羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】 作:ヒツジ(ラム肉
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銀河中央通信社速報
> 【速報】
外縁七星系各国、 “外銀河市場税”導入を検討。
各政府間で対応割れる。
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同時速報
> 外銀河就労者、 過去最大を更新。
若年層流出問題が深刻化。
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第八居住星系 中央議会
怒号だった。
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> 「税を取れ!」
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> 「外銀河資本が流出している!」
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> 「物流圏外へ金が逃げているぞ!」
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議員たちが、 顔を真っ赤にして叫ぶ。
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大型スクリーン。
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『外銀河物流圏市場推移』
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意味不明な数字が並んでいた。
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銀河間通貨。
物流圏決済。
文明間市場指数。
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年配議員。
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> 「……なんだこれは」
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若い官僚。
疲れた顔。
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> 「ヒツジ物流圏決済です。」
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> 「現在、 若年層の三割近くが利用しています。」
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議会。
静まる。
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三割。
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たった数年で。
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シュガリヴィ記者 取材記録
人類社会は、 変化していた。
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だが。
一番変化へ苦しんでいるのは。
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国家
だった。
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個人は早い。
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若者たちは。
外銀河へ行き。
異星市場へ触れ。
物流文明へ適応する。
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だが。
国家は違う。
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法律。
制度。
税制。
軍事。
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全部。
“地方文明時代”
の構造だった。
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そして今。
その歪みが、 表面化し始めている。
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第八物流技術学院
卒業生たちが、 外銀河企業説明会へ集まっていた。
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ヒツジ社員。
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> 「第三物流環状帯勤務です。」
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> 「比較的安全ですよ。」
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学生たち。
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> 「うおおお!」
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> 「行きてぇ!」
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> 「外銀河手当すげぇ!」
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その横。
国家公務員募集ブース。
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誰もいなかった。
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シュガリヴィ。
止まる。
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係員のおっちゃん。
苦笑い。
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> 「まぁ…… 今さら役所人気ないですよ」
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遠く。
ヒツジ企業ブース。
大行列。
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おっちゃん。
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> 「給料も世界も違うしなぁ」
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その言葉が。
妙に重かった。
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中央ニュース討論番組
司会者。
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> 「若者の外銀河流出、 どう見るべきでしょうか!」
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経済学者。
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> 「もう止められません。」
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> 「市場規模が違いすぎます。」
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軍人代表。
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> 「だが国家防衛はどうなる!」
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若い評論家。
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> 「そもそも、 国家単位防衛が時代遅れでは?」
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スタジオ。
凍る。
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軍人。
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> 「……なんだと?」
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評論家。
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> 「ヒツジ輸送船見たでしょう。」
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少し沈黙。
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> 「あれ見て、 国家艦隊で宇宙守れると思います?」
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誰も返答できなかった。
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第八居住星系 郊外
古い役場。
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人が少ない。
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以前なら、 地域行政の中心だった。
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今は。
物流センターの方が人が多い。
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若い職員。
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> 「最近、 外銀河移住相談ばっかですよ」
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シュガリヴィ。
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> 「止めないんですか?」
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職員。
苦笑い。
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> 「止めても行きますよ。」
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窓の外。
物流船。
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> 「だって、 向こうの方が未来あるし」
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その言葉が。
国家の敗北みたいに聞こえた。
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ヒツジ物流港 行政調整区画
国家官僚たちが、 疲れた顔で会議していた。
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関税。
税制。
市場規制。
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全部。
ヒツジ物流圏と、 噛み合わない。
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官僚。
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> 「外銀河決済記録を提出してください!」
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ヒツジ職員。
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> 「市場循環情報ですので。」
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官僚。
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> 「だから提出を――」
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ヒツジ。
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> 「文明間共有領域ですよ?」
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官僚。
完全停止。
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シュガリヴィは、 少し同情した。
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国家制度そのものが。
“宇宙文明規模”
へ対応できていない。
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ネット掲示板
> 「国家って必要?」
> 「物流圏の方が便利」
> 「役所遅すぎる」
> 「ヒツジ窓口の方が話早い」
> 「もう地方政府みたいになってる」
> 「いや地方政府だろ実際」
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少しずつ。
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人類側の認識が、 変わり始めていた。
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国家は。
絶対の存在ではない。
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もっと大きな。
“文明圏”
が存在する。
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シュガリヴィ記者 私的記録
私は最近。
国家というものが、 分からなくなってきた。
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人類は長く。
国家単位で世界を見ていた。
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だが。
ヒツジ文明は違う。
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物流。
市場。
交流。
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もっと大きな単位で、 宇宙を見ている。
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そして今。
人類もまた。
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“国家の外側”
を見始めている。
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