羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】   作:ヒツジ(ラム肉

19 / 26
第七話 前編 『文明調整会議 前編 ― 依存率』

---

 

銀河中央通信社速報

 

> 【速報】

 

外縁七星系共同会議、 ヒツジコーポとの正式協議を決定。

 

“文明依存率問題”が主要議題へ。

 

 

 

 

---

 

同時速報

 

> ヒツジコーポ、 “文明調整官”派遣を発表。

 

 

 

 

---

 

第八居住星系 銀河会議場

 

重かった。

 

 

---

 

空気が。

 

 

---

 

記者。

 

軍人。

 

政治家。

 

経済学者。

 

農業代表。

 

 

---

 

全員が、 少し疲れた顔をしている。

 

 

---

 

そして。

 

会議場中央。

 

 

---

 

ヒツジたち。

 

 

---

 

普通に座っていた。

 

 

---

 

もこもこ。

 

 

---

 

しかも。

 

資料を配っている。

 

 

---

 

シュガリヴィは、 その光景を見て少し頭を抱える。

 

 

---

 

人類文明の危機会議で。

 

宇宙人が議事資料配布している。

 

 

---

 

意味が分からない。

 

 

---

 

シュガリヴィ記者 取材記録

 

第六話の物流障害は、 人類社会へ大きな衝撃を与えた。

 

 

---

 

初めて。

 

市民も。

 

政治家も。

 

 

---

 

理解した。

 

 

---

 

ヒツジコーポは。

 

“便利な企業”

 

ではない。

 

 

---

 

社会そのものへ、 深く入り込みすぎている。

 

 

---

 

だからこそ。

 

今回初めて。

 

 

---

 

“文明調整会議”

 

が開かれた。

 

 

---

 

議題は単純。

 

 

---

 

「どう付き合うか」

 

 

---

 

会議場 第一議題

 

ヒツジ側代表。

 

 

---

 

名札。

 

 

---

 

『第八星系文明調整官』

 

 

---

 

シュガリヴィ。

 

内心で止まる。

 

 

---

 

文明。

 

調整。

 

 

---

 

その単語が、 あまりにも重い。

 

 

---

 

ヒツジ調整官。

 

静かに頭を下げる。

 

 

---

 

> 「今回の物流障害、 申し訳ありませんでした。」

 

 

 

 

---

 

会議場。

 

少しざわつく。

 

 

---

 

謝罪。

 

 

---

 

しかも。

 

本当に申し訳なさそうだった。

 

 

---

 

ヒツジ調整官。

 

 

---

 

> 「定着速度予測が甘く、 外縁七星系の依存率上昇を 適切に抑制できませんでした。」

 

 

 

 

---

 

沈黙。

 

 

---

 

軍人。

 

 

---

 

> 「……依存を、 抑制する気はあったのか?」

 

 

 

 

---

 

ヒツジ。

 

きょとん。

 

 

---

 

> 「当然です。」

 

 

 

 

---

 

> 「単一物流依存は、 文明脆弱性を高めますので。」

 

 

 

 

---

 

その返答に。

 

会議場が静まる。

 

 

---

 

こいつら。

 

最初から分かっていた。

 

 

---

 

しかも。

 

“危険性込み”で運営していた。

 

 

---

 

農業代表 発言

 

老農業組合長が、 立ち上がる。

 

 

---

 

> 「我々の農地は消えた。」

 

 

 

 

---

 

> 「若者も物流へ流れた。」

 

 

 

 

---

 

> 「文化も変わった。」

 

 

 

 

---

 

少し震える声。

 

 

---

 

> 「……お前たちは、 それをどう思っている」

 

 

 

 

---

 

ヒツジ調整官。

 

少し考える。

 

 

---

 

> 「問題です。」

 

 

 

 

---

 

即答だった。

 

 

---

 

会議場。

 

ざわつく。

 

 

---

 

ヒツジ。

 

 

---

 

> 「文明多様性減少は、 市場安定性を低下させます。」

 

 

 

 

---

 

> 「単一供給化は、 長期的に危険です。」

 

 

 

 

---

 

シュガリヴィ。

 

寒気が走る。

 

 

---

 

こいつら。

 

“文化保護”

 

すら。

 

 

---

 

“物流理論”

 

で考えている。

 

 

---

 

経済学者 発言

 

若い経済学者。

 

 

---

 

> 「では何故、 ここまで市場拡大を?」

 

 

 

 

---

 

ヒツジ。

 

 

---

 

> 「需要が存在したためです。」

 

 

 

 

---

 

> 「また、 人類文明の適応速度が 想定より高かった。」

 

 

 

 

---

 

少し沈黙。

 

 

---

 

> 「成功しすぎました。」

 

 

 

 

---

 

会議場。

 

静まる。

 

 

---

 

成功。

 

 

---

 

人類文明の変質を。

 

“成功”

 

と呼んだ。

 

 

---

 

だが。

 

その声に。

 

傲慢さは無かった。

 

 

---

 

本当に。

 

“文明運営上の評価”

 

として言っている。

 

 

---

 

会議場 休憩区画

 

人類側がざわついている。

 

 

---

 

> 「なんなんだあいつら……」

 

 

 

 

---

 

> 「悪意が無いのが逆に怖い」

 

 

 

 

---

 

> 「本当に市場として見てるぞ」

 

 

 

 

---

 

シュガリヴィは、 壁にもたれながら考える。

 

 

---

 

ヒツジは。

 

帝国ではない。

 

 

---

 

侵略国家でもない。

 

 

---

 

もっと違う。

 

 

---

 

“超巨大文明インフラ”

 

だ。

 

 

---

 

その時。

 

ヒツジ調整官が、 缶飲料を持って近づいてくる。

 

 

---

 

> 「どうぞ。」

 

 

 

 

---

 

シュガリヴィ。

 

反射的に受け取る。

 

 

---

 

少し甘い。

 

 

---

 

ヒツジ。

 

 

---

 

> 「人類向け調整版です。」

 

 

 

 

---

 

シュガリヴィ。

 

思わず笑いそうになる。

 

 

---

 

こんな会議中でも。

 

ちゃんと“調整”している。

 

 

---

 

ヒツジ調整官。

 

 

---

 

> 「人類文明、 非常に興味深いです。」

 

 

 

 

---

 

シュガリヴィ。

 

 

---

 

> 「……観察対象ですか?」

 

 

 

 

---

 

ヒツジ。

 

少し考える。

 

 

---

 

> 「交流文明です。」

 

 

 

 

---

 

> 「高適応型市場文明ですので。」

 

 

 

 

---

 

その言葉が。

 

やけに宇宙的だった。

 

 

---

 

シュガリヴィ記者 私的記録

 

ヒツジコーポは。

 

我々を支配しようとしているのではない。

 

 

---

 

もっと違う。

 

 

---

 

接続し。

 

流通させ。

 

安定化し。

 

発展させる。

 

 

---

 

そういう。

 

“文明維持機構”

 

なのだ。

 

 

---

 

だからこそ。

 

 

---

 

多分。

 

一番危険なのかもしれない。

 

 

---

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。