四糸乃デンドログラム   作:姫河ハヅキ

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ちょっと遅れた・・・すまぬ・・・・・・。
そして本文よりサブタイトルの方が難産になってきました。他の人たちはどう決めてるんでしょうね?


第十二話 〈厳冬山脈〉珍道中 ①

「ぬあああ敵が多い!」

 

「私はここならリソースの心配がいらないので平気ですね」

 

 吹雪が吹き荒れる中、四糸乃とエレイナは【ホワイトスノウ・ウルフ】の群れや【ポーラー・グリズリー】など大量のモンスターと戦闘を繰り広げていた。

 吹雪のせいで視界が悪く、適当に進んでいたら運悪く遭遇してしまったのだ。

 

「本当に大丈夫なのか!?アンデッドのワタシは平気だが、ただの人間のオマエはこの環境下にいるだけでHPや状態異常に悩まされるはずだろう!」

 

「それが平気なんですよ。······如何せん戦い続けていますし、こいつらを片付けたらひと休憩入れましょうか」

 

「う、うむ?」

 

 本気で環境を気にしていなさそうな四糸乃を不思議そうに見つめながら闇魔法をひたすらに撃ってじわじわとHPを削っているエレイナとは対照的に、火の槍だ光の弾丸だと大盤振る舞いの四糸乃。

 ほどなくして殲滅が完了し、四糸乃が鼻歌まじりに作り上げたかまくらの中で休憩を取ることにした二人。

 

「オマエ、まさか寒さ対策を常にしておったのか?」

 

「いえ、実は【ラタトスク】戦で【ザドキエル】が進化しましてね。何の偶然か進化で獲得した新スキルが現状にマッチしているんですよ」

 

 今回の進化で第四形態、つまり〈上級エンブリオ〉に到達した【ザドキエル】。

 銘は【氷獄兵装 ザドキエル】へと、カテゴリーはType:エルダーアームズに代わり、《術式共有》、《氷雪舞踏》に続く新たな固有スキル《厳冬の中に生きる者》を獲得したのである。

 《厳冬の中に生きる者》はパッシブスキルであり、四糸乃とザドキエルが接触している海属性のスキルや自然現象を吸収し、リソースとして貯蓄するというスキルだ。

 貯蓄したリソースはMPとしてもSPとしても使用可能で、リソースへの変換効率は自然の「水・氷・雪・冷気<<<スキルによる水・氷・雪・冷気、障壁」である。

 また、この固有スキルの一番の強みは「コストの消費なく常に効果が発揮されるスキル」だということだ。耐性や無効化ではなく「吸収」という強力な効果を海属性という広範囲に向けているにも関わらずMP・SPの消費がないのだ。

 当然代償はある。〈アーキタイプ・システム〉に存在する天属性攻撃スキル、地属性攻撃スキルが全て封印され、それに類するジョブへの就職が制限される。つまり《ファイアーボール》や《ウィンド・カッター》、《ボトムレスピット》など天地属性の魔法が封印され、【紅蓮術師】や【黒土術師】への転職もできなくなるという非常に重いデメリットだ。

 加えて《厳冬の中に生きる者》は効果のオンオフを切り替えることができず、周りに吸収するものが何もない時でもスキルは発動し続け、ただデメリットだけを享受することになる。

 【術神】に至ったほどの四糸乃の魔法技術を無駄にするような固有スキルだが、【術神】のジョブスキルでこのデメリットは踏み倒すことができる。むしろ【ザドキエル】は【術神】ありきでこの固有スキルを獲得したといっても過言ではない。

 そのジョブスキルが《魔を統べる者》と《飽くなき探求心》だ。

 《魔を統べる者》はパッシブの汎用スキルで、その効果は「メインジョブが何であろうと、サブの魔術師系統および魔術師と何かしらの複合系統のジョブスキルをアクティブパッシブ関係なく全て使うことができる」というもの。魔術師と全く関連がないジョブ系統でも魔法スキルであれば効果が適用される非常に便利なスキルだ。また、超級職の奥義は対象外だが、【術神】をメインジョブにしている間はスキルの効果が強化され、超級職の奥義も対象に入る。 

 《飽くなき探求心》も同じくパッシブの汎用スキルだ。こちらの効果は「自身が保有する魔法スキルが、他のスキルによる制限・封印効果を受けない」というもの。《魔を統べる者》と同じく、魔術師系統はもちろん魔術師系統と何かしらの複合系統、それ以外でも魔法スキルであれば効果が適用される。【術神】をメインジョブにしているかどうかで超級職の奥義も対象になるかどうか変わる。

 

「オマエの〈エンブリオ〉は確か【氷結傀儡 ザドキエル】だったか。その銘でこの環境に適したスキル······寒冷耐性か?いや、それだけでは『リソースの心配がない』という発言はせぬな。······まさか」

 

「さすがに詳細は伏せますが、吸収能力です。寒さ、つまり『冷気』も対象なのでここの環境由来のダメージは受けないんですよ」

 

「お誂え向きだな。生還できる確率がグンと上がったぞ」

 

「問題としては地名しか判明していないので今いる場所が具体的に〈厳冬山脈〉のどこなのかが分からないことですね。この際黄河、カルディナ、ドライフのどれでも構わないので人里に近づきたい所なのですが······」

 

「とりあえず下る方に進んでみるか?」

 

「普通の山一つならそれでも大丈夫そうですが、ここ山脈ですからね。自覚なく奥に進んでしまう可能性を考慮すると、一度登って周辺を把握する方がいいかもしれません」

 

「この手の山は登れば登るほど強いモンスターが出そうよな」

 

「出現するなら氷雪系でしょうし、逃げるだけなら可能だと思います。ただ、高所に上った所で景色が見えるかは天候次第というのが懸念点ですね」

 

「ふむぅ······それでも闇雲に下るよりかは一度高所に行く方がよさそうだな」

 

「ではこの吹雪が止んでから······おや。人、それも子供がエレメンタルの群れに追われていますね」

 

「なぬ!?どこだ!?」

 

 常人なら数メートル先すら見渡せぬ猛吹雪の中、《根源を覗く瞳》で魔力そのものを視ることができる四糸乃の瞳には複数のエレメンタル系モンスターとそれらに追われる子供の姿が映っていたのだ。

 

「助けに行く気ですか?ポーションなど回復手段の補給は見込めず、現在地の把握もできていません。それに加え、子供がこんな山中に一人でいるのは不自然なので罠の可能性があります。たとえ罠でなかったとしても、十中八九他の面倒事に巻き込まれるかと。襲われている子供は一般論としては助けるべきですが、現状の私達に余裕はありませんし、助けるならアムニールへの生還は諦めることになると思います。それでも構わないなら私も協力しますが―――」

 

「すまん!行くぞ!」

 

「即決ですか。優しいんですね」

 

 かまくらから出て、四糸乃の先導で子供の元へと向かう二人。

 接近したことで子供と群れが視界に入ったかと思えば、四糸乃が火属性魔法を多重同時発動したことによって瞬殺される。

 

「そこの娘!何があって追われていた!」

 

「え、え······?わたし、たすかったの······?」

 

「混乱しているみたいですね。罠ではないみたいですし、落ち着くまで待ちましょうか」

 

 数分経つと落ち着いてきたようで、ようやく四糸乃とエレイナの存在に気付く幼い少女。

 

「お!おねえさん······?おねえさんたち、ぼうけんしゃですか!?」

 

「うむ?そうだが」

 

「わたしたちのむらを、まもりがみさまをたすけてください!おかねはいっしょうかけてはらいます!」

 

「······この手の人里から遠く離れた秘境の村ではよくあるパターンですね。あと予想通りの面倒事です」

 

「いっそUBMであれば特典武具獲得のチャンスなのだがなぁ」

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 四糸乃とエレイナ、そして幼い少女は第二形態の【ザドキエル】に乗って村へと向かっていた。

 《氷雪舞踏》の効果によって揺れがほぼない快適な道中にて、少女から村を襲っているモンスターについて話を聞いているところだ。

 

「三体のUBMゥ!?」

 

「良かったじゃないですか、エレイナさん。特典武具の獲得チャンスがこれでもかとありますよ」

 

「三体相手は普通に死ぬが???」

 

「タイマンになりそうな気がしますけどね。追手を差し向けられたとはいえ、三体のUBMに襲撃されても住民を逃がす程度の余裕はあるのが村の守り神のようです。守り神に一体任せれば、私とエレイナさんでそれぞれタイマンです」

 

「おねえさん?たち······ひとりでゆーびーえむにかてるの?」

 

「正直、相性次第ですね。この辺りの環境的に私には相性がいいと思いますが」

 

「最悪持久戦で時間稼ぎならできるだろうな。······ところで娘よ、ワタシもコイツもオマエより年上の女性だ。普通に"おねえさん"でよいぞ」

 

「うさ耳フード付きコートに、狐の着ぐるみですからね。見た目では判断つかないのも仕方がありません」

 

「わかった!······あ、むら!」

 

 少女が指を差した方向を見れば、数km先に小規模な村とそれを覆う結界、そして結界の外部には何体ものモンスターの姿があった。

 現在地が村より高台にあるため視界には入っているが、村に辿り着くまではもう少しかかるだろう。しかし、ここからでもモンスターへの《看破》は通るらしい。

 

「【極寒波濤 スカディ】【虹輝斬閃 ユニーリス】【砲煙弾雨 カノリゲラ】【智竜王 ドラグソフィア】······UBM四体いますね」

 

「この短時間で増えておる!?」

 

「数を減らさないとなので、一体ずつ討伐しますか。となると······一番HPが少ない【ドラグソフィア】からですね」

 

「だめ!どらぐそふぃあさまは、わたしたちのまもりがみ!」

 

「はい?」

 

「なぬ?」

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

「さすがに【竜王】でも三対一は厳しいみたいですね。こうして近づいている間にもジリジリとHPが減っています」

 

「むしろ村の結界を維持しながら三体同時に相手をしてなお、あの遅々としたペースでしか減っていないのは強いな」

 

「まもりがみさまはすっごくつよいの!さんにんがかりでおそわれなかったらかってるのに!」

 

「逆に強すぎたのでしょうね。三体のUBMはエレメンタルに魔獣に暴走機械にとバラバラの種族なので普通なら共闘なんてするはずないのですが、【ドラグソフィア】が強すぎたが故に組んだのでしょう。以前にも襲撃があったのでしょうが、その際に【ドラグソフィア】が村を守っていることを知って、三体がかりで【ドラグソフィア】と村の両方を同時に襲撃すれば【ドラグソフィア】は防衛にキャパを割かれて全力を出せない、と判断したのではないかと」

 

「ふむぅ······ワタシはどいつを相手にするか。【カノリゲラ】か?」

 

「氷属性のエレメンタルらしき【スカディ】は言うまでもなく私ですね。······よし、到着です」

 

 村を囲むように張られた結界の外縁部に到着した四糸乃たち。【ザドキエル】から降りると、三人の存在に気付いた村人たちが武器を手に警戒しながら近づいてくる。

 

「何者だ!今は―――「おにいちゃん!」―――メイ!?どうしてお前がここに!?」

 

「その子、一人でいる所をエレメンタル系モンスターの群れに襲われていたんですよ。村が緊急事態とはいえ、子供を一人で逃がすのは無謀な賭けだと忠告しておきます」

 

「一人だと!?女子供は何人も男衆の護衛をつけて脱出させたのだぞ!」

 

「······なるほど。そういうことですか」

 

「他の者の姿は見なかったが······まぁ、そういうことであろうな」

 

「メイ、皆は······」

 

「やまをおりるとちゅうでまじゅうのむれにおそわれたの。かりうどのおじちゃんやはんなのおにいちゃんはまもろうとしてくれたけれど、まじゅうがおおくてみんなばらばらになっちゃった······」

 

「―――そうか」

 

 青年は何かを察した様子で天を仰ぐ。三十秒ほどそうしていたかと思えば、

 

「あぁ、すまないお客人。俺の妹を助けてくれてありがとう」

 

「だそうですよ、エレイナさん」

 

「エレメンタルを一掃したのはオマエだろうが」

 

「兎に角礼を言う。ところで貴方たちは、どうしてここに?」

 

「レジェンダリアにいたのですが、〈アクシデント・サークル〉で転移させられてしまいまして」

 

「それでここらを彷徨っていたらそこの少女に出会い、『守り神を助けてくれ』と言われて来た次第だ」

 

「え?······いやいやいや、君達みたいな幼い女の子が命を懸ける必要なんてないさ。なにせUBMが三体だ。特典武具という一生ものの誉を得られるチャンスはあるが、それより死ぬ確率の方が圧倒的に高い。一番近い人里への方向は教えるから、君達は故郷に帰るといい」

 

「なに、気遣いは無用だ。―――〈マスター〉という単語に聞き覚えはないか?」

 

「〈マスター〉······一人一人が特典武具の如き〈エンブリオ〉を持ち、死んでも三日後に蘇るという異邦の旅人······噂で聞いたことはあったが実在していたとは」

 

「ワタシたちに命の心配はいらん。信用できないというのなら、道は教えてほしいが戦闘には手を出さずにここを去ろう。······どうだ?」

 

「手は借りたいがしかし······あまりにもタイミングが良すぎる。これで助かったとて、後から何か言われたら······」

 

『手を借りよう、アリオト。私が報酬を用意できるからね。【契約書】を用いて正式に依頼してしまえば裏切られる心配もない』

 

「っ、ドラグソフィア様!」

 

「《人化の術》······いや、分身の類ですか」

 

『そうだ。今は三対一であまり余裕がないから、まずは私本体の元に来てほしい。あぁ、アリオトは生存者を集めて村を離れる準備をしておいてくれ』

 

「······承知しました」

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 吹雪が吹き荒れ、雪や土の砲弾が飛来し、幾多もの魔法が飛び交う戦場にて、四糸乃とエレイナは【智竜王 ドラグソフィア】と会話を交わていた。

 

「君達との会話は片手間になってしまうけれど、そこは許してくれ」

 

「UBM三体を同時に相手しながらまだワタシたちと会話する余裕があるのか······」

 

「ところで【ドラグソフィア】さん。報酬についてですけど、村人への通達は済んでいますよね?後から何も知らない村人たちに糾弾されるのは御免なのですが」

 

「は?糾弾?」

 

「······どうして気付いたんだ?」

 

「少し会話をすれば大体の心境は把握できます。それにジョブスキルで貴方の状態も分かりますし、それだけ分かれば予想は容易かと。で、村人たちに伝えているんですか?」

 

「そこは問題ない。昔から"私の最期には口出しも手出しも無用"だと盟約を結んでいるからね」

 

「根回しが済んでいるのならとやかく言いませんが······。ところでそれだと一人用にしかなりませんよ」

 

「唯一性は薄れるが、価値は勝るとも劣らないものが別にある。心配無用だ」

 

「う、うむ?何の話をしておるか分からんぞ」

 

「あぁ、すいません。端的に言うと、【ドラグソフィア】は自分を殺させて特典武具を獲得させようとしています。特典武具はこれ以上ない礼になるだろうから、と」

 

「そうだな。この戦いの中でいくつも臓器をやられた。もう私は助からん」

 

「······はァ!?」

 

「もう一人に渡すつもりの報酬を聞いても?」

 

「私が長い生の中で蒐集を続けた魔法の資料だ。不完全だが、魔術師系統をはじめとした魔法を扱う多数のジョブとその条件を記したジョブリストもある」

 

「確かに同等の価値を秘めていそうですね。特にジョブリストは〈DIN〉にでも売れば巨万の富を得られるでしょうし、換金できない特典武具をある意味上回っているとも言えます。報酬を受け渡すタイミングはどうしましょうか」

 

「少し前から軽く目と耳を飛ばして君達を探っていたが、善悪で言えば善側の人間だ。報酬を前払いしたとて反故にはしないだろうし、ここで両方を渡しても構わないよ」

 

「買い被り過ぎです。エレイナさんは間違いなく善人ですが、私は違いますよ。ただ理性で"そうあるべき"だと考えているだけで、私の心は何も感じていませんから」

 

「······そうなってしまったのは、君の才能が原因かい?生き残るためにはやむなくそうなるしかなかったようだが」

 

「············まさか今の発言だけでそこまで分かってしまうとは。今ほど分かりやすく言っても、私の状態に気付く人はいなかったというのに」

 

「伊達に長く生きていないさ」

 

「なぁ、二人して察しが良すぎるせいでワタシは会話についていけないのだが。というか、もう長くないのならさっさとUBMを討伐しないとワタシと四糸乃の二人で三体を相手することになるのではないか?」

 

「話すくらいならもうしばらくは問題ない。回復魔法と液体操作魔法で生命維持をしているからね。ただ、死を先延ばしにしているだけだからこうして耐えていても今夜一晩が精一杯かな。攻めに出るとさらに短くなるけれど、君達がいずれかのUBMを討伐するまで一体引き付けて守り続けるくらいは可能だ」

 

「十分です。ではエレイナさん、特典武具と研究資料のどちらが欲しいですか?先程の少女を助けようと言い出したのは貴方なので、報酬は先に貴方が選ぶべきです」

 

「ぬ、ぬぅ······そもそもワタシたちがUBMを討伐できるかどうかも確実ではないわけだからな。それぞれUBMと戦って、先に討伐出来た方が【ドラグソフィア】の特典武具を獲得する、でどうだ?」

 

「私としては構いませんが、私に有利な条件になっているのはいいんですか?超級職に就いている私と就いていないエレイナさんだと、ステータスという戦闘力に大きく関わる点でハンデがありますよ。それに、【スカディ】はどうやら氷属性のエレメンタルです。【ザドキエル】のスキルだと瞬殺の可能性が高いですが」

 

「構わん。【術神】抜きでもオマエの魔法技術は変わらんのだから、戦闘力も【術神】があろうとなかろうと然程変わるまい。さらに言えば、今のワタシはあくまで"この村の住人たちをUBMの脅威から守ること"を目的としているのでな。MVPは二の次で、UBM打倒の可能性が高い行動を取るつもりだ」

 

「了解しました。そこまで決めているのなら異論はありません」

 

「結局、報酬のタイミングはどうしようか」

 

「三体ともの討伐が終わったらで構いません。エレイナさんがこのスタンスですし、戦闘の余波が村や村人に及ぶ可能性はなるべく排除するべきでしょう」

 

「分かった。じゃあ二人とも、頼むよ」

 

「はい」

 

「おうとも!」

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

「一定範囲内への持続的な氷属性ダメージ、《厳冬の中に生きる者》と同じく雪や冷気をリソースへと変える吸収能力、同属性のエレメンタルの生産と統率、そして【スカディ】自身も氷魔法を扱う、と。勝てますね」

 

「向こうさんの攻撃手段は氷雪系だけみたいだもんねぇ······」

 

 常人では三十分と経たず凍え死んでしまうような猛吹雪の中で、四糸乃は平然と佇んでいた。まるで近くのコンビニにでも出かけるかのように気楽な様子で、津波のように押し寄せる極寒の冷気の中を意にも介さず【スカディ】の観察をしていたのだ。

 

「話には聞いていた"条件特化型"ですかね。ここのように常に吹雪が発生していて雪が積もっている環境でないと【スカディ】のスキルは活かせない」

 

「条件に完全に合致したここでさえ天敵レベルで相性が悪い相手に蹂躙されるの可哀想······あ、今も四糸乃に攻撃したエレメンタルが吸収された」

 

「攻撃を受けるだけで貯蔵リソースが増えて経験値も得られるのは一石二鳥ですね」

 

 そもそもエレメンタルというモンスターは自然物や器物が自然魔力と怨念、どちらかの影響を受けて変質したもの。【スカディ】のスキルでは周辺に大量に存在している雪を核として氷属性の魔力を込めて変質させ、【フロスト・エレメンタル】や【フロスト・ハイエレメンタル】を作成しているのだが、エレメンタルたちを構成している全てが《厳冬の中に生きる者》の吸収対象であるため何をしてもリソースと経験値に変わるだけなのである。

 また、【スカディ】も核となる自然物や内包されている魔力量が配下より断然に優れてはいるが性質としては大差ない。

 即ち、【スカディ】も《厳冬の中に生きる者》の対象ということだ。

 

「これほど簡単に特典武具を獲得してしまってもいいのか、とまで思ってしまいますね」

 

「所詮この世は弱肉強食······」

 

 次々と攻撃を仕掛けてくるエレメンタルの軍勢を片っ端から吸収しまくって【スカディ】の元へと突き進んでいく四糸乃。

 スキルで生み出されたエレメンタルは自我がないらしく眼前で味方がなすすべもなく吸収されるのを見ても突撃をやめないが、【スカディ】はばっちりと自我があるらしい。明らかに恐怖の表情を浮かべている。

 パニックにも陥っているようで、ひっきりなしにエレメンタルを作成しては突撃させ、吸収されていくのを見て叫びを上げるという支離滅裂な行動をやめない。

 

AA······AAAAAAAAAA!!!

 

「これホラーでしょ」

 

「エレメンタルって恐怖で腰が抜けるんですね」

 

【<UBM>【極寒波濤 スカディ】が討伐されました】

 

【MVPを選出します】

 

【【氷芽川四糸乃】がMVPに選出されました】

 

【【氷芽川四糸乃】にMVP特典【無窮厳冬 スカディ】を贈与します】

 




〇【極寒波濤 スカディ】

(╹ x ╹)<······

(^・ω・^)<······

(╹ x ╹)<······おそらくですが、戦闘シーンを描写したうえでここまで可哀想なほど一方的なマッチアップはもうないです

(^・ω・^)<あってたまるか

(╹ x ╹)<"条件特化型"に対してガチガチに噛み合う奴が来たらこうなる、という典型的な例ですね

(^・ω・^)<まぁゴリ押し戦法でスキルやギミックをガン無視されるよりはマシか······

(╹ x ╹)<自分の得意な戦法を実行できただけいいんじゃないでしょうか

(╹ x ╹)<UBMによっては強みを発揮する前に蹂躙されたりとかもありますし

(^・ω・^)<交通事故のような形で討伐されたUBMもいるからなぁ

(╹ x ╹)<あ、前回描写し損ねた【ラタトスク】の設定載せちゃいましょうか

(^・ω・^)<【スカディ】の設定は出さないのか?

(╹ x ╹)<次回の本文で描写するかもなので今回はお預けです

(╹ x ╹)<しなかった場合は次回のあとがきですね

【共職自愛 ラタトスク】
逸話級UBM【供食慈愛 ラタトスク】の討伐によって獲得した、木の実と葉っぱの意匠が施されたイヤリング型の特典武具。
生前の【ラタトスク】は子へのリソース分配、高出力の隠蔽、弾丸として撃ち出す物体の強化といくつも能力があったが、四糸乃は隠密行動をせず、遠距離攻撃は魔法しか使わないため、リソース関連以外の能力はオミットされた。
・装備補正
なし
・装備スキル
《経験値増加》
パッシブスキル。
その名の通り、モンスター討伐によって獲得する経験値が増加する。カンストしていないサブジョブの数に応じて増加倍率が上昇する。
《経験値分配》
パッシブスキル。
得た経験値がメインジョブとレベルがカンストしていないサブジョブとで均等に分配される。
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