羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】   作:ヒツジ(ラム肉

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第四話 後編 『どんどん減っていく農地 後編 ― 回る文明』

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銀河中央通信社速報

 

> 【速報】

 

外縁七星系、 食料自給率過去最低を更新。

 

一方で経済成長率は過去最高。

 

 

 

 

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同時速報

 

> ヒツジコーポ、 外縁七星系への追加投資を発表。

 

新規物流拠点建設へ。

 

 

 

 

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第八居住星系 中央都市

 

夜でも明るかった。

 

 

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以前なら。

 

節電。

 

閉店。

 

静かな通り。

 

 

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今は違う。

 

 

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輸送車。

 

屋台。

 

酒場。

 

露店。

 

夜勤帰りの作業員。

 

 

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人が多い。

 

 

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街が、 起き続けている。

 

 

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大型モニターには、 ヒツジコーポ広告。

 

 

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『安定した物流をあなたへ』

 

 

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その下で。

 

人類とヒツジが、 同じ串焼きを食べていた。

 

 

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シュガリヴィ記者 取材記録

 

文明は変わっていた。

 

 

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もう、 誰にも否定できなかった。

 

 

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農地は減っている。

 

 

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だが。

 

街は栄えている。

 

 

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子供は増え。

 

市場は広がり。

 

失業率は減っていた。

 

 

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まるで。

 

“農地が消えた分、

 

別の文明が生えている”

 

ようだった。

 

 

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そして人類は、 その変化へ適応し始めていた。

 

 

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第八物流港 第五区画

 

以前は丘だった場所。

 

 

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今は。

 

巨大冷凍倉庫群。

 

 

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白い建物が、 地平線まで並んでいる。

 

 

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元農家のおっちゃんが、 搬送車を誘導していた。

 

 

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> 「第五ライン空けろー!」

 

 

 

 

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> 「冷凍便入るぞ!」

 

 

 

 

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汗だく。

 

 

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シュガリヴィ。

 

 

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> 「忙しそうですね」

 

 

 

 

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おっちゃん。

 

笑う。

 

 

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> 「前より稼げるけどな!」

 

 

 

 

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周囲の作業員も笑う。

 

 

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別の男。

 

 

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> 「うちの息子、 物流学校行ったぞ」

 

 

 

 

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> 「宇宙船乗りたいんだと」

 

 

 

 

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少し沈黙。

 

 

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> 「昔なら、 畑継いでたんだろうけどな」

 

 

 

 

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誰も。

 

否定しなかった。

 

 

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旧果樹園地帯

 

一本だけ、 古い果樹が残っていた。

 

 

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その周囲を囲むように、 物流道路が走っている。

 

 

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シュガリヴィは、 その木を見上げる。

 

 

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以前なら。

 

この辺り一面、 果樹園だったらしい。

 

 

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今は。

 

輸送車の音しかしない。

 

 

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そこへ。

 

小さな女の子が走ってくる。

 

 

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> 「ママー!」

 

 

 

 

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母親。

 

ヒツジ作業服姿。

 

 

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> 「走らないの!」

 

 

 

 

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少女。

 

 

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> 「今日ね! ヒツジさんにお菓子もらった!」

 

 

 

 

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笑顔。

 

 

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その背後。

 

 

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古い果樹。

 

巨大物流倉庫。

 

 

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全部同じ景色の中にあった。

 

 

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ヒツジ物流学校

 

以前の農業高校。

 

 

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今は。

 

『第八物流技術学院』

 

 

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巨大看板。

 

 

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校庭には、 輸送ドローン教材。

 

 

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教室では。

 

 

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> 「物流停滞時の文明影響について――」

 

 

 

 

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若い学生たちが、 真面目に授業を受けていた。

 

 

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シュガリヴィ。

 

廊下を歩く。

 

 

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壁のポスター。

 

 

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『物流は文明を止めない』

 

 

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『安定供給は社会を支える』

 

 

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以前の。

 

 

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『豊かな土を未来へ』

 

 

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という標語は、 もう残っていなかった。

 

 

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銀河議会 特別委員会

 

荒れていた。

 

 

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> 「このままでは国家農業が!」

 

 

 

 

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> 「だが税収は増えています!」

 

 

 

 

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> 「ヒツジ依存率が危険域です!」

 

 

 

 

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> 「失業率改善を無視するのか!」

 

 

 

 

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> 「国家主権の――」

 

 

 

 

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議会の外。

 

 

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人々は、 ヒツジ製発酵飲料を片手に歩いていた。

 

 

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もう。

 

危機感と生活が、 噛み合っていない。

 

 

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第八物流港 深夜

 

夜。

 

 

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無数の光。

 

輸送船。

 

搬送ドローン。

 

 

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眠らない港。

 

 

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シュガリヴィは、 高台から港を見下ろしていた。

 

 

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以前なら。

 

この星系の中心は、 農地だった。

 

 

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今は。

 

物流港だ。

 

 

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その隣で、 ヒツジ社員が端末を見ながら呟く。

 

 

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> 「第八星系、 想定以上に順調ですね」

 

 

 

 

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別のヒツジ。

 

 

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> 「人口増加率良好です。」

 

 

 

 

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> 「消費量も伸びています。」

 

 

 

 

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シュガリヴィ。

 

 

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> 「……消費量」

 

 

 

 

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ヒツジ。

 

 

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> 「はい?」

 

 

 

 

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シュガリヴィ。

 

 

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> 「あなたたち、 人類を見てるんじゃないんですね」

 

 

 

 

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少し沈黙。

 

 

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ヒツジ社員。

 

 

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> 「文明を見ています。」

 

 

 

 

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その言葉が。

 

今までで一番。

 

重かった。

 

 

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ヒツジ社員は続ける。

 

 

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> 「人類文明、 成長段階としては良好です。」

 

 

 

 

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> 「物流適応性高いので。」

 

 

 

 

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シュガリヴィ。

 

寒気が走る。

 

 

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こいつら。

 

本当に“文明単位”で見ている。

 

 

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国家でも。

 

民族でも。

 

人でもない。

 

 

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もっと巨大な視点。

 

 

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そして多分。

 

彼らにとって、

 

人類はまだ“地方市場”の一つだ。

 

 

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港の向こう。

 

巨大輸送船が、 静かに宇宙へ上がっていく。

 

 

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まるで。

 

銀河そのものが、 流れているみたいだった。

 

 

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シュガリヴィ記者 私的記録

 

人類は今。

 

侵略されているのかもしれない。

 

 

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だが。

 

それは軍隊ではない。

 

 

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砲火でもない。

 

 

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もっと静かなものだ。

 

 

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便利さ。

 

豊かさ。

 

安定。

 

物流。

 

 

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そういうものに包まれながら。

 

 

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気づけば。

 

“昔の文明”が、

 

消えていく。

 

 

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