「【虹輝斬閃 ユニーリス】······元はユニコーンの突然変異ですかね」
「角が剣みたいになってるユニコーンとかいないもんねー」
【スカディ】をあっさりと片付けて【ユニーリス】と相対している四糸乃。
対UBM戦にありがちな初見殺しを避けるため【スカディ】戦のように観察しているのだ。何故か【ユニーリス】の方も動かないが、これ幸いと【スカディ】の性能を確認している。
【無窮厳冬 スカディ】は懐剣型の特典武具だ。武器としての性能は低く、装備補正もゼロだが、三つの強力なスキルを備えている。
一つ目が《永久凍土》。装備者である四糸乃を中心とした一定の範囲内を常に"極寒環境"に塗り替えるスキルだ。
範囲内では吹雪が吹き荒れており、その冷気によって範囲内の全生物に氷属性の持続ダメージと【凍結】が発生する。敵味方の区別がなく装備者である四糸乃にも効果が及び、オンオフもできないという無差別の極みのような仕様である。辛うじて範囲の広さを調節する機能はあるが、最小で四糸乃一人を覆うくらいで、四糸乃にダメージと状態異常が発生することに変わりはない。
ただ、それだけのデメリットを背負った甲斐あって《永久凍土》はノーコストで展開することが可能だ。《厳冬の中に生きる者》とのコンボにより、常にリソースを貯蔵する反則的なシナジーを発揮する。
二つ目が《極寒地帯》。《永久凍土》の範囲内に滞在した時間に応じて、対象に働く《永久凍土》の効果を上昇させるスキルだ。時間のカウントは一度範囲から脱出するとリセットされるが、シンプル故に使い勝手が良いのである。
三つ目が《終局白刃》。その効果は「凍結したものに対する防御力無視および強度無視」。強力極まりないスキルだが、当然条件もデメリットも存在する。
条件は、《極寒地帯》のカウントが一定以上のものに対してのみ使用可能というもの。凍結はしていても条件を満たしてないものに斬りつけた場合、並みの武器より性能が低い【スカディ】の刃が欠けるだけだ。《極寒地帯》のカウントは一度範囲から出るだけでリセットされるため、かなり厳しい条件と言える。また、カウントが一定以上だとしても凍結していない場合はもちろん防御無視は発揮されない。
デメリットは、斬りつけた際に対象の防御力および強度に応じた氷属性反動ダメージが装備者に発生するというもの。【ザドキエル】を持つ四糸乃でなければまともに運用できない、非常に重いデメリットだ。
そこまで【スカディ】の性能を確認したところで【ユニーリス】に向き直るが、何故か【ユニーリス】は未だに動かない。【スカディ】が手も足も出ずに瞬殺されたのを見て強く警戒しているのだろうか。
四糸乃を真っ直ぐ見据えつつも足が震えている辺り、少なからず恐怖を感じていそうである。
「足が震えていますね。何故でしょうか」
「怖いんでしょ。そりゃあさっきの惨劇を見せられたらねぇー」
「怖いなら逃げればいいと思いますが?」
「UBMとしての矜持じゃなーい?でも恐怖も感じているから、動くに動けてないんじゃないかなー」
「このまま睨み合いを続けていればこちらが勝ちますが······まぁすんなりいくはずないですよね」
覚悟を決めたのか、真っすぐ四糸乃へと突進していく【ユニーリス】。その額から生えている刃には激しい風が渦巻いており、迂闊に触れれば細切れにされるであろうことが想像に難くない。
「角の刃を媒介とした魔法剣······銘に"虹"が入っている辺り、基本的な属性は網羅していると考えるべきですか」
「魔法が得意な四糸乃なら対処は楽そうだね?」
「そうでもありません。魔法には対応できますが、私はSTRやENDが低いので奴の突進に対応するには一工夫が必要です」
地属性魔法で地面に窪みを作って【ユニーリス】を躓かせ、よろけた隙に凪属性魔法で魔法剣を打ち消し、氷属性魔法で生成した盾で勢いが弱まった【ユニーリス】の突撃を受け流す。
「······え、今いくつ魔法使った?」
「三つですね」
「今の一瞬で三つ!?」
卓越した魔力操作により魔法を立て続けに発動し、その道に熟練した職人かのような鮮やかな手際で【ユニーリス】の突撃を捌いた四糸乃だが、真に恐るべきは、今の魔法全てを〈アーキタイプ・システム〉の補助を受けずに発動した点だろう。常人ならジョブを介した方が構築速度も精度も優れるはずだが、彼女にそんな常識は当てはまらない。
むしろ彼女からすれば、ジョブスキルを介した魔法は融通が利かず不便なのだ。
「今度は雷属性ですか。やはり属性を使い分けてきますね」
先程の二発目を絶属性に変える形で再び魔法を三連発し、【ユニーリス】の突進をいなす四糸乃。
二度目なのにもう慣れてきているのは、さすがの才能といったところだ。
「一度目から平然と防いでるから気付かなかったんだけど、【ユニーリス】のAGIかなり高くない?」
「そうですね。目測ですが四桁後半かと」
「なんで普通に防げてるの!?」
【ザドキエル】のステータス補正はAGIとMPが高いのだが、現在就いているジョブがAGIが上がらないものばかりなので四糸乃のAGIはギリギリ四桁といったくらいで、四桁後半の【ユニーリス】とは数千の開きが存在するのだ。普通ならAGIの差に翻弄されるばかりだろう。
「突進の軌道が単純なんですよね。速度は私の二倍以上ですが、先読みは容易です。なんならこうして反撃だって可能です」
先程と同じように突進をいなしたかと思えば、空中に魔法を配置しておいて【ユニーリス】を受け流してその魔法に激突させるという所業をかます四糸乃。
いつの間にか、ただ受け流すのではなく受け流した相手を特定の座標に誘導する小技も習得していたらしい。
「才能の塊過ぎるー······」
「先読みと"置き"くらいなら、少し格闘術を齧っていれば可能だと思います」
「それを格闘技経験のない四糸乃が言うの!?」
速度任せの一直線では通じないと学んだ【ユニーリス】がジグザグに突進したりフェイントを入れたりと様々な工夫を凝らしているが、四糸乃は正確無比な読みで【ユニーリス】の攻撃を全てノーダメージで防いでいる。また、風で己の身体を押そうとしたり、雷で肉体を刺激して強化しようとしたりと魔法での加速を試みるも、《根源を覗く瞳》で魔法の前兆を見抜いた四糸乃が【ユニーリス】より魔法を早く構築し、的確な魔法を放つことで無効化している。
ステータスの数値やスキルの性能という点では【ユニーリス】の方が圧倒的に格上だというのに、データには顕在化しない"技巧"により一方的な戦いとなっているのである。
「何もさせてもらえないの可哀想······」
魔法剣や自己強化は対抗属性の魔法で打ち消され、突進は軌道を読まれて受け流されるだけでは飽き足らずカウンターの魔法まで当てられ、とろくな戦闘行動ができていない【ユニーリス】。UBMとしての昇華を一度果たした伝説級であるにも関わらず、魔法という、四糸乃の独壇場といっても過言ではない分野で争ってしまったせいで風で揺られる綿毛のように翻弄されている。
あまりにも哀れである。
「相手の攻撃を防ぐのにも強化を妨害するのにもMPが必要なので、〈厳冬山脈〉でさえなければ私が勝つのは難しかったでしょうね」
「あっ(察し)」
◇◆◇◆◇◆◇
【<UBM>【虹輝斬閃 ユニーリス】が討伐されました】
【MVPを選出します】
【【氷芽川四糸乃】がMVPに選出されました】
【【氷芽川四糸乃】にMVP特典【霓靴驃刃 ユニーリス】を贈与します】
「地味な戦闘でした」
「いっそ一撃で首を刎ねた方が優しいんじゃないかとまで思ったよね」
「結果的に嬲り殺しのような形になってしまいましたが、それは【ユニーリス】の魔法耐性が高かったからなので仕方がないです。私のジョブ構成が魔法寄りなこともあって物理火力はほぼゼロですし、チマチマと魔法で削るしかなかったんですよ」
「―――ふむ、ワタシが一体討伐する間にオマエは二体か。やはり遠いな」
「エレイナさんも無事に討伐できましたか。よかったです」
「ワタシが見ている限りではオマエのHPが100%のままだったのだが、まさか二戦ともノーダメージなのか······?」
「そうですね。相性が良かったもので」
「半分嘘だよー。一体は天敵レベルの相性差で瞬殺したけど、もう一体は技巧でボコしてた」
「······やはりなぁ············」
やはりとは言いながらも明らかにドン引きした表情を浮かべているエレイナ。「マジでやりやがったコイツ」とでも言いたげな様子である。
「何はともあれ、UBM三体討伐という【ドラグソフィア】からの依頼は達成しました。報酬をもらいに行きましょうか」
「そうさな」
◇◆◇◆◇◆◇
「終わりましたよ」
「あぁ、村の危機を救ってもらったうえに、良いものを見せてもらった。創意工夫を凝らして相手に食らいついたエレイナ嬢に、その技巧でUBMを手玉に取った四糸乃嬢。冥途の土産としていい話のタネになりそうだ」
「······なぁ、本当にオマエは助からないのか?今も普通に話せているではないか」
「無理だ。複数の臓器の欠損で死体同然のこの身体を魔法で無理やり動かしているに過ぎないのだからね。魔力がなくなり次第死に至る」
「······そうか」
「私の特典武具を受け取るのはどちらで、私の研究資料を受け取るのはどちらだったかな」
「私が特典武具で」
「ワタシが資料だ」
「そうだったね。じゃあエレイナ嬢、これを」
【ドラグソフィア】が胸元からアイテムボックスを取り出してエレイナに差し出した。
「このアイテムボックスには、古代の魔法に関する記録をまとめたものや、一族に代々伝わる秘伝魔法について記したもの、私が編み出した魔法だったり作成途中で飽きて放置した魔法の資料が入っている。あぁ、ジョブに関してもある程度まとめてある。自分で研究するなり高値で誰かに売りつけるなり、どう使うかは君の自由だ」
「ありがたく頂戴する」
「そうだ。もうしばらくすればアリオト達が現時点での生き残りを集めてこちらに来るだろうから、彼らにはこれを渡してほしい。あの子達を受け入れてもらう街への地図と当面の生活資金が入っている」
【ドラグソフィア】がもう一つアイテムボックスを取り出してエレイナに渡す。
「うむ。承知した」
「では四糸乃嬢、トドメを頼む」
「分かりました。ただ、どの手段なら貴方にトドメを刺せるか悩ましいですね。死に体とはいえ竜王はENDも魔法耐性も高いでしょうし」
「あー······さすがに痛いのは遠慮したいね。防御無視のスキルはあるかい?」
「ありますが、適用条件を満たすために数分かかるのと、その箇所が凍結していなければならないので一部とはいえ凍らせることになります。少々寒いですよ」
「寒さは平気だ。それで頼むよ」
「では準備を始めます。エレイナさん、少し離れてください」
「うむ」
四糸乃はエレイナが離れたのを確認した後、自身だけに抑えていた《永久凍土》の範囲を広げて【ドラグソフィア】を効果範囲に捉える。
時間が経つにつれ【ドラグソフィア】の肉体には霜が降りていき、胸元は四糸乃が直接魔法を発動することで凍結していく。
「規定値以上の時間経過を確認しました。いつでも心臓を貫けます」
「一思いにやってくれ。うかうかしていてはアリオト達が戻ってきてしまうかもしれないからね」
「了解しました。―――《終局白刃》」
【<UBM>【智竜王 ドラグソフィア】が討伐されました】
【MVPを選出します】
【【氷芽川四糸乃】がMVPに選出されました】
【【氷芽川四糸乃】にMVP特典【智竜魔臓 ドラグソフィア】を贈与します】
〇特典武具ラッシュ
(╹ x ╹)<他のデンドロ二次創作でもなかなか見ないであろう怒涛のMVPラッシュです
(=ↀωↀ=)<やりすぎじゃない?
(╹ x ╹)<スペックゴリ押しの俺TUEEEEEじゃないので許して・・・
(╹ x ╹)<ところで今回のあとがきなんですが、本文で紹介した【スカディ】を除いて【ユニーリス】と、
(╹ x ╹)<七話で存在を仄めかしていた未紹介の特典武具、合わせて二つを一気に紹介してしまおうかと思います
(=ↀωↀ=)<一つずつあとがきのネタにしなくていいの?ネタ切れしない?
(╹ x ╹)<なんとかなるんじゃないですかねー?
(╹ x ╹)<それより紹介を忘れるというリスクの方が大きいという
(╹ x ╹)<実際、七話で仄めかしていた特典武具は、七話を投稿した時点で設定は既に完成していたというのに公開されぬままメモ帳で眠っていましたから
(=ↀωↀ=)<えぇー・・・
(╹ x ╹)<まぁ、ちょっとしたストーリー的事情で【智竜魔臓 ドラグソフィア】は次回に持ち越しなんですが
【疾風兎套 ウィロケット】
逸話級UBM【疾風怒兎 ウィロケット】の討伐によって獲得した外套型の特典武具。原作デートアライブの四糸乃が着ているようなうさ耳フード付きコート。
・装備補正
AGI+50%
・装備スキル
《軽身兎躯》
パッシブスキル。
装備者にかかる重力を軽減すると共に脚力(跳躍力)を強化する
《疾風兎濤》
アクティブスキル。
AGIを強化すると共に空気抵抗を軽減する。
自身と自身の特殊装備品の両方に対して効果を発揮する。
【霓靴驃刃 ユニーリス】
【虹輝斬閃 ユニーリス】の討伐によって獲得したロングブーツ型の特典武具。
ブーツ型といっても、fgoのメルトリリスのような金属質で鋭角的なデザインになっており、初見ではまずブーツとは分からないであろう代物。というか「剣の形をした靴」なので普通に歩くのはまず無理な形状。
この装備は脚装備であり剣でもあるので【蹴士】の脚装備強化のパッシブスキルと【剣士】の剣強化のパッシブスキルの両方の補正が入る。
また、この装備での攻撃は「蹴り」でもあり「剣による斬撃」でもあるので、超級職にありがちな"該当する攻撃手段による累計与ダメージ"は蹴りと剣の両方でカウントされる。
他の人物がこの特典武具を獲得していた場合は足の刃はオンオフが効くようにアジャストされていたが、四糸乃には《氷雪舞踏》があるため、オンオフをオミットして装備補正や装備スキルに割り振られるリソースを増やした。
・装備補正
AGI+100%
・装備スキル
《その踵は魔剣なりて》
パッシブスキル。
【ユニーリス】による攻撃のみ、ENDに対してAGIが高すぎる際に生じる反動ダメージを無効化する。
《不朽の魔剣》
アクティブスキル。
刃が破損したり折れたりなどした際、MPを消費して修復する。
特典武具としてデフォルトで備わる時間経過での修復とは別に存在するスキル。