『殿下ぁ!!早く脱出をぉ!!殿下ぁ!!』
「何故だ!?何故脱出装置が動かぬ!?死ぬのか、私が!?嫌だ、助けて姉上!!兄上!!……父上ぇぇっっ!!」
演技の断末魔を響かせつつ、頃合いを見計らって通信機に拳を叩きつけて破壊する。それなりに頑丈だったはずの装置をものともしなかったこの金属的な輝きを放つ身体の頑丈さに、目論見通りいくのだろうかと一抹の不安を覚えながら、爆炎に飲み込まれていくこの操縦席――いや、正確には「銀河帝国ギャクヒドーア」皇族専用機『ヒドアスⅣ』そのものが今にも爆発しようとしているのだが――で、何故かまだ映っているモニター越しに見える黄金と5色に染まる敵機の姿を、胸に焼き付ける。
「……やっぱり、眩しいくらいにかっこいいな、ヒーローのロボットというのは」
いや、ここが特撮ヒーロー風の世界だからって地球のロボと異星の守護神が問題なく合体してるのはどういうことやねんと戦闘中に驚いてしまったが、些細なことだ。テレビ番組なら『前半ボスを倒す強化合体ロボのお披露目回』になるだろうこの戦いへ無事たどり着けたことに……その行き着く先が今世における自分の死であっても全うできたことを、元地球人としては誇りに思いたい。
いや、異世界転生した先が特撮ヒーローな世界観の、悪の帝国の皇子と言われても頭を抱えるしかないだろう。しかも、コッテコテな悪の怪人っぽいスーツ風の生命体なら余計にだ。
それでいて母親は地球人っぽい風体だったのだから嫌だった。なまじ産まれた直後から意識があったせいで、(名目上)母のこちらを見る目が絶望と恐怖に彩られたまま事切れたのはトラウマになっている。
それを契機に、私こと『銀河帝国ギャクヒドーア第二皇子』である『ジョウンティン・ギャクヒドーア』の今世が、走馬燈のように駆け巡りだす。
そもそも私が産まれたのが、父たるギャクヒドーア皇帝が、滅ぼした星の王家である母を戦利品として戯れた偶然の結果なのが酷い。
ギャクヒドーアは皇帝至上主義である為、『皇后』という存在はいない。皇帝の慰み物になった結果、子を産む『母体』になれればそれが名誉だと言わんばかりの世も末な国だ。
そうして産まれた子が私含めて3人しか居ないのは、この帝国がまだ急速な拡大途中であり皇帝一族を倒せば食い止められる証である一方、秩序側たる組織がこの銀河に存在しない証となったのは幸か不幸なのかわからない。
こうしてこの世に悪鬼の子として産まれ落ちてしまった私は、地球人換算で齢5歳程だった母の妹……つまり叔母を侍女としてつけられ、それはもう大事に育てられた。
どうも我が父たる皇帝は、私に宿る(転生特典と言うべきかわからない)著しい潜在能力を母方由来のものと誤認しているようで、その唯一の生き残りとなった叔母とダビスタすればより潜在能力の高い孫ができて帝国が盤石になるのではないかと画策し情を湧かせる為にこう配置したようだが……赤子の私から見ても心を閉ざし能面のように無表情なので、そんなことはないだろう。
さて、私の誕生を契機に我が父たる皇帝は早々に次期後継者として私を指名したのだが、皇位継承者としては兄である『リチャルドン・ギャクヒドーア』と姉である『マーティル・ギャクヒドーア』が既に存在している状況だったりする。父たる皇帝の決定に内心不満を持ち骨肉の争いとなれば銀河規模としては嬉しかったのだろうが、残念なことに歳の離れた弟ということで可愛がられてしまい、むしろ親子間の結束を強める鎹と私はなってしまった。
そうして、英才教育を施されながら地球人換算で15歳となったその日。銀河帝国ギャクヒドーアは新たな侵略先として地球を選び、その指揮官を私が務めることとなった。
程々に知性の高い生命体が存在し、事前偵察の結果では危険視する程の存在は見受けられなかった為、次期皇帝である私の箔付け先として、不幸にも選ばれてしまった。
正直憂鬱だったが、地球へと赴きつつ更なる偵察員(兼こちらを裏切ってほしくて)叔母の『カリア』を派遣しつつ、地球国家へ戦線布告して――
もはや遠い記憶の彼方に霞んでいた、『5色の戦士達』と、邂逅した。
後はもう、やるだけだ。父の部下達に悟られぬよう
私の戦死を知れば、怒り狂った兄姉や父が地球へ襲来するだろう。地球にしてみれば迷惑極まりない話だが、『5色の戦士達』ならばきっと父達の野望を打ち砕いてくれるはずだと信じたい。
「とはいえ、表立って反乱もせずに罪なき人々が苦しむのを見て見ぬふりしていた私に願われても、それこそ迷惑極まりないか」
走馬燈が終わる頃には、爆炎はより激しく操縦席を包み込んでおり、『ヒドアスⅣ』がもうじき派手に爆散することが感じ取れた。色々と嘆いてしまった今世だが、最期は悪くなかった……いやどう取り繕っても悪人側だから悪いわ、うん。
そうこう考えていると、叔母であるカリアの顔が浮かんできた。地球人換算だとまだ大学生ぐらいの歳だ、これからこの新天地で、我々が奪ってしまった人生を取り戻し健やかに暮らしてくれると、嬉しい限りだ。
「あなたの家族を奪った私が言うのも烏滸がましい話ではあるのですが――どうかお幸せに、叔母上」
そうして、私の視界は爆炎に飲み込まれていくのだった。
「……あなたに、『叔母上』などと呼ばれる筋合いはありませんよ」
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結論から言うと、目を覚ました私はなぜか『ヒドアスⅣ』から助け出され『5色の戦士達』の基地に囚われていた。なんでぇ?
「いや、囚われてもないでしょ特に拘束とかもしていないんだからさぁ」
「ええい
「思わないからこの待遇なんじゃ〜ん?うりうり〜♪」
名目上監視役になっている『桃』の戦士が、ニマニマと笑みを浮かべながら煽ってくる。くそっ、こういう奴苦手だ!!頬をつつくな頬を!?
「そうは言ってもね、君はこの
「理性での納得と感情は別の話だ!!」
『桃』の戦士の行動に呆れながら、『青』の戦士が改めて私の置かれている状況を説明してくる……そう、この世界の地球は思った以上に修羅の世界だったのだ。
異世界からの侵略者、古代に封印された魔神を崇める秘密結社、災害級の怪獣等……ギャクヒドーアの偵察部隊が来た時はたまたま主戦場が異世界サイドで露見してなかっただけで、対侵略者のノウハウは恐ろしい程貯えられていた。
その中には、私のような『転生者』に対する扱いも含まれているらしい……そりゃそうだな!!古代の存在の生まれ変わりとか普通に居てもおかしくないもんな!!パラレルワールドな地球からの転生者とか許容範囲だな!!
そんな訳で、『5色の戦士達』と叔母上が本格的に接触した段階ではもう私は『要救助者』扱いだったらしい。なんだろうこの割り切れない気持ち……
「……君が自分を『罪人』だと思っているのなら、これからの行動で償えばいい。さすがに我々も銀河規模の敵性存在と戦うのは未知の領域だからな。君の協力は必要不可欠だ」
「他にも『
心温まる言葉をどうも。ただ『黄』の戦士のストッパーはしっかり頼むぞ『赤』の戦士。
ちなみに『緑』の戦士は叔母上とデートらしい。そのまま嫁にしてくれると私は嬉しいぞ『緑』の戦士。叔母上はなんだかんだ侍女としてハイスペックな人材だったからな。
あと気を失ってる時に叔母上の星の守護神から変身アイテムみたいなのを託される夢を見てそれが腕に知らないうちに巻かれてたりするんだがどう考えても渡す相手間違ってるだろおい。
そんなこんなで、『5色の戦士達』や叔母上と共にギャクヒドーアから銀河を救う戦いに身を投じることになった私なのだが……それはまた、どこかの機会にでも。