羊たちが運んできた宇宙 【Welcome Humanity】 作:ヒツジ(ラム肉
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銀河中央通信社 最終特別記録
> 【特別収録】
記者シュガリヴィ氏による “中央文明調整委員会最終取材”
本記録は、 人類文明接続初期資料群へ永久保存される。
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中央文明調整委員会
静かだった。
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窓の外。
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銀河。
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物流航路。
文明光。
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そして。
その向こう。
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さらに別の銀河。
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シュガリヴィは、 長い沈黙の後。
最後の質問を口にする。
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> 「……宇宙は、 どこまで広い」
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会議室。
少し静かになる。
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ヒツジ委員たちが、 互いを見る。
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やがて。
委員長が答えた。
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> 「分かりません。」
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シュガリヴィ。
止まる。
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> 「……分からない?」
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ヒツジ。
静かに頷く。
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> 「未接続領域、 多数存在しますので。」
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> 「現在確認済み銀河群外にも、 広域文明反応があります。」
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> 「なお、 本社側でも全域把握はできていません。」
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本社。
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シュガリヴィ。
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> 「……やはり、 本社があるのか」
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ヒツジ委員。
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> 「はい。」
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> 「ヒツジコーポ中央物流機構です。」
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シュガリヴィ。
苦笑いする。
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> 「ここが中央じゃないのか」
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ヒツジ。
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> 「第三外縁交流機構ですので。」
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外縁。
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つまり。
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ここですら。
“辺境”。
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シュガリヴィは、 頭を押さえたくなる。
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人類が。
広いと思っていた銀河。
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そのさらに外側。
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そのまた外側。
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ヒツジ文明は。
そこまで伸びている。
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だが。
次の言葉が、 さらに衝撃だった。
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ヒツジ委員長。
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> 「なお、 我々も全てを知っているわけではありません。」
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シュガリヴィ。
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> 「……何?」
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ヒツジ。
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> 「未接続文明、 未確認領域、 未知現象は多数あります。」
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> 「我々も、 まだ宇宙の途中です。」
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その瞬間。
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シュガリヴィは、 ようやく理解した。
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ヒツジですら。
“旅の途中”。
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つまり。
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宇宙は。
誰にも把握できていない。
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どれだけ文明が進んでも。
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まだ。
先がある。
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最後の質問
シュガリヴィ。
静かに聞く。
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> 「……人類は、 これからどうなる」
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会議室。
少し沈黙。
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ヒツジ委員長。
柔らかい声。
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> 「分かりません。」
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シュガリヴィ。
少し笑う。
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今日は。
“分からない”が多い。
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ヒツジ。
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> 「ですが。」
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> 「人類文明は、 かなり遠くまで行けると思います。」
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> 「交流適性が高いので。」
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また。
それだった。
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だが。
今は少しだけ、 誇らしく聞こえた。
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展望区画
取材終了後。
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シュガリヴィは、 一人で窓際へ立つ。
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銀河。
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物流光。
文明航路。
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無数の輸送船が、 静かに宇宙を流れている。
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その光景は。
まるで。
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“文明の川”
だった。
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その隣へ。
ヒツジ調整官が、 静かに来る。
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長い付き合いだった。
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ヒツジ。
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> 「最後の取材、 どうでした?」
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シュガリヴィ。
少し考える。
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> 「……結局、 よく分からんかったな」
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ヒツジ。
きょとん。
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> 「はい?」
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シュガリヴィ。
笑う。
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> 「宇宙も、 お前たちも。」
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少し沈黙。
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> 「だがまぁ……」
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窓の外。
無数の銀河。
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> 「悪くなかった。」
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ヒツジ。
静かに耳を揺らす。
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> 「それは良かったです。」
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本当に。
最後まで。
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普通の口調だった。
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シュガリヴィ記者 最終記録
人類は変わった。
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変わらざるを得なかった。
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国家。
国境。
人類中心主義。
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それらは、 静かに形を変えた。
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だが。
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それは滅びではなかった。
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宇宙は広い。
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広すぎる。
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そして。
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ヒツジコーポですら、 その全てを知らない。
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ならば。
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人類文明もまた。
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これから先。
どこまでも行けるのかもしれない。
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恐怖と。
希望と。
未知を抱えながら。
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我々は。
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“宇宙の海”
へ出てしまった。
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もう戻れない。
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だが。
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もしかすると。
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これが。
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“人類文明の始まり”
だったのかもしれない。
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― 終 ―