四糸乃デンドログラム   作:姫河ハヅキ

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ちくせう・・・また予定より遅れた・・・
申し訳ない・・・・・・


第九話 転職クエスト

「なるほど。魔法スキル特化型超級職ですか」

 

「魔法系の【神(ザ・ワン)】って三大属性以外にもあったんだぁ······」

 

「······超級職がこんなあっさりと条件を満たしていいのか?」

 

 現在四糸乃たちがいるのは、トレマスが管理する倉庫の中。見た目では用途が想像もつかないものやパッと見ゴミとしか思えないものなどが散見されるなか、しれっと置かれていた【魔術師】系統のジョブクリスタルで【術神】の詳細を確認していたところだ。

 

「まぁ、【神】シリーズは他の超級職に比べて、就職条件がある意味緩いからね。短期間で条件を達成したことに対しては割と納得してる」

 

「『ある意味』とな?」

 

「どう足搔いても時間がかかるものだったり只管に回数が求められる条件が多い【王】や【超】と違って、【神】で求められるのは基本的に才能や技量でね。それさえ満たしていれば他の条件はあまりないんだ。ただし、その才能や技量に関しては非常に高い水準を求められる」

 

「それこそ神と称される程の、か」

 

「だね。それにしても、魔法系の【神】は【天神(ジ・アトモス)】【地神(ジ・アース)】【海神(ジ・オーシャン)】の三つしか確認されていなかったんだけどなぁ。······四糸乃ちゃん、お金とかコネとか可能な限り提供するから就職条件をざっくりとだけでも教えてくれないかい?」

 

「構いませんよ。条件詳細を教えるので【魔法騎兵】の超級職や他の魔術師系統について後で情報をください。

で、【術神】についてですが、

①〈アーキタイプ・システム〉の補助を一切受けずに魔法の構築・発動を行うこと。

本来の魔法の発動プロセスであり、ジョブスキルとして簡略化されている「魔力の変換・操作・制御」などを〈アーキタイプ・システム〉による補助を受けずに、つまりジョブスキル抜きで行う必要があるということですね。

②オリジナル魔法スキルの作成数が三大属性各2個以上、合計10個以上であること。

これに関しては、既存魔法スキルの改良では作成数にカウントされないようです。組んだ結果既存魔法に似通るのはセーフみたいですが。

③オリジナル魔法をメインに用いて伝説級以上の強敵を撃破すること。

メインというのは「戦闘で使用した魔法の内、半数以上が②の条件に当てはまるオリジナル魔法であること」みたいです。しかも強敵撃破はワンパーティ以内の少人数でなければならず、MVPとまではいかずともそれに準ずる貢献をする必要がある、と」

 

「あぁ······既存魔法スキルの改良じゃダメなのか。道理で発見されないわけだ。転職クエストもその類かなぁ」

 

「三大属性全てでゼロからオリジナルの術を編み出す程の魔法の才能と、それらを十全に活用して伝説級以上の強敵を打倒する戦の才能、【神】の名に相応しい難易度だな。そしてそれを一か月で満たした四糸乃はやはりバケモノか······」

 

「どうあっても話の結論はそこに持っていくんですね。私としては、個人でジョブクリスタルを保有していることの方が気になるんですけど」

 

「······言われてみれば。あまりに自然な様子で案内されたから流しておったわ」

 

「レアなジョブ系統ならともかく、【魔術師】くらいメジャーな系統のジョブクリスタルは意外と持ってる人いるよー。オルフェ翁の家にも【死霊術師】のジョブクリスタルあったはずだし」

 

「わざわざ個人や家で保有する意味はあるのか?」

 

「大アリだよ。超級職に就くとジョブクリスタルは上級職のときより派手に輝くんだけど、超級職に就いた人物を殺せば空位になるからって超級職の暗殺は昔からよくあったんだ。〈マスター〉の君たちなら殺されても平気だろうけど、粘着されるのは面倒くさいだろう?」

 

「空位になったからといって自分がその超級職に就ける保証はないのでは?」

 

「ないよ。なんなら【王】が同系の【神】を暗殺したけど技量不足でなれなかった事例だってある」

 

「間抜けですね」

 

「間抜けよなぁ」

 

「少し話は逸れてしまったけど、四糸乃ちゃんは早速転職クエストに挑戦するのかい?目立ってしまうから、いつ挑戦するにしてもここのクリスタルからをおすすめするよ」

 

「初発見の超級職なら転職クエストの情報はないですし、まずは一度挑戦してみます」

 

「頑張っておいで」

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

【規定MP内で魔法を作成し、試練を達成せよ】

 

【試練は10個課される。全てを達成することでクリアとなる】

 

【ジョブおよびスキルは《魔力視》とオリジナルスキルを除き全て封印されるが、必要なMPは試練ごとに随時供給される】

 

 天井も床も真っ白で、見渡す限り何もない空間。何も知らずに来ていればバグを疑いそうな光景だが、四糸乃は何の超級職であれ転職クエストで移動する空間はどれもこんなものだという情報をトレマスから聞いているため動じていない。虚空に浮かんでいるシステムアナウンスを読んで転職クエストの内容の理解を深めている。

 

「聞いていた通り〈エンブリオ〉は封印されてないですが······スキルがまとめて封印されているので封印されているに等しいですね」

 

「これじゃただの可愛いパペットだよー」

 

「······他の人がいなくなった途端に喋り始めましたね。まさか引っ込み思案なんですか?」

 

「いやー?〈マスター〉の交流を邪魔しないように静かにしていただけー。ボクってば気遣いのできる〈エンブリオ〉だから!」

 

「なるほど。就職クエストには邪魔なので格納しますね······」

 

「いやいやいや、別視点からアドバイスとかできるよ!」

 

「······それは確かに」

 

 ただ喋るだけのパペットと化した【ザドキエル】を装備したまま転職クエストに挑戦することにした四糸乃。

 果たして【ザドキエル】が有用なアドバイスを出せるのかどうかは不明である。

 

【第一試練:灯】

 

【指定範囲の全体を一分以上照らせ】

 

 空間全体が暗くなり、地面にうっすらと正方形が描かれる。指定範囲とはこのことだろう。

 

「10もあれば最初は簡単なものですね」

 

「デカい光の球じゃ······ちょっと怪しい?」

 

「怪しいどころか無理でしょう。供給されたMPでは足りません」

 

 光属性は他の属性魔法に比べて消費MPがかなり多い。今供給された量ではどれだけ効率化を図っても三十秒が関の山だろう。

 

「範囲の中央と四角に火の玉を配置するのが想定されているであろう回答かと」

 

 弾速も射程もほぼゼロで調整した《ファイアーボール》を複数浮かべることでクリア。

 

【第一試練、達成】

 

【第二試練:渡河】

 

【吹き荒ぶ暴風雨の中、荒れ狂う川を向こう岸まで通過せよ】

 

 現実であれば確実に警報が出ているであろう暴風と豪雨、そして眼前には今にも氾濫しそうな川。

 

「前言撤回です。2つ目で飛行手段を要求するのはどうかと思います」

 

「この風速だと空中も怪しくなーい?」

 

「······それは確かに。局所的な水流操作か、水面ギリギリの超低空飛行か、ですかね」

 

「いっそ走り幅跳びの方がいけそうな気がするねー」

 

「············あ」

 

 何か思いついた様子で地面を凍らせ始める四糸乃。

 氷の道は川を横断するような角度で形成されていき、川岸ではジャンプ台のように少し角度がつけられている。

 道を作ったかと思えば、今度はその始点で氷のドームを作り始める。川のある方向にだけ穴を開け、穴の傍で縮こまって「こんなものですかね」と呟く四糸乃にザドキエルは混乱している。

 

「これ何してるのー?」

 

「貴方の案を参考にしようかと。この穴ちょうどくらいの太さでカプセル状の氷を作ってその中に入り、ドームの中で風魔法を炸裂させることで推進力を獲得して向こう岸まで射出、という予定です」

 

「それ本当にボクの意見が元???」

 

 成功した。

 

【第二試練、達成】

 

【第三試練:巨岩】

 

【飛来する巨岩から生存せよ】

 

 雨も風も止み、川も消え去ってただの土の地面へと変わる。

 

「飛来する巨岩······あぁ、なるほど」

 

「うわでっか!」

 

 上空には巨大な岩が浮かんでおり、眼前には着々とカウントダウンを進める時計。この時計がゼロになった時、あの巨岩は落ちて来るのだろう。

 

「逃亡・回避はまず無理そうな大きさで、下は土でできた地面。まぁそういうことですよね」

 

 風魔法と氷魔法を用いて地面に細い穴を掘り、そこに潜り込むことでクリア。

 

【第三試練、達成】

【第四試練:天空】

【高所からの落下で生還せよ】

 

「この魔法、速度を出さない限りはMP効率すこぶるいいんですよね」

 

「風とか火で飛ぶ想定だったんだろうなぁ······」

 

 転職クエストに挑む前に開発した、氷塊を浮かし操作する魔法でMPをかなり余らせつつあっさりとクリア。

 

【第四試練、達成】

【第五試練:回収】

【オブジェクトを破損させずに回収せよ】

 

「この氷魔法便利すぎます」

 

「自慢かな?」

 

 オブジェクトは転がりやすく割れやすいガラス玉で、魔法を使わないとまず届かない高所に配置されていたのだが、第四試練に続いて氷塊操作の魔法であっさりとクリア。

 

【第五試練、達成】

【第六試練:再演・一】

【これより発生する魔法現象を独力で再現せよ】

 

「これは······重力?」

 

「トレマスがロストしたって言ってたやつじゃなーい?」

 

【第六試練、達成】

【第七試練:再演・二】

【これより発生する魔法現象を独力で再現せよ】

 

「なにこの······なんですかこれ」

 

「電気の無効?吸収?」

 

【第七試練、達成】

【第八試練:再演・三】

【これより発生する魔法現象を独力で再現せよ】

 

「············???」

 

「原理を理解してないのに視た通りに魔力を操作して魔法を再現できてる四糸乃の方が不可解なんだけど???」

 

【第八試練、達成】

【第九試練:弾幕】

【次々と飛来する魔法を迎撃し、一定時間生存せよ】

 

「ただの早撃ちなら楽ですね」

 

「えぇ······」

 

【第九試練、達成】

 

【最終試練:複合】

 

【三つ以上の属性を掛け合わせた魔法を作成し、一撃でオブジェクトを破壊せよ】

 

「いよいよ最後ですか」

 

「なんで初見でここまで来れてるんだろうね······?」

 

「全て通して、冷静さとアイデア力、魔法の構築技術があればクリアできるような内容でしたからね。初見か既知かはあまり関係なさそうです。それにしても三つ以上の属性ですか······まずは一つ」

 

 おもむろに地属性魔法で金属の槍を作り出す四糸乃。

 

「······二つ······」

 

 槍の表面に氷の刃を螺旋状に設置し、

 

「······三つ」

 

 槍の周りに風を纏わせ、ドリルのように回転させることで貫通力を高める。

 

「火、雷、風など細分化されたうえでの三属性なのか、三大属性から最低一つずつなのかのどちらかは分かりませんが、後者だと解釈して進めた方がいいですよね。······どのくらいの強度か分からないので、可能な限り足しますか」

 

 氷塊操作の魔法でオブジェクトの上方へと移動し、槍をオブジェクトの真上に配置する。そして、槍に込めるMPを増やし、金属の強度を、氷の刃の鋭さを、風の勢いを、破壊力に繋がる要素を全て強化していく。

 

「おぉー。もうこれでいけるでしょ!」

 

「いえ、念には念を入れます」

 

 そう言った四糸乃が構築し始めたのは―――重力魔法。槍に重力をかけてさらに威力を高めようとしているのだろう。

 さっき初めて見たばかりの魔法をもう自力で構築できるようになっているのは、まさにバケモノと言える。

 

「―――《混沌星槍》」

 

 轟音が鳴り響き、オブジェクトが粉々に砕け散る。

 

「これでクリアですね。あ、【魔法騎兵】にも就かないと」

 

「あっさりし過ぎじゃない!?」

 

【最終試練、達成】

 




〇【術神】の転職クエスト

(╹ x ╹)<端的に言うと「ほぼ全てのジョブとスキルを封印された状態で課される10個のミッションを、適宜内容に合った魔法を創作してクリアしてね。もちろん装備品のスキルもダメだよ。ヒント用に《魔力視》を、あとはオリジナル魔法は封印しないでおくね」という内容

(╹ x ╹)<しかもMPは想定されている最適解の2倍程度の量しか供給されないのでそこそこ切り詰めて魔法を作る必要があります

(╹ x ╹)<「《魔力視》とオリジナル以外のスキルを装備品含めて全て封印」なので、他の転職クエストでは使える〈エンブリオ〉や特典武具も【術神】の転職クエストでは使用不能という鬼畜仕様

(=ↀωↀ=)<わーお

(╹ x ╹)<ちなみに最終試練ですが、MP供給が無尽蔵なだけあってオブジェクトの強度は割と高く、難易度もかなり高いですね

(=ↀωↀ=)<でもMP大量にあるんなら楽じゃなーい?

(╹ x ╹)<私が言うのもなんですが、〈アーキタイプ・システム〉の補助抜きで三属性以上の複合魔法を構築するのは難易度高いんですよ

(=ↀωↀ=)<あ

(╹ x ╹)<おまけに私の場合は数個前の試練で初めて見た重力魔法を用意し、槍の方は威力上げるためにMP追加で制御がし辛くなって、と割と大変でした

(=ↀωↀ=)<むしろなんでクリア出来てるのキミ???

(╹ x ╹)<頑張りました

(=ↀωↀ=)<最終試練も相当だけど、第六・第七・第八の初見属性ラッシュもヤバいよね

(=ↀωↀ=)<なんで魔法の原理を分かってないのに再現できるの?

(╹ x ╹)<まぁ目の前でお手本見せてくれたのでね

(╹ x ╹)<そのまま真似するくらいならできますよ

(=ↀωↀ=)<えぇ······?

(╹ x ╹)<ハイエンドはそんなものですよ
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