羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】 作:ヒツジ(ラム肉
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銀河中央通信社速報
> 【速報】
第八宙域戦闘終結。
ヒツジコーポ輸送船団、 損害軽微。
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同時速報
> 人類側武装勢力、 壊滅。
生存者多数をヒツジ側が救助。
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第八宙域 外縁航路
戦闘は。
終わっていた。
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宇宙空間。
漂う残骸。
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燃える巡洋艦。
砕けた海賊艇。
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その中を。
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ヒツジ輸送船団は。
普通に航行していた。
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まるで。
何事も無かったみたいに。
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コンテナ。
冷凍区画。
発酵保管庫。
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全部そのまま。
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そして。
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無数の救助ドローンが、 人類側生存者を回収していた。
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海賊側脱出艇
警報が鳴っている。
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酸素不足。
電力低下。
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若い海賊が、 震えながら窓を見る。
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そこへ。
巨大な影。
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ヒツジ輸送船。
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海賊。
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> 「終わった……」
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通信。
静かな声。
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> 「救助を開始します。」
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海賊。
止まる。
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> 「……は?」
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> 「生命維持優先です。」
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その後。
普通に回収された。
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シュガリヴィ記者 取材記録
戦闘映像以上に。
私が恐怖したのは。
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“戦闘後”
だった。
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ヒツジコーポは。
勝利宣言をしない。
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敵を罵倒しない。
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復讐もしない。
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ただ。
“物流障害除去後処理”
を行っていた。
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それが。
人類の戦争観と、 あまりにも違いすぎた。
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ヒツジ輸送船 内部
救助された海賊たち。
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医療区画。
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温かいスープ。
毛布。
治療ドローン。
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海賊の男。
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> 「……なんで助ける」
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ヒツジ医療員。
きょとん。
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> 「生命維持は重要です。」
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> 「あと労働人口減少は 文明損失です。」
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海賊。
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> 「文明……」
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ヒツジ。
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> 「はい?」
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悪意が無い。
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本当に。
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一切。
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第八居住星系 中央ニュース
人類社会は、 完全に混乱していた。
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> 「ヒツジ輸送船、 武装艦隊を単独制圧!」
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> 「しかも救助活動継続中!」
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司会者。
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> 「いや、 これ本当に輸送船なんですか?」
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軍事評論家。
疲れた顔。
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> 「……人類基準なら、 戦略艦隊級です。」
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スタジオ。
静まり返る。
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銀河議会 緊急会合
怒号。
混乱。
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> 「ヒツジは危険だ!」
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> 「だが先に襲ったのは人類側だ!」
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> 「輸送船の火力じゃない!」
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> 「危険宙域仕様と言っている!」
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> 「意味が分からん!」
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その一方。
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別の議員。
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> 「……だが、 あれほどの武力を持ちながら 支配してこなかった。」
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静まる会議室。
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それが。
一番怖かった。
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ネット掲示板
> 「ヒツジ怖ぇ」
> 「いや優しくね?」
> 「優しいのに怖ぇんだよ!」
> 「輸送船で艦隊潰すな」
> 「しかも助けるな」
> 「なんなんだあいつら」
> 「文明レベル違いすぎる」
> 「人類が地方軍閥に見えてきた」
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少しずつ。
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人類は。
“格差”
を理解し始めていた。
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国家。
軍隊。
戦争。
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その全部が。
ヒツジ文明から見ると、
“地方レベル”
なのかもしれないと。
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第八物流港
一方。
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ヒツジ側。
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普通に反省会していた。
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> 「戦闘発生、 市場影響予測更新します。」
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> 「第八星系、 不安定化傾向ありですね。」
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> 「文化摩擦増加中です。」
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シュガリヴィ。
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> 「……戦争ですよ?」
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ヒツジ社員。
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> 「はい?」
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> 「物流妨害事件ですが。」
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シュガリヴィ。
頭を抱えそうになる。
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こいつら。
“戦争”
として認識してない。
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“物流障害”
として扱っている。
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その時。
案内役ヒツジ社員が、 少し耳を下げた。
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> 「残念ですねぇ……」
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シュガリヴィ。
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> 「何がです」
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ヒツジ。
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> 「人類文明、 結構好きなんですが。」
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少し沈黙。
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> 「食文化豊かですし。」
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> 「交流速度速いですし。」
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> 「あと、 ご飯美味しそうに食べますし。」
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またそれだった。
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シュガリヴィは、 少し笑いそうになる。
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そして同時に。
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猛烈な宇宙的恐怖を覚えた。
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ヒツジは。
本当に友好的なのだ。
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だが。
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その友好は。
“銀河超巨大文明”
から見た友好。
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つまり。
人類と。
前提スケールが違いすぎる。
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シュガリヴィ記者 私的記録
私は最近。
“エイリアン”という言葉が、 分からなくなってきた。
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ヒツジコーポは。
怪物ではない。
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侵略者でもない。
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だが。
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人類とは、
根本的に違う。
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文明。
物流。
市場。
生命。
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全部を。
我々とは違う尺度で見ている。
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そして多分。
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それが。
“宇宙文明”
なのだ。
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