羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】   作:ヒツジ(ラム肉

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第五話 後編 『変わり行く人類の経済と文化 後編 ― ヒツジ世代』

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銀河中央通信社速報

 

> 【速報】

 

外縁七星系、 “ヒツジ世代”という俗称が定着。

 

ヒツジコーポ到来後に成長した若年層を指す言葉として普及。

 

 

 

 

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同時速報

 

> 一部地域で、 伝統農業文化保護運動が拡大。

 

 

 

 

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第八居住星系 中央駅前

 

巨大広告。

 

 

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『安定物流で豊かな未来を』

 

 

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その下を。

 

学生たちが笑いながら通り過ぎる。

 

 

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ヒツジパン。

 

発酵飲料。

 

物流学院の教科書。

 

 

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全部当たり前だった。

 

 

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若い女の子。

 

 

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> 「今日ヒツジ祭り行く?」

 

 

 

 

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友人。

 

 

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> 「行くー!」

 

 

 

 

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> 「限定発酵ケーキ食べたい!」

 

 

 

 

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> 「あと物流ショー!」

 

 

 

 

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その会話に。

 

“宇宙人”という単語は、 もう無かった。

 

 

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シュガリヴィ記者 取材記録

 

文化は。

 

経済より遅く変わる。

 

 

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私は、 そう思っていた。

 

 

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だが違った。

 

 

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一度生活へ入り込めば。

 

食事。

 

仕事。

 

娯楽。

 

学校。

 

 

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文化は、 驚くほど速く変わる。

 

 

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特に若者は早かった。

 

 

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彼らにとって。

 

ヒツジは。

 

“外から来た存在”

 

ではなく。

 

 

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“最初から社会にいる存在”

 

になり始めていた。

 

 

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第八物流祭

 

凄まじい人混みだった。

 

 

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屋台。

 

物流展示。

 

輸送ドローンショー。

 

異星料理大会。

 

 

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子供たちが、 ヒツジ風船を持って走っている。

 

 

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ステージでは。

 

 

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> 「今年の人気発酵料理ランキングです!」

 

 

 

 

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観客大歓声。

 

 

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シュガリヴィは、 しばらく立ち尽くしていた。

 

 

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以前なら。

 

収穫祭だった。

 

 

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地元農産物。

 

農機展示。

 

土の匂い。

 

 

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今は。

 

物流。

 

輸送。

 

異星食品。

 

 

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完全に、 別の祭りになっている。

 

 

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会場裏

 

老人たちが、 静かに酒を飲んでいた。

 

 

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元農家のおっちゃん。

 

 

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> 「変わったなぁ」

 

 

 

 

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別の老人。

 

 

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> 「昔は麦祭りだったんだがな」

 

 

 

 

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遠く。

 

若者たちが、 ヒツジ音楽で騒いでいる。

 

 

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老人。

 

 

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> 「まぁでも、 孫は楽しそうだ」

 

 

 

 

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少し沈黙。

 

 

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> 「それが一番困る」

 

 

 

 

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誰も、 返事ができなかった。

 

 

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第八物流技術学院

 

夜でも明るい。

 

 

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学生たちが、 普通に残って勉強している。

 

 

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教室。

 

 

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『銀河間物流論』

 

 

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『文明別消費傾向学』

 

 

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『発酵保存技術』

 

 

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以前の農業教本は、 倉庫送りになっていた。

 

 

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若い学生。

 

 

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> 「外銀河勤務憧れるわー」

 

 

 

 

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> 「中央物流圏とか行ってみてぇ」

 

 

 

 

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> 「第三腕部文明ってどんな飯なんだろ」

 

 

 

 

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その会話を聞きながら。

 

シュガリヴィは、 急に気づく。

 

 

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彼らは。

 

“銀河国家”

 

を見ていない。

 

 

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もっと広い。

 

 

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“物流圏”

 

を見ている。

 

 

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価値観そのものが、 変わり始めていた。

 

 

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旧農村地区

 

静かだった。

 

 

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街灯も少ない。

 

人も少ない。

 

 

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畑跡地には、 雑草が揺れている。

 

 

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シュガリヴィは、 古い神社の前で足を止める。

 

 

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そこには。

 

 

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小さな石碑。

 

 

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『豊穣祈願祭跡』

 

 

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かつて。

 

村人総出で、 収穫を祈っていた場所。

 

 

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今は。

 

誰もいない。

 

 

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遠くから聞こえるのは。

 

物流港の低い駆動音。

 

 

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まるで。

 

新しい文明の鼓動みたいだった。

 

 

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ヒツジ物流港 展望区画

 

夜。

 

 

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巨大輸送船が、 何隻も宇宙へ上がっていく。

 

 

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コンテナ群。

 

光。

 

無数の航路。

 

 

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銀河が、 流れている。

 

 

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シュガリヴィの隣で、 ヒツジ社員が缶飲料を飲んでいた。

 

 

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> 「第八星系、 順調ですねぇ」

 

 

 

 

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シュガリヴィ。

 

 

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> 「……何がです?」

 

 

 

 

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ヒツジ。

 

きょとん。

 

 

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> 「文明発展です。」

 

 

 

 

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> 「人口増加。」

 

「市場拡大。」

 

「物流安定。」

 

「教育適応。」

 

 

 

 

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当たり前のように言う。

 

 

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シュガリヴィ。

 

 

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> 「あなたたち、 本当に善意なんですね」

 

 

 

 

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ヒツジ。

 

 

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> 「はい?」

 

 

 

 

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> 「文明成長、 良いことですよ?」

 

 

 

 

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その返答に。

 

嘘は無かった。

 

 

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だからこそ。

 

 

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シュガリヴィは、 ようやく理解し始める。

 

 

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ヒツジコーポは。

 

“侵略者”ではない。

 

 

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もっと恐ろしい。

 

 

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“善意で文明を変える存在”

 

なのだ。

 

 

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その時。

 

遠くで、 子供たちの声が聞こえる。

 

 

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> 「ヒツジさーん!」

 

 

 

 

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ヒツジ社員が、 普通に手を振り返す。

 

 

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子供たちは笑う。

 

 

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その光景が。

 

あまりにも自然で。

 

 

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シュガリヴィは、 少し寒気を覚えた。

 

 

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シュガリヴィ記者 私的記録

 

多分。

 

 

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もう戻れない。

 

 

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農地。

 

文化。

 

価値観。

 

 

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全部。

 

少しずつ変わっている。

 

 

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しかも。

 

人類自身が、 それを望み始めている。

 

 

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これが侵略なら。

 

 

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あまりにも静かだった。

 

 

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