『calor ――理想の果てに灯る温もり――』 作:そもゆえに
3-Aが修学旅行中は閉店していたcalorだが、修学旅行から帰った3-Aの面々とともに再びオープン。
修学旅行が激しかった分、普段の日常へ戻っていく中でも余韻を残す。
「なんで店主である私が追い出されているんだ」
額に手をあて項垂れる。
「シロウさん、すみません。あとマスターから『楽しんできてください』とのことです」
私が知る由もなかったが、あの修学旅行の激戦の中でcalorで女子会を開く事を話してたそうだ。
いや、それは良い。
実際に刹那や木乃香、神楽坂の3人で1テーブルを囲んでの女子会は微笑ましいものだった。
しかし、今回の女子会は───
「ふふ、済まないねシロウさん。女子会という場に男は不要なんだ。今日は私たちが貸し切りにさせて貰うよ。ちゃんと費用は払うから問題ないだろう?」
まさかの真名も乗り気で言われては仕方ない。
ケーキやお菓子は事前に私が用意、更に焙煎した珈琲を茶々丸が給仕するとの事だ。
「さて、シロウさんは行ったようだ」
「女子会がどんなのかはさておき、シロウが居ては喋りたい事も喋れんからな」
「ケケケ、御主人は楽シミスギテ鼻歌クチズサンデタカラナ」
上座にはエヴァンジェリン、茶々丸、チャチャゼロ。さらにテーブルの両隣は真名と刹那が座り、エヴァンジェリン達の向かいに古菲が座っている。
エヴァンジェリンが言っているように、全員女子会とは縁遠い。一般的なガールズトークなどを長く眺めてきたエヴァや、ノリで飛び込んで話に入る古菲などは居る。
そんな中で。
「さて、今さらこの面子で恋バナなどいったトークは無縁だな。だが、そもそもこういった場面で話をする機会や余裕もなかったから修学旅行の思い出でも喋ってみようか」
意外にも音頭取りをしたのは龍宮であった。
確かに登校に縛り続けられたエヴァンジェリン、木乃香を陰ながら支えるので精一杯でクラスメイトと話すことすら稀であった刹那など。
普通の少女、女子中学生らしい生活を送ってこなかった面々だ。
「ん〜そうあるネ。私は超やハカセと一緒の班で、日本の珍しい文化を楽しんでたヨ。」
中国出身の古菲にとって仏教は比較的馴染んでいるが、日本特有の神社仏閣巡りはまた違った楽しみがあったのだが。
「最終日が酷かったあるヨ〜超やハカセは悪魔あるヨ。しかも朝倉に写真まで撮られたネ⋯⋯」
「悪魔でなく科学者だな。変なマシーンの実験体になったんだったか」
「ケケ、マッドサイエンティストッテ奴ダナ」
「ふふっ、たしかに、あの写真は」
「刹那にまで笑われたのが1番ショックあるヨ!?」
卒業アルバムに使われるであろう写真だが、朝倉に見せて貰った口一杯に肉まんを頬張った古菲の姿には思わず笑ってしまう。
「くく、そう言えば坊やは先生しながら、宮崎に告白されたり他にも仮契約を量産したそうだな」
「インコー教師ッテヤベェダロ」
チャチャゼロの言葉に、ネギの年齢はともかく教師という点で考えると普通に事案だと気づいた。あとネギのせいでは有るが、式神を提供した刹那はキス騒動の何気なく共犯と言えなくもない。
「あ、アレは戦闘の為の物というか、勿論そのネギ先生の年齢的にはノーカウントというか!」
あたふたとしながら喉の渇きを癒すのと誤魔化すのに珈琲を口に運ぶ。
「そう言えば刹那は本物のネギ坊主とキスしたあるネ!その⋯⋯どんな味がしたあるか?」
恥じらいながら聞く古菲に、口に含んでいた珈琲を思わず吹き出す刹那。乙女らしかぬ行為で、正面から珈琲を浴びた龍宮はそれどころではなかったが、話題が変えれるチャンスと捉え刹那が話しかける。
「そ、そう言えばエヴァンジェリンさんや茶々丸さんは最終日だけでしたが、どうでしたか京都観光は?」
「ふむ、非常に有意義な時間だった。次に出れるのは暫く先になるだろうからな。茶々丸も初めての事だらけだったろ、ハカセがデータ回収に興奮していたぞ」
やっぱりマッドサイエンティストなのかもしれない。
「はい、マスターや皆さんと一緒に旅行出来て凄く有意義な時間でした。特にシロウさんに抱き抱えられてた姉さんが」
今度はニヤニヤしていたチャチャゼロがパフェを盛大に咽る。
「テメェ、変ナ言イ方シテンジャネェ!シカモ何時ノ間二見テタンダヨ!?」
「へぇ、本当なんだ。殺戮人形を手籠めにするなんてヤルじゃないかシロウさん」
龍宮のその言葉に思わず頬を染めて、ちらりとチャチャゼロを見つめる古菲と刹那。
「マジデ辞メロ!ブッコロスゾ!?」
刀を取り出そうとするがエヴァンジェリンが魔力の供給を絞って動けなくする。
茶々丸がシロウの頭の上でまんざらでもなさそうな姿のチャチャゼロの写真を取り出して、チャチャゼロが絶叫するも動けない。
「クリームを口元につけて叫ぶ姉さん⋯記録しておきます」
ギリギリと歯軋りを上げそうなチャチャゼロを眺めながら。
「そうだな、ヤツも最終日に合流した口だったな⋯」
そう言って黙って思いにふけるエヴァンジェリン。
話題にあがった事もあり、少し声色を整え、顔を拭きながら龍宮が話題を変える。
「さて、今度はコチラ側での話でもしようか。警備員仲間で腕前を知ってたつもりだったけど、改めてシロウさんの腕前を見せつけられたよ。スナイパーとして背中を預けるのに悪くない」
「私は……月読や化生のとの戦いよりも、お嬢様を護りきれなかった事、他人に頼る事が出来なかった自分が悔しく感じました」
下唇を噛みながら言う刹那。
「私は、師父が来てくれて嬉しかったのに、何故か師父が居なくなってしまうのが頭に浮かんで怖かったアル」
シロウが異世界から来たと知っているのはほんの1握り、ネギ達すら知らない事だ。
古菲は預かり知らないが本能的に感じたのだろう。
「⋯⋯⋯。」
何か思うことがあるのか、どこかぼうっとした表情をみせるチャチャゼロ。
「マスターに仕えてこその従者である、と」
「フンッ。それで貴様らはどうするのだ?ただその場で立ち止まって地を見つめ、ただ無為に天を見上げるのか」
エヴァンジェリンが不敵な笑みで皆へ視線を向ける。
「借りは作らない主義だ、借りは返すさ」
「私はもっと強くなります。お嬢様を、皆を護れるように」
「今度は守られるんじゃなく、私も皆を守るアル。師父のように」
「私もマスターを、皆さんを守ります」
「⋯⋯⋯」
「マスター?」
みんなの言葉を黙って聴いているエヴァンジェリン。
「私は昔、このような時間は無意味だと思っていた。する必要もなく、茶番としか思えなかった」
「⋯⋯⋯?」
エヴァンジェリンの言葉に疑問符を浮かべる。
暫く瞠目していたエヴァンジェリン。
「……悪くない。」
この女子会とやらに用意されているお菓子や、珈琲豆の匂いがヤツの存在を感じさせる。
ポツリ、と刹那が言葉を零す。
「皆さんは私を受け入れて下さったのに⋯私は私自身を受け入れられて居なかったんです。でも、今回の女子会で前向きに時間を掛けながら折り合いをつけられそうです」
暫くの沈黙にちらりと瞳を開くと今更かといった表情で見つめているのに気がつく。
「たかが半妖程度で悩むとは贅沢な。貴様が目の前に居る私は吸血鬼の真祖なんだぞ。呪いで縛り付けられているが」
「こういう場合はロボットや殺戮人形のどちらが厄介と思うかな?まぁ今まで抱え込んで生きてきた事をいきなり変えるという事こそ、不自然なものさ」
龍宮もおどけたように肩をすくめる。
自分が居ても良い、彼女たちの言葉と雰囲気に涙が浮かぶ。
「刹那、詳しい話とその涙は木乃香に伝えるのに取っておけ。この場には相応しくないよ」
そんな話をしていると、何時の間にか夕日が店内に差し込んでいた。
チリンとドアベルが鳴った。
「終わったか?」
シロウが扉を空けて入ってくる。
「いや、まだだよシロウさん」
「?」
「シロウさん。今日の女子会の感想を。」
「店の中から笑い声しか聞こえなかった。」
「それで十分だよ。」
「聞こえてたのか!」
「アイヤー!」
「ケケケ、別ニ楽シンデネェ。」
「マスター。」
「う、シロウさん」
それぞれの反応が返ってくる。
にやり、とエヴァンジェリンが笑う。
「なら、この女子会とやらは成功だったな」
詳しい内容は分からない、だが今日もcalorには温かな笑顔が灯っていた。
皆が帰った後。
シロウが改めて淹れた紅茶。
エヴァンジェリンは空になったティーカップを見つめる。
「くだらん。……だが、不思議と心地良かった。私も変わったものだ。」
「ん、そうだな。だが切っ掛けはどうあれ、君が変わろうとしたからこその変化だ。少なくとも私は好ましいと思っているよ」
今後の料理店に来店して欲しい人。※項目に無ければその他で、感想で希望する人を。クラスメイト以外でも可。話の流れで直ぐには反映出来なかったりします。
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神楽坂明日菜
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龍宮真名
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長谷川千雨
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宮崎のどか
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古菲
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長瀬楓
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その他