そして、彼女たちは戦車に乗った。   作:kasyo

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-閑話-中央回廊

 

 

【挿絵表示】

 

 

中央回廊、エレーナ達白百合中隊が戦っている場所は、「帝国の端」と言われた場所であった。

 

かつて、北部大陸西部をことごとく降し領地を拡大した「英雄皇帝」がたどり着き、歩みを止めた場所。

 

当時の古い手記には、

 

「そこは果てしない原野と深い森、そして、空しかなかった」

 

と記されていた。

 

「広大な土地」と聞けば聞こえは良い。

しかし、それを開拓し、町を作り、麦を育てることができなければ、結局は持てあまし、金を水のように吸い込むだけの砂漠のようなものなのだ。

中央回廊は大河がなく、緩やかな丘が続く地形で、土地がやせ灌木が茂る場所であった。

とてもそのような場所には町を作ることができない。

 

そして、中央回廊で足を止めた皇帝は、中央回廊の西側、二本の大河に挟まれた豊かで広大な平野に帝都を置き、現在の帝国の形を作った。

 

それからしばしの時が流れた。

 

ある時、中央回廊以東の蛮族が集合し、帝都へ押し寄せる大事件が起こる。

当時、大陸東部で勢力を増しつつあった勢力に押され、豊かな帝国領を目指したのだった。

 

まさか蛮族たちが中央回廊を突破してくるとは思っておらず、帝都外縁まで攻め込まれる事態となり、帝国の存亡がかかっていた。

 

この時立ち上がったのが、後に「征伐」皇帝と呼ばれる皇帝だった。

まだ若く力が弱いと見られていたが、見事に貴族と民衆をまとめ上げると、蛮族を食い止めた。

 

そして、返す刀で蛮族を皆殺しにし、中央回廊まで領土を奪還したのだった。

その結果として、東部大陸の中央回廊寄りを領地としていた部族がことごとく滅ぶこととなった。

 

数少ない生き残った者たちは、皇帝の手が届かない大陸東部へ逃げた。

それが現在まで跡を残し、連邦の首都は東部大陸の奥地に居を構えることになったのだ。

 

突然の蛮族の強襲に肝を冷やした後代の皇帝たちは、中央回廊を横切る防衛線を築き、補給のための街を建設した。

それが現在まで続く中央回廊の姿となっている。

 

こうした経緯から、帝国では大陸東部を危険視している。

いつかまた、蛮族たちがやってくるのではないか、と。

 

そのため、帝国は中央回廊以東を常に監視し、圧力をかけている。

ある勢力が力を増せば、火が付く前に消して回り、勢力基盤をつくらせないよう注力した。

 

だが大陸最東部まではその手が回っていなかった。

そこは帝国からあまりに遠く、やせた土地の果てにあったからだ。

 

対して大陸東部、連邦では、先祖たちが見た「豊かな帝国」の幻想が熟成されていた。

「手に入らなかった豊かな地」を我が手中に収めるということが連邦の悲願とされるようになっていた。

 

その悲願は時を経て、もはや呪いのようであった。

豊かな土地を手に入れるのではない、帝国を手に入れるのだ。

 

呪いに取りつかれたものが現れては、帝国の武力に倒れていく。

その繰り返しであった。

 

しかし、連邦はこの100年で急速な発展を遂げ、技術力を大きく上げた。

技術力が上がったことにより帝国侵攻が現実的となった。

 

「先祖の悲願」を達成しようとする勢力が力を増しているのだ。

 

結局のところ、中央回廊に価値はない。

 

帝国にとっては連邦から帝国を守る壁であり、連邦にとっては帝国を得るために乗り越えるべき壁でしかない。

 

双方にとって価値のない場所。

その場所にお互いの全てを注ぎ込んでいる。

 

金、物、人、それ以外にも全てを。

 

さらに100年か、200年それほどの期間を発展のために費やせば連邦は帝国に肩を並べるほど強大となるだろう。

 

帝国にとっては取るに足らない時間。

 

だが連邦にとっては上等な食事を前に待たされているようなものだ。

 

100年は待った。

それが限界であった。

 

100年かけて積上げた連邦のすべてを投げうってでも達成すべき目標。

 

かつて見た帝国の豊かさが連邦に呪いをかけたのだ。

 

 

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