『calor ――理想の果てに灯る温もり――』   作:そもゆえに

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温もりの灯火

 

 

そして翌日。

 

修学旅行2日目、古都奈良。

 

かつては大和の都が在り、今回の修学旅行の京都と並んで寺社仏閣が多く、2日目の班での自由行動も東大寺で始まる。

 

「せっちゃん〜恥ずかしがらんと一緒に食べようや〜」

 

「お嬢様と一緒になど私には恐れ多いです!」

 

昨日のこともあるのか、お嬢様が私に声を掛けてくるのを避けて逃げ出そうとしても御膳を手追いかけてくる。

 

そんな出来事の後に、意外な出来事があった。

 

クラスメイトの宮崎さんが班行動を一緒にしようと提案したのだ。

 

そしてネギ先生も再度襲撃される危険性を考慮してもあるが、5班と行動を共にすることとなる。

 

それを待っていたかのように団子片手に私に笑顔を浮かべながら追いかけてくるお嬢様。

 

そして神楽坂さんは残りの班員の早乙女さんと綾瀬さんに半ば攫われていく。

 

残りはネギ先生と宮崎さんとなる。

恐らく朝にネギ先生に珍しく大声で誘った事と関係あるのだろう。私には理解しかねるが。

 

そして、私はお嬢様がニコニコと親しくしようと接してくれる事を受け止めきれず───結果的にお嬢様の守りは式神に任せて逃げ出す形になった。

 

今でも思い出す、昨日腕のなかで感じた木乃香お嬢様の温もりを。

 

そこに神楽坂さんから木乃香お嬢様と話をして欲しいと。

彼女は木乃香お嬢様のルームメイトであり、親友であるお嬢様の事を思って声を掛けてきたのだろう。

「すみません、ですが私がいると魔法がバレてしまう恐れが───何よりも身分が」

 

思わず呟くように自虐的に理由を呟く。

 

「アスナさん?桜咲⋯さん?」

 

そこに息をきらしながら宮崎さんが駆け込んできた。

 

なんでもネギ先生に告白しようとするも空回りでとうとう恥ずかしくなって思わず逃げ出してしまったと。

 

「一応教師とは言え、どうみても子どもでは?どうして?」

 

そう問わずには居られなかった。

 

「遠くから眺めてるだけでも満足だったんですけど、でも今日は自分の気持ちを伝えようとを思ったんです。なんだか2人と話せてスッキリしました。桜咲さんも怖い人かと思ってたんですけど⋯⋯そんな事なかったんですね〜」

 

宮崎さんの話す内容が、何処か自分にもあてはまると思えた───遠くで見守るだけで満足だと嘯いて

 

そして実際に、彼女はネギ先生に告白すると走り去っていった。

 

あんなに大人しそう子なのに、勇気⋯⋯⋯あるんだな。

 

───自分と違って。

 

ドクンと胸が疼いた。

 

まるで私とは違うと思ってしまったのだ。

 

あの温もりが、今は痛みを訴えてくる。

 

 

そんな中で朝倉和美に魔法が知られたという報せまで飛び込んできた。

 

気の休まる暇などない。

 

 

 

 

 

 

その夜。

旅館ではまた別の騒ぎが起きていた。

誰もが修学旅行の夜に浮かれていた。

──ただ一人を除いて。

 

 

 

───彼女は独り旅館の屋上で、二胡を手に月を眺めていた。

 

 

ゆらゆらと揺らぐ朧月。

 

まるで今の自分の朧気な心を映しているようだ───などと自分らしくない感慨に胸の燻りは増すばかりである。

 

気晴らしに、と超に渡されて久し振りに二胡を弾いてみたが、心情を写すかのように乱れるばかり。

 

東洋のヴァイオリンと評される楽器からは本来なら謳うような音色が───今の自分では奏でられない。

 

弦に弓が引っかかり摩擦音が、弦を押さえる指がズレて震えた音色となり、心を落ち着かせようとするとしても不協和音を奏でる。

 

深呼吸をしてスッと無心になれた瞬間だけ真っ直ぐと音が伸びる。

 

単純明快な気性であった筈の自分が、自分でも解らない。

 

若輩といえども、生を受け十余年───鍛練などで壁にぶつかる事もあったが、今回はまた違う。

 

どこがどう、すらハッキリせずに歯痒さを覚える。

 

二胡を弾く手を止めて耳を澄ませば、僅かに夜気に紛れて喧騒が小さく聴こえる。

 

恐らく級友らは今頃は修学旅行の夜を満喫するべく、派手な騒動に興じている。

 

ネギ坊主の唇争奪戦───以前の自分ならば、面白がって参加した。

 

だが───私は参加せず、此処で佇んでいる。

 

頭から離れない師父の詞と表情。

 

はからずとも偶然聞いてしまった師父の会話。

 

師父の言った“大切なモノ”

 

やはり、想い人を指しての事か?

 

ならば師父はかつて喪ったコトが在るのか──大切な想い人を。

 

思えば自分は彼の事を殆どロクに知らない。

 

そう改めて実感し、騒々と騒めき落ち着かぬ心。

 

あのcalorで感じていた温もりが遠い。

 

 

 

 

その姿を眺める少女───超鈴音。

 

普段の印象とは違い、複雑な思いと表情で溜息を漏らしている同胞の友。

 

別段気配を伏せていた訳ではないが、古菲は気付いていないようだった。

 

其処には武道家ではなく、少女としての古菲が居た。

 

ふと、彼女が見上げていた視線を降ろして──視線が絡み合う。

 

 

先程まで古菲が見上げていた宙を眺めつつ、どう声をかけたモノかと考えていると────彼女の方から、話し掛けてきた。

 

「───鈴音。聞きたい事が在るネ」

 

何処か思い詰めた感すら滲ませる少女に視線で促す。

 

「鈴音。」

 

「最近、自分がおかしいアル。」

 

どういう意味か。十中八九あの銀髪の男絡みだろう。

 

思わず失笑しかけ──ふと思う。

 

何故彼女が沈み込んでいるのかが、説明がつかない。

 

自分の知る古菲という人物では考えられない。

 

その乖離は、望ましいモノなのか。

 

古菲自身も自分の感情に戸惑っている様子であるが…

 

そういえば二胡の音色も、何処か迷いを感じさた。

 

またひとつ、本来の自分が知らない出来事が起きているのは確かだというコト。

 

とんっと軽い音とともに古菲の隣に座るのを確認し、話し出す。

 

「師父のことばかり考るネ。」

 

自分でもカタチに出来ないナニか。

 

「鈴音にはそんな人がいるアルか?」

 

何処か漠然としたことの手がかりを求めるように。

 

「そうカ───古、そうネ。それは⋯⋯⋯」

 

此方を眺めている古菲へ、指をしならせ。

 

「いぃい”⁠だいアル!なにするヨ!!⁠」

 

古菲の額をデコピンで弾く。

 

「私が答えを教えても意味はないネ。」

 

「それは本人に聞いて、本人に伝えるものヨ。」

 

額を抑え、少し涙目になりながら。

 

「そうアルね。変に悩むより、そく行動するのが私らしいヨ

!変に悩むなら行動するだけアル!!」

 

再び二胡を手に軽やかな弓と指捌きでひく。

 

そんな古菲の横顔を少しだけ悩ましげに眺める超。

 

(そうネ、私もそろそろ動き始めなくてはならない)

 

 

その夜。

 

まだ誰も知らない。

 

その小さな灯火が、

やがて京都を覆う闇の中で、

互いを照らす唯一の光になることを。

今後の料理店に来店して欲しい人。※項目に無ければその他で、感想で希望する人を。クラスメイト以外でも可。話の流れで直ぐには反映出来なかったりします。

  • 神楽坂明日菜
  • 龍宮真名
  • 長谷川千雨
  • 宮崎のどか
  • 古菲
  • 長瀬楓
  • その他
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