『calor ――理想の果てに灯る温もり――』   作:そもゆえに

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26話 届かなかった温もり

 

シロウの感じていた悪い予感。

 

それは現実となっていた。

 

最初は悪戯だった。

 

新幹線では式神。

 

清水寺では酒。

 

まるでこちらを試すような嫌がらせ。

 

――だからこそ、油断した。

 

夜になって初めて気付く。

 

あれは警戒心を削ぐための布石だったのだと。

 

そして、夜の帳が下りた時に事は起きた。

 

calorでの面識もありネギ先生達と協力して警戒していた。

 

しかし───

 

木乃香お嬢様の悲鳴。

 

振り向いた時には、もう姿はない。

 

「お嬢様ッ!!」

 

呪符使いの女に木乃香が攫われた。

 

 

私が傍に居ながら何たる不覚。

 

ネギ先生と神楽坂さんと救助に向かったが、ネギと先生と明日菜さんは慣れない呪術に対して苦戦していた。

 

私は見通しの甘さに歯噛みしていた。

 

一般人が多数いる旅館の中で仕掛けられるとまでは考えなかった。

 

更に相手の符術使いが予想以上に強い。

 

相手の土俵で戦わせられる───お嬢様を拐った呪符使いによって電車の中で呪符による水の牢獄に囚われてしまった。

 

水中ではまともに刀を振るうことも、呼吸すらままならない。

 

───だからこそ、負けてなるものか!

 

シロウさんとの修行を思い出せ。何のため護る為の剣を求めたのか。たかがこの程度の壁、水中でも神鳴流の技を繰り出してみせる。

 

「斬空閃!!」

 

電車の壁を一閃のもとに切り裂き、水牢から抜け出す。

 

しかし、既に符術使いの女は木乃香お嬢様を抱えて逃げて出している。

 

手練れでありながら逃げに徹される厄介さ。執念を感じる。

 

間抜けな容姿だが、恐らく呪術を用いた身体能力の向上を施されているのだろう。

 

木乃香お嬢様を抱えながらだというのに、此方が何とか追える程のスピードだ。

 

 

だが此方も気で加速して、ネギ先生も魔力を纏いなんとか追いついた───と思った矢先に符術による炎に危うく身を焦がされそうになる。

 

炎が夜空を裂いた。

 

熱風に思わず目を細める──しかし。

 

「ラス・テル・マ・スキル・マギステル!」

 

ネギ先生の魔法が炎を吹き飛ばす。

 

今だ。

 

一気に踏み込む。

 

──硬い。

 

刃を受け止めたのは前鬼後鬼。

 

呪術師が自らを護る為の術。

 

1体は明日菜さんが一撃の元に還した。

 

その場を任して駆け寄ろうとする、そこに斬撃が放たれる。

 

相手に雇われたのであろう神鳴流の二刀流使い。

 

「化け物相手の野太刀では、急な小太刀の二刀流には対応するのは難しいやろ?」

 

そう言って呪符使いが逃げ、月詠が小太刀を繰り出す!

 

「先輩、野太刀では懐に入らしたらあきまへんぇ。ほら小太刀の間合いで殺しますぇ」

 

(違う。)

 

(師匠は言った。)

 

「二刀流を見るな。

肩を見る。

腰を見る。

足を見る。」

 

 

「あらら、まさかこんなにあっさり対応されるなんて流石先輩ですなぁ。ん〜違いますなぁ、この剣筋は双剣使いと戦った事がありはるんや。焼けますわぁ」

 

───小太刀を如く如く捌かれているにも関わらず

 

「へぇ、いけずやなぁ。強い双剣使いなんて、そないな方がいはるんやったら是非殺りあいたいもんやけど───来てはらへんみたいやし残念やけど、今のお仕事に専念しますぇ」

 

───他人事のように、悦に浸った表情に背筋が寒くなる。

 

一気に押し切れない。無理をすれば隙となる。

だから、少しずつ剣筋を読み最適化していく。

 

 

明日菜さんも攻めきれず。式神に押されている。

 

でも───この場にはもう1人、ネギ先生がいる!

 

だが、ネギ先生の放った魔法を防ぐのにお嬢様を盾に!!

 

「あっ、卑怯ですよ!木乃香さんを離して下さい!」

 

危うかったが、ネギ先生の機転で直撃は避けられた。

 

「なんや、危なかったけど甘ちゃんの尻の青いおこちゃま達で助かりましたわ。はん、この生っちょろい白いお尻でこれからも役だって貰いますぇ」

 

そういってお嬢様のお尻をパンパン叩く。

 

この女は許せない。

 

明日菜さんと私の怒気を込めた一撃で猿鬼と月詠を吹き飛ばした!!

 

符術使いの女もネギ先生の魔法により無力化された。

 

だが、まだ符術を放とうとする女を弾き飛ばす!

 

「秘剣!百花繚乱!!」

 

劣勢に女達は逃げていったが、それどころではない。

 

 

 

 

抱きしめて木乃香お嬢様の様子を確かめる。

 

すると目覚めたお嬢様が笑顔で私の顔を見つめる。

 

「……良かった」

 

木乃香が笑う。

 

泣いている。

 

怖かったはずなのに。

 

最初に確かめたのは、自分の無事ではなかった。

 

「せっちゃん、嫌われてへんかったんやね。」

 

……違う。

 

嫌ってなどいない。

 

嫌っていたのは。

 

弱い私自身だ。

 

木乃香お嬢様がいま腕の中にいる。

 

軽い。

 

温かい。

 

震えている。

 

その温もりだけで胸が締め付けられる。

 

私は何をしていた。

 

何を恐れていた。

 

守ると言いながら、

 

一番傷つけていたのは私じゃないか。

 

違う。

 

違う。

 

今は駄目だ。

まだ私は――─

 

「このちゃん、堪忍なぁ……ウチかて───」

 

血を吐くように呟き、涙を浮かべ

 

 

抱き締める腕に力が入る。

 

 

離したくない。

 

そう思ってしまった。

 

だからこそ、

私はその温もりから逃げるように背を向けた。

 

まだ私は、

この手で護る資格があるとは思えなかった。

 

しかし、その背に神楽坂さんから一緒に班行動しようと呼びかけがあった。

 

声で返事することは出来なかった。

 

けど、赤ら顔のままペコリと頭をさげた。

 

 

 

 

 

 

今後の料理店に来店して欲しい人。※項目に無ければその他で、感想で希望する人を。クラスメイト以外でも可。話の流れで直ぐには反映出来なかったりします。

  • 神楽坂明日菜
  • 龍宮真名
  • 長谷川千雨
  • 宮崎のどか
  • 古菲
  • 長瀬楓
  • その他
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