羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】 作:ヒツジ(ラム肉
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銀河中央通信社速報
> 【速報】
外縁七星系、 外銀河物流圏就労者数が国家公務員数を上回る。
統計開始以来初。
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同時速報
> 各国政府、 “人材流出対策法案”提出へ。
若年層反発強まる。
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第八居住星系 中央交通港
以前なら。
国家旗が並んでいた。
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今は。
物流圏マークの方が大きい。
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巨大発着表示。
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『第三物流環状帯行』
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『外銀河交易区画接続便』
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若者たちが、 笑いながら乗船していく。
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> 「向こう着いたら連絡するわ!」
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> 「第七銀河土産頼む!」
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完全に。
“海外留学”
みたいな空気だった。
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シュガリヴィは、 少し目を閉じる。
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たった十数年前。
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人類は。
宇宙人を怖がっていた。
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今は。
外銀河就職で盛り上がっている。
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変化が速すぎる。
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シュガリヴィ記者 取材記録
国家は、 明らかに遅れていた。
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個人は適応する。
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市場も変わる。
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企業も変わる。
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だが国家制度だけが。
“人類文明時代”
に取り残され始めている。
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それは。
多分。
国家そのものが。
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“地方文明用システム”
だったからだ。
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中央議会 特別委員会
空気は最悪だった。
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> 「若者が戻らない!」
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> 「税収減少が止まりません!」
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> 「外銀河企業課税を――」
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若い官僚。
疲れ切った顔。
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> 「無理です。」
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議会。
ざわつく。
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官僚。
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> 「決済構造が違いすぎます。」
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> 「物流圏外通貨へ、 国家制度が対応できていません。」
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年配議員。
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> 「なんでそんなもの認めた!」
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若い議員。
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> 「認める認めない以前に、 市民が使ってるんです!」
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沈黙。
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それが。
一番深刻だった。
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国家の上からではなく。
市民側から文明が変わっている。
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第八物流技術学院 同窓会
異様な光景だった。
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参加者。
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外銀河勤務。
物流管理員。
異星市場調整員。
文明交流担当。
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普通に、 異星人も混ざっている。
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若い卒業生。
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> 「いやー、 第五銀河市場マジ広いわ」
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> 「文明単位で商売してる」
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別の卒業生。
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> 「国家単位とかもう感覚違うよな」
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シュガリヴィ。
止まる。
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それだった。
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若い世代は。
“国家”
より。
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“物流圏”
を現実として見始めている。
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中央ニュース 世論調査
大型モニター。
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『国家への信頼度』
低下。
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『物流圏への信頼度』
上昇。
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スタジオ。
静まり返る。
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司会者。
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> 「……これは、 かなり危険なのでは」
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社会学者。
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> 「多分、 人類史の転換点です。」
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スクリーン切替。
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『若年層意識調査』
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> 『国家より物流圏の方が現実的』
68%。
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軍人代表。
顔をしかめる。
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> 「……国家が、 現実でなくなるだと?」
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社会学者。
静かに頷く。
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> 「若者はもう、 “銀河社会”を見ています。」
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> 「国家境界より、 物流接続の方が重要なんです。」
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第八居住星系 旧役所街
静かだった。
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以前の行政中心地。
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今は。
空き店舗が増えている。
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逆に。
物流街は拡張し続けていた。
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古い食堂のおっちゃん。
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> 「昔は役人で賑わってたんだがなぁ」
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窓の外。
物流社員たち。
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異星人も混ざっている。
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おっちゃん。
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> 「今は物流屋ばっかだ」
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少し笑う。
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> 「でも景気は良い」
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そこがまた。
話を難しくしていた。
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ヒツジ物流港 行政調整会議
国家官僚たち。
完全に疲弊。
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関税。
法規。
市場監査。
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全部。
銀河物流圏へ追いつかない。
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ヒツジ調整官。
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> 「地域行政機構は重要ですよ?」
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官僚。
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> 「……なら、 もっと国家権限を」
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ヒツジ。
きょとん。
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> 「何故です?」
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官僚。
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> 「何故って……」
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ヒツジ。
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> 「物流圏と共存可能ですよ?」
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> 「地域文化維持には、 地方統治必要ですし。」
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地方。
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国家を。
“地方統治機構”
として扱った。
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その瞬間。
官僚たちの顔が、 本当に固まった。
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ネット掲示板
> 「国家=地方政府説」
> 「ヒツジから見たらそうだろうな」
> 「銀河規模文明怖ぇ」
> 「でも便利なんだよなぁ」
> 「もう国境とか感覚薄い」
> 「物流止まる方が怖い」
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少しずつ。
人類文明そのものが。
“銀河化”
し始めていた。
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シュガリヴィ記者 私的記録
国家は。
多分。
消えない。
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だが。
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絶対でもなくなる。
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かつて。
国家は世界だった。
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だが今。
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人類は。
“国家の外側”
を知ってしまった。
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そして。
もう見なかったことには、 できない。
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