『calor ――理想の果てに灯る温もり――』   作:そもゆえに

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第28話 温もりを護る剣

 

麻帆良学園、calor店内には銀髪の青年と金髪の少女、翡翠色のをしたメイド。

 

エヴァンジェリンがアフタヌーンティーで、スコーンにジャムをつけて食べようとした時。

 

「───エヴァ」

 

「ふん、この魔力の波動は近衛木乃香、か」

 

スコーンを置き、ミルクティーで喉を潤す。

 

「チッ、せっかくのアフタヌーンティーの途中だというのに風情がないな」

 

気怠げだが、視線は鋭く西の方角───京都へ向ける

 

 

「そうも言ってられないのも分かっているだろうに。私は準備が済み次第。エヴァは手筈どおりに学園長へ」

 

「あぁ、とは言っても此方は行く方法がまだハッキリしない。先に行って露払いをしろ」

 

「了解した。マスター」

 

短く返す。

 

魔術で霊素で編まれた黒いボディアーマーを纏い、聖骸布のマントを翻す。

 

店の扉へ向かう。

 

後ろから声が飛ぶ。

 

「死ぬな。」

 

振り返らない。

 

「ああ。」

 

それだけ言って店を出た。

 

ティーカップだけが、

 

まだ温かかった。

 

 

 

扉の閉まる音を背に、

 

店を出る。

 

一歩。

 

二歩。

 

人気のない路地へ入る。

 

魔力が静かに巡る。

 

投影開始。

 

黒い外套の下、

 

一振りの剣だけが形を持った。

 

 

 

 

着いてきてしまった一般人である5班の人達を巻き添えにしないよう、ネギ先生とあえて別行動にしたのが裏目にでた。

 

式神を通してだが、ネギ先生は何とか窮地を脱したようだが疲弊が激しい様子だ。いや、ある程度の安全が確認できたのだ。これ以上意識(リソース)をさく余裕はない。

 

「こんな白昼堂々と⋯⋯皆さん私から離れないで下さい!すみません」

 

シネマ村で衆人環視で手を出し難くするのは、今のところ上手くいっている。

 

───すると

 

「せっちゃん、こっち見てぇな」

 

そこには口いっぱいに饅頭を頬張って変顔をしているお嬢様がいて、思わず笑ってしまう。

 

「やっと笑ってくれた、せっちゃん」

 

「……このちゃん。」

 

一度言葉が止まる。

 

「すみません。」

 

その一言だけで、

 

今までの後悔が滲んでいた。

 

 

卵焼きの甘い香り。

 

差し出された笑顔。

 

あの日、

 

閉じていた私の心を、

 

あの人は、

 

何も言わず開いてしまった。

 

だから。

 

 

「このかお嬢様───傲慢かも知れませんが、このちゃんにも温もりを与える存在になりたい」

 

「せっちゃん、そんなことはないぇ。おかしいなぁ、嬉しいのに泣いてまうわ。本当に嬉しいときは嬉し泣きするってほんまやったんやねぇ。」

 

木乃香が胸に飛び込んで抱きしめてくる。

 

恐る恐る腕を回す。

 

木乃香は何も言わず、

 

少しだけ抱き締める力を強くした。

 

温かい。

 

柔らかい。

 

この温もりを、

 

私はもう、

 

───失いたくなかった。

 

「麻帆良に帰ったら、シロウさんにお礼言わなアカンなぁ。うち知っとるんよ、せっちゃんがよぉ笑うようになったの」

 

この温もりだけは、

 

もう離したくない。

 

 

そんな思いを嘲笑うかのように、

 

少女が立っていた。

 

 

月詠が笑う。

 

笑っているのに、

 

瞳だけは笑っていない。

 

獲物だけを見据える、

 

飢えた獣の目。

 

思わず息を呑む。

 

(速い。)

 

違う。

 

(軽い。)

 

それも違う。

 

(斬ることだけを考えた剣。)

 

温もりが残る腕。

 

その余韻を断ち切るように、

 

空気が変わる。

 

腕の中の木乃香が、

 

びくりと震えた。

 

「安心して下さい、お嬢様は私が必ず護ります」

 

私の笑顔を見て怯えが落ち着くのを見て、すっと木乃香お嬢様を後ろに下がらせる。

 

 

それを待っていたと言わんばかりに  

 

嘲笑いながら斬り込んで来た。

 

歓声が聞こえる。

 

悲鳴も聞こえる。

 

だが、

 

もう振り返る余裕はない。

 

目の前には、

 

月詠しかいなかった。

 

 

そんな戦闘の最中に、ネギ先生の式神が駆けつける。

 

「刹那さん、大丈夫ですか!」

 

「ネギ先生!」

 

「はい!」

 

「このちゃんを!」

 

それだけで通じる。

 

ネギは頷く。

 

式神が、

 

ネギを等身大へ姿を変える。

 

「行って!」

 

その直後に斬り込んで来る月詠!

 

やはり狙いは私か!

 

「二刀流〜ざんがんけ〜ん!」

 

口調と裏腹に二刀から繰り出される濁流の如く激しい剣戟を夕凪を振るい斬り落とし、更に斬り返す。

 

金属音。

 

火花。

 

また一閃。

 

息をつく暇もない。

 

小太刀が、

 

蛇のように懐へ潜る。

 

夕凪で払う。

 

踏み込む。

 

また消える。

 

速い。

 

斬る。

 

防ぐ。

 

届かない。

 

月詠もまた、 私を捉えきれない。

 

決め手だけが、 足りなかった。

 

膠着した状態でせめて、お嬢様だけでも無事にと思った。

 

───だがその時、場を支配する声が響いた。

 

 

「聞ーとるか、お嬢様の護衛の桜咲刹那!お嬢様の身を案じるなら、これ以上手を出さんとき!!」

 

屋根の上。

 

木乃香お嬢様。

 

鬼。

 

弓。

 

お嬢様が屋根で鬼に矢で狙われている。

 

その事実に血の気が引き叫ぶ。

 

「お嬢様っ!!」

 

このかお嬢様へ駆けつけようとするも月読に妨害される。

 

その時。

 

突風が吹き思わずたたらを踏む、このかお嬢様。

 

動けば矢を射るという命令を即座に実行した鬼。

 

恐らく想定外だったのか、女の叫び声が聞こえる。

 

それは些事だ。

 

その行為よりも更に速く、気が付けば私はお嬢様の前まで駆けてつけて盾となり立っていた。

 

その光景に敵である月読すら声をあげる。

 

熱い。

 

違う。

 

冷たい。

 

肩から力が抜ける。

 

それでも、

 

木乃香の身体に矢が届かなかった。

 

それだけで十分だった。

 

 

その衝撃によって屋根から吹き飛ばされて宙に浮き、浮遊感を感じる迄もなく直ぐ様落ちていく。

 

(すみません、お嬢様。約束は守れませんでした───)

 

落ちる。

 

風が鳴る。

 

終わった。

 

そう思った。

 

だが。

温かい。

柔らかい。

胸元へ、

誰かが飛び込んできた。

 

「……このちゃん?」

 

腕の中には、

泣きそうな顔の木乃香がいた。

 

 

せめて少しでも衝撃を抑えられるように抱きしめ返す。

 

地面への落下の衝撃はなく。

 

 

淡い光。

 

木乃香の胸元から、

 

白い魔法陣が広がる。

 

何が起きたのか分からない。

 

だが、

 

痛みだけが消えていく。

 

傷跡ひとつなく癒されている。

 

この光景に木乃香が1番驚いている。

 

おそらく無意識にチカラを使ったのだろう。

 

今の騒動で一旦敵は退いたようだ。

 

なんとかネギ先生が親書を先に届けて貰う手筈だった───これ以上は限界だ。ならば此方も考えなければ。

 

相手は一般人へは手を出さない。

 

少なくとも、 今はまだ。

 

「お嬢様、今からご実家に参りましょう。そこで神楽坂さん 達と合流しましょう」

 

既に自分一人ではお嬢様を守ることは難しい。

 

 

ならば、ネギ先生達と合流してお嬢様のご実家に向かう事が1番安全な選択肢となる。

 

お嬢様を抱えて、気を用いて跳んでシネマ村を飛び越え駆け抜ける。

 

 

今後の料理店に来店して欲しい人。※項目に無ければその他で、感想で希望する人を。クラスメイト以外でも可。話の流れで直ぐには反映出来なかったりします。

  • 神楽坂明日菜
  • 龍宮真名
  • 長谷川千雨
  • 宮崎のどか
  • 古菲
  • 長瀬楓
  • その他
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