羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】   作:ヒツジ(ラム肉

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第五話 前編 『変わり行く人類の経済と文化 前編 ― ヒツジ世代』

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銀河中央通信社速報

 

> 【速報】

 

外縁七星系、 ヒツジ関連産業従事者が全労働人口の31%へ到達。

 

過去最大を更新。

 

 

 

 

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同時速報

 

> “ヒツジ風料理”、 若年層で大流行。

 

一部では伝統食離れも問題視。

 

 

 

 

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第八居住星系 中央商店街

 

以前とは、 匂いが違った。

 

 

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香辛料。

 

発酵食品。

 

焼き肉。

 

甘い果実酒。

 

 

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街全体が、 以前より濃い匂いになっている。

 

 

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若者たちが、 屋台で騒いでいた。

 

 

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> 「ヒツジ鍋二つー!」

 

 

 

 

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> 「あと発酵串!」

 

 

 

 

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> 「辛味ソース増しで!」

 

 

 

 

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店主のおっちゃん。

 

 

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> 「最近の若いの、 ヒツジ味好きすぎだろ……」

 

 

 

 

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だが。

 

売れていた。

 

 

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とても。

 

 

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シュガリヴィ記者 取材記録

 

変化は、 経済だけではなくなっていた。

 

 

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文化。

 

食事。

 

言葉。

 

生活。

 

 

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全部が、 少しずつ変わり始めている。

 

 

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最初は。

 

“宇宙人の商品”。

 

 

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次に。

 

“便利な食料”。

 

 

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そして今。

 

“普通の生活”

 

になりつつあった。

 

 

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特に若い世代ほど、 順応が早い。

 

 

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彼らにとってヒツジは。

 

“最初からいる存在”

 

に近づき始めていた。

 

 

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第八物流技術学院

 

昼休み。

 

 

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学生たちが騒いでいる。

 

 

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以前なら、 農業高校だった場所。

 

 

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今は。

 

物流。

 

市場管理。

 

発酵制御。

 

異星食文化学。

 

 

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そんな授業が並ぶ。

 

 

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若い学生。

 

 

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> 「卒業したら ヒツジ本社勤務狙うわ」

 

 

 

 

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友人。

 

 

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> 「外銀河勤務とか?」

 

「やばそう」

 

 

 

 

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> 「給料やばいらしいぞ」

 

 

 

 

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その会話の中に。

 

 

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“農業を継ぐ”

 

という選択肢は、 もうほとんど存在しなかった。

 

 

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学食

 

人で溢れていた。

 

 

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ヒツジ風発酵麺。

 

香辛料焼きパン。

 

発酵肉スープ。

 

 

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学生たちが普通に食っている。

 

 

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シュガリヴィ。

 

 

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> 「……人気なんですね」

 

 

 

 

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学生。

 

 

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> 「安いしうまいですから」

 

 

 

 

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別の学生。

 

 

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> 「あと栄養いいらしい」

 

 

 

 

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ヒツジ栄養士監修。

 

そんな表示まである。

 

 

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シュガリヴィは、 少し妙な気分になる。

 

 

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以前なら。

 

“異星文明の料理”。

 

 

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そんな扱いだったものが。

 

 

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今は。

 

“若者向け定番メニュー”

 

になっている。

 

 

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第八居住星系 テレビ局

 

人気番組。

 

 

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『ヒツジ飯探訪!』

 

 

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司会者。

 

 

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> 「今回は第三物流港の 人気発酵屋台に来ています!」

 

 

 

 

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視聴者コメント。

 

 

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> 「うまそう!」

 

 

 

> 「ヒツジ鍋食いてぇ!」

 

 

 

> 「また深夜飯テロだ!」

 

 

 

 

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シュガリヴィ。

 

テレビを見ながら黙る。

 

 

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隣のディレクター。

 

 

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> 「数字いいんですよこれ」

 

 

 

 

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> 「若い層に特に」

 

 

 

 

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少し笑う。

 

 

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> 「もう“異文化”って感覚、 あんま無いんでしょうね」

 

 

 

 

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その言葉が、 妙に引っかかった。

 

 

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旧農村地区 神社前

 

祭りだった。

 

 

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屋台。

 

灯り。

 

子供たち。

 

 

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だが。

 

売られているものは変わっていた。

 

 

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ヒツジ発酵酒。

 

異星香辛料焼き。

 

ヒツジ風菓子。

 

 

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神社の鳥居の下で、 ヒツジ社員が串焼きを食べている。

 

 

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完全に混ざっていた。

 

 

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老人たちが、 少し離れて眺めている。

 

 

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> 「変な時代だなぁ……」

 

 

 

 

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> 「宇宙人が祭りにいる」

 

 

 

 

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> 「しかも馴染んでる」

 

 

 

 

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だが。

 

怒ってはいなかった。

 

 

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むしろ。

 

“理解が追いつかない”

 

顔だった。

 

 

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ヒツジ物流港 文化交流室

 

以前は会議室だった場所。

 

 

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今は。

 

異星料理講座。

 

発酵講座。

 

物流体験教室。

 

 

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そんな催しが行われている。

 

 

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子供たちが、 ヒツジ社員へ群がっていた。

 

 

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> 「どうやってパン作るの!?」

 

 

 

 

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ヒツジ社員。

 

 

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> 「発酵です。」

 

 

 

 

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> 「文明は発酵から始まります。」

 

 

 

 

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周囲の親。

 

 

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> 「また始まった」

 

 

 

 

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笑い。

 

 

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完全に。

 

 

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“近所の変な会社員”

 

みたいな扱いになっていた。

 

 

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シュガリヴィ記者 私的記録

 

私は最近、 少し怖くなっている。

 

 

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人類は。

 

“ヒツジに慣れすぎている”。

 

 

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いや。

 

 

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もっと正確に言えば。

 

“ヒツジを前提にした社会”

 

へ変わり始めている。

 

 

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市場。

 

学校。

 

食文化。

 

雇用。

 

祭り。

 

 

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全部に、 ヒツジがいる。

 

 

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しかも。

 

誰も強制していない。

 

 

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その時。

 

遠くで子供が叫ぶ。

 

 

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> 「ヒツジさーん!」

 

 

 

 

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ヒツジ社員。

 

手を振る。

 

 

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子供たち。

 

笑う。

 

 

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その光景を見ながら。

 

シュガリヴィは、 急に理解する。

 

 

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次の世代にとって。

 

“ヒツジ以前”は、

 

もう歴史なのかもしれない。

 

 

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