とある実験設備から逃げ出した生物兵器。
既に被害が出てしまい、施設部隊は事態の鎮圧に赴くが……
某国に存在する大軍事企業の研究施設内にて、けたたましく警報が鳴り響いた。
『緊急事態発生‼ 緊急事態発生‼ 実験中の生物兵器が脱走しました‼』
秘密裏に製造していた生物兵器の脱走。
厳重に管理していたはずなのに怒ってしまった最悪の事態に、研究所はパニックに陥った。
「状況は!?」
「性能を確認しようとしたCEOが奴の餌食に‼」
「くそっ‼ なんてこった‼」
すぐさま派遣された私設部隊の兵士たちは、最悪な状況を前に悪態を吐く。
この仕事が終わったら転職先を探さなければならなくなった。
「だが、まずは件の化け物を処分しないと……」
「いたぞ‼ あそこだ‼」
部隊長の方へ向かうと、そこには鬼かトロールのような巨大な化け物が、今にも外に出ようとしているではないか。
「くそ! 逃がしてたまるか‼」
「総員‼ 掃射用意‼」
このまま施設の外に出すわけにはいかないと、武器を構えたその時、一人の女性研究員が飛び出してきた。
「待って‼ この子を撃たないで‼ 本当はやさしい子なの‼」
「え、エミリア君‼ そこをどきなさい‼」
研究所長が慌てて、離れるように言うも、彼女は首を横に振り拒絶する。
どうやら、生物兵器の研究をしている間に情が移ってしまったようだ。
しかし、彼女一人のわがままで、奴を野放しにするわけにはいかない。
必要な犠牲と割り切り、引き金に指を掛けた。だが……
「え、エミリア……」
「‼ 喋った!?」
驚くべきことに、生物兵器は女性研究員の名前を呼んだ。
どうやら、高い知性を持っているようである。
「エミリア……ボクに、文字や言葉を教えてくれた……」
するとさらに、一人の男性研究員が生物兵器に近寄ってきた。
「さぁ、大人しく、実験室に戻ろう」
「マイケル……いつも、こっそり、おかしをくれた……」
さらに、もう一人研究員が現れ……
「いや~ようやくスイッ〇2が手に入ったよ~! いっしょにどうだい?」
「シゲル……いつも、いっしょにゲームで遊んでくれた……」
「ちょっと待てや、オイ」
ここで隊員が止めに入る。
いや、感度的なシーンなのは分かる。
感情を持たないはずの生物兵器が、研究員との交流で心を得る場面だろ、これ。
だけど、ここでストップかけないと……
「おーい、今日は見たいシリーズ一気見しようぜ‼」
「ニック……ネットで海外ドラマや映画を見せてくれた……」
「ほらなぁ‼ 思った通りだよ‼」
次々と説得に現れる研究員に隊員の予感が的中。
って言うか、この研究所、緩すぎだろ。
一応、コイツ生物兵器だぞ?
もっと、ちゃんと管理をしないと……
「今度キャッチボールしようぜ‼」
「トニー……よく、近所の公園に連れて行ってくれた……」
「おぉぉぉぉぉいッ‼ なにやってくれとんじゃ!?」
近所の公園に!? 連れてったのか⁉ この怪物を!? よく騒ぎにならなかったな⁉
あと、キャッチボールはやめろ‼
仮にも兵器だから‼
〇谷以上の剛速球が飛んでくるから‼
「いい肉買ったんだ‼」
「シャーディ……この間、バーベキューに連れて行ってくれた……」
だから、なにやってんだ、お前ら‼
フリーダムすぎるだろうが‼
「おススメの漫画、借りてきたぜ☆」
「ジョージ……この間、TUTA〇Aに連れて行ってくれた……」
だーかーらー連れ出すなっつーの‼
ていうか宅配で借りろ‼
「マタ家族ガ会イタイッテ‼」
「ボブ……アフリカの大自然を見せてくれた……」
アフリカ!?
アフリカまで連れてったの⁉
よく飛行機乗れたな‼
それ以降もコミケだの、ランドだのまで連れて行ったという、連中まで現れ、頭を抱えたくなる。
同時にこの職場のホワイト加減も羨ましくなる。
そんな時、一人の後輩隊員がロケットランチャーを生物兵器に向けた発射した。
「あ~‼ もう‼ そいつはCEOに危害を加えたバケモンなんだよ‼ 速攻殺処分しなきゃダメなの‼」
そう言って、立ちはだかる研究員を無視し、砲撃。
その時だった。
「私からも頼む‼」
『CEO!?』
「片手でキャッチした!?」
突如現れたCEOがロケット弾を片手で受け止めた。
そして信管を抜き、そっと地面に置いて、生物兵器に話しかける。
「大丈夫か?」
「CEO……否、師父、手合わせで壁二~三枚壊して、吹っ飛ばしちゃったけど、大丈夫?」
「ははは、あの程度で倒れる私ではない。しかし、あそこまで強くなるとは、私を超える日は近いな‼」
そう言って、微笑ましく笑うCEOに呆気に取られる施設部隊。
本人曰く「ちょっと格闘技を教えたら、いいのが入って吹っ飛ばされ、気絶していた」だけらしく、結局、生物兵器の暴走による犠牲者はゼロだったそうだ。
って言うか、生物兵器に殴り飛ばされて壁2~3枚破壊されても気絶で済んだCEOおかしいだろ。
……生物兵器いらねぇだろ。
◆登場人物◆
・施設部隊の皆さん
どうも、ごくろうさまです。
・研究員のみなさん
エミリア女史(102/63/98)を始めみんないい人。
アットホームな職場です(笑)
・CEO
「軍事企業と言っても、戦争目的とかではなく、あくまで防衛のための軍事ですからね。これだけで喰っていくわけにはいきませんよ。なので今後はサブカルチャーに力を入れていきます。最近、わが社で開発した生物兵器が漫画にハマっておりまして、これを期に出版業にも力を入れていこうかと」