羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】   作:ヒツジ(ラム肉

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第六話 前編 『ヒツジコーポの失敗 前編 ― 止まった冷凍便』

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銀河中央通信社速報

 

> 【速報】

 

第八物流港にて、 大規模輸送遅延発生。

 

一部冷凍食品便に最大三日遅延。

 

 

 

 

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同時速報

 

> ヒツジコーポ、 “物流障害”を公式発表。

 

外縁七星系各地で一部商品不足。

 

 

 

 

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第八居住星系 中央市場

 

ざわついていた。

 

 

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人が多い。

 

 

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だが。

 

空気が違う。

 

 

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肉売り場。

 

 

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棚が、 半分空いていた。

 

 

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主婦。

 

 

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> 「え?」

 

「今日入ってないの?」

 

 

 

 

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店員。

 

困った顔。

 

 

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> 「冷凍便遅れてるらしくて……」

 

 

 

 

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別の客。

 

 

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> 「ヒツジ便?」

 

 

 

 

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> 「珍しいな」

 

 

 

 

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市場全体が、 妙に落ち着かない。

 

 

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それでも。

 

まだ誰も、 大事だとは思っていなかった。

 

 

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シュガリヴィ記者 取材記録

 

ヒツジコーポは、 完璧に見えた。

 

 

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物流。

 

供給。

 

雇用。

 

市場。

 

 

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全てを、 異常な精度で回している。

 

 

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だからこそ。

 

 

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初めての“停止”は。

 

想像以上に大きく見えた。

 

 

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始まりは。

 

ただの輸送遅延だった。

 

 

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冷凍便。

 

三日停止。

 

 

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以前なら。

 

そこまで問題にはならなかった。

 

 

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だが今。

 

人類社会は、

 

ヒツジ物流を前提に回っている。

 

 

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だから。

 

たった数日の遅延で。

 

市場がざわつき始めた。

 

 

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第八物流港

 

異様だった。

 

 

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ヒツジ社員たちが、 走り回っている。

 

 

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> 「第三区画遅延確認!」

 

 

 

 

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> 「代替便回してください!」

 

 

 

 

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> 「冷凍優先順位変更します!」

 

 

 

 

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以前の。

 

落ち着いた空気が無い。

 

 

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人類作業員たちも、 困惑していた。

 

 

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元農家のおっちゃん。

 

 

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> 「ヒツジが慌ててる……」

 

 

 

 

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隣の作業員。

 

 

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> 「初めて見たぞ」

 

 

 

 

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本当に。

 

 

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ヒツジたちは、 明らかに焦っていた。

 

 

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緊急物流対策室

 

巨大モニター。

 

無数の航路図。

 

 

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ヒツジ社員たちが、 高速で情報を処理している。

 

 

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> 「第二冷凍便、 小惑星帯事故です!」

 

 

 

 

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> 「代替ルート計算中!」

 

 

 

 

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> 「第七補給港開放します!」

 

 

 

 

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シュガリヴィは、 その光景を見ながら思う。

 

 

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今まで。

 

ヒツジは。

 

“完成された文明”

 

に見えていた。

 

 

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だが違う。

 

 

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こいつらも。

 

必死で回している。

 

 

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その事実が、 少しだけ恐ろしかった。

 

 

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中央飲食街

 

普段なら賑やかだった。

 

 

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今日は。

 

少し空気が違う。

 

 

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焼き肉店。

 

 

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> 「今日、 ヒツジ肉便遅れてるんですよ」

 

 

 

 

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客。

 

 

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> 「マジかよ……」

 

 

 

 

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> 「じゃあ別の頼むか」

 

 

 

 

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店主。

 

 

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> 「いや、 他も結構止まってて」

 

 

 

 

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周囲の客たちが、 少しざわつく。

 

 

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若い男。

 

 

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> 「……あれ?」

 

 

 

 

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> 「俺ら、 結構ヒツジ頼りじゃね?」

 

 

 

 

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その言葉で。

 

空気が少し静かになった。

 

 

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第八物流技術学院

 

授業中。

 

 

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教壇のヒツジ講師が、 珍しく真面目な顔をしていた。

 

 

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> 「今回の件は、 大規模物流障害事例です。」

 

 

 

 

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スクリーン。

 

 

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『銀河間冷凍物流停止による市場影響』

 

 

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学生たちが、 静かに見ている。

 

 

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ヒツジ講師。

 

 

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> 「文明は、 流通停止に弱いです。」

 

 

 

 

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> 「特に依存率上昇後は。」

 

 

 

 

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シュガリヴィ。

 

寒気が走る。

 

 

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これ。

 

“授業”として蓄積されてる。

 

 

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つまり。

 

 

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ヒツジコーポは。

 

こういう文明変化を、

 

何度も見てきた。

 

 

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第八居住星系 ネット掲示板

 

> 「肉売ってねぇ!」

 

 

 

> 「発酵バター消えた!」

 

 

 

> 「物流止まるだけでこれかよ」

 

 

 

> 「ヒツジ頼りすぎでは?」

 

 

 

> 「でも昔よりマシ」

 

 

 

> 「昔なら普通に飢えてたぞ」

 

 

 

 

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人類は。

 

少しずつ。

 

気づき始めていた。

 

 

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“戻れない”ことに。

 

 

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ヒツジ物流港 深夜

 

眠っていなかった。

 

 

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輸送船。

 

ライト。

 

作業音。

 

怒鳴り声。

 

 

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ヒツジ社員たちが、 必死で走り回っている。

 

 

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その中で。

 

案内役のヒツジ社員が、 壁にもたれながら端末を見ていた。

 

 

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疲れていた。

 

 

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シュガリヴィ。

 

 

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> 「……大丈夫ですか」

 

 

 

 

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ヒツジ。

 

 

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> 「良くないですねぇ……」

 

 

 

 

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初めてだった。

 

 

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ヒツジが。

 

“弱音”っぽいものを吐いた。

 

 

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ヒツジ社員。

 

 

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> 「冷凍便停止、 想定以上に影響出ています。」

 

 

 

 

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> 「文明依存率、 上がりすぎました。」

 

 

 

 

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シュガリヴィ。

 

止まる。

 

 

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> 「……依存率って、 あなたたち分かってたんですか」

 

 

 

 

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ヒツジ。

 

きょとん。

 

 

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> 「はい?」

 

 

 

 

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> 「当然ですよ?」

 

 

 

 

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その返答が。

 

今までで一番、 恐ろしかった。

 

 

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こいつら。

 

最初から分かっていた。

 

 

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市場も。

 

文化も。

 

物流も。

 

 

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全部。

 

“依存”へ向かうことを。

 

 

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そして。

 

それでも止めなかった。

 

 

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