羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】 作:ヒツジ(ラム肉
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銀河中央通信社速報
> 【特集】
外縁七星系若年層、 “物流圏帰属意識”が国家意識を上回る。
世代間認識差が拡大。
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同時速報
> 第八交流都市、 異星系定住者比率三割を突破。
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第八交流都市 中央駅
昔なら。
“宇宙港”と呼ばれていた。
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今は。
ただの通勤駅みたいだった。
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無数の種族。
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人類。
ヒツジ。
甲殻類型。
浮遊型。
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全部。
普通に乗り降りしている。
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学生たち。
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> 「今日、 第三銀河便遅れてるー」
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> 「物流事故らしい」
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> 「またかー」
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完全に。
“銀河通勤”。
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シュガリヴィは、 少し遠い目をした。
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昔。
人類は。
“銀河”
を夢見ていた。
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今は。
“銀河遅延”
で文句を言っている。
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シュガリヴィ記者 取材記録
銀河世代は。
国家感覚が薄い。
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いや。
正確には。
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“国家より大きいもの”
を先に知っている。
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物流圏。
交流市場。
文明網。
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彼らにとって。
それが現実だ。
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だから。
国家という概念そのものが。
“地方制度”
に近づいている。
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第八文明交流学院 歴史授業
教師。
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> 「では今日は、 “国家時代”について学びます。」
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教室。
ざわつく。
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子供。
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> 「国家時代って?」
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> 「物流圏できる前?」
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教師。
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> 「そうですね。」
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> 「昔の人類は、 国家単位で社会を作っていました。」
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ヒツジの子供。
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> 「非効率ですね。」
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教師。
苦笑い。
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> 「当時はそれが普通でした。」
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シュガリヴィ。
後ろで見学しながら、 少し息を吐く。
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国家。
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ついに。
“歴史授業”
になった。
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中央交流市場
巨大だった。
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外銀河商品。
異星料理。
文明展示。
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若者たちが、 普通に異星人と値段交渉している。
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若い店員。
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> 「第七銀河産香辛料、 今値上がりしてますよー」
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客。
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> 「物流詰まり?」
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> 「文明成長期らしいです」
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完全に。
“銀河市場市民”。
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そこへ。
年配男性が入ってくる。
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昔ながらのスーツ。
国家章。
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若者たち。
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> 「あ、 地方政府の人だ」
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地方政府。
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シュガリヴィは、 その単語で止まる。
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昔なら。
“国家官僚”。
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今は。
“地方政府”。
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完全に、 時代が変わっていた。
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中央ニュース 特別討論
タイトル。
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『国家は必要か』
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昔なら炎上していた。
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今は。
普通に公共番組。
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若い世代代表。
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> 「国家は必要です。」
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年配世代。
安心した顔。
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若者。
続ける。
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> 「地域文化維持に。」
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空気が止まる。
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若者。
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> 「あと行政サービス。」
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> 「物流圏だけじゃ細かい対応無理ですし。」
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司会者。
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> 「つまり……」
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若者。
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> 「地方自治体みたいなものですよね。」
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完全に。
“国家の格下げ”。
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だが。
若者に悪意は無かった。
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本当に。
“そういう感覚”
なのだ。
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第八交流港 展望広場
夕暮れ。
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巨大物流船。
外銀河便。
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子供たちが、 それを見上げている。
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男の子。
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> 「大きくなったら 外銀河物流員になる!」
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女の子。
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> 「私は交流調整官!」
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別の子。
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> 「第九文明圏行きたい!」
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完全に。
“銀河時代の子供”。
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その時。
一人の子供が、 シュガリヴィへ聞いた。
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> 「おじいさん。」
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> 「昔って、 異星人居なくて怖くなかったの?」
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シュガリヴィ。
止まる。
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怖い。
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昔の人類は。
“孤独”
だった。
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その感覚を。
今の子供たちは、 もう理解できない。
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第八旧行政区
静かだった。
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昔の国家庁舎群。
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今は。
一部が博物館。
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看板。
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『国家時代行政資料館』
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シュガリヴィ。
思わず笑いそうになる。
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国家時代。
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まるで。
古代文明。
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だが。
まだ六十年も経っていない。
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シュガリヴィ記者 私的記録
人類は。
静かに。
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だが決定的に、 変わってしまった。
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国家。
国境。
人類中心主義。
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それらは。
消えてはいない。
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だが。
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“絶対”
ではなくなった。
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そして今。
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銀河世代は。
最初から。
“宇宙の中の人類”
として生きている。
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それは。
恐ろしくもあり。
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少しだけ。
希望にも見えた。
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