四糸乃デンドログラム   作:姫河ハヅキ

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見切り発車で執筆しはじめた二次創作。
ジョブ構成の最終形やいずれ獲得する特典武具など設定はできてるからあとはそこまで書く!(それが難しい)
不定期更新なのでご了承を。


第一話 プロローグ

「……終わりましたか」

 

机の上に置かれた書類を見下ろし、小学生にしか見えない少女 片山 柊はそう呟いた。

数分前までそこには弁護士がいた。

正確には弁護士"たち"だ。

十年以上続いた親族との争いは、今日ようやく完全に終わった。

親族側の請求は棄却。

資産管理権の完全移譲。

各種法的手続きも終了。

書類の内容に不備はない。

提出先も問題ない。

今後の想定リスクもほぼ存在しない。

 

「……ふぅ」

 

嬉しいとも思わない。

悲しいとも思わない。

達成感もない。

ただ、長く続いていたタスクが終了した。

その程度の認識。

部屋は静かだった。

時計の秒針の音だけが一定間隔で響いている。

しばらくして、ふとスマートフォンを眺めるととあるネットニュースが目に入った。

【おすすめVRMMOランキング】

【Infinite Dendrogram】

【超高性能AI搭載】

【無限の可能性を持つ世界】

 

「……VRゲーム」

 

人が笑っていた。

人が怒っていた。

人が泣いていた。

 

「……」

 

画面をスクロールする。

『もう一つの人生を』

『貴方だけの可能性を』

『世界は無限』

「なるほど」

柊は小さく頷いた。

考える。

今後の生活について。

資産運用は既に終えている。これから一生働かずとも生きていくに十分な資産はある。

もう学校に行くような年ではない。

やるべきことはないが、時間は大量に存在する。

 

「趣味を持つべきでしょうか」

 

誰に聞くでもなくそう呟いた。

以前、学校で聞いたことがある。

人には息抜きが必要らしい。

ストレス解消も必要らしい。

 

「……私に必要かは分かりませんが」

 

少し考える。

そして結論を出した。

 

「試してみましょう」

 

理由は単純だった。

問題がないから。

やらない理由もないから。

数日後。

購入したVR機器の箱を机の上に置き、柊は説明書を読んでいた。

 

「……装着完了」

 

「はーい、ようこそいらっしゃいましたー」

 

 目を開けると、そこは自室ではなかった。

 木製の本棚、暖炉、アンティーク調の机と椅子。洋館の書斎のような空間。

 そして、その中央。

 揺椅子の上で尻尾を揺らしながら、猫がこちらを見ていた。

 

「お邪魔します」

 

 とりあえず挨拶する。

 相手が礼節を崩さないのなら、こちらも礼節を崩さない。

 

「おー、礼儀正しい人だー。好き好きー」

 

 猫は前足をぱちぱち叩いた。

 

「僕は<Infinite Dendrogram>管理AI13号チェシャだよー。よろしくねー」

 

「片山 柊です。よろしくお願いします」

 

 管理AI。

 なるほど、と柊は納得する。道理で受け答えがしっかりしている。

 チェシャから軽い説明を受け、キャラクターメイキング画面へ移行した。

 目の前に大量のパーツとスライダーが表示される。

 身長、体重、顔の骨格、目、鼻、輪郭、肌色、髪質、筋肉量。

 数が異常だった。

 

「……多いですね」

 

「細かい方が嬉しい人もいるからねー」

 

 柊は数秒ほど画面を見つめる。

 考える。

 数が多いということは、それだけ試行回数が必要になる。

 最適解に辿り着くまでの時間も長くなる。

 つまり非効率。

 

「既存データの流用は可能ですか?」

 

「現実の姿をベースにするー?」

 

「いえ」

 

 一拍置いてから柊は言った。

 

「既に存在するキャラクターへの近似は可能ですか?」

 

「可能だけどー」

 

 チェシャの耳がぴくりと動く。

 

「誰にするのー?」

 

「……」

 

 数秒沈黙。

 そして。

 

「《デート・ア・ライブ》の氷芽川四糸乃にアバターを寄せることは可能ですか?」

 

 チェシャが止まった。

 

「…………へ?」

 

「不可能でしたら結構ですが」

 

「いや可能だよ!? 可能だけど!?」

 

 チェシャが椅子から転げ落ちそうになる。

 

「?」

 

 何か問題があるのだろうか。

 柊には分からない。

 

「理由聞いていいー?」

 

「デザインが既に完成されています」

 

 即答だった。

 

「髪型、服装、体格、印象。既に他者に受け入れられている実績があります。ならば試行錯誤の必要がありません」

 

「…………」

 

「また小柄な外見は相手に警戒心を抱かせにくいと判断しました」

 

「…………」

 

「さらに――」

 

「いやいやいや待って!?」

 

 チェシャが慌てて前足をぶんぶん振る。

 

「そこ好きだからとか可愛いからじゃないの!?」

 

「?」

 

 柊は首を傾げた。

 

「うわぁ」

 

 チェシャは頭を抱えた。

 

「なんか今すごく嫌な予感したー……」

 

「?」

 

「いや何でもないー」

 

 数秒後。

 目の前のマネキンが変化する。

 淡い水色の髪。

 小柄な体格。

 そしてどこか儚げな少女の姿。

 

「できたよー」

 

 柊はしばらく無言で眺める。

 角度を変え、横顔を確認し、動作時のモーションも見る。

 

「……問題ありません」

 

「問題ありません、なんだ……」

 

「ありがとうございます」

 

「いやまあいいんだけどさー」

 

 チェシャはじっと柊を見る。

 

「……ちなみにさー」

 

「はい」

 

「可愛いと思う?」

 

「客観的にはそう判断される外見だと思います」

 

「主観」

 

「…………」

 

 数秒。

 

「分かりません」

 

 チェシャの尻尾が止まった

 

「……そっかー」

 

 これまでのやり取りで、チェシャは何となく理解してしまった。

 このプレイヤーは。

 色々なものを、最初から置いてきているのだと。

 そして当の本人は、その事実を欠片も自覚していないのだろうと。

 だからチェシャは、いつもの調子で笑った。

 

「ま、いいやー!」

 

「?」

 

「その姿、似合ってるよー」

 

「そうですか」

 

 柊は鏡を見た。

 

 そして小さく頷く。

 

「なら問題ありません」

 

「次はプレイヤーネームを設定してもらうねー」

 

 チェシャが机の上を肉球で叩く。

 すると空中に文字入力欄が表示された。

 

「ゲーム内で表示される名前になるからねー。何にするー?」

 

 柊は少し考える。

 ……いや、考えたというより確認に近い。

 既にアバターの方向性は決まっている。

 ならば余計なズレは不要だ。

 

「キャラクターネームは氷芽川四糸乃で」

 

 チェシャが固まった。

 

「…………え?」

 

「氷芽川四糸乃でお願いします」

 

「いやいやいやいや!?」

 

 今度は本当に椅子から落下した。

 

「待って!? そのまま行くの!?」

 

「何か問題が?」

 

「著作権とかは大丈夫だけどさー。君ロールプレイ派だったの?」

 

「そうではないですが、変更する理由がありません」

 

 即答だった。

 

「うわぁ……」

 

 チェシャは頭を抱える。

 

「この子、アバター作ってるんじゃなくて設定資料作ってる……」

 

「?」

 

 数秒後。

 入力欄に文字が表示される。

 【氷芽川四糸乃】

 その文字の下に小さく確認メッセージ。

 《この名前で登録しますか?》

 

「はい」

 

 迷いは一切なかった。

 すると表示が消える。

 

「登録完了だよー……」

 

 チェシャは何とも言えない顔で言った。

 

「ちなみにさー」

 

「はい」

 

「そのキャラ好きなの?」

 

「知識としてはあります」

 

「いや、そうじゃなくてー」

 

「?」

 

 柊は首を傾げる。

 チェシャは言葉を探すように尻尾を揺らした。

 

「なんていうかー……そのキャラになりたいとか、可愛いと思うとか、そういうやつー」

 

「……」

 

 少しだけ考える。

 本当に少しだけ。

「人間として望ましい在り方だと思ったので参考にさせてもらっています」

 

「…………」

 

 チェシャが止まった。

 

「えーっと……参考?」

 

「はい」

 

 柊は当然のように頷く。

 

「他者への接し方、思考、振る舞い。参考にするべき点が多いと判断しました」

 

「…………」

 

「私には不足している部分ですので」

 

「…………」

 

 チェシャは数秒無言だった。

 そして。

 

「……あー」

 

 どこか力の抜けた声を出した。

 

「そういうタイプかー……」

 

「?」

 

「何でもないよー」

 

 チェシャはいつもの調子で笑う。

 けれど心の中では少しだけ思っていた。

 ――この子、自分のこと全然見てないなぁ、と。

 

「じゃあ最後だよー」

 

 チェシャが机の上に地図を広げる。

 開かれた地図の上から七本の光の柱が立ち上がり、その中に各国家の風景が映し出された。

 

白亜の城を中心に、城壁に囲まれた正に西洋ファンタジーの街並み、アルター王国。

無数の工場から立ち上る黒煙が雲となって空を塞ぎ、地には鋼鉄の都市、ドライフ皇国。

幽玄な空気を漂わせる山々と、悠久の時を流れる大河の狭間、黄河帝国。

見渡す限りの砂漠に囲まれた巨大なオアシスに寄り添うようにバザールが並ぶ、カルディナ。

大海原の真ん中で無数の巨大船が連結されて出来上がった人造の大地、グランバロア。

桜舞う中で木造の町並み、そして市井を見下ろす安土桃山風の城郭、天地。

 そして―― 深き森の中、世界樹の麓に作られたエルフと妖精、亜人達の住まう秘境の花園、レジェンダリア

 

「ここから所属国家を選んでねー」

 

 柊は黙って見つめる。

 数秒。

 そして口を開いた。

 

「レジェンダリアで」

 

「おー、早いねー」

 

 チェシャが尻尾を揺らす。

 

「理由聞いていいー?」

 

「このアバターが合う土地に見えるので」

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 数秒沈黙した。

 

「それだけ?」

 

「はい」

 

 柊は指を一本立てる。

 

「騎士国家は少し硬い」

 

 二本目。

 

「機械国家は雰囲気に差異が大きい」

 

 三本目。

 

「砂漠国家は色彩的相性が悪い」

 

 四本目。

 

「そしてレジェンダリアは自然、妖精、幻想的景観を主軸としている」

 

 全部立てた。

 

「視覚的整合性が最も高いと判断しました」

 

「…………」

 

「何か問題が?」

 

「いやぁ……」

 

 チェシャは何とも言えない顔になる。

 

「今の、多分普通の人なら『綺麗だから』とか『好きだから』で終わるやつなんだけどなぁ……」

 

「?」

 

「いやいいやー」

 

 チェシャは笑う。

 

「レジェンダリアねー。登録完了ー」

 

 妖精郷の光が大きく輝いた。

 

「じゃレジェンダリアに送るよー」

 

「そういえば一つ」

 

「なにー?」

 

「このゲームの目的は何ですか?」

 

 チェシャはいつもの調子で答える。

 

「何でもー」

 

「何でも?」

 

「英雄になっても悪人になってもいいー。誰かと冒険しても、一人で過ごしてもいいー」

 

 そして少しだけ真面目な声になる。

 

「好きに生きればいいんだよー」

 

「好きに……」

 

 柊は小さく繰り返した。

 

 しかし、その言葉は上手く頭の中に入らない。

 好きなこと。

 やりたいこと。

 自分が望むもの。

 考えようとして――分からなかった。

 

「……後で考えます」

 

「うん」

 チェシャはそれ以上何も言わなかった。

 

「じゃあ、行ってらっしゃい」

 

 次の瞬間。

 書斎が消えた。

 世界が光に変わる。

 空の上。

 眼下には広大な森。

 巨大な世界樹。

 幻想的な景色。

 身体が吸い込まれるように落下していく。

 左手の〈エンブリオ〉が淡く輝いた。

 柊はそれを見つめる。

「……よろしくお願いします」

 返事はなかった。

 ただ――ほんの少しだけ。

 温かかった気がした。

 

 

 

この時の彼女は知らない。

この世界で出会う人たちを。

奇妙な着ぐるみ好きの騎士を。

底抜けに真っ直ぐな少年を。

誰かの痛みに怒る男を。

そして。

自身の心の奥底で、ずっと凍ったままになっていたものを。

まだ知らない。

まだ、何も。




〇このコーナーについて
(╹ x ╹)<どうも。作者代理兼主人公です

(╹ x ╹)<このあとがきでは、作者としてオリキャラやオリ設定について説明しようと思います。

(╹ x ╹)<要は原作者様がやってるアレを私もやってみたいということです

(=ↀωↀ=)<僕の役割じゃないのー?

(╹ x ╹)<この作品では私です

(╹ x ╹)<貴方も時々出演してもらいますが、メインは私です

(╹ x ╹)<まだこの作品の時系列では起きていないことについて喋ったりだとか、そのキャラが知らないはずの情報をまるで知ってるかのように話したりすると思いますが、気にしないでいただけると······

(╹ x ╹)<ギャグ時空的な感じで読んでください

(╹ x ╹)<あと本編での主人公とは全然喋り方や性格が違いますがそこはご愛嬌ということで
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