氏名 英二郎
指定区分 代表候補/資格審査中
代表手当 90,000
扶養送金 50,000
五輪金メダル獲得時報奨 50,000,000
扶養世帯
母 同居外扶養/長期療養中
弟 同居外扶養/就学中/薬物使用疑義
父 死亡
住居保障 適用
医療保障 適用
食糧加給 適用
保障区分 甲
「三分やろう。一度でも僕のコアに触れれば、君の勝ちだ」
監督者立ち会いなら、レオンさんとの対人訓練は許されている。
私的な会話は禁止されたままだ。
「行きます」
右ストレートを打つ素振りで踏み込んでもレオンさんは構えを崩さない。
もう一度フェイントを入れても反応はなく、これ以上探っても無駄だと見切った。
左のジャブを突くと、レオンさんはわずかに顔を引いただけだった。
二発目を突いた瞬間、レオンさんがその下へ深く潜り込む。
頭頂部と背中が見えた次の瞬間、顎の下で衝撃が弾けた。
「ぐっ――」
アッパーで頭が跳ね上がり、視界いっぱいに天井が飛び込んでくる。
よろけた身体を右脚で踏み止めると靴底が床を擦った。
床を蹴り返すと右肩で短い作動音が鳴り、体勢が戻る前に右ストレートを振り抜く。
右拳を顔面すれすれまで押し込むと、レオンさんが初めて半歩退いた。
左肩から白いコアが覗き、そこへ拳を伸ばした瞬間に肩を引かれる。
横へ抜けるのを追って身体を向け直すと、レオンさんはぴたりと足を止めた。
姿勢はまったく崩れず、次の動きを示す兆候もない。いつもなら視界に出る動作予測も表示されなかった。
それでもレオンさんは仕掛けてこない。
ただこちらを見たまま、次に俺がどう動くのかを待っている。
俺は何度も動かされているのに、レオンさんにはまだ余裕があった。
完全に向こうのペースだった。
次が読めないならこちらから動かすしかない。
右肩を作動させてさっきと同じ音を鳴らし、レオンさんが反応した瞬間に左から踏み込む。
指先が白いコアへ届く。
そう思った瞬間レオンさんが肩を引いて上体を捻り、あとわずかなところでコアが逃げた。
指先だけが肩の装甲を滑っていく。
「惜しかったな」
レオンさんの口元が少し緩んだ。
俺も構えを解かないまま息を吐いた。
その後も何度か仕掛けたが、コアには届かなかった。
残り時間は十秒を切っていた。
踏み込んだまま拳を振る。
かわされても止まらず逃げた先へ次を叩き込み、戻しきる前にはもう次の拳を押し込んでいた。
レオンさんが下がる。
それでも拳を止めず、かわされた先へ次々と重ねていく。
一発かわされるたびにもう一発、その先へさらに一発。
右肩の作動音はいつしか一つ一つ聞き分けられないほど繋がっていた。
「そこまで!」
監督者の声に拳を止める。
レオンさんも数歩離れたところで足を止めた。
「よくやったな。最後は少し焦った」
レオンさんが笑う。
俺も息を吐きながら右肩の出力を落とした。
「じゃあ今度は逆でやるか」
「逆?」
「僕が君のコアに触る。君は三分逃げ切れば勝ちだ」
監督者が了承し、今度は俺が距離を取って構える。
「始め!」
レオンさんがゆっくり間合いを詰めてくるが、次の動きを示す兆候はない。
あと一歩まで入ったところで肩が動き、その瞬間にはもう拳が顔の前まで伸びていた。
身体を外してかわした直後、そのまま懐へ入られる。
脇腹を守るより早く白いコアに指先が触れた。
「そこまで!」
レオンさんが指を離して一歩下がった。
時計はまだ二分五十二秒を示している。
開始から八秒で、俺の負けだった。
あまりにあっけなく終わり、どうして触れられたのか自分でも整理できなかった。
「理由は簡単だよ。予備動作を出さないようにしてる」
考えがまとまるより先に、レオンさんが答えを出した。
「生身の頃からやってたんですか」
「生身の頃に覚えた感覚を、今の身体で一から作り直したんだ」
それなら、さっきの八秒も少しだけ納得できた。
何気なく訓練端末の対戦者情報に目をやると、生年月日は俺と同じだった。
「同い年なんですね」
「もっと上かと思ってました」
「おい、それは失礼だな」
レオンさんが笑うのにつられて、俺も笑った。
構えを解いたあと、もう一度端末の生年月日を見た。