とある実験設備から逃げ出した生物兵器。
 既に被害が出てしまい、施設部隊は事態の鎮圧に赴くが……

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第1話

 某国に存在する大軍事企業の研究施設内にて、けたたましく警報が鳴り響いた。

 

『緊急事態発生‼ 緊急事態発生‼ 実験中の生物兵器が脱走しました‼』

 

 秘密裏に製造していた生物兵器の脱走。

 厳重に管理していたはずなのに怒ってしまった最悪の事態に、研究所はパニックに陥った。

 

「状況は!?」

「性能を確認しようとしたCEOが奴の餌食に‼」

「くそっ‼ なんてこった‼」

 

 すぐさま派遣された私設部隊の兵士たちは、最悪な状況を前に悪態を吐く。

 この仕事が終わったら転職先を探さなければならなくなった。

 

「だが、まずは件の化け物を処分しないと……」

「いたぞ‼ あそこだ‼」

 

 部隊長の方へ向かうと、そこには鬼かトロールのような巨大な化け物が、今にも外に出ようとしているではないか。

 

「くそ! 逃がしてたまるか‼」

「総員‼ 掃射用意‼」

 

 このまま施設の外に出すわけにはいかないと、武器を構えたその時、一人の女性研究員が飛び出してきた。

 

「待って‼ この子を撃たないで‼ 本当はやさしい子なの‼」

「え、エミリア君‼ そこをどきなさい‼」

 

 研究所長が慌てて、離れるように言うも、彼女は首を横に振り拒絶する。

 どうやら、生物兵器の研究をしている間に情が移ってしまったようだ。

 しかし、彼女一人のわがままで、奴を野放しにするわけにはいかない。

 必要な犠牲と割り切り、引き金に指を掛けた。だが……

 

「え、エミリア……」

「‼ 喋った!?」

 

 驚くべきことに、生物兵器は女性研究員の名前を呼んだ。

 どうやら、高い知性を持っているようである。

 

「エミリア……ボクに、文字や言葉を教えてくれた……」

 

 するとさらに、一人の男性研究員が生物兵器に近寄ってきた。

 

「さぁ、大人しく、実験室に戻ろう」

「マイケル……いつも、こっそり、おかしをくれた……」

 

 さらに、もう一人研究員が現れ……

 

「いや~ようやくスイッ〇2が手に入ったよ~! いっしょにどうだい?」

「シゲル……いつも、いっしょにゲームで遊んでくれた……」

「ちょっと待てや、オイ」

 

 ここで隊員が止めに入る。

 いや、感度的なシーンなのは分かる。

 感情を持たないはずの生物兵器が、研究員との交流で心を得る場面だろ、これ。

 だけど、ここでストップかけないと……

 

「おーい、今日は見たいシリーズ一気見しようぜ‼」

「ニック……ネットで海外ドラマや映画を見せてくれた……」

「ほらなぁ‼ 思った通りだよ‼」

 

 次々と説得に現れる研究員に隊員の予感が的中。

 って言うか、この研究所、緩すぎだろ。

 一応、コイツ生物兵器だぞ?

 もっと、ちゃんと管理をしないと……

 

「今度キャッチボールしようぜ‼」

「トニー……よく、近所の公園に連れて行ってくれた……」

「おぉぉぉぉぉいッ‼ なにやってくれとんじゃ!?」

 

 近所の公園に!? 連れてったのか⁉ この怪物を!? よく騒ぎにならなかったな⁉

 あと、キャッチボールはやめろ‼

 仮にも兵器だから‼

 〇谷以上の剛速球が飛んでくるから‼

 

「いい肉買ったんだ‼」

「シャーディ……この間、バーベキューに連れて行ってくれた……」

 

 だから、なにやってんだ、お前ら‼

 フリーダムすぎるだろうが‼

 

「おススメの漫画、借りてきたぜ☆」

「ジョージ……この間、TUTA〇Aに連れて行ってくれた……」

 

 だーかーらー連れ出すなっつーの‼

 ていうか宅配で借りろ‼

 

「マタ家族ガ会イタイッテ‼」

「ボブ……アフリカの大自然を見せてくれた……」

 

 アフリカ!?

 アフリカまで連れてったの⁉

 よく飛行機乗れたな‼

 

 それ以降もコミケだの、ランドだのまで連れて行ったという、連中まで現れ、頭を抱えたくなる。

 同時にこの職場のホワイト加減も羨ましくなる。

 そんな時、一人の後輩隊員がロケットランチャーを生物兵器に向けた発射した。

 

「あ~‼ もう‼ そいつはCEOに危害を加えたバケモンなんだよ‼ 速攻殺処分しなきゃダメなの‼」

 

 そう言って、立ちはだかる研究員を無視し、砲撃。

 その時だった。

 

「私からも頼む‼」

『CEO!?』

「片手でキャッチした!?」

 

 突如現れたCEOがロケット弾を片手で受け止めた。

 そして信管を抜き、そっと地面に置いて、生物兵器に話しかける。

 

「大丈夫か?」

「CEO……否、師父、手合わせで壁二~三枚壊して、吹っ飛ばしちゃったけど、大丈夫?」

「ははは、あの程度で倒れる私ではない。しかし、あそこまで強くなるとは、私を超える日は近いな‼」

 

 そう言って、微笑ましく笑うCEOに呆気に取られる施設部隊。

 本人曰く「ちょっと格闘技を教えたら、いいのが入って吹っ飛ばされ、気絶していた」だけらしく、結局、生物兵器の暴走による犠牲者はゼロだったそうだ。

 って言うか、生物兵器に殴り飛ばされて壁2~3枚破壊されても気絶で済んだCEOおかしいだろ。

 

 

 ……生物兵器いらねぇだろ。

 

 

 

 




◆登場人物◆
・施設部隊の皆さん
 どうも、ごくろうさまです。

・研究員のみなさん
 エミリア女史(102/63/98)を始めみんないい人。
 アットホームな職場です(笑)

・CEO
「軍事企業と言っても、戦争目的とかではなく、あくまで防衛のための軍事ですからね。これだけで喰っていくわけにはいきませんよ。なので今後はサブカルチャーに力を入れていきます。最近、わが社で開発した生物兵器が漫画にハマっておりまして、これを期に出版業にも力を入れていこうかと」

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