【Fate×ネギま】正義の味方の在り方   作:そもゆえに

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第五章14話『幸福《こうふく》の味』

 

しばらく叫びながらバタバタと走り回り、魔法の矢を避けながら───ようやく落ち着いた。

 

今はエヴァンジェリンの別荘のオープンテラスのような場所で腰を落ち着かせている。

 

 

「面白い!くく、見縊っていたのは私のほうだったか──面白いぞ、エミヤ」

 

凄くご機嫌なのだろう、ハイテンションに笑顔を浮かべている。若干普段は気難しい猫がじゃれてくる幻影が浮かんだが。

 

魔法での衣装から普通の服装に着替えたエヴァンジェリン。

私服もゴシックドレスを子供の身長に併せて、可愛らしさも感じる。

 

「お気に召して何より──試験が終わったなら外に出よう。高畑や茶々丸も心配しているだろう」

 

戦闘時間など併せて、1時間以上は経っている。

そろそろ戻らないと流石に待たせすぎる。

 

「フハハ──ん?あぁ、それなら無理だ」

 

その言葉に思わず眉を寄せる。

 

「もう確認は終わったのなら此処で過ごす必要はあるまい。高畑や茶々丸を待たせるのも悪いだろう」

 

私の言葉にニヤリと悪戯が成功したような笑みを浮かべる。

 

「あぁ、言うのを忘れていたな。此方の1日が外の一時間ではあるが、此方で最低1日を過ごさないと外には出れん。ご利用は計画的に、だな。なに、食糧もあるし、風呂もある。待たせる時間が1時間なのは織り込み済みだ」

 

「──それは凄いな」

 

本当に凄い。こちらに来て僅か数日で、本当に魔法といえる現象を体験する事になるとは。

 

「そうだろう、そうだろう。このダイオラマ魔法球は私が造ったのだからな」

 

ふふん、と薄い胸を得意気に反らす少女。

 

そして、ふと視線を向けてくる。

 

「そういえば料理店を開くとか言っているみたいじゃないか。時間もあることだ、私が直々に評価してやろう。」

 

何処で聞いたのやら。まぁ刹那もいる事もある、別に調理をする事は構わない。

 

「別に構わないが、和洋中で何が良い?あと食べれないものはあるのか?」

 

ふむ、と少し考える様子を見せたが。

 

「折角だ、洋食を作ってもらおうか。あと絶対にネギとニンニクは入れるなよ!」

 

そういえば吸血鬼の弱点としてニンニクがあげられる。

まぁ、嫌いなものは避けるのは当然だ。折角作るなら笑顔を見たい。

刹那は特に好き嫌いは無いとの事。

恐らく魔法的な影響なのだろう。

予想以上に食材が多い事は勿論、劣化している様子もない。

こちらの世界では常識が通じないと、深く考えるのを辞めた。

取り敢えず食材を選びながら、2人の様子を眺める。

若干刹那がぎこちないがら、案外喋っている様子なので調理に集中する。

シチューや煮込む必要があるメニューは流石に止めておこう。魔法の調理器具を使えば時短できるとの事だが、どうせなら麻帆良に戻ってからしっかりしたものを食べてもらいたい。

暫くエヴァンジェリンを眺めて、メニューを思いつく。

 

そして、料理が出来上がり2人のところへと向かう。

 

何故か刹那が頬を赤らめ、エヴァンジェリンがにやにやとしている。どんな会話をしているのか聞くと藪蛇になりそうなので、気が付かないふりをして給仕に専念する。

 

「時間がなく、他人の台所だからな。凝ったものは作れなかったが、味は悪くないはずだ」

 

ことり、とテーブル置いたのはオムライス。

 

それを見てピキリ、と青筋を立てるエヴァンジェリン。

 

「ふん、子供向けの料理ではないか」

 

それに対して肩をすくめ、ひとこと。

 

「念のため玉ねぎも使わずに、トマトや鶏肉素材の味を活かしたオムライスだ。」

 

確かに綺麗に卵で綺麗に包まれており、湯気をたてている。

 

 

「ふんっ!食べないとは言ってないだろう。そもそも真祖で吸血鬼である私にとっては食事など、嗜好品に過ぎん。」

 

一口食べて黙る。

 

その様子を見て。

 

「嫌なら残してくれて構わない。食事の好みは人それぞれ、口に合わなかっ───」

 

エヴァは無言。

 

しかし、パクりパクりと口に運んでいく。

 

その姿に刹那も驚いたのか、スプーンを止めて眺める。

 

そして気付けば完食。

 

まだ無言で空になった皿を眺めている。

 

「少し量は少なめに作っておいたからね。デザートと紅茶としよう」

 

 

 

 

なんだ、これは。確かに美味い、だがそれだけじゃない。

それが何なのか確かめる為に無言でスプーンを口に運ぶ。

 

気がつけば、空になった皿があった。

だが、まだ解らない。

こんな気分になったのは初めて、いや思い出せないが感じた事はあった。

 

悩んでいると目の前にはアップルパイと紅茶が出されていた。サクサクとした生地と林檎の甘み。口直しに紅茶を飲むとさっぱりとする。

 

その様子を見てクスリ、と刹那が笑顔を浮かべる。

 

「……美味い」

 

「そうか」

 

「勘違いするな。料理の話だ」

 

「誰も何も言っていないが」

 

何故だろう。

確かに美味い。

今まで食べた料理と比べても遜色はない。

だが違う。

舌ではなく。

胸の奥が熱い。

思い出そうとしても思い出せない。

こんな感覚を、私はいつ知ったのだったか。

 

スッと刹那が横からハンカチを取り出す。

 

意味が分からなかったが、ぽとりと手の甲に雫が落ちる。

 

泣いていた。頬を伝う涙を刹那が優しく拭う。

 

思えば茶々丸も魔法と科学とやらで作られた人形(機械)

 

私も茶々丸も食べる必要性はなく、茶々丸は給仕をして一緒に食べる事は少なかった。

 

彼女自身は気づいてない。

600年生きてきた彼女にとって一番珍しいのは、

オムライスでもアップルパイでもなく、

誰かと囲む温かい食卓だった

 

その様子を見て、エミヤがふむっと顎に手を添える。

 

「助かったよ、エヴァンジェリン。悩んでいた事があってね」

 

ハンカチで涙を拭い、なんだと視線を向ける。

 

「じつはね、店名を決めかねていたのだが───」

 

スッと一呼吸おき、皮肉げな笑顔でなく、穏やかな笑顔を向ける。

 

初めて見る穏やかな笑みに、エヴァンジェリンは僅かに目を細めた。

 

「──calor《カロル》だ」

 

「───まさか、ラテン語か?」

 

どこか呆然とした様子で尋ねる。

 

「ご名答──流石だな」

 

「なんで私で思いついたんだ──まぁ良い。ふん、悪くないんじゃないか」

 

「はい、とても良い名前だと思います」

 

エヴァンジェリンは憮然として、刹那は笑顔で頷く。

 

 

───カロル(calor)。

 

───ラテン語で《温もり》

 

 

───願わくば今日のような団欒と温もりが在るように

 

 

 

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