『calor ――理想の果てに灯る温もり――』 作:そもゆえに
───大停電の夜。 学園都市内外の騒乱は人知れずに終結を迎えた。
エヴァンジェリンの蜂起は学園長の閉口令によって、知る者は少ない。
よって詳しい顛末を知るのは魔法先生でも極一部であった。
彼の英雄の子息が絡んでいるというコトもあり、事情を知らぬ者達の間では英雄譚に華を添えるカタチに落ち着いた。
だが、ソレに懐疑的な者も居た。それは───
〜閑話~絡まった組み鈴~〜
───あの夜。
私は学園都市の防衛を請け負っていた。
大停電に伴う外部からの侵攻を防ぐ為であり、特別手当て付き。
断る理由はなかった。
──闇夜の中でも私の魔眼は有象無象問わず逃さない。
──と、言っても最初は暇だったといえる。
私以上の弓兵が配置されていて、ナニをしろと?
学園都市の外周をシロウさんが、そしてシロウさんが討ち漏らしたのを私が掃討する担当であったが───
悉く討ち斃されていく。
停電して既に2時間以上が経過しているが未だに突破数は零。
件の子供先生については極力介入しないように事前に学園長に言われていたし、興味が薄いコトでボランティアする柄でもない。
あくまでも対象は外部からの侵入者。内部での私闘は関与外だ。
学園の中央から、スコープ越しに眺めていたのだが…
──そして視てしまった。
エヴァンジェリンを救ける為に、自ら身を挺して護る光景を。
───アイツを厭でも思い出さずにはいられない。
夜の警備、カロルでの仕事を共にして既に解っていた。
だというのに目を逸らしていた。
そろそろ足踏みはヤメだ。
───コレ以上、心を乱されては仕事に支障をきたす。
───私の戦場に男は不要。
ソレを確認するだけだ。
そうして───
calorでウェイトレスで働いて暫く経った頃。
「───で、話というのは何かね?あぁ、賃金アップならば残念ながら期待に添えない」
呼ばれて来ての第一声がソレであった。
思わず頬が引き攣る。
人がわざわざ改まって話を持ちかけて返答がソレかいシロウさん?
貴方が私をどういう眼で見てくれてたか良く解ったよ。
それなりに値の張る遮音、人払いの結界符まで使ってする話じゃないだろソレは。
私の視線に肩を竦めるシロウさん。
「む、冗談だというのに狭量だな。さて、本題は何かね?」
──どうやら、シロウさんなりに緊張を解す配慮だったみたいだが。
──余計な配慮を。
──いつも他人のコトばかり。
自分にも気を配らないから───こうなる。
「シロウさんは、今までに戦場に立った事があるね?臭いで解るよ───いや、戦場なんて生優しい次元じゃない地獄」
私の言葉に視線を険しくするシロウさん。
剣呑な雰囲気が漂う。
「───確かに、その通りだが…何故そんな事を確認する?」
──言外に何故私に戦場の臭いが解るのか?と問うている。
──そう。
──私は戦場の臭い、あの血煙が鼻腔を刺激する感覚を識っている。
──かつて私は、魔法使いの従者として紛争地域を転戦していた。
死線を渡り、時に瀕死の怪我を負ったり、時に対象を殺めるコトもあった。
それでも背中を預けられるパートナーが居るから戦えた。
───だが《彼》は
───私の前から消えた。
「是でも裏には詳しくてね。だが《エミヤシロウ》なんて名前やシロウさんの様な特徴を持ったヒトの話なんて聞いた事が無い───所謂Unknown」
アレだけ腕が立ち、尚且つ特徴的な人物が全くの無名のまま戦場を巡るなど冗談にしか思えない。
目撃者を悉く鏖殺したとしても、何らかの風説は残る。
シロウさんは、私の追及を閉眼して聞いている。
──少々意地が悪かったか。
確かに仕事にも影響する為、彼の経歴や過去にも興味はある──が、本題は別。
「まぁ余り人に聞かせる話でもないし、言いたくない事をムリには聞かないよ。ただ──コレには答えて貰うよ」
こういった交渉では、先に条件を提示して逃げ道を塞ぐのが肝要。
そんな自分のあざとさに嗤えてくる。
気がつけば、真っ直ぐに私の瞳をシロウさんが見つめていた。
「何故、戦場に立ったのか───かね?」
その表情は、今までに彼が見せた事のない貌だった。
その声色は鈍色の鉄。
ゾクリ、と背中を戦慄が走った。
──甘かった。
──想定以上の地獄を視てきた瞳。
正義、復讐、征服、解放、宗義etc...掲げる大儀はそれぞれだが共通しているのは、その大儀が在ればヒトは何処までも残虐になれる。
正しくソレは地獄とは死後の世界でなく現世に在るというコトを示す。
あの世に天国も地獄も無い───ただ虚無が在る。
だが、だからこそ私は彼に、エミヤシロウに問わなければならない。
それだけの地獄を視ても尚も何を求め目指すのか、を。
「私は、正義の味方に為り損ねた愚者だ。」
「誰も救えないと知った上で、それでも目の前だけは救いたい。」
───《正義の味方》
そんな夢物語の登場人物を目指す馬鹿が他にも居るなんて
思わず胸のペンダントを握り締める。
「本当に、愚かしいよシロウさん。そんなモノは在りはしない──いつか、理想に追い付く前に朽ち果てる」
かつての想い人が、そうであったように。いや想い人は子ども達が少しでも笑顔でいてほしい、笑顔を護りたいと言っていた
とても儚くて眩しい理想。
───だが、目の前の漢は違う。
「そうだな──真名、君は正しい。実際、私は一度は理想に溺れて朽ち果てたのだから」
彼の言葉に違和感を覚える。
──それじゃ、まるで一度●んだみたいじゃないか。
私の混乱をよそに彼は続ける。
「だが、ソレでも私は答えを見つけたい。本当に正義の味方はいないのか。私にとっての正義、世界にとっての正義とは何なのかを。」
ハッキリ言って、彼の信念は狂気、狂人のソレと変わらない。総てを助けるなんて話は夢物語でもありえない。
──たが彼は自分の理想の矛盾を解って、いまは笑顔の温もりの拠り所としてあろうとしている。
──本当に、自分の男を視る目はどうかしている。
魔眼の副作用かと思えてくる程に可笑しい。
だが、自分の想いは───
───もう誤魔化さない。
───今度こそ喪わない。
《彼》を喪った時、喪う事の恐怖に、誰も好きにならないと決めた。
自分の戦場に男は不要と嘯いて、逃げたのだ。
───だけど、二年前とは違う。
「──そうか。ソレがシロウさんの理由、か。けどねシロウさん。本当に救いたいと願うなら足りないな」
恐らくこの感情は好意や恋慕といった言葉であらわせない。
ただ私は知っている
誰かを救い、幸せにする。
それには欠かせないモノが在る。
恐らく、この正義馬鹿も識ってるはずだが──きっと解ってはないだろう。
もしシロウさんが自分の命を省みずに死ねば、彼を慕う者は不幸になる。
かつての私がそうであったように。
勿論、死の別離はいずれは訪れるモノであるが──
自分の命を軽視するモノに、ヒトを大切にするコトなど出来ないのだ。
だというのに、この馬鹿は自分を軽視する。
他人には諭すくせに酷い話だ。
──自分が死んでどれだけの影響を与えるかを教えてやる必要がある。
特に知り合いがその中に含まれているなら尚更、ね。
──簡単に死ねないように私が背中を護るよ、シロウさん。
──最近何だが人が増えて騒々しいが。
だが、私はスナイパー。
「戦場では、一度照準を合わせた標的は外さない。
……だから困る。
今度ばかりは、狙った相手から目を逸らせそうになかった。」
今後の料理店に来店して欲しい人。※項目に無ければその他で、感想で希望する人を。クラスメイト以外でも可。話の流れで直ぐには反映出来なかったりします。
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神楽坂明日菜
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龍宮真名
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長谷川千雨
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宮崎のどか
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古菲
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長瀬楓
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その他