羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】 作:ヒツジ(ラム肉
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銀河中央通信社速報
> 【速報】
外縁七星系、 農地転用率32%を突破。
倉庫・物流・居住施設への変更進む。
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同時速報
> ヒツジコーポ、 新型超大型物流港建設を発表。
一部国家、 規制法案を検討。
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第八居住星系 郊外道路
以前は、 畑しかなかった。
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今は。
工事車両。
輸送ドローン。
巨大搬送機。
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そして。
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建設中の物流倉庫。
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シュガリヴィは、 車窓からその景色を見ていた。
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遠くまで、 工事区画が続いている。
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以前なら、 麦畑だった場所。
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今は。
巨大な白い建築物が、 次々と組み上がっていた。
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運転手のおっちゃん。
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> 「変わったなぁ」
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シュガリヴィ。
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> 「前はどんな感じだったんです?」
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> 「畑だよ。」
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窓の外を見る。
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> 「春は黄色で綺麗だった」
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少し沈黙。
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> 「今はまぁ…… 明るくなったけどな」
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完全に否定もできない声だった。
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シュガリヴィ記者 取材記録
人類社会は、 加速度的に変化していた。
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食料価格は安定。
物流量は増加。
市場は拡大。
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その代わり。
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農地が消えていく。
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静かに。
だが猛烈な速度で。
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以前なら。
農地とは、 文明の基盤だった。
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だが今。
“食料は運ばれてくるもの”
になり始めている。
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そして。
運ばれてくる以上。
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必要なのは畑ではなく。
港と倉庫だった。
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旧農地転用区域
工事音。
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巨大杭打ち機。
自動建築機械。
飛び回る作業ドローン。
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元農家のおっちゃんが、 ヘルメット姿で歩いていた。
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> 「あー記者さん!」
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> 「どうです、 うちの元畑」
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笑っている。
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だが。
少し複雑そうでもあった。
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シュガリヴィ。
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> 「広いですね……」
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> 「物流倉庫になるらしい」
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遠く。
巨大な骨組み。
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ヒツジ社員たちが、 普通に指示を飛ばしている。
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> 「第三搬入口拡張お願いしますー!」
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> 「冷凍区画倍になります!」
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元農家。
苦笑い。
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> 「麦作ってた頃より、 人いるんだよなここ」
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実際。
人類作業員も大量にいる。
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建設。
輸送。
加工。
警備。
保守。
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以前の農地より、 雇用は増えていた。
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それがまた、 話を難しくしていた。
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第八居住星系 不動産街
異常だった。
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地価が上がっている。
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特に。
物流港周辺。
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不動産屋のおっちゃん。
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> 「いやもう、 ヒツジ来てから全部変わった」
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端末を操作する。
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> 「倉庫需要えぐい。」
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> 「居住区も足りん。」
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> 「食堂街まででき始めた。」
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シュガリヴィ。
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> 「そんなに人増えてるんですか?」
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> 「ヒツジが増やしてる。」
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> 「仕事あるから、 人が集まる。」
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少し笑う。
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> 「景気だけ見るなら、 過去最高だよ」
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その言葉が、 妙に引っかかった。
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ヒツジ建設現場 食堂
昼。
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人で溢れていた。
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元農家。
元会社員。
若者。
ヒツジ社員。
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全員同じ飯を食っている。
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巨大鍋。
肉。
パン。
果物。
発酵飲料。
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若い作業員。
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> 「なぁ」
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> 「これ、 本当に建設現場の飯か?」
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隣の男。
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> 「前の会社よりいい」
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ヒツジ調理担当。
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> 「労働効率に影響しますので。」
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周囲。
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> 「また効率!」
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爆笑。
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ヒツジ。
きょとん。
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> 「重要ですよ?」
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もうお決まりになり始めていた。
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旧農業地帯 小学校
校庭。
子供たちが遊んでいる。
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以前より人数が多い。
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先生が、 少し困った顔で笑う。
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> 「最近、 子供増えたんですよ」
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シュガリヴィ。
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> 「え?」
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> 「仕事増えたので、 若い家族戻ってきてて」
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窓の外。
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遠くの巨大物流港。
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以前なら、 農地しか見えなかった場所。
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先生。
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> 「なんか変な時代ですよねぇ」
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> 「農地減ってるのに、 子供は増える」
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シュガリヴィは、 返答できなかった。
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農業組合跡地
もう閉まっていた。
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看板も外されている。
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その隣。
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新しい看板。
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『ヒツジコーポ物流研修センター』
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シュガリヴィ。
立ち止まる。
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以前なら、 農業会議で怒鳴り合っていた場所。
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今は。
若者たちが笑いながら入っていく。
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> 「危険宙域物流コースって何やるんだろ」
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> 「給料いいらしいぞ」
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> 「宇宙船乗れるって!」
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笑いながら、 建物へ消えていく。
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シュガリヴィは、 その背中を見ながら思う。
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人類は今。
“農業文明”
から。
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“物流文明”
へ変わり始めている。
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しかも。
多分。
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誰にも止められない。
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ヒツジ物流港 夜
夜でも明るい。
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巨大輸送船。
無数のコンテナ。
ライト。
作業音。
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眠らない港。
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隣でヒツジ社員が、 端末を見ながら呟く。
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> 「第八星系、 人口増加率上がってますね」
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別のヒツジ。
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> 「食料安定してますからねぇ」
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> 「居住コストも改善中です。」
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シュガリヴィ。
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> 「……あなたたち、 本当に全部計算してるんですか?」
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ヒツジ。
きょとん。
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> 「物流ですので。」
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それが。
答えになっているようで。
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全く答えになっていなかった。
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