羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】   作:ヒツジ(ラム肉

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第十話 中編 『国家という名の地方制度 中編 ― 国境の薄れる時代』

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銀河中央通信社速報

 

> 【速報】

 

外縁七星系、 外銀河物流圏就労者数が国家公務員数を上回る。

 

統計開始以来初。

 

 

 

 

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同時速報

 

> 各国政府、 “人材流出対策法案”提出へ。

 

若年層反発強まる。

 

 

 

 

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第八居住星系 中央交通港

 

以前なら。

 

国家旗が並んでいた。

 

 

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今は。

 

物流圏マークの方が大きい。

 

 

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巨大発着表示。

 

 

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『第三物流環状帯行』

 

 

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『外銀河交易区画接続便』

 

 

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若者たちが、 笑いながら乗船していく。

 

 

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> 「向こう着いたら連絡するわ!」

 

 

 

 

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> 「第七銀河土産頼む!」

 

 

 

 

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完全に。

 

“海外留学”

 

みたいな空気だった。

 

 

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シュガリヴィは、 少し目を閉じる。

 

 

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たった十数年前。

 

 

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人類は。

 

宇宙人を怖がっていた。

 

 

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今は。

 

外銀河就職で盛り上がっている。

 

 

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変化が速すぎる。

 

 

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シュガリヴィ記者 取材記録

 

国家は、 明らかに遅れていた。

 

 

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個人は適応する。

 

 

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市場も変わる。

 

 

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企業も変わる。

 

 

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だが国家制度だけが。

 

“人類文明時代”

 

に取り残され始めている。

 

 

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それは。

 

多分。

 

国家そのものが。

 

 

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“地方文明用システム”

 

だったからだ。

 

 

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中央議会 特別委員会

 

空気は最悪だった。

 

 

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> 「若者が戻らない!」

 

 

 

 

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> 「税収減少が止まりません!」

 

 

 

 

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> 「外銀河企業課税を――」

 

 

 

 

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若い官僚。

 

疲れ切った顔。

 

 

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> 「無理です。」

 

 

 

 

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議会。

 

ざわつく。

 

 

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官僚。

 

 

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> 「決済構造が違いすぎます。」

 

 

 

 

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> 「物流圏外通貨へ、 国家制度が対応できていません。」

 

 

 

 

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年配議員。

 

 

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> 「なんでそんなもの認めた!」

 

 

 

 

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若い議員。

 

 

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> 「認める認めない以前に、 市民が使ってるんです!」

 

 

 

 

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沈黙。

 

 

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それが。

 

一番深刻だった。

 

 

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国家の上からではなく。

 

市民側から文明が変わっている。

 

 

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第八物流技術学院 同窓会

 

異様な光景だった。

 

 

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参加者。

 

 

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外銀河勤務。

 

物流管理員。

 

異星市場調整員。

 

文明交流担当。

 

 

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普通に、 異星人も混ざっている。

 

 

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若い卒業生。

 

 

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> 「いやー、 第五銀河市場マジ広いわ」

 

 

 

 

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> 「文明単位で商売してる」

 

 

 

 

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別の卒業生。

 

 

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> 「国家単位とかもう感覚違うよな」

 

 

 

 

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シュガリヴィ。

 

止まる。

 

 

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それだった。

 

 

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若い世代は。

 

“国家”

 

より。

 

 

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“物流圏”

 

を現実として見始めている。

 

 

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中央ニュース 世論調査

 

大型モニター。

 

 

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『国家への信頼度』

 

低下。

 

 

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『物流圏への信頼度』

 

上昇。

 

 

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スタジオ。

 

静まり返る。

 

 

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司会者。

 

 

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> 「……これは、 かなり危険なのでは」

 

 

 

 

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社会学者。

 

 

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> 「多分、 人類史の転換点です。」

 

 

 

 

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スクリーン切替。

 

 

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『若年層意識調査』

 

 

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> 『国家より物流圏の方が現実的』

 

 

 

68%。

 

 

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軍人代表。

 

顔をしかめる。

 

 

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> 「……国家が、 現実でなくなるだと?」

 

 

 

 

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社会学者。

 

静かに頷く。

 

 

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> 「若者はもう、 “銀河社会”を見ています。」

 

 

 

 

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> 「国家境界より、 物流接続の方が重要なんです。」

 

 

 

 

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第八居住星系 旧役所街

 

静かだった。

 

 

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以前の行政中心地。

 

 

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今は。

 

空き店舗が増えている。

 

 

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逆に。

 

物流街は拡張し続けていた。

 

 

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古い食堂のおっちゃん。

 

 

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> 「昔は役人で賑わってたんだがなぁ」

 

 

 

 

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窓の外。

 

物流社員たち。

 

 

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異星人も混ざっている。

 

 

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おっちゃん。

 

 

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> 「今は物流屋ばっかだ」

 

 

 

 

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少し笑う。

 

 

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> 「でも景気は良い」

 

 

 

 

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そこがまた。

 

話を難しくしていた。

 

 

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ヒツジ物流港 行政調整会議

 

国家官僚たち。

 

完全に疲弊。

 

 

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関税。

 

法規。

 

市場監査。

 

 

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全部。

 

銀河物流圏へ追いつかない。

 

 

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ヒツジ調整官。

 

 

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> 「地域行政機構は重要ですよ?」

 

 

 

 

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官僚。

 

 

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> 「……なら、 もっと国家権限を」

 

 

 

 

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ヒツジ。

 

きょとん。

 

 

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> 「何故です?」

 

 

 

 

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官僚。

 

 

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> 「何故って……」

 

 

 

 

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ヒツジ。

 

 

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> 「物流圏と共存可能ですよ?」

 

 

 

 

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> 「地域文化維持には、 地方統治必要ですし。」

 

 

 

 

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地方。

 

 

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国家を。

 

“地方統治機構”

 

として扱った。

 

 

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その瞬間。

 

官僚たちの顔が、 本当に固まった。

 

 

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ネット掲示板

 

> 「国家=地方政府説」

 

 

 

> 「ヒツジから見たらそうだろうな」

 

 

 

> 「銀河規模文明怖ぇ」

 

 

 

> 「でも便利なんだよなぁ」

 

 

 

> 「もう国境とか感覚薄い」

 

 

 

> 「物流止まる方が怖い」

 

 

 

 

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少しずつ。

 

人類文明そのものが。

 

“銀河化”

 

し始めていた。

 

 

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シュガリヴィ記者 私的記録

 

国家は。

 

多分。

 

消えない。

 

 

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だが。

 

 

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絶対でもなくなる。

 

 

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かつて。

 

国家は世界だった。

 

 

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だが今。

 

 

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人類は。

 

“国家の外側”

 

を知ってしまった。

 

 

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そして。

 

もう見なかったことには、 できない。

 

 

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