羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】 作:ヒツジ(ラム肉
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銀河中央通信社速報
> 【速報】
外縁七星系共同政府、 “銀河物流圏協調法”を可決。
国家単位ではなく、 物流圏単位での調整へ移行。
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同時速報
> 若年層世論調査、 「国家より文明圏」が過半数を超える。
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第八居住星系 中央議会
静かだった。
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以前のような怒号は無い。
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疲れていた。
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全員。
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議員。
官僚。
軍人。
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もう理解し始めていた。
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“元には戻れない”
と。
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大型スクリーン。
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『銀河物流圏接続状況』
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無数の航路。
市場。
文明圏。
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もはや。
国家地図の方が小さい。
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年配議員が、 静かに呟く。
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> 「……時代が変わったな」
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若い官僚。
苦笑い。
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> 「変わりすぎましたよ」
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誰も否定しなかった。
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シュガリヴィ記者 取材記録
国家は敗北したのだろうか。
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多分。
違う。
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もっと静かなものだ。
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国家は。
“役割が変わった”。
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かつて。
国家は。
世界そのものだった。
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だが今。
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銀河物流圏。
文明交流圏。
外銀河市場。
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もっと巨大なものが、 現れてしまった。
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だから国家は。
“地方行政”
へ近づいている。
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それは屈辱か。
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あるいは。
文明成長なのか。
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まだ誰にも分からない。
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第八物流港 中央交流区
完全に。
多文明都市だった。
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人類。
ヒツジ。
異星人。
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全部混ざっている。
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異星料理街。
外銀河市場。
物流学校。
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そして。
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『第八文明交流局』
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新しい看板。
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昔なら。
入国管理局だった場所。
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若い職員。
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> 「次、 第三銀河交流申請の方ー」
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完全に。
“銀河地方都市”
だった。
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第八物流技術学院
子供たちが、 校外学習へ出発していた。
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行き先。
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『外銀河物流博物館』
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教師。
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> 「他文明の方々に失礼のないようにー」
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子供たち。
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> 「はーい!」
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その中の一人が、 普通に言う。
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> 「将来、 第七銀河行きたい」
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友達。
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> 「いいなー!」
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シュガリヴィは、 少し立ち止まる。
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その子供たちにとって。
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“銀河”
は。
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もう。
“外国”
ですらない。
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中央ニュース 特集番組
タイトル。
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『国家は必要か?』
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昔なら、 炎上していた。
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今は。
真面目に議論されている。
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社会学者。
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> 「国家は消えません。」
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> 「ですが、 文明の中心ではなくなります。」
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軍事評論家。
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> 「もはや国家艦隊単独では、 宙域維持も困難です。」
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若いコメンテーター。
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> 「物流圏時代なんですよね」
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> 「国境より接続。」
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その言葉へ。
反論が減っている。
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そこが。
一番大きな変化だった。
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第八居住星系 旧農村地帯
夕暮れ。
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小さな畑。
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その向こう。
巨大物流港。
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老人が、 土を触っている。
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シュガリヴィ。
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> 「続けるんですね」
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老人。
笑う。
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> 「まぁな」
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> 「こういうの、 残しとかんと」
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遠く。
外銀河便が空へ上がる。
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老人。
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> 「でもまぁ……」
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少し空を見上げる。
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> 「昔より、 子供は楽しそうだ」
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その言葉が。
妙に胸へ残った。
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ヒツジ物流港 展望区画
夜。
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銀河航路。
無数の輸送船。
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まるで。
宇宙そのものが流れている。
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シュガリヴィの隣で。
ヒツジ調整官が、 温かい飲料を飲んでいた。
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> 「第八星系、 安定してきましたねぇ」
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シュガリヴィ。
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> 「……地方都市として?」
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ヒツジ。
きょとん。
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> 「交流文明拠点としてです。」
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少し考える。
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> 「かなり成功例ですよ?」
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また。
それだった。
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人類文明は。
“成功している”。
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ヒツジ文明基準で。
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その感覚に。
シュガリヴィは、 もう慣れ始めていた。
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ヒツジ調整官。
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> 「人類、 面白い文明です。」
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> 「変化速いですし。」
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> 「あと、 料理美味しいですし。」
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シュガリヴィ。
少し笑う。
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> 「それ、 本当に好きですね」
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ヒツジ。
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> 「文明理解に重要ですので。」
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本気だった。
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港の向こう。
超大型物流船団が、 静かに銀河の海へ出ていく。
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人類もまた。
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もう。
その海へ足を踏み入れている。
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シュガリヴィ記者 私的記録
国家という時代が終わるわけではない。
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だが。
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人類は今。
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“国家の外側”
を知ってしまった。
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物流。
交流。
文明圏。
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宇宙は。
あまりにも広い。
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だが。
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その広さの中で。
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人類は初めて。
“銀河文明”
になり始めている。
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