羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】 作:ヒツジ(ラム肉
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銀河中央通信社速報
> 【速報】
文明調整会議、 “文化保全条項”を暫定承認。
地域農業維持・独自物流支援を盛り込む。
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同時速報
> ヒツジコーポ、 “文明冗長化計画”を発表。
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第八居住星系 銀河会議場
疲労が漂っていた。
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政治家。
軍人。
学者。
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全員。
かなり消耗している。
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理由は単純。
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会議が。
“成立してしまっている”。
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人類側は、 もっと対立すると思っていた。
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だが。
ヒツジコーポは。
普通に協力的だった。
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農地保護。
賛成。
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独自物流維持。
賛成。
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文化教育維持。
賛成。
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むしろ。
ヒツジ側の方が
“文明多様性”を重視している。
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それが。
逆に怖かった。
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シュガリヴィ記者 取材記録
私は少し混乱していた。
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ヒツジコーポは。
侵略者ではない。
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だが。
無害でもない。
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むしろ。
“善良すぎる”。
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文明を壊したくない。
飢餓も防ぎたい。
文化も守りたい。
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本気でそう思っている。
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だが同時に。
“市場接続”
も止めない。
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つまり。
人類文明は。
守られながら、
変えられていく。
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最終議題 『文明冗長化計画』
巨大スクリーン。
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そこへ映る。
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『外縁七星系 文明維持計画』
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ヒツジ調整官。
静かに説明する。
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> 「今後、 地域農業復元支援を行います。」
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> 「独自物流補助も開始します。」
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> 「文化教育維持基金も設置予定です。」
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会議場。
ざわつく。
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政治家。
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> 「……何故そこまで?」
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ヒツジ調整官。
きょとん。
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> 「文明維持のためですが?」
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沈黙。
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ヒツジ。
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> 「単一市場化は、 長期的に不安定です。」
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> 「多様性維持は重要ですよ?」
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軍人が、 疲れた顔で笑う。
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> 「お前ら、 本当に文明運営してるんだな……」
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ヒツジ。
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> 「はい?」
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本当に。
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その程度の話として、 返していた。
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会議場外 市民広場
大型モニターで、 会議中継が流れている。
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市民たちが、 静かに見ていた。
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若い男。
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> 「なんか…… 思ったよりまともだなヒツジ」
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老人。
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> 「まともすぎるのが怖い」
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主婦。
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> 「でも今回、 備蓄出してくれたしねぇ」
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女子学生。
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> 「なんか…… “宇宙の大企業”って感じ」
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その言葉に。
シュガリヴィは、 少しだけ納得してしまう。
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そうだ。
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ヒツジコーポは。
“宇宙人”
ではない。
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もっと近い。
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“銀河規模インフラ企業”
なのだ。
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休憩区画
会議終了後。
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人類代表たちが、 疲れ切った顔で座っていた。
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そこへ。
ヒツジ社員たちが、 また軽食を配り始める。
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発酵スープ。
温かいパン。
果実飲料。
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政治家。
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> 「なんで毎回飯がうまいんだ……」
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ヒツジ。
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> 「重要ですので。」
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軍人。
笑う。
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> 「もうその台詞聞き飽きた」
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少しだけ。
空気が柔らかくなる。
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だが。
シュガリヴィだけは、 まだ寒気が抜けなかった。
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会議場 展望窓
巨大物流港。
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無数の輸送船。
航路光。
銀河物流。
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それを見ながら。
シュガリヴィは、 ヒツジ調整官へ最後に聞いた。
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> 「……人類文明は、 今後どうなると思いますか」
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ヒツジ調整官。
少し考える。
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> 「発展すると思います。」
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> 「かなり適応性高いので。」
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> 「交流文明としては、 優秀な部類です。」
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シュガリヴィ。
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> 「交流文明……」
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ヒツジ。
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> 「はい。」
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> 「接続文明とも言います。」
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その単語が。
妙に重かった。
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接続。
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つまり人類は。
“独立文明”
ではなく。
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“銀河文明網へ接続された文明”
として認識され始めている。
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その時。
港の向こう。
超大型輸送船が、 静かに宇宙へ上がっていく。
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まるで。
銀河そのものが、 呼吸しているみたいだった。
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シュガリヴィ記者 私的記録
宇宙は広い。
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広すぎる。
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人類は。
特別ではない。
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唯一でもない。
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そして今。
我々は初めて。
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“巨大文明圏”
へ触れてしまった。
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善意で。
物流で。
食料で。
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静かに接続されながら。
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