羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】   作:ヒツジ(ラム肉

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第十話 後編 『国家という名の地方制度 後編 ― 銀河地方政府』

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銀河中央通信社速報

 

> 【速報】

 

外縁七星系共同政府、 “銀河物流圏協調法”を可決。

 

国家単位ではなく、 物流圏単位での調整へ移行。

 

 

 

 

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同時速報

 

> 若年層世論調査、 「国家より文明圏」が過半数を超える。

 

 

 

 

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第八居住星系 中央議会

 

静かだった。

 

 

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以前のような怒号は無い。

 

 

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疲れていた。

 

 

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全員。

 

 

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議員。

 

官僚。

 

軍人。

 

 

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もう理解し始めていた。

 

 

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“元には戻れない”

 

と。

 

 

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大型スクリーン。

 

 

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『銀河物流圏接続状況』

 

 

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無数の航路。

 

市場。

 

文明圏。

 

 

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もはや。

 

国家地図の方が小さい。

 

 

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年配議員が、 静かに呟く。

 

 

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> 「……時代が変わったな」

 

 

 

 

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若い官僚。

 

苦笑い。

 

 

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> 「変わりすぎましたよ」

 

 

 

 

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誰も否定しなかった。

 

 

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シュガリヴィ記者 取材記録

 

国家は敗北したのだろうか。

 

 

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多分。

 

違う。

 

 

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もっと静かなものだ。

 

 

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国家は。

 

“役割が変わった”。

 

 

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かつて。

 

国家は。

 

世界そのものだった。

 

 

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だが今。

 

 

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銀河物流圏。

 

文明交流圏。

 

外銀河市場。

 

 

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もっと巨大なものが、 現れてしまった。

 

 

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だから国家は。

 

“地方行政”

 

へ近づいている。

 

 

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それは屈辱か。

 

 

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あるいは。

 

文明成長なのか。

 

 

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まだ誰にも分からない。

 

 

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第八物流港 中央交流区

 

完全に。

 

多文明都市だった。

 

 

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人類。

 

ヒツジ。

 

異星人。

 

 

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全部混ざっている。

 

 

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異星料理街。

 

外銀河市場。

 

物流学校。

 

 

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そして。

 

 

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『第八文明交流局』

 

 

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新しい看板。

 

 

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昔なら。

 

入国管理局だった場所。

 

 

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若い職員。

 

 

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> 「次、 第三銀河交流申請の方ー」

 

 

 

 

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完全に。

 

“銀河地方都市”

 

だった。

 

 

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第八物流技術学院

 

子供たちが、 校外学習へ出発していた。

 

 

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行き先。

 

 

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『外銀河物流博物館』

 

 

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教師。

 

 

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> 「他文明の方々に失礼のないようにー」

 

 

 

 

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子供たち。

 

 

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> 「はーい!」

 

 

 

 

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その中の一人が、 普通に言う。

 

 

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> 「将来、 第七銀河行きたい」

 

 

 

 

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友達。

 

 

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> 「いいなー!」

 

 

 

 

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シュガリヴィは、 少し立ち止まる。

 

 

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その子供たちにとって。

 

 

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“銀河”

 

は。

 

 

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もう。

 

“外国”

 

ですらない。

 

 

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中央ニュース 特集番組

 

タイトル。

 

 

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『国家は必要か?』

 

 

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昔なら、 炎上していた。

 

 

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今は。

 

真面目に議論されている。

 

 

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社会学者。

 

 

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> 「国家は消えません。」

 

 

 

 

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> 「ですが、 文明の中心ではなくなります。」

 

 

 

 

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軍事評論家。

 

 

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> 「もはや国家艦隊単独では、 宙域維持も困難です。」

 

 

 

 

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若いコメンテーター。

 

 

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> 「物流圏時代なんですよね」

 

 

 

 

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> 「国境より接続。」

 

 

 

 

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その言葉へ。

 

反論が減っている。

 

 

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そこが。

 

一番大きな変化だった。

 

 

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第八居住星系 旧農村地帯

 

夕暮れ。

 

 

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小さな畑。

 

 

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その向こう。

 

巨大物流港。

 

 

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老人が、 土を触っている。

 

 

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シュガリヴィ。

 

 

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> 「続けるんですね」

 

 

 

 

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老人。

 

笑う。

 

 

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> 「まぁな」

 

 

 

 

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> 「こういうの、 残しとかんと」

 

 

 

 

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遠く。

 

外銀河便が空へ上がる。

 

 

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老人。

 

 

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> 「でもまぁ……」

 

 

 

 

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少し空を見上げる。

 

 

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> 「昔より、 子供は楽しそうだ」

 

 

 

 

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その言葉が。

 

妙に胸へ残った。

 

 

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ヒツジ物流港 展望区画

 

夜。

 

 

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銀河航路。

 

無数の輸送船。

 

 

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まるで。

 

宇宙そのものが流れている。

 

 

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シュガリヴィの隣で。

 

ヒツジ調整官が、 温かい飲料を飲んでいた。

 

 

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> 「第八星系、 安定してきましたねぇ」

 

 

 

 

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シュガリヴィ。

 

 

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> 「……地方都市として?」

 

 

 

 

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ヒツジ。

 

きょとん。

 

 

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> 「交流文明拠点としてです。」

 

 

 

 

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少し考える。

 

 

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> 「かなり成功例ですよ?」

 

 

 

 

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また。

 

それだった。

 

 

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人類文明は。

 

“成功している”。

 

 

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ヒツジ文明基準で。

 

 

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その感覚に。

 

シュガリヴィは、 もう慣れ始めていた。

 

 

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ヒツジ調整官。

 

 

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> 「人類、 面白い文明です。」

 

 

 

 

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> 「変化速いですし。」

 

 

 

 

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> 「あと、 料理美味しいですし。」

 

 

 

 

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シュガリヴィ。

 

少し笑う。

 

 

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> 「それ、 本当に好きですね」

 

 

 

 

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ヒツジ。

 

 

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> 「文明理解に重要ですので。」

 

 

 

 

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本気だった。

 

 

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港の向こう。

 

超大型物流船団が、 静かに銀河の海へ出ていく。

 

 

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人類もまた。

 

 

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もう。

 

その海へ足を踏み入れている。

 

 

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シュガリヴィ記者 私的記録

 

国家という時代が終わるわけではない。

 

 

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だが。

 

 

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人類は今。

 

 

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“国家の外側”

 

を知ってしまった。

 

 

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物流。

 

交流。

 

文明圏。

 

 

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宇宙は。

 

あまりにも広い。

 

 

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だが。

 

 

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その広さの中で。

 

 

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人類は初めて。

 

“銀河文明”

 

になり始めている。

 

 

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