氏名 英二郎
指定区分 代表候補
五輪出場資格 不認定
代表手当 90,000
扶養送金 50,000
五輪金メダル獲得時報奨 50,000,000
扶養世帯
母 同居外扶養/長期療養中
弟 同居外扶養/就学停止中
父 死亡
住居保障 適用
食糧加給 適用
医療給付 適用※
保障区分 甲
※医療給付は国家指定医療機関における承認済診療に限る。国外診療および未承認治療は給付対象外
右拳を叩き込むとサンドバッグが大きく跳ね、吊り下げた鎖が激しく鳴った。
あの時レオンさんが何に反応したのか考えながら動きを変えて何度か試した。
それでも相手がいない以上、どれが正しいのかは分からなかった。
結局何も掴めないまま腹が立ち、サンドバッグを思い切り殴った。
揺れが収まらないうちに端末が鳴った。
そのまま放っておこうとしたが、通知欄に再戦申請の文字が見えて手を止めた。
レオンさんとの再戦について行われていた安全審査が終了していた。
前回の危険攻撃に対する処分はすでに済んでおり、同じような行為がもう一度認定された場合は選手資格を取り消すという条件で再戦が認められていた。
その下にはレオンさんも再戦に応じる意向を示したと書かれている。
最後まで読んでから、もう一度その部分を読み返した。
次に戦うなら、あの時とは違うやり方でレオンさんを動かしてみたい。
昨日クラブで踊っていた時は、相手を動かそうとするとかえって動きが合わなかった。
けれど自分から場所を空けると、何も言わなくても相手が自然についてきた。
レオンさんにも同じことができるのかもしれない。
それから数日後、競技委員会から正式な試合日程が届いた。
試合は三週間後で、対戦相手の欄にはレオン・フォン・アルヴァインと書かれていた。
予定表に追加された日付を見て、再戦が急に現実味を帯びた。
画面を閉じようとしたところで、もう一件通知が届いているのに気づいた。
国家代表選手向けの追加通知だった。
今回の試合でレオンさんがオリンピックに出場できなくなれば、特別報奨が出ると書かれていた。
前回と同じやり方は使えないが、報奨が出るなら狙わない理由はなかった。
再戦を受けてくれたレオンさんには、まだお礼を言っていなかった。
また戦えるのは嬉しかったが、俺はその相手をオリンピックに出られなくして報奨金を得ようとしている。
それでも前に交わした食事の約束は果たしたかった。
合同合宿でこちらにいる今なら都合も合わせやすいと思い、今夜の予定を尋ねるメッセージを送った。
食事の誘いに応じる返事が届き、肉料理の店を予約した。
夕方、店の前で待っているとレオンさんがやってきた。
「お待たせ」
「今日は俺が払いますから、好きなものを頼んでください」
「もちろん。その約束だったからね」
席に着くとレオンさんも俺と同じ骨付き肉を頼み、やがて皿からはみ出すほど大きな肉が運ばれてきた。
焼き目のついた肉にナイフを入れると湯気が立ち上り、口に運ぶと脂の甘みが広がった。
「うまい……」
思わず声が出ると、向かいから笑い声が聞こえた。
「いい店を選んだな」
「よかったです。写真だけで選んだので少し心配でした」
レオンさんも肉を口に運び、何度か噛んでから満足そうに頷いた。
しばらく料理を楽しみ、食事が一段落したところで再戦の話を切り出した。
「再戦を受けてくれてありがとうございました」
「僕も君ともう一度戦いたかったからね。礼を言う必要はないよ」
その言葉を聞いても素直に喜べず、俺は食事を続ける前にもう一つ話しておくことにした。
「今回も国から特別報奨の通知が届きました」
「レオンさんがオリンピックに出られなくなれば、金が出るそうです」
向かいで肉を切っていた手が止まり、ナイフが皿の脇に置かれた。
「報奨金は狙います。それでも、一緒に飯が食いたかったんです」
「……そうか」
「君にそう言われると、返事に困るな」
レオンさんは苦笑して、置いていたナイフを手に取った。
「まあ、次の試合次第だろうね」
「はい」
「とりあえず今日は、ご馳走になるよ」
そう言って残りの肉を切り始めたので、俺もナイフを取り直した。
それからは料理や合宿の話をしながら食事を続け、会計を済ませる頃には外もすっかり暗くなっていた。
店を出るとレオンさんは礼を言い、また試合で会おうと手を振って帰っていった。