羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】   作:ヒツジ(ラム肉

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第六話 中編 『ヒツジコーポの失敗 中編 ― 依存社会』

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銀河中央通信社速報

 

> 【速報】

 

第八物流港障害、 外縁七星系全域へ波及。

 

一部地域で食料価格急騰。

 

 

 

 

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同時速報

 

> ヒツジコーポ、 緊急備蓄放出を開始。

 

優先供給地域を指定。

 

 

 

 

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第八居住星系 中央市場

 

普段より、 明らかに人が多かった。

 

 

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肉売り場。

 

長蛇の列。

 

 

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店員が叫ぶ。

 

 

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> 「押さないでください!」

 

 

 

 

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> 「本日分は制限販売です!」

 

 

 

 

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ざわつく客たち。

 

 

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> 「また減ってる!」

 

 

 

 

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> 「発酵バター無いの!?」

 

 

 

 

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> 「冷凍肉どこだ!」

 

 

 

 

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以前なら。

 

そこまで問題にならなかった。

 

 

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だが今。

 

“いつもある”前提

 

で生活が回っている。

 

 

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だから。

 

棚が空くだけで、 人々は落ち着かなくなる。

 

 

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シュガリヴィ記者 取材記録

 

人類は。

 

初めて理解し始めていた。

 

 

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ヒツジコーポは、 ただの企業ではない。

 

 

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社会そのものへ、 組み込まれている。

 

 

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食料。

 

物流。

 

市場。

 

加工。

 

雇用。

 

 

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全部。

 

繋がっている。

 

 

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そして。

 

その一部が止まるだけで。

 

社会全体が揺れる。

 

 

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第八物流港 緊急対策本部

 

空気が張り詰めていた。

 

 

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巨大モニター。

 

輸送経路。

 

市場予測。

 

消費量グラフ。

 

 

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ヒツジ社員たちが、 高速で指示を飛ばしている。

 

 

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> 「第三区域、 備蓄開放!」

 

 

 

 

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> 「幼年人口比率高い区域優先!」

 

 

 

 

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> 「冷凍より栄養安定優先です!」

 

 

 

 

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人類作業員たちも、 必死で動いていた。

 

 

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元農家のおっちゃん。

 

 

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> 「第五倉庫開けろ!」

 

 

 

 

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> 「代替便こっち回せ!」

 

 

 

 

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以前なら。

 

ただの物流会社だった。

 

 

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だが今。

 

 

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ここはもう。

 

“文明維持施設”

 

だった。

 

 

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第八居住星系 飲食街

 

静かだった。

 

 

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人気店。

 

行列無し。

 

 

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店主。

 

 

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> 「肉入ってこないと、 メニュー半分死ぬんだよ……」

 

 

 

 

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別の店。

 

 

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> 「香辛料便止まってる」

 

 

 

 

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> 「ヒツジ酒も遅延」

 

 

 

 

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若い客。

 

 

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> 「なんか変な感じだな」

 

 

 

 

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友人。

 

 

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> 「あれだろ」

 

 

 

 

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少し沈黙。

 

 

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> 「俺ら、 もうヒツジ前提で生きてる」

 

 

 

 

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誰も笑わなかった。

 

 

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第八物流技術学院 特別講義

 

教室。

 

静かだった。

 

 

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ヒツジ講師が、 真面目な顔で説明している。

 

 

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> 「文明は、 安定供給へ適応します。」

 

 

 

 

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スクリーン。

 

 

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『物流依存率上昇後の文明変化』

 

 

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> 「一度適応した文明は、 元の供給状態へ戻れません。」

 

 

 

 

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学生たち。

 

静まり返る。

 

 

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シュガリヴィ。

 

寒気が走る。

 

 

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これ。

 

“人類だけの話”

 

じゃない。

 

 

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ヒツジは。

 

何度も見ている。

 

 

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文明が。

 

物流へ依存し。

 

戻れなくなる過程を。

 

 

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ネット掲示板

 

> 「マジで物流止まるだけでこれ?」

 

 

 

> 「ヒツジ便復旧まだ?」

 

 

 

> 「いや人類物流戻せよ」

 

 

 

> 「もう無理だろ」

 

 

 

> 「昔の農地ほぼ消えたぞ」

 

 

 

> 「依存しすぎだったんだ」

 

 

 

 

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その一方。

 

 

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> 「でもヒツジ頑張ってるよな」

 

 

 

> 「備蓄放出早かった」

 

 

 

> 「普通の企業なら見捨ててる」

 

 

 

 

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ここでも。

 

空気は割れていた。

 

 

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第八居住星系 郊外

 

かつての農地。

 

 

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今は、 物流倉庫群。

 

 

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その隣。

 

小さな家庭菜園を作っている老人がいた。

 

 

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シュガリヴィ。

 

 

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> 「作ってるんですか?」

 

 

 

 

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老人。

 

 

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> 「まぁな」

 

 

 

 

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小さく笑う。

 

 

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> 「久々に土触りたくなった」

 

 

 

 

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遠く。

 

巨大物流港。

 

 

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老人。

 

 

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> 「便利なのはいい」

 

 

 

 

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> 「でも全部運ばれてくるようになると、 なんか落ち着かなくてな」

 

 

 

 

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その言葉が。

 

妙に胸へ刺さった。

 

 

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第八物流港 深夜

 

相変わらず、 眠っていない。

 

 

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だが。

 

以前と違う。

 

 

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空気に。

 

“焦り”

 

が混ざっていた。

 

 

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ヒツジ社員たちが、 珍しく疲れた顔をしている。

 

 

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> 「第七補給便まだですか!」

 

 

 

 

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> 「冷凍ライン復旧急いでください!」

 

 

 

 

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> 「市場変動予測更新!」

 

 

 

 

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その姿を見ながら。

 

シュガリヴィは、 ようやく理解し始める。

 

 

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ヒツジコーポは、 神ではない。

 

 

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万能でもない。

 

 

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だが。

 

“止まれない”。

 

 

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なぜなら。

 

 

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もう。

 

文明そのものが、

 

ヒツジ物流前提で回っている。

 

 

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その時。

 

案内役のヒツジ社員が、 ぽつりと呟いた。

 

 

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> 「……失敗しましたねぇ」

 

 

 

 

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シュガリヴィ。

 

 

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> 「え?」

 

 

 

 

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ヒツジ。

 

端末を見たまま。

 

 

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> 「定着速度、 想定より速すぎました。」

 

 

 

 

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> 「もう少し分散維持するべきでした。」

 

 

 

 

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シュガリヴィ。

 

止まる。

 

 

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こいつら。

 

“文明運営の失敗”

 

として見ている。

 

 

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人類社会を。

 

 

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その感覚が。

 

今までで一番、 宇宙的だった。

 

 

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