【Fate×ネギま】正義の味方の在り方   作:そもゆえに

3 / 4
第3話 異邦の英霊

――静寂。

 

異形は還った。

 

悪鬼も、式神も、まるで最初から存在しなかったかのように消え失せる。

 

戦場だった広場に、夜の静けさだけが戻ってきた。

 

その中で。

 

男が、ふと視線を上げる。

 

真っ直ぐに。

――龍宮真名の方へ。

 

ライフルスコープ越し。

視線が、合った。

 

「……」

緊張が走る。

確かに、彼は刹那を助けた。

少なくとも結果だけ見ればそうだ。

 

だが。

 

真名の記憶に、こんな男はいない。

 

麻帆良の関係者ではない。

何より。

強すぎる。

異常なほどに。

 

鉄火場を潜り抜けてきた真名だからこそ分かる。

あの男は、“場数”が違う。

 

ただの戦士ではない。

死地を日常にしてきた者の気配。

敵の敵は味方――などという楽観は、とうに捨てている。

すると。

 

男が先に口を開いた。

 

「――そこの狙撃手」

 

大声ではない。

 

だが、不思議と声はよく通る。

 

「君は彼女の仲間なのだろう?」

 

淡々と。

事実を確認するように。

 

「ならば、そこで私を観察しているより、彼女の治療を優先した方がいい」

 

真名は小さく眉を寄せる。

……正論だ。

刹那の負傷は軽くない。

既に無理を重ねている。

警戒すべき相手。

 

だが。

 

今この場で敵対するのは悪手。

 

戦力差を考えても、選り好みできる状況ではない。

真名は木陰から姿を現した。

男の傍まで歩み寄る。

 

改めて見ると、やはり異質だった。

 

銀に近い白髪。

 

鋼のような眼差し。

 

戦場の匂いを纏う男。

 

「治療できる者はいる」

 

真名が短く告げる。

 

「ただ、すぐ来られる保証はない。今夜は他も襲撃されている可能性が高い」

 

刹那を見下ろしながら続ける。

 

「こちらから向かった方が早いが……」

 

怪我人は、動けない。

 

男は僅かに黙った。

そして。

 

「……その治療術師」

 

言いかけて、僅かに言葉を選ぶ。

 

「――魔法使い、か。位置は近いのか?」

 

真名は肩をすくめる。

 

「遠くはない。だが、近いとも言えない。麻帆良は広いからね」

 

男は一瞬だけ考える素振りを見せた。

 

そして。

諦めたように、小さく息を吐く。

 

「仕方ない」

 

次の瞬間。

彼は自然な動作で、刹那の身体を抱き上げた。

 

「――っ!?」

 

横抱き。

いわゆる、お姫様抱っこ。

傷に響かぬよう配慮された、実に合理的な運び方。

だが。

 

合理性と乙女心は一致しない。

 

「な、ななな……!」

 

刹那の顔が一気に赤くなる。

反射的に離れようともがく。

しかし。

「っ……ぅ」

 

鈍い痛みに顔を歪めた。

 

男はそんな彼女を一瞥し。

「暴れない方がいい」

ひどく事務的に言う。

「怪我に響く。これが最も負担が少ない」

 

――いや。

身体ではない。

もっと別の意味で負担が凄まじいのだが。

そんなことを口に出せるほど、刹那は器用ではない。

 

男は続けた。

 

「私のような者に抱えられるのが不快なのは理解する」

返り血。

泥。

煤。

確かに彼の姿は、お世辞にも綺麗とは言えない。

だが。

 

「今は命を優先するべきだ」

 

少しだけ。

ズレていた。

 

「……」

 

真名は内心で苦笑する。

どうやら、この男。

強さの割に、妙なところで鈍いらしい。

 

「先導を頼む」

 

その一言を残し。

男は夜の森を駆け出した。

その足取りは、負傷者を抱えているとは思えぬほど静かで、速い。

 

――こうして。

異邦の英霊は。

誰にも知られぬまま、麻帆良という異界へ最初の一歩を踏み出した。

 




独自解釈強めです。
大体1話が2000字程度で、1章が3話程度で更新します。
次は2章となります。感想や評価をして頂けると嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。