面へ向かっていた。
「……ここまで来てアレですけど、本当にルナ様も来るんですか?」
「当たり前でしょう? こういう重要場面のために、いつでも動ける準備をしているんですから」
チャプター通り、ドロシーはバーニンガムに招待されていた。
私もその交渉に参加する……という名目で、アークテロを防ぐために同行したわけだ。
「それにしても、またすごい荷物ですね」
「アーク内にいる娘への差し入れってところかな」
持っている分の物資は用意した。向こうでも、既に準備は八割終わっているということも知らされた。
ここまでは順調だが、当然全ての不安が解消されているわけではない。
例えば、ミハラの記憶が残っている状態は一見本来より良好に見えるが、それによってユニがどう動くのか不明。それと、セシルから伝えられた不可思議な情報。
『ラプチャーが逃亡した?』
『ええ、あなたがニヒリスターのもとへ向かった直後に現れた二体のラプチャーが、突然逃亡を始めたんです』
『追撃は?』
『勿論しました。ただ、相手は戦う時以上の力で抵抗してきましたので、ここで下手な消耗をするわけにはいかないと思い、逃してしまいました。私たちも初めての経験でしたので、動揺してしまったのも原因かもしれませんね』
ラプチャーが生に執着した。高い知能を有するトーカティブなどでは分からなくもないが、本来存在しないラプチャーがそのような行動を取った。
もしその種類がアークに入り込んだら、何にしでかすか分からない。
だからこそ、不安は解消されない。
(まあ、悩んでも仕方がない。最善を尽くせ。ただそれだけのこと)
ドロシーやピナに察せられないように、私はそっと手に力を込めた。
いつかルミナスムーンの娘達を絡めてのサブエピソードも考えていますが、かなり先の話になってくるかと思います。
改変によるキャラクターの口調や本作の進行はどのような方向性にして欲しい?
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積極的に変えて
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原作っぽさを残しながらも変えてほしい
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あまり変えないで欲しい
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原作そのままで