羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】 作:ヒツジ(ラム肉
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銀河中央通信社速報
> 【速報】
外縁七星系各地にて、 “反ヒツジ主義”武装組織が急増。
一部地域で物流妨害事件発生。
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同時速報
> ヒツジコーポ、 「文明安定性を損なう行為には対応する」 と声明発表。
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第八居住星系 中央広場
デモだった。
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人が集まっている。
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旗。
演説。
怒号。
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大型スクリーン。
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『人類文明を守れ』
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『物流依存反対』
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『農地を返せ』
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群衆が叫ぶ。
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> 「ヒツジを止めろ!」
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> 「このままじゃ文明が消える!」
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> 「人類の市場を取り戻せ!」
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シュガリヴィは、 その光景を静かに見ていた。
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以前なら。
少数派だった。
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だが今。
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物流障害以降。
“恐怖”が広がり始めている。
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そして。
恐怖は。
思想を生む。
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シュガリヴィ記者 取材記録
人類は、 ついに気付き始めていた。
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ヒツジコーポは。
便利な企業ではない。
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文明そのものへ、 深く入り込みすぎている。
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そして。
一部の人類は。
“このままでは飲み込まれる”
と理解した。
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だから。
反ヒツジ運動が生まれた。
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最初は。
平和的だった。
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農地保護。
独自物流。
文化維持。
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だが。
次第に過激化する。
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なぜなら。
ヒツジ文明が、
強すぎた。
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第八居住星系 郊外倉庫街
夜。
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秘密集会。
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軍崩れ。
元国家主義者。
旧農業保護派。
海賊。
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全員。
かなり本気だった。
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机の上。
星図。
物流航路。
輸送時刻表。
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男が拳を叩きつける。
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> 「物流を止めろ!」
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> 「依存を断ち切らねぇ限り、 人類は終わる!」
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別の男。
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> 「市民はもう気付いてる!」
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> 「今回の物流停止で分かった!」
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若い女。
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> 「ヒツジを倒せるの?」
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沈黙。
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やがて。
軍崩れの男が言う。
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> 「……輸送船を狙う。」
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空気が張り詰める。
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第八物流港
一方。
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ヒツジ側は。
普通に働いていた。
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コンテナ。
輸送船。
搬送ドローン。
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いつも通り。
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ヒツジ社員たちが、 端末片手に歩いている。
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> 「第五便遅延回復しましたー」
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> 「発酵ライン正常化です」
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> 「市場安定率戻ってますね」
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完全に。
“日常業務”
だった。
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シュガリヴィは、 少し怖くなる。
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外では。
人類社会が揺れている。
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なのに。
ヒツジ側は。
“市場変動”
として処理している。
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第八居住星系 酒場
テレビ。
討論番組。
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> 「反ヒツジ運動は正しいのか!?」
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> 「このままでは文明が消える!」
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> 「だが経済は改善している!」
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> 「物流停止時を見ただろ!」
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酒場の客たち。
ざわつく。
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若い作業員。
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> 「まぁ怖ぇのは分かる」
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元農家。
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> 「でもヒツジ居なくなったら、 今さら戻れんぞ」
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別の男。
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> 「だから怖ぇんだろ……」
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空気が重い。
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初めてだった。
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市民たちが。
“ヒツジ文明そのもの”
を語り始めた。
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第八宙域 外縁航路
暗い宇宙。
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そこへ。
巨大輸送船団。
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ヒツジコーポ輸送便。
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大量のコンテナ。
冷凍区画。
発酵保管庫。
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そして。
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その周囲へ。
人類側武装艦隊が、 静かに集まり始めていた。
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旧巡洋艦。
改装戦艦。
武装輸送船。
海賊艇。
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かなりの規模。
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艦隊司令。
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> 「……確認しろ。」
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通信士。
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> 「ヒツジ輸送船団です。」
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> 「護衛艦確認できません。」
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艦隊司令。
笑う。
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> 「輸送船だ。」
「いける。」
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その瞬間。
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ヒツジ輸送船団から、 通信が入る。
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静かな声。
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> 「こちらヒツジコーポ第八物流船団。」
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> 「航路妨害を確認しました。」
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> 「物流安定性を損なう危険行為です。」
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少し沈黙。
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> 「直ちに離脱してください。」
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海賊側。
笑う。
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> 「舐めてんのか宇宙羊」
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> 「輸送船ごときが」
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艦隊司令。
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> 「撃て。」
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宇宙が光る。
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その瞬間。
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ヒツジ輸送船団の輪郭が、 静かに変形した。
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コンテナ区画展開。
装甲展開。
無数の光。
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艦隊司令。
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> 「……は?」
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シュガリヴィは、 後にその戦闘記録を見た。
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そして。
最初に思った。
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“輸送船”ってなんだっけ?
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