羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】 作:ヒツジ(ラム肉
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銀河中央通信社速報
> 【特集】
ヒツジコーポ接触から六十二年。
“銀河世代”が社会中核層へ。
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同時速報
> 第八交流都市、 外銀河出生者比率一五%を突破。
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第八交流都市 中央街区
夜だった。
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光。
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異星文字。
物流広告。
外銀河便案内。
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そして。
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無数の人々。
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人類。
ヒツジ。
異星人。
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全部が混ざっている。
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シュガリヴィは、 静かに歩いていた。
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もう。
違和感は無い。
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それが。
一番大きな変化だった。
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シュガリヴィ記者 取材記録
六十年。
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長いようで。
短かった。
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人類は変わった。
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変わらざるを得なかった。
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だが。
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その変化は。
征服ではない。
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滅亡でもない。
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もっと静かな。
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“文明接続”
だった。
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そして今。
人類は。
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“銀河文明の一地方文明”
になり始めている。
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第八文明交流大学
講義室。
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授業タイトル。
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『前接続期人類文明論』
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前接続期。
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つまり。
“ヒツジ以前”。
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若い教授。
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> 「当時の人類は、 国家単位で競争していました。」
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学生たち。
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> 「へぇー」
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> 「非効率……」
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> 「物流圏無かったんだ」
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教授。
苦笑い。
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> 「当時はそれが普通でした。」
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その時。
学生の一人が手を上げる。
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> 「質問です。」
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> 「なんで人類だけで 完結できると思ってたんです?」
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講義室。
静まる。
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シュガリヴィは、 その質問で息を止めた。
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昔の人類は。
“人類だけ”
が世界だった。
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だが今。
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その感覚自体が、 理解されなくなっている。
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第八交流市場 食堂街
活気があった。
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異星料理。
人類料理。
融合料理。
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全部並んでいる。
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若者たちが、 普通に食べ歩いていた。
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人類の青年。
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> 「最近、 第三銀河系香辛料高くね?」
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浮遊型異星人。
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> 「物流混雑中らしいですよ」
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ヒツジ店員。
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> 「文明成長期ですので。」
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完全に。
“銀河生活”。
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その隅で。
年配の老人が、 静かに味噌汁を飲んでいた。
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その向こう。
異星人観光客たちが、 和食を撮影している。
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老人。
小さく笑う。
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> 「昔は、 こんなん地方料理だったんだがなぁ」
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今は。
“銀河文化資産”。
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時代は。
本当に変わった。
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第八交流港
巨大物流船団。
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外銀河便。
文明交流船。
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無数の船が、 静かに宇宙へ出ていく。
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その前で。
子供たちが遠足している。
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教師。
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> 「この船団は、 第七銀河交易圏へ向かいます。」
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子供。
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> 「いってみたーい!」
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> 「第七銀河って何文明いるの?」
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教師。
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> 「現在確認されてるだけで 七百二十文明ですね。」
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子供たち。
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> 「すげぇー!」
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誰も驚かない。
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七百文明。
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それが。
“普通”
になっていた。
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第八旧国家議会跡
今は博物館。
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看板。
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『前銀河時代政治資料館』
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シュガリヴィ。
少し笑う。
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前銀河時代。
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人類文明は。
“銀河以前”
として整理され始めていた。
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その時。
若いカップルが、 資料を見ながら話していた。
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> 「昔って、 国境で戦争してたんだ」
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> 「信じられないよね」
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> 「物流止まる方が怖いのに」
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シュガリヴィは、 思わず空を見上げた。
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本当に。
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価値観そのものが、 変わってしまった。
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ヒツジ交流局 展望区画
夜。
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銀河航路。
無数の物流光。
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その隣で。
老いたシュガリヴィが、 静かに座っていた。
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ヒツジ調整官も、 かなり年を取っている。
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……いや。
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よく見ると。
あまり変わっていない。
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シュガリヴィ。
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> 「……長かったですね」
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ヒツジ。
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> 「交流文明初期としては、 かなり順調ですよ?」
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また。
それだった。
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人類の激動を。
“交流文明初期”
として語る。
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だが。
シュガリヴィは、 もう怒る気になれなかった。
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多分。
本当にそうなのだ。
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ヒツジは、 温かい飲み物を飲みながら言う。
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> 「人類、 良い文明になりましたねぇ」
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シュガリヴィ。
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> 「……変わりましたよ」
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ヒツジ。
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> 「はい。」
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> 「かなり。」
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少し沈黙。
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> 「でも、 人類らしさは残ってますよ?」
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シュガリヴィ。
少し笑う。
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> 「料理とかですか」
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ヒツジ。
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> 「重要ですので。」
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本気だった。
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港の向こう。
超大型物流船団が、 静かに銀河の海へ出ていく。
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その光景を見ながら。
シュガリヴィは、 静かに思う。
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人類は。
もう戻れない。
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だが。
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もしかすると。
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これが、
“人類文明の始まり”
だったのかもしれない。
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