羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】 作:ヒツジ(ラム肉
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銀河中央通信社速報
> 【速報】
第八宙域外縁航路にて大規模戦闘発生。
ヒツジコーポ輸送船団、 武装勢力を撃退。
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同時速報
> 人類側武装艦隊、 壊滅的被害。
ヒツジ側輸送継続中。
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第八宙域 外縁航路
宇宙が光った。
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砲火。
ミサイル。
熱線。
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人類側艦隊が、 一斉射撃を行う。
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輸送船団へ。
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旧式巡洋艦。
改装戦艦。
海賊艇。
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かなりの火力だった。
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普通の輸送船なら。
消し飛んでいた。
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だが。
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ヒツジ輸送船団は。
普通じゃなかった。
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海賊側旗艦
警報。
怒号。
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> 「直撃確認!」
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> 「輸送船沈黙――」
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通信士。
止まる。
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> 「……違います!」
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スクリーン。
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煙の向こう。
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ヒツジ輸送船。
普通に航行していた。
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艦長。
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> 「は?」
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その瞬間。
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輸送船側面。
静かに展開。
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装甲板。
砲塔。
ドローンハッチ。
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まるで。
“物流船の皮を被った何か”
だった。
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シュガリヴィ記者 取材記録
後に公開された戦闘映像を見て。
私は数分黙った。
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人類は。
完全に勘違いしていた。
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ヒツジコーポ輸送船を。
“民間船”
だと思っていた。
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だが違う。
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ヒツジ文明にとって。
物流とは。
文明維持そのもの。
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つまり。
物流船とは。
“絶対止めてはいけないもの”
だった。
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そして。
止められる可能性があるなら。
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当然。
対策されている。
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第八物流船団
静かな声が流れる。
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> 「危険行為継続を確認。」
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> 「物流維持モードへ移行します。」
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人類側艦隊。
ざわつく。
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> 「物流維持……?」
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その瞬間。
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無数の小型ドローンが、 輸送船団周囲へ展開。
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海賊艇。
一瞬で沈黙。
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> 「右舷消えた!」
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> 「ミサイル迎撃され――」
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> 「熱源接近!!」
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宇宙が白く光る。
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ヒツジ輸送船 内部記録
後に公開された記録。
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ヒツジ社員たち。
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普通に仕事していた。
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> 「第五冷凍区画問題ありません。」
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> 「発酵保管庫維持中です。」
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> 「第三便遅延、 三分以内へ修正可能です。」
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その後ろで。
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自動迎撃システムが、 人類側艦隊を撃ち抜いていた。
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シュガリヴィ。
映像を見ながら止まる。
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こいつら。
“戦闘”
してない。
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“物流維持”
してる。
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海賊側艦橋
地獄だった。
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警報。
爆発。
火災。
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艦長。
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> 「なんだあれは!?」
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通信士。
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> 「輸送船です!!」
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> 「ヒツジ輸送船!!」
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艦長。
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> 「輸送船がこんな火力で――」
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その瞬間。
旗艦側面。
消失。
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宇宙へ吹き飛ぶ艦橋員。
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ヒツジ側通信。
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> 「危険行為継続を確認。」
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> 「無力化を継続します。」
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声が。
静かすぎた。
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怒りも。
憎悪も。
興奮もない。
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まるで。
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“交通事故処理”
みたいだった。
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第八居住星系 中央ニュース
放送局が混乱していた。
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> 「ヒツジ輸送船団、 武装艦隊を単独撃退!」
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> 「えぇ……?」
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> 「輸送船ですよね?」
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専門家。
疲れた顔。
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> 「……危険宙域仕様でしょうね」
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司会者。
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> 「危険宙域?」
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専門家。
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> 「銀河規模物流なら、 海賊対策は当然です。」
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少し沈黙。
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> 「ただ、 人類文明基準を超えてます。」
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スタジオ。
静まる。
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ネット掲示板
> 「輸送船ってなんだよ」
> 「戦艦だろあれ」
> 「いや物流船らしい」
> 「物流怖ぇ」
> 「ヒツジ怖ぇよ」
> 「あいつら何文明相手に商売してんだ」
> 「海賊かわいそうになってきた」
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少しずつ。
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人類側が理解し始めていた。
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ヒツジコーポは。
“企業”
のスケールではない。
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第八物流港
一方。
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ヒツジ側。
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普通に復旧作業していた。
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> 「第八便、 七分遅延です。」
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> 「代替便回します。」
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> 「市場影響軽微予測。」
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シュガリヴィ。
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> 「……死者出ましたよね?」
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ヒツジ社員。
少し耳が下がる。
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> 「残念です。」
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> 「ですが物流停止は、 文明被害が大きいので。」
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その返答に。
シュガリヴィは、 完全に理解してしまう。
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ヒツジ文明にとって。
“物流維持”
は。
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“戦争より重い”。
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だから。
輸送船は。
“戦艦化”している。
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しかも。
彼らの感覚では。
それが当然。
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その宇宙的価値観の違いが。
今までで一番。
恐ろしかった。
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