羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】 作:ヒツジ(ラム肉
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銀河中央通信社 特別速報
> 【速報】
記者シュガリヴィ氏、 “中央文明調整委員会”到着を確認。
委員会内部取材は人類史上初。
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同時速報
> ヒツジコーポ、 「交流文明理解促進の一環」 と説明。
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銀河外縁中央交流機構
巨大だった。
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いや。
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巨大という言葉では、 足りない。
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宇宙空間。
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そこに。
“文明”
そのものが浮いていた。
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物流港。
交流都市。
研究区画。
文明調整塔。
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全部が、 一体化している。
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シュガリヴィは、 しばらく言葉を失っていた。
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ヒツジ案内員。
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> 「こちらが、 第三外縁中央交流機構です。」
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第三。
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つまり。
複数ある。
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その時点で、 もう感覚が壊れそうだった。
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シュガリヴィ記者 私的記録
私は長く。
ヒツジコーポを見てきた。
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物流。
市場。
文明交流。
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だが。
今ようやく理解し始めている。
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ヒツジコーポとは。
“会社”
ではない。
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もっと巨大な。
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“文明循環機構”
なのだ。
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中央文明調整委員会
静かな部屋だった。
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円卓。
柔らかな照明。
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そして。
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並ぶヒツジたち。
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委員。
調整官。
市場管理員。
文明観測員。
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全員。
普通の顔で座っている。
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シュガリヴィは、 少し笑いそうになる。
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六十年見続けても。
やっぱり。
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“二足歩行する服着た羊”
だった。
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なのに。
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銀河文明を回している。
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意味が分からない。
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委員長らしきヒツジが、 静かに頭を下げる。
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> 「長期交流観測、 誠にありがとうございました。」
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> 「シュガリヴィ記録群は、 人類接続初期資料として 最重要記録に指定されています。」
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シュガリヴィ。
止まる。
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> 「……最重要?」
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ヒツジ委員。
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> 「はい。」
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> 「初期文明反応、 世代変化、 接続過程が極めて詳細でしたので。」
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少し沈黙。
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> 「非常に参考になりました。」
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怖い。
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だが同時に。
少しだけ嬉しかった。
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自分の記録が。
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“人類文明の記録”
として扱われていた。
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最後の取材
シュガリヴィは、 端末を置く。
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静かに言う。
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> 「では聞こう。」
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> 「六十年間、 人類が疑問だったことを。」
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ヒツジ委員たち。
静かに頷く。
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質問①
「なぜ人類へ来た?」
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シュガリヴィ。
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> 「何故、 人類へ接触した。」
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> 「何故、 食料だった。」
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委員会。
少し静かになる。
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ヒツジ委員長。
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> 「孤立文明は、 滅びやすいので。」
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シュガリヴィ。
止まる。
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ヒツジ。
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> 「特に初期宇宙文明段階は、 不安定です。」
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> 「物流接続と食料安定化は、 文明生存率を大きく向上させます。」
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あまりにも。
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あまりにも、 ヒツジらしい答えだった。
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質問②
「何故そこまで友好的なのか」
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シュガリヴィ。
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> 「何故、 人類へここまで友好的だった。」
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> 「支配も征服もしなかった。」
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ヒツジ委員。
きょとん。
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> 「征服?」
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少し考える。
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> 「効率悪いですよ?」
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会議室。
静まる。
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ヒツジ。
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> 「文明は、 接続した方が安定します。」
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> 「孤立より交流。」
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> 「対立より物流です。」
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シュガリヴィは、 思わず笑いそうになる。
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六十年見続けても。
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やっぱり。
“物流文明”
だった。
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質問③
「ヒツジコーポとは何か」
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シュガリヴィ。
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> 「お前たちは、 国家なのか?」
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> 「企業なのか?」
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> 「宗教か?」
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少し沈黙。
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ヒツジ委員たちが、 互いを見る。
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やがて。
委員長が答える。
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> 「物流文明です。」
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シュガリヴィ。
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> 「……は?」
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ヒツジ。
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> 「文明循環維持機構ですね。」
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> 「交流文明間接続網とも言います。」
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その瞬間。
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シュガリヴィは、 ようやく理解する。
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ヒツジコーポは。
“国”
じゃない。
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“企業”
でもない。
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もっと違う。
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“文明そのもの”。
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だから。
国家とも、 戦争とも、 価値観が噛み合わなかった。
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根本から、 見ている世界が違った。
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質問④
「人類をどう見ている?」
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シュガリヴィ。
静かに聞く。
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> 「……人類は、 お前たちにとって何だった。」
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会議室。
少し静かになる。
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ヒツジ委員長。
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> 「かなり興味深い文明でした。」
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> 「適応速度が速く、 多様性維持能力も高い。」
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> 「交流文明として、 成功例寄りです。」
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また。
それだった。
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人類文明は。
“成功例”。
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ヒツジ文明基準で。
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だが。
もうシュガリヴィは、 怒らなかった。
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多分。
本当にそうなのだ。
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シュガリヴィ記者 私的記録
私は。
ようやく理解し始めている。
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ヒツジは。
人類を侵略したのではない。
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接続したのだ。
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物流で。
食料で。
市場で。
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そして人類は。
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自ら、 宇宙へ出ていった。
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その結果として。
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文明は変わった。
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