羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】   作:ヒツジ(ラム肉

28 / 35
第十話 前編 『国家という名の地方制度 前編 ― 遅れる政府』

---

 

銀河中央通信社速報

 

> 【速報】

 

外縁七星系各国、 “外銀河市場税”導入を検討。

 

各政府間で対応割れる。

 

 

 

 

---

 

同時速報

 

> 外銀河就労者、 過去最大を更新。

 

若年層流出問題が深刻化。

 

 

 

 

---

 

第八居住星系 中央議会

 

怒号だった。

 

 

---

 

> 「税を取れ!」

 

 

 

 

---

 

> 「外銀河資本が流出している!」

 

 

 

 

---

 

> 「物流圏外へ金が逃げているぞ!」

 

 

 

 

---

 

議員たちが、 顔を真っ赤にして叫ぶ。

 

 

---

 

大型スクリーン。

 

 

---

 

『外銀河物流圏市場推移』

 

 

---

 

意味不明な数字が並んでいた。

 

 

---

 

銀河間通貨。

 

物流圏決済。

 

文明間市場指数。

 

 

---

 

年配議員。

 

 

---

 

> 「……なんだこれは」

 

 

 

 

---

 

若い官僚。

 

疲れた顔。

 

 

---

 

> 「ヒツジ物流圏決済です。」

 

 

 

 

---

 

> 「現在、 若年層の三割近くが利用しています。」

 

 

 

 

---

 

議会。

 

静まる。

 

 

---

 

三割。

 

 

---

 

たった数年で。

 

 

---

 

シュガリヴィ記者 取材記録

 

人類社会は、 変化していた。

 

 

---

 

だが。

 

一番変化へ苦しんでいるのは。

 

 

---

 

国家

 

だった。

 

 

---

 

個人は早い。

 

 

---

 

若者たちは。

 

外銀河へ行き。

 

異星市場へ触れ。

 

物流文明へ適応する。

 

 

---

 

だが。

 

国家は違う。

 

 

---

 

法律。

 

制度。

 

税制。

 

軍事。

 

 

---

 

全部。

 

“地方文明時代”

 

の構造だった。

 

 

---

 

そして今。

 

その歪みが、 表面化し始めている。

 

 

---

 

第八物流技術学院

 

卒業生たちが、 外銀河企業説明会へ集まっていた。

 

 

---

 

ヒツジ社員。

 

 

---

 

> 「第三物流環状帯勤務です。」

 

 

 

 

---

 

> 「比較的安全ですよ。」

 

 

 

 

---

 

学生たち。

 

 

---

 

> 「うおおお!」

 

 

 

 

---

 

> 「行きてぇ!」

 

 

 

 

---

 

> 「外銀河手当すげぇ!」

 

 

 

 

---

 

その横。

 

国家公務員募集ブース。

 

 

---

 

誰もいなかった。

 

 

---

 

シュガリヴィ。

 

止まる。

 

 

---

 

係員のおっちゃん。

 

苦笑い。

 

 

---

 

> 「まぁ…… 今さら役所人気ないですよ」

 

 

 

 

---

 

遠く。

 

ヒツジ企業ブース。

 

大行列。

 

 

---

 

おっちゃん。

 

 

---

 

> 「給料も世界も違うしなぁ」

 

 

 

 

---

 

その言葉が。

 

妙に重かった。

 

 

---

 

中央ニュース討論番組

 

司会者。

 

 

---

 

> 「若者の外銀河流出、 どう見るべきでしょうか!」

 

 

 

 

---

 

経済学者。

 

 

---

 

> 「もう止められません。」

 

 

 

 

---

 

> 「市場規模が違いすぎます。」

 

 

 

 

---

 

軍人代表。

 

 

---

 

> 「だが国家防衛はどうなる!」

 

 

 

 

---

 

若い評論家。

 

 

---

 

> 「そもそも、 国家単位防衛が時代遅れでは?」

 

 

 

 

---

 

スタジオ。

 

凍る。

 

 

---

 

軍人。

 

 

---

 

> 「……なんだと?」

 

 

 

 

---

 

評論家。

 

 

---

 

> 「ヒツジ輸送船見たでしょう。」

 

 

 

 

---

 

少し沈黙。

 

 

---

 

> 「あれ見て、 国家艦隊で宇宙守れると思います?」

 

 

 

 

---

 

誰も返答できなかった。

 

 

---

 

第八居住星系 郊外

 

古い役場。

 

 

---

 

人が少ない。

 

 

---

 

以前なら、 地域行政の中心だった。

 

 

---

 

今は。

 

物流センターの方が人が多い。

 

 

---

 

若い職員。

 

 

---

 

> 「最近、 外銀河移住相談ばっかですよ」

 

 

 

 

---

 

シュガリヴィ。

 

 

---

 

> 「止めないんですか?」

 

 

 

 

---

 

職員。

 

苦笑い。

 

 

---

 

> 「止めても行きますよ。」

 

 

 

 

---

 

窓の外。

 

物流船。

 

 

---

 

> 「だって、 向こうの方が未来あるし」

 

 

 

 

---

 

その言葉が。

 

国家の敗北みたいに聞こえた。

 

 

---

 

ヒツジ物流港 行政調整区画

 

国家官僚たちが、 疲れた顔で会議していた。

 

 

---

 

関税。

 

税制。

 

市場規制。

 

 

---

 

全部。

 

ヒツジ物流圏と、 噛み合わない。

 

 

---

 

官僚。

 

 

---

 

> 「外銀河決済記録を提出してください!」

 

 

 

 

---

 

ヒツジ職員。

 

 

---

 

> 「市場循環情報ですので。」

 

 

 

 

---

 

官僚。

 

 

---

 

> 「だから提出を――」

 

 

 

 

---

 

ヒツジ。

 

 

---

 

> 「文明間共有領域ですよ?」

 

 

 

 

---

 

官僚。

 

完全停止。

 

 

---

 

シュガリヴィは、 少し同情した。

 

 

---

 

国家制度そのものが。

 

“宇宙文明規模”

 

へ対応できていない。

 

 

---

 

ネット掲示板

 

> 「国家って必要?」

 

 

 

> 「物流圏の方が便利」

 

 

 

> 「役所遅すぎる」

 

 

 

> 「ヒツジ窓口の方が話早い」

 

 

 

> 「もう地方政府みたいになってる」

 

 

 

> 「いや地方政府だろ実際」

 

 

 

 

---

 

少しずつ。

 

 

---

 

人類側の認識が、 変わり始めていた。

 

 

---

 

国家は。

 

絶対の存在ではない。

 

 

---

 

もっと大きな。

 

“文明圏”

 

が存在する。

 

 

---

 

シュガリヴィ記者 私的記録

 

私は最近。

 

国家というものが、 分からなくなってきた。

 

 

---

 

人類は長く。

 

国家単位で世界を見ていた。

 

 

---

 

だが。

 

ヒツジ文明は違う。

 

 

---

 

物流。

 

市場。

 

交流。

 

 

---

 

もっと大きな単位で、 宇宙を見ている。

 

 

---

 

そして今。

 

人類もまた。

 

 

---

 

“国家の外側”

 

を見始めている。

 

 

---

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。