ダイヤのA~気迫のFull Swing~   作:フリュード

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2アウト1・3塁のチャンスで前の打席でホームランを放っている白銀に打席が回ったのだが、バッテリーの選択は「敬遠」

1塁側ベンチも白銀に頼っていた部分もあり、一触即発の事態になるも白銀は敬遠で2アウト満塁となる

5番の金丸は相手投手、川上を打つ事が出来るのか・・・


第24話 1年VS2・3年 紅白戦⑩

「プレイ!」

 

川上が考えていたこともあり、少し間が空いたがプレーが再開される

 

(川上の奴どうしたんだ・・・?)

(取り敢えず・・・カウントは2ボール1ストライク、アウトコースにストレートを・・・)

 

そう思い小野がサインを出すが、川上は首を横に振る

 

(え?ならこれか・・・?)

 

違うサインを出す、これにも首を横に振る

 

(え・・・?)

 

今までとは違う対応に困惑する小野

その後も一通りのサインを出すが、川上は首を横に振り続けた

 

「・・・すみません、タイムを」

 

「タイム!」

 

サインが決まらないことで間を嫌った金丸がタイムを掛ける

 

 

 

 

(どうした・・・もう一通りのサインは・・・んん?)

 

一通りのサインを出したため、パニック状態に陥る小野

その時ふと思い出した・・・「あの球」の存在を

 

(そういや・・・去年の秋に3死球記録して以降、投げていない変化球があったな・・・まさかな・・・)

 

「プレイ!」

 

バッターボックスに入る金丸を確認して、プレーを再開する

 

小野は「あの球」のサインを覚えていたので、試しにそのサインを出すと・・・川上は首を縦に振る

 

(お、おいおい!?)

 

紅白戦とは言え、去年の秋大会以降封印してきた変化球をこの場面で投げようとする川上に、先ほどとは別の意味でパニックに陥る小野

 

「・・・すみません、タイムお願いします」

 

「どうした?まぁ良い・・・タイム!」

 

連続でタイムを掛ける事になり、訝しむ表情を見せる主審の片岡だがタイムをコールする

 

 

 

「んん?連続でタイムが掛かったな・・・?」

 

「どうしたんだ・・・?」

 

観客から疑問の声が出る中、小野はマウンドへ向かった

 

 

 

「おい・・・あれ以降あの球は投げていないだろう!?」

 

マウンドに着いた小野は口元をミットで隠しながら、川上と話し始める

この口調は少し怒気を含んでいた

 

「分かっている・・・でも握りや投げ方はある程度覚えているから・・・投げたいんだ」

 

川上も口元を隠しながら話すが、一歩も引く気は無い様子である

 

「・・・2アウト満塁のこの場面で投げられるのか?」

 

「・・・・・・・・・」

 

「確かに投げられたら投球の幅は広がる、でも去年あのような事になったから封印したんだろ?」

「練習で投げていない変化球をここで投げるのはリスクが高すぎる」

 

小野も優しく川上に諭す

 

この試合はいわば「練習試合」なので、練習で試している事や課題を試合形式で試す場である

だが、これから投げようとしている変化球は去年の秋以降練習でも投げていない変化球になるのだ

 

2アウト満塁のこの場面で、どのように影響するのか分からないだけにリスクが高すぎるのだ

 

「・・・でもよ小野」

 

そう言うと俯き始める川上

 

「自分はコントロールに自信はあるけども・・・ストレートとスライダーだけで今の1年生を抑えられるイメージが沸かないんだ」

 

「・・・・・・それは」

 

今度は小野が話を聞くターンになる

 

「俺は・・・正直な話、白銀以外の1年生は大したことないって思ってた」

「でも蓋を開けたら、先発の丹波さんが2イニングで2失点・・・奪三振だって2つしか奪えていなかった」

 

「・・・・・・」

 

川上の話を黙って聞く小野

 

「初回にあった白銀のアドバイス一つで1年生の打撃が変わったようにも見えた」

「恐らく相手も自分の持ち球が2球種しかないと思っている・・・」

「見せ球でも良い、使えるものは使っておきたいんだ」

 

「川上・・・」

 

(確かにそうではある・・・結果はフライやゴロではあるけど、1年生から三振が取れていないんだよな)

(いくらコントロールが良い、ストレートが早いとなっても持ち球が少なければ攻略されるのも時間の問題でもあるし・・・)

 

決意がこもった眼差しを見せる川上に小野も何も言えなくなると同時に、小野も同じ気持ちを抱いていた

 

(そこまで言われると何も言えなくなる・・・確かに見せ球でも投げてくれるのならこのイニングは抑えられる可能性も高くなる)

 

小野も頭の中で簡単に状況を整理する

秋の大会以降、練習でも投げてこなかった球をこの場面で解禁することにかなりの抵抗があったが・・・小野は腹を括った

 

「・・・分かった、だけど1回しかサインは出さないからな」

 

「了解・・・小野、ありがとう」

 

最終的に小野が折れる形で新変化球を投げる許可が出たのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません・・・終わりました」

 

「そうか、それでは・・・プレイ!」

 

話し合いを終え、キャッチャーズボックスへと戻った小野を確認し、プレー再開のコールを行う片岡

 

 

 

(少し長めの話し合いだったけど・・・どうしたんだ?)

(でも俺に出来ることは・・・甘いボールをシバキ上げるのみ!)

 

金丸は長いタイムに疑問が残るも、当初の狙いでもある「甘い球を逃さず打つ」を実践すべく、鋭い目つきを川上に向けつつ構え始めた

 

(・・・いきなり出すのもありか?)

(粘られているわけだし・・・ゴロになってくれれば御の字だけど・・・出そう)

 

金丸の姿を見た小野は覚悟を決めて「あの球」のサインを出す・・・川上も頷きセットポジションに入る

 

「・・・ふぅ」

 

(落ち着け・・・何もこの球を決め球で仕留めるわけじゃない)

(いつも通り・・・低めに投げるだけで良いんだ)

 

セットポジションで静止している間、流れる汗の感覚を感じながらドキドキしている心臓を落ち着かせようと深呼吸をする

 

グラブ内で握りを確認しつつ、いつもより少し長く静止をした後に投球動作に入った

 

(右打者なら真ん中からインコース付近から沈ませるように・・・投げる!)

 

「・・・ああっ!!!」

 

身体を沈み込ませ、横手から渾身の力を込めてボールを投げる

 

川上の投げたボールは真ん中付近とかなり甘いコースに向かってきていた

 

「(真ん中・・・)舐めるなぁ!!!!!!」

 

真ん中付近に来たボールを確認した金丸はしっかり左足でタイミングを取りながら着地させた後、ボールに合わせてフルスイングを行った

 

だがそのボールがバットに当たる少し前・・・右打者である金丸の膝元に食い込むように変化した

 

ガギィ!!!

 

「・・・ってぇ!!!!」

 

手に走る衝撃に思わず顔をしかめる金丸

金丸の中では間違いなくボールを芯で捉えたはずだった・・・だが金丸の打球は強い打球ではあるもののショート正面の強いゴロとなった

 

(え・・・真芯で捉えたはずなのに・・・)

 

「良い打球だけど・・・これでスリーアウトなんだな~」

 

金丸が打球の方向を見て愕然とする

 

ショートを守っていた中田(なかだ) 中(あたる)が難なく捕球するとセカンドに送球した

 

「アウト!!」

 

「くっそっ・・・」

 

何とかセーフになりたかった1塁ランナーの白銀だが、足が遅いという事もありアウトになってしまった

塁審がアウトを宣告したことで、スリーアウトとなりチェンジとなる

 

 

 

 

「ああああ~満塁のチャンスだったのに・・・」

 

「打球は良かったけど、正面だったなぁ」

 

観客も追加点を期待していただけに、落胆の声が広がった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・チクショウ、真芯で捉えたはずなのに・・・・」

 

全速力で一塁ベースを駆け抜けた後にスリーアウトになったことを知った金丸はその場で項垂れ、動けなくなってしまった

 

「・・・・・・金丸ちゃん、顔を上げてくれい」

 

セカンドでアウトになってしまった1塁ランナーの白銀がすぐさま金丸のところに駆け寄ってきた

 

「・・・ごめん白銀、お前の代わりに打てなかったッ・・・!」

 

血が出るんじゃないかというくらいに握り拳を作り悔しさを滲ませながら白銀に謝罪する金丸

 

満塁のチャンスだっただけに、打って点を取りたかった

白銀は金丸の気持ちが痛いほどよく分かった

 

「・・・いや、謝らなくても良いよ金丸・・・」

「それに・・・俺も勝負するってなったら多分金丸と同じ感じになっていたと思うかな・・・」

 

「・・・は?どういうことだよ?」

 

意味深なことを言う白銀に金丸は頭を上げて白銀の方を見る

 

「多分だけど・・・相手バッテリー、あの場面でストレート・スライダーとは違う新しい変化球を投げてきたんだと思う」

「沈んでいるようにも見えたから恐らく・・・シンカーかな?」

 

「なっ・・・シンカー!?」

(嘘だろ・・・あの場面で新しい変化球を投げてきたのかよ・・・)

 

白銀の推測に金丸は驚愕の表情を見せるが、それなら打った瞬間の詰まったような感覚も説明がつくのだ

 

「シンカー」とは、右投手なら右打者から逃げるように変化するスライダー・カーブとは反対に、右打者の膝元に食い込むように変化するボールである

 

「ただ低めの制球力が良い投手にしては甘く入ってきたから、あまり練習していない変化球なんだとは思うんだけど・・・」

 

「・・・くっそ、サイドハンドなら持っていてもおかしくない変化球だろうがよォ・・・」

 

「無茶言うな金丸、ここまでストレート・スライダーで組み立てていた中で情報に無いシンカーが激甘なコースから沈んできたんだからさぁ・・・振っちゃうよ」

 

「分かってるけどよォ・・・でもよォ・・・」

 

頭では白銀の言うことは分かっているのだが、納得できず素直に飲み込めない金丸

 

「・・・あと6イニングある、必ず得点のチャンスは訪れる」

「まずはしっかりと抑えて・・・また一からチャンスを作っていこうや」

 

「・・・あぁ」

 

くよくよしていても前には進めない・・・金丸は白銀に促されて一塁側ベンチへと引き上げていったのであった

 

2アウト満塁のチャンスで追加点を取る事が出来なかった1年生チーム

これが今後どう響いていくのか・・・




フリュードです

皆様、お久しぶりです・・・1か月ぶりの投稿となりました

その間にですが・・・皆様のおかげでお気に入り件数が1000件を超えました!
本当にありがとうございます!

合わせて・・・3度目の日間ランキングにも入る事が出来ました

これからも精進してまいります!

2026年のレギュラーシーズンも終わりましたが、皆さんの推しチームはどうでしたか?

自分のところは・・・うん()
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