四糸乃デンドログラム   作:姫河ハヅキ

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ふぅ・・・なんとか更新できました。
仕事と趣味とオリジナル小説の執筆との並行ってなかなか大変ですね???

でも楽しいので続けます。
感想や評価をもしいただければモチベは上がります。なお投稿頻度が上がるかは別の話。


第七話 【纏鎧鉱蠧 ファフニール】

 【纏鎧鉱蠧 ファフニール】は六人を一瞥すると、無数の鉱石に覆われた脚を一本ゆっくりと持ち上げた。

 

「見るからに重くて硬そうですね。また氷や地面が割られそうです」

 

「そこの全身鎧!足場を崩されると面倒なのだが、防げるか!」

 

『·······防げるけどさぁ』

 

「クリス、頼む!」

 

『はいはい、《フォートレス》《マテリアル・プロテクション》《アストロガード》』

 

 クリス―――全身鎧の〈マスター〉が巨大な盾を構えていくつもの防御系スキルを発動した直後、巨大な前脚と盾が激突し、衝撃波が洞窟全体を揺らす。

 

『ふぬぬ·······よいしょー!』

 

「《セカンドヒール》」

 

 攻撃の重さにクリスの膝が沈んだが、唸りながらも受け流して、潰されるのを防いだ。多重に発動した防御系スキルの上からダメージを負ったものの、純粋性能型のUBMの攻撃を真正面から受け止めたにしてはダメージは少ない。

 受けたダメージもディアーナ―――杖を持った女性マスターが瞬く間に回復させた。

 だが、今のはただ前足を振り下ろしただけの通常攻撃だ。それでもパーティで一番防御力が高いクリスが防御系スキルをいくつも重ねたうえで防御姿勢を取ってなおダメージを受けた。他の者が受ければ一撃でHPを全損してもおかしくない。

 

「私は氷上ならAGIに補正がかかるので、私の防御は考えなくて構いません。地面や氷が割られそうなら支障のない範囲で防いでいただけるとありがたいです」

 

「ワタシも通常攻撃なら構わん。強化されたり固有スキルによる攻撃の際は頼んだぞ」

 

『おっけー』

 

「弓持ちのアランが物魔両刀の後衛アタッカー、全身鎧のクリスがメイン盾兼サブアタッカー、私ことディアーナが回復・支援特化、ピッケル背負ったこのヒロムがサポート寄りの中衛ね。ところで二人の戦闘スタイルを聞いてもいいかしら?大体でいいから」

 

「氷芽川四糸乃です。メインは【白氷術師】、回避タンク兼魔法アタッカーです」

 

「エレイナ・ミオソティスだ。メインは【大死霊】、アンデッドを使役・支援しながら自分も時々攻撃する後衛アタッカーである」

 

「前衛いないの!?」

 

「ワタシ達だけでも【亜竜鉱蟲】の群れは倒せたし、【ミスリル・ドラグワーム】

戦も特に問題なかったぞ」

 

「えぇ、防御手段に乏しくても先に相手を倒せばいいでしょう」

 

「このロリコンビ、見た目に似合わず脳筋だな·······?」

 

「自分で言うのもなんだが、うさ耳付きコートと狐着ぐるみのペアはどういうスタイルでも見た目には似合わんだろうよ」

 

「「それはそう」」

 

「『自己紹介終わったなら手伝ってもらえる!?』」

 

 最低限の情報交換を終えてからも世間話を続けるパーティメンバーに思わずキレるアランとクリス。

 

「すまんすまん」

 

「じゃあ四糸乃ちゃんもエレイナちゃんもパーティに入ってもらえる?私の〈エンブリオ〉はパーティメンバーのMPリジェネが能力だから」

 

「助かります」

 

「ありがたいが、特典武具をワタシ達のどちらかが獲得しても文句は言ってくれるなよ?」

 

「俺ら四人で既に挑んで負けてぬわー!?」

 

『アランーッ!?』

 

 我慢しきれずにこちらの会話にツッコミを入れようとしたアランが、【ファフニール】が壁を砕いた余波の石片の直撃をくらって吹き飛ばされている。

 HPは二割ほど減っているが、弓手系統のENDの低さを考えればまだマシだろう。

 

「クリスさん、【ファフニール】は主に私が引きつけるので、貴方は他のパーティーメンバーを守ってください」

 

『なにおう!?ボクは盾役なんだから魔術師系統にメインタンクを任せるなんて!』

 

「〈エンブリオ〉のスキルの発動条件として周辺を凍らせるのが必要なので、貴方が十全なパフォーマンスを発揮できなくなります。そのうえ【ファフニール】は明らかにEND・STR型ですし、今回のメインタンクは貴方のように防御を高めて受けるタイプではなく、私のような回避タイプの方が向いています」

 

『それはそうだけどさ·······』

 

「では、《ホワイト・フィールド》」

 

「もいっちょ《アイス・レイル》!」

 

 【ミスリル・ドラグワーム】戦のように氷魔法で足場を確保し、滑走していく一人と一体。【ファフニール】のAGIが低いことが幸いして、四糸乃と【ザドキエル】だけで敵を引き付ける役割は十分に見える。

 クリスはその光景を見て、四糸乃にタンクの役割をこなすのに十分な能力があるのは確認できた。

 また、後衛が多い今のパーティでは敵の攻撃を引き受けるメインタンクに加え、後衛メンバーを守るためのサブタンクが必要だと気付いたクリスは、魔術師に「自分がメインタンクをやる」と言われて盾役としての矜持が少し傷ついたが、四糸乃の発言が妥当で合理的だと納得した。

 

「お、クリス。お前がこっちに来たらあの子が一人に······」

 

『メインタンクは一人で十分だってさ。ほら、あんなふうに地面だけじゃなくて壁や天井まで縦横無尽に動けたらボクがこっちのガードについても大丈夫だよ』

 

「んー······俺も近距離でおちょくるか。鉱石剥がすくらいしかやることないし」

 

 ヒロムが己のエンブリオをピッケルに変形させて【ファフニール】の方に向かっていった。

 四糸乃と違い、上下移動も交えた三次元機動はできないが、AGIや身のこなしを存分に発揮して【ファフニール】の攻撃を避けつつ体表の鉱石を採掘するという困難そうな所業をしれっとやってのけている。

 

「アイツ、【採取家】系統ではなかったのか」

 

「あれでも身のこなしはウチのパーティで一番だ。【冒険家】系統のスキルで足場が悪くとも動けるし、心配ないさ」

 

「ふむぅ······四糸乃だけなら兎も角、二人もいては誤射が怖いな。ワタシはパーティプレイに慣れておらん」

 

「ああも三次元機動しているなら四糸乃ちゃんへの誤射はほぼないわよね」

 

「あれで魔術師なのか······」

 

「あ、そういえばディアーナ。MPリジェネは誰か一人に集中させることは可能か?」

 

「調整は利くわよ。四糸乃ちゃんの方がMPよく使うの?」

 

「そうだな。現時点でオリジナル魔法をいくつも編み出している奴だから、MP供給さえあれば大暴れすると思うぞ」

 

「え゛」

 

「オリジナル魔法とか、研鑽を重ねた長命種とか百年に一人レベルの天才のティアンがようやく使えるものじゃ······?」

 

『すごいね、あの子』

 

「じゃあ俺へのMP供給いらねーぞー!俺の分は四糸乃ちゃんに回してくれ」

 

 どうやってかエレイナ達四人の会話を聞いており、ナチュラルに会話に参加してくるヒロム。まだ余裕がありそうだ。

 

「ちなみに聞いておくけれど、アランとクリスとエレイナちゃんは?」

 

「俺は供給ほしいな。俺の【ロキ】はどれもMP使うからなー」

 

『ボクは今の所はいいや。欲しくなったら言うよ』

 

「ワタシは欲しい」

 

「了解よ」

 

「······これは」

 

 ディアーナがエンブリオのスキルを発動したらしく、四糸乃のMPがみるみる回復し始める。スキル抜きでの回復速度がおよそ丸3日で10割であることを考えると、戦闘中に目に見えて分かるほどの回復速度は破格だ。

 

「うちのディアーナは優秀だろ?」

 

「私のような魔法アタッカーとは相性がいいですね。―――《魔法威力拡大》《魔法多重発動》《グレイシャル・クレイモア》。こんなこともできます」

 

「デカっ!?多っ!?」

 

「気を付けてくださいね」

 

「ちょっと遅いが!?」

 

 巨大な氷剣がいくつも降り注ぐ。

 《魔法威力拡大》で一つ一つに注ぐMPを増やして威力を高めたことで、鉱石を纏う【ファフニール】の強固な甲殻にも刺さっている。ディアーナのおかげでMPに余裕ができたからこそ取れる手段だ。

 

「甲殻にヒビが入ったので畳み掛けます。《アイシクル・フィスト》」

 

「じゃあ俺も。《オーア・ブレイク》」

 

「《武装射出:アイアン・メイス》《ヘッドショット》」

 

「《ダークボール》」

 

 氷の拳が氷剣をさらに深く押し込み、ヒロムのピッケルによる一撃が鉱石を砕き、アランの矢が【ファフニール】の頭部に衝撃を与え、エレイナの闇魔法が鉱石による防御を無視して内部の肉体に直接ダメージを与える。

 今の一連で【ファフニール】のHPは二割ほど削れた。同じことをあと四回繰り返せば討伐は可能だが、UBMの討伐が一筋縄でいくとは考え辛い。

 

「四糸乃ちゃん、鉱石の破片が全方位に飛び散るから防御か回避の準備はしておけよ」

 

「了解しました。貴方たちはどこまで【ファフニール】の能力を把握していますか?」

 

「分かりやすいのは甲殻の表面に鉱石を纏うことによる防御力強化と、纏った鉱石をパージして行う全方位攻撃だな。全方位攻撃の後はまた鉱石を纏うからまた剥がさないといけなくて、しかもどんどん上位の鉱石を纏うようになるから長期戦だ」

 

「ディアーナさんのエンブリオは長期戦向けですし、能力を把握している貴方たちが討伐できていないのが不思議ですね」

 

「纏う鉱石が上位になるとENDだけじゃなくてSTRも上昇するんだよな、あいつ。ダメージ通りにくくなって、クリスの被ダメ増えて一人じゃ耐えきれず落ちて、タンクいなくなって総崩れのパターンで負けちまってるんだ」

 

「なるほど」

 

 否が応でも長期戦に持ち込まれ、しかも当の【ファフニール】は鉱石による武装とパージを繰り返す度に上位の鉱石を増やして攻撃力と防御力の両方を上昇させてくる。非常に厄介だ。

 武装・パージを何度もさせずにHPを削りきるほどの規格外な攻撃力か、先頭が長引くほどに強化される類のスキル、このどちらかを持っていないと打倒が難しいUBMがこの【纏鎧鉱蠧 ファフニール】である。

 

◇◆◇◆◇

 

「いやー、あと二割か」

 

「確かにどんどんHPが削り辛くなっていますね」

 

「半分切ってから四糸乃ちゃんとエレイナちゃん以外がろくにダメージ与えられてないのヤバい。俺らは時折一般通過モンスターが寄って来るからそっち担当よ······これで二人ともレベル200前後ってマジ?」

 

「ワタシは闇魔法の性質ありきだがな。やはり次の上級職は【暗闇術師】だなぁ······」

 

「MP消費を度外視してようやくなので、ディアーナさんのMP供給あってこそですよ。これ以上防御力上がると私も下位の闇魔法で地道にダメージ与えないとですかね」

 

「ジョブ構成見直すべきかしら······」

 

 また【ファフニール】が態勢を整えている間、四糸乃たちは気を休めつつ戦闘再開を待っている。

 この状態の【ファフニール】は一見隙だらけに思えるが、このタイミングで攻撃すると鉱石パージ攻撃の質量がえげつないことになり全滅必至だとアランたちが経験談を語っていたので、大人しく待っているのである。

 待っているのだが······

 

「······なぁ、さっきからあいつが纏い始めてる鉱石、なんかおかしくないか?」

 

『鉱石というより、金属?』

 

「今までアランさんたちは見たことないんですか?」

 

「ぶっちゃけここまで削れたの初なんだよなぁ······」

 

「ただ鉱石を纏うだけじゃなくて、精錬して金属にすることも可能だったのか?」

 

「······それだとマズいわね。さっきのオリハルコン鉱石ですらめちゃくちゃ苦労したのに」

 

 そうこう会話をしている内に、【ファフニール】は武装を完了させる。

 先程まではゴツゴツとした鉱石を纏っていたのが、凹凸の少ない、光沢を持った装甲へと姿を変える。体からボロボロとくすんだ岩石を排出しているが、それはまるで廃棄物を処理するかのようで―――。

 

「マジで精錬できんのかよ!?」

 

「【纏鎧鉱蠧】······あぁ、『蟲毒』ですか。鉱石の純度を高める能力も持っていたということですね」

 

「ここまで使ってこなかった辺り、効率は悪そうだがな」

 

『鉱石のレア度に応じたステータス強化もあるよね。金属になったら鉱石のときよりも上昇するのかなぁ』

 

「ある前提で行動した方が不測の事態が起こりにくいわ」

 

 【纏鎧鉱蠧 ファフニール】の能力は四つ。

 一つ目は、《喰鉱蓄蔵》。

 鉱石を捕食し、ストックする能力である。UBMになる前の【ミネラルワーム】種はストック能力を持たないということを踏まえれば単純な上位互換に思えるが、【ミネラルワーム】系統は食らった鉱石をリソースとして消費してHP・MP・SPを回復させるか、鎧として纏うかを選択できた一方、【ファフニール】は保存した鉱物は《鉱鎧纏着》と《鉱石精錬》の発動にしか利用できない。蓄積能力を獲得した代償に、通常種が持つ「捕食した鉱石をリソースへ還元・回復する能力」は、この能力と引き換えに失われている。

 二つ目は、《鉱鎧纏着》。

 《喰鉱蓄蔵》で蓄積した鉱石や《鉱石精錬》で生成した金属を体表へ排出し、甲殻として纏う能力である。防御のための装甲のみならず、装甲の重量を利用した攻撃や、不要となった装甲を一斉に射出する攻撃にも応用される。

 三つ目は、《鉱鎧励起》。

 《鉱鎧纏着》によって身に纏った鉱物の質に応じ、自身のステータスを強化する能力である。強化されるのは主にSTRとENDであり、鉱物の希少性・純度・硬度が高いほど補正値も大きくなる。また、通常種にも似た能力は存在したが、補正値はより高くなっている。

 四つ目は、《鉱石精錬》。

 《喰鉱蓄蔵》で蓄積した鉱石から不純物を取り除き、金属へと精錬する能力である。通常種の能力が変化した《喰鉱蓄蔵》《鉱鎧纏着》《鉱鎧励起》とは異なり、UBMへの昇華と共に獲得した完全新規の能力で、《喰鉱蓄蔵》によって鉱石を長期間保存できるようになったことで初めて成立したスキルでもある。

 精錬には大量の鉱石を消費するため効率は極めて悪く、通常であれば鉱石をそのまま《鉱鎧纏着》で装甲とした方が遥かに実用的である。

 しかし、精錬して生み出された金属はただ鉱石を纏うよりも遥かに強度が高くなる。コストは重いがそれに応じた効果はある、【ファフニール】の切り札とも言えるスキルなのである。

 

「これAGIも強化されてたらヤバかっ――「《疾風兎濤》」 ――うおおお!?」

 

『わぁああ《フォートレス》《アラウンドガード》《へビィ・プロテクション》《フェイタル・ディフェンダー》《アストロガード》《蒸気充填:身体強化》!』

 

 先程までよりも格段に上昇した速度で四糸乃たちに肉迫する【ファフニール】。急変した速度に対応してスキルを発動できたのは四糸乃とクリスのみ。

 四糸乃はこの後のカバーも考えて【ザドキエル】にエレイナも載せて移動し、クリスはパーティメンバーを守るために重ねられるだけの防御スキルを重ね掛けする。

 数秒【ファフニール】とクリスの押し合いが発生し、しかしクリスが耐えきれずに吹き飛ばされて壁に激突する。

 

『痛ったぁ······』

 

 【盾巨人】【鎧巨人】とENDが上がりやすいジョブで上級職を埋め、下級職も【盾士】など防御系ジョブで大半を埋めた防御特化構成のクリスのHPが防御スキル越しの一撃で七割以上削られている。他のメンバーでは即死だっただろう。

 

「······今の一撃のみの高速移動······STR式ですね。金属装甲によるSTRとENDの強化に加え、精錬による装甲の重さの軽減が要因ですか」

 

「AGIは強化されないというワタシ達の認識を逆手に取った初見殺し······頭が回る奴だ」

 

「ではエレイナさん、クリスさん達が立て直すまで私たち二人が【ファフニール】の気を引く必要があります。ディアーナさんがMP供給を続けてくれていますし、二人で《ダークボール》を連射しておちょくりましょう」

 

「了解だ」

 

「では改めて《ホワイト・フィールド》《アイス・レイル》」

 

「おまけに障害物で《アイスピラー》!」

 

 半ばお決まりの流れと化した足場生成魔法群を発動、【ファフニール】に破壊された足場を再度構築し、自由自在な三次元機動で【ファフニール】を翻弄する。

 

「「《ダークボール》」」

 

「《ダークボール》。······オマエ達のそれ、氷属性以外の魔法でも使えるのだな」

 

「特に隠す意味もないので言ってしまうと、私が習得している魔法スキルを【ザドキエル】も使えるというスキルです。同時に放つ《累ね》はスキルの賜物ではなく、〈マスター〉と〈エンブリオ〉だからこそ容易に出来るのだと思います」

 

「なるほどな。······それにしても、闇魔法は便利だな。あまり使われないのが不思議だ」

 

「対生物特化ですからね。ENDや防御力を無視できる代わりに対物攻撃力が皆無なので、この【ファフニール】には刺さっていますが相手によってはほぼ効かないので一長一短です」

 

「ふむぅ······対物攻撃力はアンデッドで十分なワタシならやはり闇属性が有用だな!《ダークボール》」

 

「将来的に魔法改良にまで手を出すなら基礎からしっかり学ぶべきですよ。《ダークボール》」

 

「オマエの指導者は氷属性専門なのか?既にオリジナル魔法をいくつも開発しているオマエと同じ師から習いたいのだが」

 

「いえ、全属性を研究している方なので属性関係なく指導してもらえますが······先生曰く才能に大きく左右されるので成果が出るかどうかはその人次第らしいです。「《ダークボール》」」

 

「ふむ、どうせなら高みを目指すべく挑戦してみるのもよいな。時間がある日に紹介を頼む。《ダークボール》」

 

 次々と撃ち込まれ、金属装甲を無視して【ファフニール】にダメージを与える闇魔法。一発ごとの威力は低くとも、防ぐことができずに受け続けていたら、回復能力を持たない【ファフニール】のHPはいつか底をつく。

 

ギィィィ······ィィ······

 

 STRとENDが大幅に強化された【ファフニール】だが、AGIはそれほど強化されず、攻撃の射程が伸びたわけでもない。それでは【ザドキエル】を捉えることはできないのだ。

 《氷雪舞踏》によりAGIが大きく強化され、《ホワイト・フィールド》《アイス・レイル》により地面だけではなく壁や天井にまで行動範囲を広げたザドキエルの高速三次元機動が相手では、【ファフニール】の刃は届きはしない。

 加えて金属装甲による高い防御力も、高いENDも闇魔法には意味を為さない。

 四糸乃本来の戦闘手段のメインは氷魔法だが、【魔術師】で下位のものとはいえ闇魔法が使えるということは、四糸乃とザドキエルのコンビは【纏鎧鉱蠧 ファフニール】に対して非常に有利だと言えるだろう。

 

「すまん二人とも!クリスの回復もつゆ払いも終えた!」

 

「ふむ。それではラストスパートをかけて一斉攻撃をするか、このままじわじわと削りきるか······どちらがいいでしょうか」

 

「アラン達は切り札を使わないとろくにダメージが通らないから後者となるとワタシ達の負担がだな······トドメを願って一斉攻撃、足りなければワタシ達が《ダークボール》で削りきるのがよいか。······アラン!オマエ達の中に単発型の必殺スキル持ちはいるか!?」

 

「生憎俺だけだ!他のメンツも大火力はあるが、ジョブ奥義とかだし一発しか撃てない!」

 

「十分、ワタシ達が拘束するからそのタイミングで一斉攻撃だ!」

 

「「「『了解!』」」」

 

「四糸乃、【ミスリル・ドラグワーム】に撃ち込んだ魔法を使う気だな?」

 

「えぇ。現状での最高単体火力はアレですし」

 

「······二発、用意できるか?」

 

「可能ではありますが、何をするつもりですか?」

 

「ワタシの《デッドリーミキサー》の破壊エネルギーをオマエの魔法に混ぜ込む。成功するか分からんが、高位金属の装甲が相手ではワタシ達の最大火力をただ放つのでは不安だろう?もちろん失敗に備えて、ワタシも《デッドリーミキサー》は二発用意する」

 

「······なるほど、協力します。ではこちらに試してください」

 

「オマエがこれを回転させながら冷気を纏っていたように、破壊エネルギーを回転に巻き込ませたい。徐々に回転速度を上げることはできるか?」

 

「こうですね」

 

「お······おぉ。注文を付け過ぎたと思ったが、平然と対応したな」

 

「四糸乃は魔力操作に関しては変態だからねー」

 

「平然と己の〈マスター〉を罵倒しないように」

 

 【ザドキエル】の茶々に呆れながらも、エレイナは回転する氷槍に破壊エネルギーを纏わせていく。徐々に回転に巻き込ませ、氷槍を傷つけないために細心の注意を払って破壊エネルギーを操作する。

 初めての試みにより、神経が音を立てて削れていくかのような感覚に襲われるエレイナ。《デッドリーミキサー》を他のスキルと、しかも系統が全く異なる氷魔法に混ぜて放とうとしているのだ。苦戦するのは当然のことである。

 しかし突然、破壊エネルギーの抵抗が減り、みるみる氷槍の回転に巻き込まれていく。まるで初めから一つのスキルだったかのように、それが当然かのように破壊エネルギーは氷槍を中心に渦巻いている。

 

「怨念が元では操作は難しいと思っていましたが、存外できるものですね」

 

「《デッドリーミキサー》を何度も使用しているワタシでも神経を張り詰めながら必死に制御していたんだが······???」

 

「エレイナさん、《ボトムレスピット》の多重発動で足を片側浮かせてください。あとは私とザドキエルで拘束します」

 

「お、おうとも!《魔法多重発動》《ボトムレスピット》」

 

「「《チェイン・オブ・ニブルヘイム》《アイシクル・ホールダー》」」

 

 【ファフニール】の足元に大きな穴が発生して足の半数が宙に浮き、それに合わせて氷の鎖が全身を縛り付け、同時に巨大な氷の手が動きを抑えにかかる。

 【ファフニール】のSTRは高位金属の装甲とスキルの効果で非常に高くなっているが、今は足の半数が地についておらずその膂力を十全には発揮できない。《累ね》によって効果を大幅に上昇させた拘束魔法の二連発で、短時間とはいえ移動を完全に封じられてしまう。

 

「《混然一矢》ィ!」

 

『《蒸気充填:身体強化》《へビィウェイト》《アストロガード》』

 

「《一本釣り》······からの《フルスイング》!」

 

『《鎧袖一触》ぅぅぅぅ!!!』

 

 アランが光り輝く矢を放ち、ヒロムが釣り竿を用いて攻撃力と重量を高めたクリスを【ファフニール】の頭部に衝突させる。

 【ファフニール】のHPは残り一割強。

 

「撃ちます。《デッドリー・ギムレット》」

 

 放たれる異業の氷槍。甲高い音を立てながら高位金属の装甲を削り取り、瞬く間に【ファフニール】を貫いた。

 

【<UBM>【纏鎧鉱蠧 ファフニール】が討伐されました】

 【MVPを選出します】

 【【エレイナ・ミオソティス】がMVPに選出されました】

 【【エレイナ・ミオソティス】にMVP特典【輝装纏鎧 ファフニール】を贈与します】

 

 




〇【纏鎧鉱蠧 ファフニール】

(╹ x ╹)<今作で初めて描写されたUBMですね

(╹ x ╹)<ちなみに伝説級、魔蟲種です

(^・ω・^)<「初めて描写された」······?

(╹ x ╹)<君のような勘のいいガキは嫌いだよ

(^・ω・^)<ヒェッ

(╹ x ╹)<ナレ死ですらなく、特典武具もまだ紹介されてない哀れなUBMもいます

(^・ω・^)<さすがに哀れすぎるのではないか?

(╹ x ╹)<作者としても、UBMとしての能力と特典武具になった後の補正やスキルも考えたのを描写しないのは勿体なかったですが、その能力と四糸乃のハイエンド級の才能を考慮するとちょっと決着があっさり過ぎるんですよね······

(^・ω・^)<まぁ、学者系でも二週間で武術系の【神】に就くことができるほどの才能がハイエンドだからな

(╹ x ╹)<実は特典武具のスキルに関しては今回で登場してます

(╹ x ╹)<スキルの詳しい性能や特典武具の銘、見た目はいずれ説明するつもりですよ

(^・ω・^)<それでもバトルは描写しないあたり、よほど弱かったのか?

(╹ x ╹)<元のモンスターも弱かったうえにUBMに成りたての逸話級······上級職に就いてからですが初見ソロ討伐できているという

(^・ω・^)<それは弱いな
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