存在しない男   作:いん22222

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ロシアウクライナ戦争でドローンの技術が上がりまくってる今日この頃。
ホロウ内部でドローン使ってエーテリアスの攻撃とかしないんでしょうかね?通信とか偵察とかボンプにやらせた方がや安上がりなんでしょうか。


包囲 【ホロウ・インポッシブル Part2】

 散弾銃に持ち替え機関部後部側にある上のスライド式の安全装置をOFFにする。こちらを見ているであろうドローンを撃ち落とそうとも考えたがおそらくは【モグラさん】とやらのものだ。壊せばあちらからクレームが来ることは間違いない。返品対応は受け付けていないのだ。

 

 装填されている弾はスラッグではなく12ゲージの散弾。対人やエーテリアスの近接戦。もしくは自爆特攻してくるドローンを迎撃するためである。

 

 監視目的であろうがこちらへと接近し爆発でもされるのは厄介だ。それらしきもの(爆発物と信管)が搭載されているようには夜、そして遠いため見えない。

 引き金に指はまだ掛けない、とは言え安全装置は解除したままにしておく。そのまま周囲を見回し警戒はネームド。話は11号が引き受けている。

 

〈デビューから今に至るまで数々の偉業を成し遂げた伝説のプロキシ【パエトーン】がちんけ軍隊気取りの資料を盗むために、わざわざ俺のような卑しい日陰者と手を組むはずがなぁぁい!〉

 

 自ら自覚しているタイプか自傷しているのか、日陰者(モグラさん)が怪しいとあまりに主観的な異議ありの言葉を言う。モグラがドローンを使うとはだが。

 

 ねっとりとした声の口調からでたちんけな軍隊気取りという言葉。彼女のような軍に忠誠を誓っている人間を怒らせるには十分な言葉だ。

 

 「ちんけな軍隊気取り、、、?」

 

 明らかに変わった声のトーンにネームドが介入しろと視線でイアス(アキラ)に訴えかける。喋れないためこうするしかない。

 

 アキラが会話に介入する。きっとうまく話をまとめるだろうとネームドは警戒に戻った。

 

 「嘘はついてない。もし僕がパエトーンを騙っていたら、一生カップ麺の調味料抜きという呪いを受けてもいい。」

 

 

───予想していたものと違う。

 

 

 「、、、!」

 

 アキラの言う言葉に驚愕の混じった目でイアス(アキラ)を見る11号。その目は演技のものではなくおそらく本心のものだ。

 

 「火蜥蜴の激辛ラーメンから調味料を抜くことは兵士から武器、装甲、そして故郷を取り上げることと同義です。想像するだけでも恐ろしい、、、」

 

 「ネームドもそうだろう?」

 

 変化球にもほどのある問いかけがネームドに当たる。警戒しているのがわからないのだろうか。

 

 しかしこのまま黙っているわけにもいかない。周囲を見ながらも手探りでポケットからペンとメモ帳を取り出せば素早く書き出す。

 

 『Abura soba guy.(油そば派だ。)

 

 脳裏に一瞬思い出すインスタントラーメン。英語でBubuka abura soba(ぶぶか 油そば)と書かれた物に興味が湧き食べてみれば衝撃を受けたのを覚えている。

 

 液体ソースとマヨネーズを麺に混ぜ最後にふりかけをかけ食べたそれはあまりの美味さにネームドは思考停止したのだ。体、表情が固まったネームドの写真が兄妹(アキラとリン)の携帯写真フォルダに残っている。

 

 確かに調味料を抜けばあの美味さは半減どころかほぼ無くなるはずだ。

 

 嫌だな、とネームドは思った。

 

 〈おい待て、ニッチな例えをするな俺にはちっとも伝わってないぞ!〉

 

 モグラが皆をまとめるべく声を上げる。その声に全員が黙ったのをドローンで確認したのだろうか一呼吸整える深呼吸の音が聞こえる。

 

 「そうだなぁ、防衛軍が次に活動する予定のホロウに軍用の盗聴器と発信機を仕掛けてこい。」

 

 「、、、それだけかい?」

 

 意外にも、といった声色でアキラが尋ねる。ネームドも想像と違っていたのか疑問の混じった目をドローンに向けている。

 

 「本当にパエトーンだというのなら、実力で証明して見せろ!」

 

 そう言えばヘッドセットの奥からブツっと音がし向こうが通信から抜けた。数秒経てばボンプの目を映す液晶画面にUproadの文字が表示された。

 

 「モグラさんから座標が送られた。盗聴器の場所と設置位置だな。」

 

 「ならば行動しましょう、行くわよ。」

 

 肩を叩かれ周囲の見回していた目はイアス(アキラ)が先頭の道に向いた。今日できた即席チームはホロウ内部へと歩み始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 11号&イアス(アキラ)の前方180°を視認し光学照準器(スコープ)を覗いていた右目から左目の開けた視界に戻す。かなり大雑把ではあるが広範囲に敵は視認できない。

 

 「こちら11号。こちらから周囲に敵は視認できないわ。そちらからはどう?」

 

 ショルダーストラップに付けられていた使うことのなかったPTTスイッチを何度か押す。短押し、短い長押しをネームドは何気に繰り返した。

 ブツ、ツー、ブツブツ、と短押し長押しが何度が繰り返される。

 

 「、、、え〜〜と、どう言う意味だ?」

 

 《先ほどの音は通信不良によるものではなくモールス信号によるものと考えられます。翻訳するとCLEAR(安全)です。》

 

 「モールス信号か、そんなこともできるんだな。」

 

 「多才ね。モールス信号もできるだなんて。」

 

 二人の言葉に返すことはない。しかしネームドはモールス信号を自分がしたと言う事実に疑問を抱いた。

 

 

───なぜ俺はできた。

 

 

 意識していなかったのだ。無意識に無線機を握り応答していた。

 

 思え返してみればなぜか自分はモールス記号を暗記していた。記憶を失ってから習った覚えのない記憶になんとも言えない違和感が脳を駆け巡るが今はそれを無視する。頬と口全体を覆っている髭を何度か撫でればまた進行方向の警戒へと戻った。

 

 現在ネームドは11号とイアス(アキラ)の歩く隊列から外れ遠方から支援している。近距離と遠距離の武器を持つ同士では相性が悪いだろう。動き回っては撃ちずらいとネームドが提案し離れた。

 

 ネームドの持つ小銃に搭載されている照準器は遠方までも倍率が変更可能だ。そのため[[rb:イアス > アキラ]]達の進む先に敵がいれば先に撃ち抜き進行を止めないのが現在の役割。

 

 照準器の向きを変更したその時端に映った何かを見つけ向き直す。よく見れば何かが鎮座しているのを発見し倍率を上げる。調節ネジを回しあげれば確かにエーテリアスがいるのを発見した。

 

 PTTスイッチを何度か押せばまたFariyがそれを翻訳する。

 

 

 《STOP》

 

 翻訳を聞いた11号とイアス(アキラ)が止まる。背中に背負っている装備の鞘部分に収められたナタの持ち手を握り周囲を見回した。

 

 十秒ほどだろうか。Fairyから警告が入る。

 

 《前方に二体のエーテリアス。》

 

 ナタを一気に引き抜くと同時に微かな銃声が何発か鳴った。崩れた瓦礫から二体のエーテリアスが倒れてきてそのまま消滅する。

 

 11号がネームドのいる家屋の屋上を見れば二本指を立て前に何度か前に倒しているのを認識した。

 

 「前進しましょう。よくやったわバーミリオン・スナイプ・オーバーナイト。」

 

 短押しのブツッと言う音が一回なる。意味はおそらく了解だ。

 

 

 

 |《「おかしい、、、なぜ”あいつ”の顔が見えない、、、?」》

 

 小さい誰かのつぶやき声。その声は男だがアキラは一言も喋っていない。

 

 あまりにも小さいその呟き言葉はだれも聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ハァァ”!」

 

 DANGERと書かれた背中に背負っている装置から火花が散る。刀身が一気に赤みを帯びて温度が上昇すればナタを一気にエーテリアスへと振り下ろす。

 

 燃え盛る烈火の如く放物線を描く炎の先端をいくナタがエーテリアスの肩から脇にかけて袈裟斬りで文字通り両断した。

 脆かったのか炎に弱い個体だったのか、驚くほど綺麗に切れた断面には白の混ざった橙色があり振れれば一瞬で火傷を起こすだろう。火傷どころでは済まないかもしれない。

 

 テレビの砂嵐のように消滅していくエーテリアスから目を離し周囲を見回す11号。問題ないと思えばナタを装備へと収めた。

 

 「状況終了。各自報告を。」

 

 「問題ないよ。」

 

 小型エーテル爆弾を懐にしまったイアス(アキラ)を一目見て今度はネームドの方を見る。いつのまにかビルの屋上にいるネームドは再装填しているのが見えた。

 

 終われば親指を立てた腕を上にあげる。問題ないのを見れば盗聴器を設置するようスカーフをつけたボンプに言おうともしたがすでに作業を開始している。

 

 ここでネームドはドローンについて報告しようとも考えた。盗聴機を設置するため行動を開始し始めた時からフワフワと上空を静かに飛んでいるドローン。

 

 こちらの動きを監視しているあれを二人が知っているのだろうかはわからない。今になってできると分かったモールス通信。しようと思ったがこちらの通信が傍受されている可能性もある。

 

 通信傍受は旧時代からある手段だ。そのためある程度の対策が敷かれてきた。最も多いのが合言葉だが今思いつくものは【ファイアー、サンダー】しかない。相手がモールス信号を知っていた場合意味を理解されずとも怪しまれる。というよりもう先ほどからしてはいるがあちらからの咎めが入ることはない。

 

 それに先ほどから何か妙な気配や感覚(・・・・・・・)を感じるのだ。

 

 いくつかの操作盤がついているそれを何度か繰り返し操作すれば起動音が聞こえ正常に稼働したのを意味する。移動しよう、そう11号が入った瞬間モグラさんからの通信が入る。

 

 〈なぁプロキシ、、、〉

 

 

 

 

 〈お前本当は、パエトーンなんかじゃないだろ!〉

 

 バレたか、そう思いながらも会話を聞き続けようと思ったが人の声がヘッドセットに繋がった通信機から聞こえることはない。

 

 イアス(アキラ)は何も言わず歩き続け、11号はゴーグルを外しクリーニングクロスで磨いている。2名とも無視するかのように。ネームドに関しては無視していないし喋れないのでその限りではない。

 

 「、、、」

 

 「、、、」

 

 〈、、、なんで黙り込む!?ここは何か言うところだろ!普通!〉

 

 〈あるだろう!反論とか、こう、、、〉

 

 まさか暇つぶしで雑談するために言いがかりをつけてきたのではないな、とネームドは考える。この様子だと本当にパエトーンではないと決めつけたわけではないだろう。そもそもの話本人なのだから。

 

 崇拝者《ファン》が知っている憧れはあくまで出ている情報のみだ。インターノットに転がっている◯◯はこうだった、◯◯は◯◯を成し遂げた、と人それぞれの価値観や主観で誇張されているのが多い。それを他の者が聞き、また誰かに話す。この芋蔓式が繰り返されるのだ。

 

 |日陰者 > モグラさん]]の言い分ではこれがパエトーンの実力だの任務は完璧だの心強い言葉で依頼人の不安を取り除くのふが伝説のプロキシなら標準装備のサービスとのフィードバック(クレーム)が次々と出てきた。

 ネームドには受けたことも聞いたこともない。

 

 「君のセラピストじゃあるまいし、そういうのをご所望なら別途料金だよ。」

 

 「フンッ、パエトーンな──「依頼人が時折そういう不信感を抱くのも理解できることだ。確かに本当にパエトーンなのか不審に思うところもあるだろう。」

 

 「でもそれなら依頼人に好かれようとするのもプロキシ、いやパエトーンの役目でもあるかな。」

 

 「お、お前は分かってくれるのか?この俺の気持ちを?」

 

 「好奇心を買うのは当然さ、なんせこのパエトーンは。」

 

 〈パエトーンは、、、?〉

 

 

───パエトーンは?

 

 覗き込むような声色でアキラの声を聞き返すモグラさん。実際歩いている11号とイアス(アキラ)を監視しているあのドローンに搭載されたカメラを映し出してるモニターを物欲しそうに見ていることだろう。なぜだかわからないがネームドの脳裏にその光景が浮かぶ。

 

 「いわば歩く伝説、ホロウのすべてを熟知していると言っても過言ではありません、新エリー都においては、小学生までもその偉大さを知っています。

 

 ここまでくると11号が話さないほうが怪しまれないのではないか、と思えてきた。

 

 ネームドは少々言いがかりのようなことを思っていれば体中から毛が逆立つ感覚を捉える。全体的に、何かが湧き上がるような感覚に近い。

 

 

───敵が近い。

 

 

 彼の本能、生物としてだろうがその言葉を告げる。ネームドは周囲を見回すが敵が周囲にいるわけでもない。しかし何かと違和感を感じるのだ。気のせいではないとはっきりわかるほどの感覚。

 

 

 「ところで、モグラさん。」

 

 「えっ?」

 

「僕たちとリアルタイムで通信できるということは、今もホロウの中にいるんだろう?」

 

 「ふ、なんだ、その程度のこと、常識の範囲内じゃないか!パエトーンでもない限りホロウ内外の通信など不可能、彼の方のみができる芸当だ!」

 

 「信じるかは君次第だけどパエトーンとしての経験でわかる。ここは活性化するだろう、エーテリアスの活動もより活発になる。」

 

 「そんなバカな!調査協会のほうはまだ活性化警報の【か】の時も───」

 

 言いかけたその時、ヘッドセットのハウジング奥からけたたましい警告音が響く。それと同時にまたしても先ほどの感覚を感じ取りネームドの体を駆け巡る血が騒ぐ。戦えと。

 

 慣れない感覚、鼓膜を突き破ってきそうなその音に不快に思いネームドの眉間に皺がよる。

 

 「ほ、本当に警報が来たぞ、アンビリーバブル(信じ難い)!経験値のみで調査協会を凌駕してみせるとは、やはり伝説と呼ばれるだけのことはあったわけだ!」

 

 褒め称える称賛が聞こえると同時に所々生えていたエーテル結晶、弱く光っていた黄緑色の光が強くなった。

 

 「前方からのエーテリアスを視認。戦闘準備!」

 

 「そっちも油断しないように、モグラさん」

 

 「こ、この俺を、、、心配してくれたのか?か、顔が火照ってきたぞ、ホロウが煮えたぎってしまいそうだ、、、!」

 

 それは単純に困る。ネームドは熱いか寒いかで言えば寒い方が好みだ。気温の意味で。

 

 「ようし!!エーテリどもの殲滅をもって、この小さな冒険の幕を華麗に引こうじゃないか!!。」

 

 11号がナタを引き抜き回転させる。彼女の癖でもあるそれを構えた先には大勢のエーテリアスがいる。

 

 個体別に言えば【ブラストスパイダー】【ティルヴィンク】【アルペカ】の集団。数は30を優に超えどれもが畜エネ型だ通常個体ならば黄緑色に光っている部位が赤に光っており確かに周囲が活性化したのを示していた。

 

 イアス(アキラ)が小型エーテル爆弾を取り出し援護するべく隣につく。戦闘開始といった所だかそこで11号の視界端に写ったそれ(・・)は戦うよりも優先すべくことだ。

 

 「スナイパーベール!!そちらのビルにエーテリアスが登っていってるわ!今すぐ逃げて!!」

 

 スナイパーベール。誰を指しているかは明確である。スナイパーベールをヘルメットにつけて素顔が見えないネームドだ。

 

 11号からの警告を聞き体の角度を少し傾け地面を見る。高度の高いビルから見る地面までの距離はなかなかに怖いものだがそれよりもビルの壁を突き刺し、ベランダの隙間を掴み登ってくるエーテリアスに視線が行った。

 

 離脱しようとビルの別の側面も見たが同様、もう一つも、もう一つの側面も。

 

 

───囲まれた。

 

 建物四側面すべてにエーテリアスがずっと有利な位置から撃ち続けている人間を殺すべく大勢で来ている。芋プレイをしすぎたらしい。奴らはお怒り状態だ。赤くなっている部位がその怒りを表しているようにも見える。

 

 階段へと続く鉄扉を駆け下る。三段飛ばしで降っていくが自分の足音とは別に大量の足音が聞こえた。

 

 エーテリアスが階段を駆け上っているのだ。急ぎで戻り鉄扉を押しげり乱暴に閉じる。鍵が内側のためネームド側から閉じることができない。

 

 腕と脚の関節部とプレートキャリアのショルダーストラップに巻きつけたダクトテープをもう一度バックパックから取り出し屋上出入り口の壁全体を巻き付ける。扉、側面壁、側面壁、側面壁、扉を繰り返しぐるぐる回り巻きつければ尋常じゃない速度でテープ部分がなくなっていく。

 

 やがて紙管だけが残る。買ったばかりの新品ではあるがもうなくなってしまった。また新品を買わなければならない。今の状況を生き残れるのならだが。

 

 負い紐で吊るしていた小銃を持ち直しコンバットナイフを鞘から抜きフォアグリップを握る。後から聞こえる音に振り返れば剣型のエーテル結晶が腕にあるエーテリアス登ろうと手を屋上床に引っ掛けている。

 

 引き金を引かれ撃針弾の雷管を突く。薬莢内に詰められている火薬が爆発的速度で燃焼し弾頭を銃口の先から飛び出した。

 単発射撃を二回。エーテリアスの指が吹き飛ぶが未だ落ちはしない。もう一発撃てばようやくエーテリアスがビルの高い屋上から地面へと落下した。

 

 一体落とす。しかしまた二体、三体が登り屋上の床へと足をつける。素早くコアへと射撃を開始、今度はフルオートで。

 銃口から出る燃焼、小爆発で跳ね上がろうとするがそれをナイフを握った手で抑えつける。意外にもすぐによろめきビルから落下するがもう一体がネームドへと突撃する。もう一体にもコアへと射撃するがこのままでは剣型のエーテル結晶がネームドに攻撃を加えてしまう。

 

 距離二メートルへとなった瞬間射撃を停止しコンバットナイフで振り上げられた剣先が体へと到達する前にエーテリアスへと自ら近づいてコアをブチ抜いた。

 

 黒色の刃をコアから捨てるように抜く。貫かれたコアから消滅していくエーテリアスだが次々とビル屋上へと登って来ている。これ以上は囲まれてしまう。

 

 ダクトテープを巻きつけた鉄扉から何かを叩きつけるような音がネームドの耳にも入った。何度もドアハンドルが下上へと動き開けろと言わんばかりの衝突音。

 

 ダクトテープは通常よりも耐久性が高い。何周もし巻きつけているためしばらくは耐えるだろう。しばらくは。

 

 

───どれほどのスリル(高揚感)を感じれるだろうか。

 

 

 囲まれ死ぬかもしれない状況、ホロウ内である以上その可能性はどこにいようとあるが今は飛びきりその状況。現在入っているホロウで一番不味い状況だろう。何度も死の寸前を感じとるはずだ。

 

 髭に覆われた口元の両端が少し吊り上がる。緊張が限界突破し頭がイカれたわけではない。

 

 強力マグネットから散弾銃を取り外し負い紐を肩に回す。バックパックを下ろせば体がだいぶ軽くなった。腕を軽く回せばエーテリアスの手段へ銃口を向けた。

 

 

 

 

 

 熱による赤みを浴びたナタが下から上へと上げり火炎が舞う。放物線を描き熱によって融解しているのか、単なる切れ味か、おそらくどちらでもあろうがそのナタが一体のエーテリアスの身体を両断する。

 

 次の獲物はあいつだ。ナタを軽く振り払い最後の敵を見る。11号の視線の先には白いマントのような布のようにたなびくエーテル結晶をたなびかせたタナトスだ。

 

 襟やマントの内側は赤く光っており蓄エネ型であるのを示してる。

 雑魚共の処理によって少し乱れた息を整える。足元でイアス(アキラ)が小型エーテル爆弾を持ち構えているがそれを左手で静止させる。タナトスのように高速、もしくは瞬間移動で迫るのを相手に動きの遅いボンプを守っている暇はない。

 

 「下がって。」

 

 短く言われた命令。その言葉にイアス(アキラ)は反対することなく物陰へと後ろに下がった。

 

 一対一になったのを認めた両者が見合う。

 

 円を描くように歩き、ゴーグルの奥にある瞳が細められ、タナトスは唸り声をあげる。

 

 その時11号はネームド無性に心配になった。しかしタナトスから目線を外すことはない。敵、ましてやタナトス相手に目線を逸らすなど自殺行為だ。

 

 まだ耳には銃声が聞こえる。聞き慣れたライフル弾、拳銃弾、ときには散弾が銃口から放たれる音が聞こえる。銃声が聞こえる限りはまだ生きているということだ。

 

 

 時折、というよりよくエーテリアスがビル屋上から投げ落とされているのは気のせいだろうか。

 

 

 タナトスが斬撃、時には弓のように構えるエーテル結晶を構えた。虹色に光り始めれば弓矢のようにエーテルを放った。

 体全体を正面から横にずらし避ける。それで終わることはなく腕を振るい連撃が次々と繰り出された。

 

 11号も負けることなく応戦する。ナタを繰り返し交じわせることにより火花が幾度か散らばる。何十回か繰り返せばタナトスの体勢がどんどん揺れているのが分かる。

 

 斬撃を繰り返していたタナトスが姿を消し一度後退する。またしてもエーテルを放とうとするそれをさせまいと走り詰めた。

 

 放たれるエーテルは一振りしたナタによって真っ二つとなる。腕を使いナタを上へと振った勢いを失わないまま体を回転させ、もう一度振り上げる。

 

 タナトスはマントで隠れていた鋭いエーテル結晶を上から下へと、具材を切るかのように右腕を思い切り振るった。

 

 斬るから、突く。ナタの上部。尖っていない、耐久性を高めるため刺突を無しにした平たい三角形のそこで振るわれた腕を上へと押し上げた。

 

 ぶつかりあう攻撃、力の押し付け合いに11号だ。斜めという横にも行く攻撃はまっすぐな力には弱い。まっすぐ進んでいようが横から力が加われば簡単に曲がるのだ。

 

 腕が弾き返され体の体幹が崩れる。ぐらっと揺れたタナトスの体。揺れたことによりエーテルで構成されたマントがたなびきタナトスの背中へと向いた。それにより見えた胴体。

 

 腹、足、腕。

 

 11号が一度ステップし後ろに下がる。ナタを背中に背負っていた装置へと戻す。完全に収めることはない。

 前腕に力が入り11号の手がナタのグリップを握り込む。その瞬間ナタが一気に赤みを帯びる。

 

 一気に引き抜けば銃口から出る発射ガスのようにバックパック装備が燃え上がり、炎がナタを豪勢に包み込んだ。

 

 

 調査協会から公開されている畜エネ型エーテリアスの弱点にはこう書いてある。

 

【火などによる高温なもの】と。

 

 爆発するように燃え上がった炎を周囲をに撒き散らし、タナトスがナタによる直撃を受ける。

 

 脚を使い、飛び上がった11号が体を回転させしたから上へと、何度も回転してエーテルで構成された長身を斬撃と火で刻む。

 

 止まった回転、膝を地面へとつけたタナトスが見上げれば月に重なった人間を見た。両手でグリップを握り、こちらへと最後の一撃を加えようとした11号を。

 

 重力、落ちることによる加速、腕全体に込められた力がタナトスのコアを両断した。

 

 体の体幹が崩れたことによる[[rb:不安定 > ブレイク]]状態。その状態で受けたコアへの直撃。

 

 0%となったHPと共鳴するように身体が虹色に発光し消滅した。

 

 「やったな!」

 

 「いいえまだよ!」

 

 

───彼を助けないと。

 

 

 ナタをバックパック装備へと収め地を蹴り走り出す。11号の位置からビルまでの距離は遠い。

 

 銃声はまだ聞こえる。つまり生きているということだ。相変わらずビル屋上からは数々のエーテリアスが屋上から投げ落とされている。まだ元気ではあるらしい。

 

 距離がおおよそ30mになれば左足のレッグホルスターから自動拳銃を抜く。安全装置(サムセーフティ)を解除しスライドをわずかに引いて初弾があるのを確認すれば両手で構えた。

 

 照星、照門を合わせ狙いを定めれば引き金を引いた。狙った先はビルの壁を登っているエーテリアス。先端が平らで中央が窪んでいる弾頭がエーテリアスの身体やコアへとあたり何体かの注意を引いた。

 

 「私はここよ。」

 

 何体かが唸り、叫び声を上げ剣となっている腕をビルの壁に突き立てながら降下を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





ネームドはモールス信号を思い出した(・・・・・)


ネームドって追い詰められれば追い詰められる命の危機を感じて楽しくなりそう。Mではないですよ。そっち(・・・)の趣味はないでしょう。

あとネームドに関する設定を一つど忘れしていたことに昨日気づきまして。これまでに投稿した小説のいくつかに少しばかり編集を加えました。
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